Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
すいません。
タイトルがどうやっても決まりませんでした。
CYaRon!だけ完全にオリジナルの単語なんです。


CYaRon!の少女と布屋さん

「こんにちはー!」

「ハルくん!ヨーソロー!」

「こ、こんにちは、ハルさん」

「いらっしゃい。来店はもう少し静かに頼むよ」

「まあまあ、普段閑散としてるんだから、来客くらい賑やかでもいいでしょー?」

「おや千歌ちゃん、いつの間にそんな洒落た言い回しを覚えたんだい」

「えへへー。私も日々成長しているのです!」

「人の皮肉も分かるようになってくれ」

 

それを見て苦笑いする曜ちゃんとルビィちゃん。

このメンツは…確かCYaRon!のメンバーだったはずだ。

 

「今日はユニットごとに練習でもしたのかい?」

「あれ?よくわかったね」

「そうでもないと、このメンバーだけっていうのは割と珍しいだろう」

「んー…言われてみればそうかも」

 

千歌ちゃんと曜ちゃんがいるなら、だいたい梨子ちゃんもいるし、ルビィちゃんがいるならだいたい花丸ちゃんもいる。

 

「先日はGuilty Kissのメンバーがやって来たけど、今回は君達なんだね」

「そうだよー」

「それで、何かご用かい?」

「ああ、そうそう。ちょっとハルくんにお願いがあってねー」

「お願い?」

「うん。で、その前にちょっと聞きたいんだけど…」

「ふむ」

「ハルくん、水着好き?」

「もちろん」

「見に行きたくない?」

「行けるなら行きたいね」

「あのね、今度親交を深めるために、この3人でプールに行こうって話になったの」

「ほう」

「ただねー」

「その…ちょっと遠くて」

「なるほど」

 

つまりは、足になれと。

 

プールか。

このまえプール掃除は手伝ったが、遊びに行くというのはかなり久しいな。

海には行くものの、これも遊びで行くことはあまりないし。

 

「…そうだね、月曜なら構わないよ」

「本当!?」

「まあたまにはいいだろう」

「「「やったー!」」」

 

行き先のプールは、そこそこ大きなところ。

ウォータースライダーに流れるプールのような定番のものまで、いろいろ揃っている。

 

時は夏休み。

まだまだ人は多いだろう。

 

つまり。

 

「水着の女の子を、心いくまで拝見させてもらおう」

「とう!」

「ぐえ」

 

曜ちゃんに脇腹を殴られた。

 

 

 

 

そんな訳で、CYaRon!一行と俺でプールにやって来た。

着替えをさっさと終わらせ、更衣室外で彼女らが出てくるのを待つ。

 

その間に、プールで遊ぶ人々を見る。

月曜とはいえ、夏休みだからだろうか。

家族連れも珍しくない。

 

だが、それ以上に。

 

「…素晴らしい」

 

目を開けているだけで視界に入る、女の子の水着姿。

そこにその存在があるだけで、人(男)を幸せにする。

 

「人類の作った偉大な価値観の一つだろう」

「ハルくん、なにブツブツ言ってるの?」

「どうせ水着の女の子見て、訳わからないこと考えてたんでしょ?」

「訳わからないこと?」

 

気づいたら、3人が着替えを終えて横まで来ていた。

 

「おかえり3人とも。3人とも、合宿の時のとはまた別の水着なんだね」

「わかるの?」

「そりゃあね」

「よく見てるね」

「君たちのことなんだ。当たり前だろう」

「…ずるい」

「なんのことだい」

 

千歌ちゃんがなぜかムスッとしている。

怒っている訳ではなさそうだが…。

 

「ねえねえハルくん!水着どう?」

「似合ってるよ。とても可愛い」

「そっかー。えへへ」

「ルビィちゃんも千歌ちゃんも、よく似合ってるよ」

「そ、そっか…えへへ」

「うゅ…///」

 

実際、彼女たちは可愛い。

ここには水着の女の子は数多くいるが、その中でもトップクラスだろう。

もちろん、贔屓目があることは否定できないが。

 

「ねえハルくん!」

「なんだい?」

 

上機嫌に、曜ちゃんが話しかけてくる。

 

「このメガネ、ちょっとかけてくれる?」

「ん?突然どうしたんだい?」

「マリーちゃんから借りたの。水泳の前にかけるといいんだって」

「意味が全くわからないんだが」

「いいからいいから、一回かけてみてよ」

「…まあいいけどさ」

 

マリーちゃんからというのが若干気になるが、とりあえずはメガネを受け取る。

なんてことはない、普通のメガネだ。

 

「それでね、ちょっと質問があるんだけど」

「質問?」

「そうそう。私たちのこと、可愛いって思ってるんだよね?」

「もちろん」

「他の子達より?」

「少なくとも今この場所では、一番だと思うよ」

「そっかそっかー。じゃあっ」

「じゃあ?」

 

 

「他の女の子見てたら、罰ゲームね」

 

 

「……はい?」

「だから、他の女の子に見とれたら罰ゲーム」

「おおー。それいい!曜ちゃん、それいいよ!」

「いや、ちょっと待ってくれ、どういうことだい」

「そういうことだよ!ハルくんが他の女の子に見とれるたびに、罰ゲームを受けてもらいます」

「言っていることがよくわからないが…それをどうやって判断するつもりだい」

 

まさか俺を監視するわけでもあるまい。

 

「ふふふ…それでそのメガネですよ」

「な、なに…!」

「それ、鞠莉ちゃんからもらったやつでね。その人の視線を追ってくれるんだよ。さらに、その視線の先に何があるかも判別してくれる」

「な!?」

 

なんですと!?

