Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
黒澤姉妹とのお話です。



宝石姉妹と布屋さん

『ピンポーン』

 

大きな門についているインターホンを押す。

いつ来ても、門の大きさには圧倒される。

 

「は、はーい!」

 

向こうから家の住人がやってきた。

 

「こ、こんにちは、ハルさん」

「こんにちは、ルビィちゃん」

「今日はえっと…すいません、呼び出しちゃって…」

「いや、構わないよ。ここの方が広いしね」

 

今日ここに来たのは、1日家庭教師のためである。

休み明けのテスト対策で、ルビィちゃんから勉強を教えて欲しいと頼まれたのである。

 

見慣れた廊下を通って、とある一室に案内される。

部屋の真ん中に大きな机があり、すでにノートと教科書が開かれていた。

 

「お茶を持ってくるので、少し待っててもらえますか?」

「ああ、お構いなく」

 

トタトタと駆けていくルビィちゃん。

こけないか心配になる。

 

待っている間に、教科書を拝見する。

ついでに、勉強用のものならいいだろうと思い、ノートも見せてもらう。

 

「ふむ…」

 

丁寧に書き込まれた文字達。

大事なところもペンでしっかりマークされている。

 

しかし。

 

「こんなにきっちりやっていては、効率が悪いな…」

 

明らかにテストには出ないであろう場所まで、マーカーが引かれている。

ノートも、提出するわけでもないのに相当丁寧にまとめれている。

 

このやり方では、どうあっても時間が足りない。

 

一つ一つを丁寧に処理しようとするのはいい事だが、効率よくやるのも重要な事だ。

そういう意味では、ルビィちゃんはダイヤちゃんに比べて勉強が不得意だ。

 

一言で言ってしまえば、要領が悪いのだ。

 

そんな風に考えていたら、ルビィちゃんがお茶を持ってやってきた。

 

「すいません。お待たせしました」

「いやいや、気にしないでくれ」

「あ、それ…」

「ああ、勉強ノートを見させてもらってたんだ。もしかしてまずかったかい?」

「い、いえ、大丈夫です。その…どう思いますか?」

「んー…そうだね」

 

さっき思った事を伝える。

効率が悪いやり方をしている事。

ポイントの押さえ方が若干悪い事。

 

「うー…やっぱり、そうなんですね…」

「とはいえ、努力自体は十分に評価できるくらいしてるんだ。やり方さえしっかりすれば、十分結果は出るだろう」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。そのために来てるんだからね」

「お、お願いしますっ」

「あいよ」

 

勉強を始める。

 

思った通り、ルビィちゃんのやり方は不器用な勉強法だ。

教科書の端から端まで、無理にでも覚えようとしている。

 

結果、大事なとこがふわふわした状態で覚えてしまっているわけだ。

染み付いたやり方はすぐには変わらないが、なんとか記憶の強弱を身につけてもらう。

 

ちなみに、俺が勉強を教えられるのはあくまで基本レベルである。

教科書の解説を分かりやすくする程度。

 

赤本の解説?

それは無理。能力が圧倒的に足りません。

 

 

 

 

「ふう…ひとまず数学はこんなものかな」

「ありがとうございます。ハルさん、教えるの上手ですね」

「いや、そうでもないさ」

 

もともとやる気はあるので、こちらとしては教えがいがあるのだ。

 

そんな会話をしている時だった。

 

「ルビィー。そろそろお昼にしますわよー…って、ハルさん?」

「やあこんにちは、ダイヤちゃん」

「ああ、こんにちはハルさん。いらしてたんですのね」

「ルビィちゃんと勉強をしてたんだ」

「あらそうでしたの。ご苦労様ですわ」

「いや、頑張ったのはルビィちゃんだからね」

「午後も勉強ですの?」

「ルビィちゃん次第だよ」

「は、ハルさんが良ければ、午後も…」

「ということなので、午後も勉強会だね」

「ふむ…」

 

ダイヤちゃんが何やら考え始めた。

かと思えば、すぐに言葉を続けた。

 

「午後は、私も参加してよろしくて?」

「ダイヤちゃんも?」

「うゅっ」

 

俺はもちろん構わないが…

ルビィちゃんはどうだろうか。

 

「わ、私は良いですけど」

 

まあそりゃそうか。

 

「もちろん俺も賛成だよ。ただ…」

「ただ?」

「俺が君に教えられる事は何もないよ?」

「ふふ。それは構いませんわ。勉強は自分で進めますから」

「そうかい。それならそれで構わないが、かえって集中しにくくないのかい?」

「それくらいで途切れるほど、やわな集中力ではありませんわ」

「それもそうか」

「それに…」

「それに?」

 

俺とルビィちゃんを見て、ダイヤちゃんは続ける。

 

