3話目の投稿になります。
ルビィちゃんと花丸ちゃんのお話になりますが、相も変わらぬ雰囲気ですね。
どうもハルです。
今日は久しぶりに沼津駅のあたりまで来ています。
色んな雑貨と、本屋が目的です。
「テレビ、最近はこんなサイズのが売ってるのか…うわ、しかも結構安い」
一昔前では考えられない様な値段で高性能な電気機器が売っている。
時代が進み、モノを作る生産技術はとんでもない勢いで進んでいる現代社会。
さっき衣類も見てきたけど、あれもすごかった。
あの低価格であの品質。
これはうちも、なんか手を打たないと持たんな。
「今時布単体じゃあ厳しいのかなあ。いっそ本格的に、物流業界の方に仕事を切り替えてしまおうか…」
そんなことをぶつぶつ言いながら、行きつけの本屋にやってきた。
特段、読書が好きというわけではないが、店番をしているときの一番の暇つぶしといえば、これに限る。
目に付いた本を適当にかごに放り込んでいく。
小説、雑誌、専門書などなど…どんなジャンルにせよ、暇なときに文字を追うというのは、思いの外時間が進むものだ。
そうして歩いていて幾分か経った時。
「よし、まあこんなもんか。レジに…ん?」
レジに向かおうとした俺の目に入ってきたのは、本の妖怪だった。
高く積まれた本が、不安定そうにうねっている。
「お、重いずら〜」
「花丸ちゃん危ないよお」
妖怪ではなく人間らしい。
よく見ると手も足も見えるな。
顔が見えないその存在は、おぼつかない足取りでなんとか前に進んでいる。
手に持っている本は頭を越すほど積まれており、どう見てもキャパシティーオーバーだ。
その横で不安そうな顔をしているのは…
「あれ?ルビィちゃん?」
「え、あれ?は、ハルさん!?」
赤い髪をツインテールにまとめる女の子。
彼女の名前は黒澤ルビィちゃん。
浦の星女学院会長、黒澤ダイヤちゃんの妹であり、彼女同様俺と長い付き合いがある。
急に名前を呼ばれたからか、ルビィちゃんはものすごいびっくりした様子だ。
動揺のあまり一歩後ろに下がってしまい、そのままもう一人の子にぶつかった。
「わ、わわわ…!あ、ああー!」
いよいよバランスを保てなくなったその子は、本の重さに負けそのまま前に倒れこむ。
ビターンという音が聞こえてきそうなほど華麗にこけた女の子。
当然、持っていた本は勢い良く空中に投擲され…
俺の方に飛んできた。
ゴス
飛んできた本は、俺の目、喉、腹を直撃。
「ぐえ!ぬぐうおおおう…」
痛い。尋常じゃないくらい痛いんだけど。
まさかの3冊クリティカル。
思わず唸っていると、ルビィちゃんが心配して駆けて来てくれた。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。それよりそっちは…」
結構な勢いで倒れてたし、2人に怪我が無いか心配だ。
「わ、私は大丈夫ですよ」
「マルも大丈夫ずら〜」
ルビィちゃんともう1人の女の子も、お尻を抑えているが問題は無さそうだ。
一安心しつつ、散らばってしまった本を拾いつつ、女の子の方に目をやる。
ルビィちゃんよりも若干背が低く、栗色の髪を肩の下くらいまで揺らしている女の子。
結構スタイルがよろしいようで。
「ハルさん、大丈夫ですか?」
「え?ああ、全く問題無いよ。はい、これで全部かな」
危ない危ない。
ダイヤちゃんならともかく、ルビィちゃんにこういう話はご法度だ。
後でダイヤちゃんにしばき倒される。
「あ、ありがとうずら…じゃない、ありがとうございます」
「どういたしまして。随分たくさん本を読むんだね。あ、俺の名前は淡 春<あわい はる>だよ。気軽にハルって呼んでおくれ」
「あ、国木田花丸です。ルビィちゃんの友達で同学年です。お兄さんは…えと…ルビィちゃんのお知り合い?」
「うん。えーと…」
「まあ、兄みたいなものだよ。昔から付き合いがあってね」
「おー。お兄さんずら」
さっきから妙な語尾が出てるな、この子。
どっかの方言なんだろうか。
それとも口癖?