ま、まずいぞそれは。

 

とりあえずはこれを外して…

って、あれ?

 

「は、外せない!?どうなってるんだ!?」

「小原家特製なんだってさ」

「ど、う、い、う、理屈なんだあぁっ」

 

か、堅い!

ぐうおおおおお!

 

その瞬間だった。

 

『バリバリバリバリ!』

 

電流が走った。

表現じゃない。

物理的にだ。

 

「ぬぐおおおおっ」

 

い、痛い痛い!

 

ま、まさかこれは…!

 

「あっはっは!無理やり外そうとすると、そうやって電気が流れるから気をつけてねー」

「さ、先に言ってくれ」

「ちなみに、私たち以外の女の子を2秒以上見た場合も同じです」

「…呪いの装備だ…」

 

試しに、少し向こうにいた女の子を眺める。

 

1…

2…

 

『バリバリバリバリ!』

 

「ぐおおおおお!」

「言ったそばから何してるのさ」

「ハルくん、痛そうだねー」

「だ、大丈夫ですか…?」

 

ルビィちゃん以外はあまり心配してくれてない。

というかだ。

 

「こんな電源を持ったまま、プールに入って大丈夫なのかい?」

「………あ」

「おい」

 

俺はその日、プールに入れないことが確定した。

 

「はあ…まあいいさ。どこかで待っているから、遊んでくるといい」

「えーと…ごめんね。後でなんか奢るから」

「わ、私も一緒に待機しましょうか?」

「いや、君らの親交を深めるのが目的なんだからね。楽しんできてくれ」

 

まあ元々、俺は監督役をやるつもりだったし問題はない。

問題は、そこではないのだ。

 

 

 

 

「視線を…どこにやればいいんだ」

 

彼女らが遊びに行って数分。

すでに俺は、視線のやり場に困っていた。

 

水着とは、ロマンなのだ。

そりゃあ、下心がないかと言われれば、それは嘘になる。

肌の露出に対し、間違いなく色欲は出るし、それを見て興奮するのも当たり前だ。

 

しかしながら。

それらを見ることだけが、プールの楽しみではない。

それらが近くにあり、見えるというその状況自体が、プールというものの楽しみの一つなのだ。

 

え?

純粋に水遊びを楽しむ?

 

それは無理。

疲れるもん。

 

そして俺は今、その楽しみとロマンを奪われているというわけだ。

 

「はあ…」

 

自然とため息がこぼれる。

俺はこの時間、一体何を見てればいいのか。

 

若くて。

普段とは違う環境でテンションが上がっていて。

少々警戒の薄れた。

そんな、女の子たちを見れると思っていたのだが…。

 

…あれ?

よく考えたらそれって…

 

 

 

 

「ただいまー」

「も、戻りました」

「おかえり、3人とも」

「荷物番、ありがとね」

「これ、お礼のジュースだよ」

「ありがとう」

 

くれたのは炭酸のジュースだ。

見た目的にメロンソーダかな。

 

「ハルくん、結局電気ショックは何回くらい受けたの?」

 

曜ちゃんが笑いながら聞いてくる。

ふっふっふ…俺が何度も同じ攻撃をくらうと思ったのかい。

 

「君の期待にはそぐわないだろうが、1回も受けてないんだよ、これが」

「「「ええ!?」」」

「…なんで3人とも驚いているんだい」

 

大変に不本意だ。

 

「その、電気ショックの回数で賭けをしてたんだよねー」

「賭けって…あまり褒められたことじゃないね」

「賭けって言っても、その、負けた人は、『好きな人のいいとこを発表する』っていう罰ゲームを受けるっていうルールだったんですけどね」

「その罰ゲーム、つい最近聞いたんだが」

「お、お姉ちゃんが教えてくれました」

「…その罰ゲームを受けたのは、そのお姉ちゃんだったわけだが」

 

よく話す気になったものだ。

 

「それでね、ハルくんの電気ショック受けた回数を外した人が罰ゲームってルールだったの」

「なるほどね。それで、当てた人は?」

「いやー、残念ながら、0回に賭けた人はいなかったねえ」

「少し失礼じゃないかい」

「ちなみに賭けたのは…」

 

「わ、私が2回です」

 

これがルビィちゃん。

 

「私は6回に賭けたよー」

 

これが千歌ちゃん。

 

「私は10回であります!」

 

そして最後は曜ちゃんだ。

千歌ちゃんと曜ちゃんは、俺をなんだと思っているのか。

 

