Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
今回はアニメ関係ありません。


東京デートと布屋さん

東京-沼津間。

新幹線を使うと4500から5000円程度。

要する時間は約一時間半。

 

「往復で1万円近くかかるけど…大丈夫だったの?」

「さすがに、君たちの晴れ舞台でケチケチしてられないよ」

 

梨子ちゃんと、そんな話をする。

今いるのは、東京。

梨子ちゃんが案内してくれたカフェで紅茶を飲んでいる。

 

「そう言ってくれるのはありがたいけど…無理してない?」

「ここで君の演奏を見なかったら、それこそ後悔でやってられなかっただろうからね」

「…もう。簡単に言うのね」

「事実だからね」

 

今日は、8月21日。

千歌ちゃんたちのラブライブ予備予選と、梨子ちゃんのピアノコンクールがあった翌日だ。

 

 

 

 

Aqours全員の晴れ舞台を見届けるつもりだった。

梨子ちゃんだってAqoursの一人なのだ。

場所がみんなとちょっと違うだけで、見ないなどありえない。

 

でも、物理的な距離が邪魔をする。

どうしようもない、この移動距離。

 

神様なんて、普段はお腹が痛くなった時しか頼らないが、今回は頼み込んだ。

淡島神社で、心を込めてお参りした。

 

そんな時。

運は俺に味方した。

 

千歌ちゃんたちの発表順位は、くじの結果先頭になった。

梨子ちゃんの発表はかなり後ろの順番だった。

 

淡島神社で、土下座してお参りした甲斐があったのだ。

 

そんなわけで、千歌ちゃんの発表を見てすぐに東京へ発った。

ぎりぎりではあったが、梨子ちゃんの発表は見ることができた。

 

ライブも、ピアノも、見に来て良かったと心底思える出来だった。

 

表彰式も終わり、余韻を味わうように、会場のロビーで休んでいた時。

後ろから、声を掛けられた。

 

「ハルさん、本当に来たのね」

「お疲れ様、梨子ちゃん。ちゃんと行くって言ってあったろう。約束は守るのが、大人のマナーなんだ」

「子供でも守るわよ?」

「それはそうだね。これは失言だった」

「ふふふ。千歌ちゃんたち、どうだった?」

「完璧だったよ。千歌ちゃんと曜ちゃんの連携も、文句無しだったさ」

「そう。よかった」

「君の演奏も、とてもよかった。来てよかったよ」

「そ、そう///」

 

自分が褒められるのは慣れてないのだろうか。

照れているように見える。

 

でも、このレベルの演奏なら褒められるのは慣れているだろうに。

 

「わ、私も、ハルさんに聞いてもらえて…」

「ん?すまないが音量を上げてくれるかな」

「なんでもないですっ」

「そ、そうかい」

「ね、ねえ」

「ん?」

「私の演奏、よかったのよね?」

「ああ。感動したよ。賞も取ってたんだし、客観的に見ても魅力的な演奏だったんだろうさ」

「だ、だからそのね…」

「?」

 

なんか梨子ちゃんに落ち着きがない。

どうしたんだろうか。

 

「な、撫でて欲しいな…って///」

「ああ、そんなことかい」

 

椅子から腰を上げ、梨子ちゃんの前に立つ。

綺麗な梨子ちゃんの髪を傷つけないよう、優しく撫でる。

 

「…こうされるの、好きなの///」

「いいじゃないか」

「ハルさんは、嫌じゃない?」

「まさか。役得だよ」

「ふふ。そっか」

「して欲しい時はいつでも言うといい」

「…うん。ありがとう」

 

そんな話をしていた時だった。

少し向こうから、梨子ちゃんによく似た女性がやって来た。

 

「梨子ー。そろそろ…ってあら。お邪魔だったかしら」

「え、お、お母さん!?ち、違うの、これは!」

「あ、梨子ちゃんのお母さんでしたか。初めまして。自分、アワイと申します。梨子さんには普段からお世話になっております」

「あ、じゃああなたが『ハルさん』なのね。こちらこそ、娘がお世話になってます。お話は、梨子からよく聞いてますよ」

「そうですか。どんなお話か気になりますね」

「今日はどういう話をしたーとかですね。いつも、優しい優しいって…」

「ストップ!ストップ!」

 

梨子ちゃんが割り込んできた。

どうやらセクハラ発言に関しては伝わってないらしい。

安心である。

 

「お、お母さん、今日はいいでしょ!それよりほら、晩御飯食べに行くんでしょ!」

「あらあら。あ、ハルさんもどうですか?色々、聞きたいこともあるんですよ」

「ご一緒していいんですか?」

「ええ、梨子も喜ぶでしょうし」

「お母さん!」

 

結局、ご一緒させてもらった。

普段お世話になってるからと言われて、きっちり奢ってもらってしまった。

 

ありがたいが、大変申し訳ない。

 

