今回からは日常です。
時間軸はわりと適当になりますので、サザエさん時空だと思ってください。
3年生と布屋さん(上)
「ここがラウン○ワンかい」
「そう!今日は思いっきり遊ぶわよ!」
「うん!」
「ええ!」
「…お手柔らかに頼むよ」
※
東京から帰って来た後。
別れ際の駅でマリーちゃんにこんなことを言われた。
「ハル、1年生のみんなとお祭りに行ったというのは本当?」
特に否定する理由もなかったので、肯定する。
「そうだね。楽しませてもらったよ」
「美味しかったずら〜」
「た、楽しかったですね」
「わ、私は別に、行きたいなんて行ってなかったけどね」
「でも、ハルさん来るって聞いて一番喜んでたのは善子ちゃんだったずら」
「ちっがああああう!」
「あんまり外で叫ばないように」
「ぬぐっ」
何か言いたげではあったが、善子ちゃんは一応口を閉じた。
「それで、その祭りがどうしたんだい」
「聞いた話によれば、ハル、2年生の子たちともデートしているんでしょ?」
「デート?…遊園地のことかい」
「あー。楽しかったね、あれ」
「うん!」
「そうね」
と、そのあたりで、マリーちゃんに胸ぐらを掴まれた。
そのまま前後に揺さぶられる。
「私たち3年生だけ何も無いなんて不公平よー!」
「確かにそうですわね」
「そうだねー」
「ふ、二人とも、先にマリーちゃんを止めてくれ」
あ、頭がグワングワン揺れる。
酔う、酔うから。
「私たちもどっかに連れてってくれるなら、助けてあげる」
「わ、わかったから。助けてくれ」
「おお、ナイスですわ果南さん」
ようやく解放される。
「やっぱり、3年生が一番強引よね」
「あれくらいの方が、ハルさんは振り向いてくれるずら?」
「あ、あれは私にはできなさそう…」
「私もあれくらいしないと、ハルくん気づいてくれないのかなあ?」
「でもハルくん、あれでも気づいてなさそうだよ?」
「鈍感は筋金入りね…」
1年も2年も、なぜか呆れたようにため息をついている。
なんなんだい。
※
そんなわけでラウン○ワンに来たわけだが、目的はスポ○チャである。
ハーフコートのバスケ、バレーボールやテニスのコートに加えて、バッティング、ピッチングに至るまでを要する、スポーツのレジャー施設である。
「チームを2つに分けて勝負しよう!」
「ああ…まあそうなる気はしてたよ」
一応それに備えて、服は動きやすいものにしてきたし、靴も運動靴だ。
しかし、俺はスポーツが得意ではない。
逆にこの3人は運動神経が結構良い。
果南ちゃんに至ってはAqoursでも一番だ。
チームを組むなら、俺と組む方が不利だろう。
そう思っていたのだが。
「じゃあハルは私とだね」
「え?」
「ノー。ハルの面倒は私が見るわー」
「ん?」
「いえいえ。ハルさんではお二人の足を引っ張ってしまいますわ」
「お?」
…あれ?
