Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

32 / 95
はじめましてこんにちは。
案の定1日空いてしまいました。
アニメ12話の前半になります。


結果発表と布屋さん

ラブライブ予備予選の結果発表。

それが、今日行われる。

 

発表自体は、スマホからも閲覧することができ、俺と梨子ちゃんも一緒に結果開示の瞬間を持っている。

大手の喫茶店で、紅茶を片手に優雅に待機である。

 

昨日千歌ちゃんと電話で話した限りだと、とても緊張しているようだった。

むしろライブ前より緊張しているようにも見えた。

 

逆に、梨子ちゃんは案外落ち着いている。

 

「梨子ちゃん、あまり緊張してなさそうだね」

「さすがにそんなことないけど…」

「けど?」

「みんななら、大丈夫。そう信じてるから」

「…そうかい。それはいいね」

「逆にハルさんはだいぶ緊張しているのね」

「お?なんでそう思うんだい?」

「いや、何でって…」

 

そう言って梨子ちゃんが、俺のティーカップを指差す。

 

「それ、何いれてるの?」

「甘いのが飲みたくてね。砂糖だよ」

「それ塩よ」

「似たようなものさ」

「さすがに動揺しすぎでしょ」

 

そんなことはない。

あれ?

この紅茶何かしょっぱいな。

 

「ハルさん、Aqoursの事になると本当に落ち着かなくなるのね」

「誰かにそう聞いたのかい」

「ダイヤさんたち…3年生のみんなが言ってたわ」

「確かにあの子たちなら言いそうだ」

 

そんな話をしていた時だった。

スマホに映されていた画面が切り替わる。

 

はっきりと浮かび上がる文字。

 

『予選通過者発表はこちら』

 

意を決して、ボタンを押す。

 

「Aqoursの…『あ』は!?」

 

一番上に表示されてる文字。

 

『イーズーエクスプレス』

 

血の気が引いた。

スマホを落としそうになる。

 

「そんな…」

「ハルさん、一応言っておくけどそれ、エントリー順だから名前は関係ないわよ」

「…知ってたさ」

「本当に嘘がつけないのね」

 

気をとりなおして、『Aqours』の文字を探す。

そして。

 

「…あった」

 

上から4つ目。

そこにはっきりと表示される。

 

『Aqours』

 

その名前。

 

「はあああ〜。よかった…」

「ふふ。やっと気が休めるわね」

「隠してたけど、相当緊張してたんだよ」

「まだ隠してたつもりなの!?」

 

とりあえず、おめでとうと連絡をしよう。

そう思ったが。

 

「…俺より先に、言葉を送るべき子がいたね」

「ハルさん?」

「電話、してあげてくれ。あの子たちに」

「そうね」

 

電話をかける梨子ちゃん。

すぐに繋がったらしい。

 

向こうの様子は当然見えないけど、雰囲気は良さそうだ。

次は、9人で。

 

そうやって梨子ちゃんが言ったのを、はっきりと聞き取った。

行ける事、信じてるよ。

 

そんな事を考えて、紅茶に手をつける。

 

「しょっぱ!何だい、この紅茶は…」

 

誰ですか、俺の紅茶に塩入れたのは。

器用ないたずらするなあ。

 

 

 

 

「入学説明会希望者?」

『うん…また0人だったの…』

「そうかい」

 

今回の予選突破を機に、Aqoursはかなり有名なスクールアイドルとなった。

街じゃかなりの知名度となっただろうし、動画の再生数も、これまでとは桁違いに増加している。

 

でも、入学希望者がそれで増えるかと言われたら、また別の話。

こういうのも、そんなに珍しい話ではない。

 

『なんで増えないのかなぁ』

「例えば、だ。あるところに、野球が大好きな中学生がいたとする。実力は中の中だ」

『うん』

「その子の街の高校が、あるとき少人数ながら甲子園でベスト4に入ったとしよう」

『うん』

「高校は少人数のままで、入部すればすぐにでもレギュラーをつかめるかもしれない。その子は野球が大好きだが…少年はその高校に入学すると思うかい?」

『…わかんない』

「少年は思うのさ。『あの人たちは特別だった。俺にはできない。足を引っ張るのはごめんだ』ってね」

『…それは…うん』

 