「すみません、出してもらっちゃって」

「いえいえ。あ、ハルさん、明日何かご用事でもありますか?」

「明日ですか?いえ、特にやる事も無かったので、適当に観光でもしようかと思ってましたから」

「じゃあ、この子も一緒にどうですか?」

「ええ!?」

「梨子ちゃんも一緒に…ですか?」

「ええ。そこそこ住んでいますし、道案内くらいはできると思いますよ」

「ありがたいですけど、梨子ちゃんに悪い…」

「大丈夫です!」

「そ、そうなのかい」

「じゃあ決まりですね。ハルさん、明日のデート、お願いしますね」

「あっはっは。リードされるのは俺ですけどね」

「あら、そうでしたね」

「ふ、二人で私をからかって…!バカー!!」

「ぐえ!」

 

俺の腹に一発ぶち込んで、梨子ちゃんは走って行ってしまった。

痛い。

 

「あら〜。じゃあハルさん、明日はお願いしますね」

 

 

 

 

そんな理由で、今は梨子ちゃんとデートしている訳である。

 

「この後どうしようか」

「ハルさん、どっか行きたいとこある?」

「行きたいとこ…そうだね。あ、電気街かな」

「電気街?…秋葉原のこと?」

「ああ、そうだね」

「何か見たいものがあるの?」

「いや、単純に電化製品を…」

「前から思ってたけど、ハルさん、電化製品見るの好きなの?」

「機械いじりとか、男はみんな好きなんだよ」

「そうなの?」

「そうなんだ」

「じゃあ行きましょうか。他に見たいものとかあったら言ってね」

「こちらとしては、梨子ちゃんに先導を任せたいのだがね」

「住んでいると、案外観光の場所っていうのは分からないものなのよ」

「ああ、なんかわかるよ」

 

秋葉原に着く。

そっから先は、割と普通のデートだった。

 

適当に電化製品を見て、その価格を見て二人で苦笑いをした。

羽のない扇風機も売っていた。

 

服の店では、せっかくなので試着をしてもらった。

元が可愛いので、どんな服も合うなーとか思っていた。

 

ゲームセンターにも行った。

二人で1000円ほどかけて、ぬいぐるみをとった。

ダンスゲームで勝負したら、トリプルスコアの差をつけられて大敗した。

そりゃ勝てんよ。

 

気付けば日は沈み、星も見え始める時刻になっていた。

 

「晩御飯、どうだったかな」

「すごくおいしかったわ。ハルさん、あんな場所よく知ってたわね」

「修学旅行で来た時に行ったことがあったんだ。まだあってよかったよ」

「へー…そういうの、覚えてられるものなのね」

「なぜか忘れてなかったんだよね」

 

今いるのは、東京タワー最上階。

ここだけは、必ず行っておきたかったのだ。

 

「スカイツリーじゃなくて、東京タワーなのね」

「修学旅行の時に来たことがあってね。ここからの夜景を見てみたいと、ずっと思ってたんだ」

「そうなんだ」

「悪いね、付き合わせて」

「…私が、一緒に来たいから来てるのよ」

「そうかい。ありがたいね」

 

梨子ちゃんも東京タワーに来たかったらしい。

偶然行きたいところが同じでよかった。

 

「多分、私の気持ちは伝わってないんだろうなあ…」

「?」

 

違うのか?

 

仕方ない。

何か別の話題でもするとしよう。

 

「昨日も言ったけど、君の演奏、素晴らしかったよ」

「急にどうしたの?」

「なんとなく、ちゃんと伝えたくてね」

「ふふ。ありがと」

「緊張はしなかったのかい?」

「しなかった、なんてことはもちろんないわ」

 

でも、と言って、梨子ちゃんは続ける。

 

「みんなと、一緒にやってるんだって思ったら、緊張より楽しさの方がずっと大きかったの」

「そうかい」

 

スランプになっていたと、梨子ちゃんは言っていた。

大好きだったピアノが、弾けなくなってしまったと。

 

とても辛かったはずだ。

苦しかったはずだ。

 

でも、彼女はそれを乗り越えた。

ピアノを、楽しく弾けたと言った。

 

「よかった、本当に」

 

思わず、口をつくそんな言葉。

 

「人のこと、そこまで心配してたの?」

「当たり前だろう」

「ハルさんにとっては、人の心配は当たり前なのね」

「友人を心配するのに、理由も条件もいらないだろうさ」

「そう…そうね。千歌ちゃんも、いえ。Aqoursのみんなも、お互いを大事にしてるものね」

「君だって、その一人だ」

「ええ。そうね」

「それに、だ」

「ん?」

「俺は、女の子には優しいんだ。心配するのも、大事にするのも当たり前だね」

「ふふ。ハルさん、やっぱり千歌ちゃん以上に変な人ね」

「どういうわけか、よく言われるよ」

「でも、そんなハルさんだから…」

 

腕を、組まれた。

暗いから怖いんだろうか。

それとも、人肌が恋しくなったのか。

なんにせよ、振り払うつもりもない。

 

「好きに、なったのよ」

 

囁くように、何かを呟いた梨子ちゃん。

周りの音もあって、あまりよく聞き取れなかったけど。

 

悪い気分では、なかった。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。
アニメ全く関係ない梨子ちゃんのお話でした。
といういかイチャイチャするだけでした。

次回から、また本編に合流します。
それでは何かありましたらお願いします。

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