「一人でやるより、好きな人の側で勉強する方が、私は燃えるタイプですの」

「うゅ!?」

「ほう。それはいい」

「え?あれ?」

 

この場合の好きな人というのは、ルビィちゃんの事だろう。

素晴らしい姉妹愛だ。

 

「ルビィ、この朴念仁には絶対に私の想いは伝わってないですわ。だから心配はいりません」

「あ、そ、そうなんだ」

 

なにやらよく分からない会話を繰り広げているようだが、気にしない事にする。

 

「それより、先にお昼にしましょう。用意してありますわ」

「あれ?俺もいいのかい?」

「ハルさんがいたのは想定外でしたけど、まあ、あまりはいくらでもありますから」

「ありがたいよ」

 

そんなわけで、一緒に食事をいただいた。

今日はお母さんが作ってくれたらしい。

とても美味しかった。

 

 

 

 

午後。

お昼をいただいてから勉強を再開し、さらに数時間。

 

ダイヤちゃんもルビィちゃんも、ぶっ続けで勉強をやっている。

すごい集中力だ。

 

だが、さすがに午前からの勉強で疲れたのだろう。

ルビィちゃんの瞼が重そうである。

 

「ルビィちゃん、眠たいかい?」

「うゅっ!だ、大丈夫です」

「眠い時に無理やりやっても集中できないだろう。昼寝でもするといい」

「え、で、でも…」

「1時間したら起こしてあげるからね」

「えと…」

「私も、いいと思いますわよ」

「お、お姉ちゃん…」

 

少し考えたが、一眠りする事にしたようだ。

 

「じゃ、じゃあ少しだけ…」

「ん。掛けるものがあるといいんだが」

「み、短い時間ですから」

「いやいや、体を冷やすのは良くないよ」

「持ってきますわ。ちょっと待っててください」

「頼むよ」

「あ、ご、ごめんね、お姉ちゃん」

「ふふ。構いませんわ」

 

そうやって部屋を出て行くダイヤちゃん。

すぐにタオルケットを持ってきてくれた。

 

それを被って寝転がるルビィちゃん。

だが、どうにも落ち着きがない。

 

「どうしたんだい?」

「…えと、ハルさんにお願い事、してもいいですか…?」

「お願い?」

 

なんだろうか。

まあ余程の事でもない限りは断るつもりもないが。

 

「そ、その…」

「ふむ」

 

大分言いあぐねている。

はて。

 

「ひ…」

「ひ?」

「ひ、膝枕、してもらってもいいですか!」

「膝枕?」

「は、はい!」

「あら」

「もちろん構わないよ。どうぞ」

 

そう言って、自分の膝を叩く。

恐る恐るといった感じに、ルビィちゃんが頭を乗せる。

 

そういえば髪を解いていないが、痛くはないのだろうか。

 

「し、失礼します」

「高さ、大丈夫かい?」

「は、はい…」

 

 

 

 

最初は緊張していたようだが、数分してから寝息が聞こえてきた。

可愛らしい寝顔である。

 

「疲れていたのかな」

「練習も毎日ありますからね」

「あのメニューをこなしているんだ。感心するよ」

「ハルさんも参加します?大丈夫、手を引っ張ってあげますわ」

「足を引っ張るのはごめんだよ」

「それは残念ですわ」

 

笑っているダイヤちゃん。

そのまま、視線をルビィちゃんの方にやる。

 

「この子も、頑張っていますわ」

「ああ、そうだね」

 

ルビィちゃんの頭を撫でる。

触り心地のいい髪だ。

 

「ルビィ、気持ち良さそうですわね」

「そうなのかい」

「ええ。とても」

「ダイヤちゃんも、お昼寝するかい?」

「そう…ですわね。そうさせてもらいますわ」

 

すぐに2枚目のタオルケットを持ってきたダイヤちゃん。

 

「ダイヤちゃんはどこで寝るんだい?」

「ふふ。もう決めていますわ」

 

そう言うと、ルビィちゃんとは反対側にやってきた。

そのまま、体重を預けてきた。

 

「右側、お借りしますわね」

「構わないよ」

「重いですか?」

「まさか。もっと体重をかけてもいいくらいだよ」

「ふふふ。それは良かったですわ」

 

左側に、膝枕で寝ているルビィちゃん。

右側に、体重を預けてくるダイヤちゃん。

 

「両手に花…いや、両手に宝石だね」

「うまいこと言ったつもりですの?」

「どうだろうね」

 

さらに数分して、右側からも寝息が聞こえてきた。

 

ルビィちゃんだけじゃない。

ダイヤちゃんだって、がんばっているのだ。

 

これで、少しでも気が休まるといいな。

 

2人の寝顔を見て。

 

そんなことを、思った。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。
大変起承転結に欠けていましたが、ご了承ください。
アニメの2期でも来ない限りは、このテンポが続くと思われます。

それでは何かありましたらお願いします。

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