「あの、3人とも。俺と組んだら、勝率はぐんと下がるよ?それを分かっているかい?」
「「「もちろん」」」
「…俺は今、すこしだけ傷ついたよ」
だったらなんで俺と組もうというのか。
(ハルと組んでカッコイイとこ見せるのは私だよ)
(得点取るたびに喜んだフリして抱きつくのヨ)
(活躍できずにへこんだハルさんを、励ますのですわ)
「何を考えているかわからないけど、君たち、目つきが怖いよ」
俺としては、誰と組んだところで足を引っ張ることになるだろうから、そこまでチームわけにはこだわっていないのだが。
「じゃんけんでいいんじゃないかい?こんな事で揉めても仕方ないだろう」
「ノーノー。せっかく勝負できるものが沢山あるんだから」
「チーム分けの方法も勝負で決めよう」
「ですが、3人とも得意なものが違いますわ」
「じゃあ、何の種目で決めるかを決めるための勝負を…」
「キリがない!」
結局、じゃんけんで決める事になった。
結果。
「ふっふっふ…私の勝利ですわ!」
「いや、まだ勝負すらしてないんだが」
ダイヤちゃんがじゃんけんに勝った。
チョキを高々と掲げている。
「ようやくチームが決まったね。最初は何から行くんだい?」
「ウェイト!先にルールの確認よ」
「ルール?」
ルールも何も、2対2でやれる競技を適当にやるだけじゃないのか。
「まずは、これは真剣勝負である事を忘れないように」
「もちろんそのつもりですわ」
「そして、真剣勝負において」
「うん」
「敗者が勝者の命令を聞くのは、当然の事」
真面目な顔で言う果南ちゃん。
マリーちゃんは横で頷いている。
「初めて聞くルールなんだが」
「望むところですわ!」
「ダイヤちゃん?」
いやいや。
勝てない。勝てないから。
「種目は全部で6つやるよ」
「各チームで3つずつ選ぶんですのね」
「イエス!ただし、一度やったのはノーよ」
「了解したよ」
できる限り、俺たちが有利になるものを選ぼう。
最初の選択権は果南ちゃんたちになった。
最初は何でくるのか。
「よし、最初はあれしかないね」
「バスケットボール!」
いきなりスタミナを使うものだ。
運動不足の自分には、正直きつい。
2on2のバスケ。
攻守を順に交代して行う、シンプルな勝負だ。
それぞれ攻撃が5回になるように勝負し、その中での総得点を競う。
勝利回数ではなく、総得点というところがポイントだ。
仮に、1回1回の勝負では負け越しても、勝った際に3ポイントで勝てていれば、総得点では逆転のチャンスがあるという事である。
相手の得点をできる限り抑え、まぐれでも3ポイントで稼ぐ。
勝つにはこれしかない。
「よーし、行くよー」
「ダイヤちゃん、マリーちゃんは任せたよ」
「了解ですわ!」
さあ、出だしが肝心だ。
ここで抑えて…
「よっ」
スタート直後。
ハーフライン。
果南ちゃんは、そこからボールを投擲。
綺麗なワンハンドシュート。
放られたボールは美しい弧を描き。
『パッ』
リングのど真ん中を通過した。
「…え」
え。
いや。
嘘でしょ?
「ちょっとハルさん!ちゃんとマークしてください!」
「いや、ちょっと待って。あれは想定できない」
「果南さんのシュートレンジは、コート全てですわ」
「怖すぎだろ!」
どっかの漫画で聞いたよ、そのセリフ。
「ふふふ。次はハルたちの番だね。はい、どうぞ」
ボールを受け取る。
俺はハーフラインからシュートなどできないので、おとなしくダイヤちゃんにパスを回そうと考える。
ワンドリブルをついて、パスコースを探そうとした次の瞬間。
手に帰ってくるはずだったボールが無い。
「ハル。ちゃんと相手も見ておかないとだめだよ。こんなにあっさり取られちゃって」
「…いつとったの?」
「ん?そりゃあ今だよ」
「ちょっとハルさん、何してますの?」
「…ごめんダイヤちゃん、マークする相手変わってくれる?」
「はあ…仕方ありませんわね」
結局、勝つことはできなかった。
しかし、驚いたのは果南ちゃんにダイヤちゃんが対抗していたことだった。
そういえば、海の家の屋根から飛び降りて平気だったりと、この子空中戦得意だったな。
そんなことを思った。
ちなみにマリーちゃんも人並み以上には上手かった。
「ハル、運動不足過ぎるんじゃ無い?」
「そうねー」
「そうですわねえ」
…運動不足は認めるが。
幾ら何でも、レベルが違いすぎる。
まだ一戦目。
あと五戦。
…体、もつかな。
ご視聴ありがとうございました。
筆者はスリーポイント届かせるのが精一杯です。
それでは何かありましたらお願いします