「むー…。ハルさんのバカ…」
「ん?ルビィちゃんなんか言った?」
「なんでもないです!」
そういってそっぽを向いてしまった。
最近ちょいちょいこういうことがあるな。
と、そんな時。
『ぐ〜』
腹の音がなった。
多分、ルビィちゃんだな。
とはいえ、さすがにそれを口にするほどデリカシーに欠けているつもりはない。
ちょうど昼飯時だ。
こっちからご飯に誘うとしようじゃないか。
「お昼、2人は済ませたかい?」
「マルはまだず…まだです」
「あー、敬語は適当でいいよ。あとその語尾、無理して治さなくてもいいんじゃない?」
「そ、そうずら?」
「うん、それはそれでかわいいんでない?」
「かわっ!」
一気に真っ赤になった。
なかなか面白い子だ。
「ルビィちゃんは、どうするんだい?」
「つーん」
「えーと…ルビィちゃん?」
「つーん」
なぜかヘソを曲げてしまったらしい。
うーん、どうしたものか。
「怒ってるのかーい?」
「べつに、怒ってないです。ハルさんにデリカシーがないことくらい、知ってますし」
前言撤回。
俺にデリカシーはないらしい。
「お昼」
「ん?」
「プリンつけてくれたら、許してあげます」
「りょーかいりょーかい。好きなもの頼みなされ」
「うん!」
笑顔に戻るルビィちゃん。
理由は結局分からずじまいだが、まあ機嫌を直してくれたようなので良しとしよう。
こうやってわがままを言われるのも、ルビィちゃんから信用されている証なわけだしね。
「じゃあ行こうか。行き先は…2人に任せるよ」
「出発ずら!」
「うん!」
その辺のファミレスでいいかな。
などと思っていながら、ふと花丸ちゃんの方を見ると
「むむむ…今度は気をつけるずら…」
本の妖怪に変身し直していた。
ってちょいちょい。
「本、持つの手伝うよ」
「え、でも…」
「いや、その状態で歩くのは危なすぎるから」
さすがに全部持つのは無理だけど、半分以上はこちらが持つことにする。
この子普段、どういう買い物をしてるのだろうか。
「おー。お兄さん、結構力持ちずら」
「力があるんじゃなくて、バランスとるのが得意なんだ。仕事柄ね」
「仕事?ハルさん、仕事してるずら?」
その質問には、ルビィちゃんが答えてくれた。
「ハルさんはね、布屋さんやってるの。浦の星女学院のそばにお店があるんだよ。学校にもいろいろくれるんだよ」
「ずら!?じゃあ、オラたちもお世話になるずら」
「うん!そうだね」
そんな会話を2人がしていた。
会話から察するに、2人は浦の星女学院に入学するらしい。
「2人とも来年から浦の星に入るのかな?」
「そうずら」
「お姉ちゃんも、いますから」
「そうかいそうかい、来年はぜひうちをご贔屓に」
というか、ご贔屓にしてもらわないとうちが危ない。
残念ながら、うちに経済的余裕は全くないのだ。
そんな話をしながら歩いていると、飲食店が立ち並ぶところまでやってくる。
さて、どこにしようかと考えていたら、花丸ちゃんが横で目を輝かせていた。
「み、未来ずら〜」
どうやら、変わった未来観をお持ちらしい。
「花丸ちゃん!ハルさんがなんでもおごってくれるって!」
「え、それはデザートだけ…」
「ほんとずら!わーい!都会のご飯ずらー」
「いや、あの」
2人は先へ行ってしまった。
昔は、何をしてても一歩引いて引っ込み思案だったルビィちゃん。
ただの人見知りなのか、最近はわりとお姉ちゃんに似てきている気がする。
結構強引なところとか。
財布の中身を確認。
結局、さっき買う予定だった本は買わずじまいだった。
その分のお金たちがそこにおり…。
サイ◯リヤあたりで、済ませてもらえませんかね…。
本買うお金は、ルビィちゃんと花丸ちゃんのお腹に消えましたとさ。
ご視聴ありがとうございます。
ずらの使い方がいまいち固定できなくて苦戦中です。
ご意見、アドバイス等あれば、ぜひお願いします。