かつて、千歌ちゃんもそういう考えを持ってた事はあるんだ。

否定はできないだろう。

 

『でも』

「うん」

『環境とか、今の状況とか、言い訳にしたらダメだと思うの!』

「…うむ」

『それが分かった上で、スクールアイドルやってるんだもん!』

「そうかい」

 

悪くない考えだ。

停滞的な考えをするより、がむしゃらにでも前を見るその姿勢は、千歌ちゃんらしくていい。

 

「それで、何かやりたい事でも考えてるのかい?」

『うん…あのね、μ'sは、この時期にはもう廃校は阻止してたんだって』

「ああ、そうなのかい」

 

さすがだ。

そもそも、生徒の形成する一グループが、学校の存続に影響を与える事自体がすごいというのに。

 

『でね、もう一度、東京に行こうと思ってるの』

「ほう」

『μ'sと私たち、どこが違うのか。どうしてμ'sは、音乃木坂を救えたのか。何がすごかったのか。この目で見ておきたいんだ』

「いいんじゃないかい」

『うん。みんなも、賛成してくれたんだ』

「そうかい。じゃあ頑張ってくれ」

『あれ?ハルくんは一緒に来ないの?』

「俺は明日には帰る予定なんだ。君たちが来るのは明後日なんだろう?」

『えー!梨子ちゃんは滞在期間1日延ばしてくれるって言ってたよ!』

「東京でもう一泊となると、かかる費用も馬鹿にならないんだよ」

『そこをなんとか!』

「無い袖は振れないんだ」

『けちー!』

「悪いね。それじゃ」

 

電話を切る。

新幹線も電車も、乗車券自体はまだ買っていない。

 

つまり、急ぐ必要はない。

だが、宿泊費が持たない。

 

そもそも、ホテルも取れるか分からないしね。

 

と、思っていたのだが。

 

 

 

 

「…は?電車が止まった?」

「はい。申し訳ありませんが、人身事故が発生していまして」

「…それ、解除されるのにどれくらいかかるんですか?」

「まだなんとも言えませんが、今日中は厳しいかと…」

「…なんてこった」

 

千歌ちゃんと電話した翌日の事だった。

人の多い時間は避けたかったので、夕方に出て遅い時間に沼津に着くようにしようと思っていた。

 

そしたらこの事態である。

人身事故によって電車が動かない。

 

「さすがにこれは予想してなかった」

 

いきなり交通手段を断たれてしまった。

車は無い。

タクシーなど問題外。

バスは昨日の段階で予約が埋まっていた。

 

「カラオケかネットカフェかなあ…」

 

とりあえずは一晩明かして、早朝に帰ろう。

そう決めた時だった。

 

『ブルルルルルル』

 

携帯のバイブ音。

電話だ。

梨子ちゃんからだ。

 

「はいもしもし」

『あ、ハルさん?』

「ああ、そうだよ。どうしたんだい」

『いや、電車止まったって聞いてたから。大丈夫かなって』

「そのことかい。まあちょうど足止めを食らったよ」

『え?それって大丈夫じゃないじゃない』

「まあ1日くらいは大丈夫さ」

『どうするの?』

「まあこの辺だとカラオケかな」

『なっ体壊すわよ?』

「夏だし、1日くらい大丈夫さ」

『他に泊まれる場所ないの?』

「お金の問題もあるんだ」

 

そこまで言ってから、梨子ちゃんが少し黙ってしまった。

少ししてから、また声が聞こえた。

 

『…ねえ』

「ん?」

『宿泊分のお金が浮いたら』

「うん?」

『その分、明日私たちと行動できない?』

「…仮にそんな手段があればね」

『じゃ、じゃあ…うち、こない?』

「…へ?」

 

人生初の女の子宅でのお泊まり。

それはまさかの、女子高生宅でした。

 

寝た部屋?

キッチンで寝たよ。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。
アニメの13話については、本作品では扱わない予定です。
なので、次の話で、アニメ関係はラストとなります。
以降は、適当な日常の話でもしたいなと思っております。

それでは、なにかありましたらお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。