「じゃあ残念だが、3人とも罰ゲームだね」

「そうだねー」

「うゅ…は、恥ずかしいです///」

「1人3つっていうルールだったよね」

 

3つというのもダイヤちゃんたちと同じなのか。

そういえば。

 

「3人とも、お互いの好きな人を知っているのかい?」

「いや、知ってるも何も…」

「むしろ知らないのは本人だけというか…」

「気づいてもらえないだけというか…」

 

なんだか複雑そうな表情をする3人。

どうしたのか。

 

しかし…

 

「君たちにそこまで思ってもらえるとは、好かれている人は幸せ者だね」

「「うるさい朴念仁」」

「…なんで怒られたんだ?」

 

ルビィちゃんが横で苦笑いしている。

この状況を飲み込めているらしい。

 

罰ゲームの実行は帰り道ということになった。

 

午後も遊びつくし、帰るのは日が沈みかけの頃だった。

 

 

 

 

帰り道。

車を運転しつつ、彼女らと会話をする。

 

「ねえねえハルくん」

「どうしたんだい、曜ちゃん」

「そういえばなんで、電気ショックを回避できたの?あの状態で、よく平常心を保てたね」

「なんでって…まるで、女の子を見てないと俺が死ぬみたいじゃないか」

「だいたい合ってるでしょ?」

「……いや、そんなことないよ」

「ハルくんは嘘つけないでしょ」

 

やれやれといった感じの曜ちゃん。

 

「まあ、そうだね。実は女の子自体は見てたんだよ」

「え?どういうこと?」

「じゃあ電気ショック受けてたの?」

「いや、それは違う」

「じゃ、じゃあなんで…」

「簡単な話だろう」

 

若い。

普段とは違う環境でテンションが上がっている。

少々警戒の薄れている。

 

そんな可愛い女の子。

よくよく考えれば、探す必要など微塵もない。

 

 

「君たちが、あの場所で一番可愛かった。だったら、視線なんて別にあちこち動かす必要はなかったわけだ」

 

 

「…え?」

「ちょ、そ、それって…」

「は、ハルさん…ずっと…!」

「ああ、君たちだけ見続けていた」

 

…あれ?

このセリフ、結構まずくね?

 

これではまるで…

 

「は、は、ハルくんの…へんたーい!///」

「ぐえ!ちょ、運転中、運転中だから!確かに否定はできないと思ったけど!2人も、助けてくれ!」

「は、ハルくんが、ず、ずっと…っ///」

「あわわわわわ///」

「ちょっと?」

 

2人とも心ここにあらずといった感じだ。

 

俺は千歌ちゃんに首を絞められ続けている。

いくら周りに他の車がいないとはいえ、危ないことに変わりはない。

 

「わ、悪かったから!ま、まさかそんなに怒るとはっ」

「そりゃ怒るよ!」

 

なんとか手を離してくれた千歌ちゃん。

 

「いや、その…確かに、悪いことをしたね。ジロジロ見続けたのは確かに不躾だったよ」

「…反省してるの?」

「ああ、ごめんよ」

「…別に、見るなとは言ってないけど…あんまり見られたら恥ずかしいじゃん…」

「そうだね。悪いことをしたよ。次は気をつける」

「…どうやって?どう気をつけるの?」

 

千歌ちゃんがジト目で聞いてくる。

これはいけない。

なんとか、反省の意を伝えなくては。

 

「そうだね…プールでは君たち以外を見ることにするよ」

「「「それはダメ!!」」」

「…どうしろと?」

 

3人の様子は良くは見えないが、なんかもじもじしている空気が漂っている。

 

「さ、先に言ってくれれば、私はずっと見られても大丈夫だから。と、というか、ず、ずっと見ててくれても良いんだよ?///」

「わ、私もだよ、ハルくん!み、見たいって言うならその…い、いつでも…///」

「る、ルビィも大丈夫です!が、がんばルビィ!///」

 

全然今の状況が読めない。

彼女たちは俺にどうして欲しいんだ?

 

考える。

 

プール。

視線。

先に言ってあれば、ずっと見ていても良い。

他の人を見てはダメ。

 

ここから導き出される結論。

 

それは…

 

「ナンパ防止?」

「「は?」」

「え?」

「あれ?違うのかい?」

 

ナンパされないように見張るくらいなら許可してやるよという事ではないのか?

 

「「「…はあああ〜」」」

 

ものスゴイ大きなため息をつかれた。

あれ?

 

「ハルくん…」

「ほんと…」

「さすがのルビィも、ふんばルビィできなさそうです…」

 

ミラーすら見ていないのに、彼女らが肩を落としているのが分かる。

おかしいな。

 

その後。

 

3人の罰ゲーム。

 

好きな人の良いとこ3つ発表だったはずが。

 

なぜか、空気が読めないとか鈍感だとか、マイナスなところばかり挙げていた。

 

その人の欠点まで好きという事なのだろうか。

 

そうやって聞いたら、見た事もないくらい冷たい目をされた。

 

一体、俺が何を間違えたんだ?

 

 




ご視聴ありがとうございました。
CYaRon!はスクールアイドルっぽくて好きです。
それでは何かありましたらお願いします。

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