Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは
アニメ7話のお話になります。
先にそちらのご視聴をお勧めします。


東京出発と布屋さん

「東京からのお誘いがあった?」

「そう!東京で、スクールアイドルイベントがあってね、そこで一緒に歌いませんかって!」

「これ、すごいことだよね!」

「そうだね…」

 

そう話す千歌ちゃんと曜ちゃん。

東京でのイベント。

そう聞くと、どうしても思い出されるのは、ダイヤちゃんたちのこと。

 

「それ、君たちは行くのかい?」

「もちろん!」

「学校側は、許可をくれたのかい?」

「うん!」

「そうかい」

 

マリーちゃんは、そういう判断なわけだ。

だったらまあ、俺が止める理由もあるまい。

 

「ぜひ頑張ってくれ。貴重な経験だろう」

「ヨーソロー!」

 

曜ちゃんが敬礼して答えてくれる。

 

 

 

その後、雑談をしていたらてバスが来て、彼女たちは帰って行った。

 

マリーちゃんやダイヤちゃんは、何を思っているんだろうか。

などと思っていたら

 

「ハロー。ハル、今いいかしら?」

「おっと、噂をすれば」

「噂?1人しかいないじゃない」

「言葉の綾というやつさ。それで、どうしたんだい?」

「Aqoursのみんなが、東京に行くわ」

 

やっぱりその話かい。

こっちから話す必要がなくなってありがたいよ。

 

「そうみたいだね。許可、出したらしいじゃないか」

「ええ。あの子達ならもしかしたら、越えられるかもしれないから」

「ああ、そうだね。可能性はあると思うよ」

 

2年前。

彼女達が越えられなかった壁。

それを越えられるかもしれないと、彼女は言う。

 

「お茶、出すからちょっと待ってくれ」

「サンキュー、ハル」

 

冷蔵庫からお茶を出してコップに注ぐ。

それを机に置いたところで、話を再開する。

 

「ダイヤは、多分反対すると思うわ」

「はは、そうだろうね」

 

ダイヤちゃんは、ルビィちゃんは当たり前としても、Aqoursのことも大事に思ってくれている。

彼女なりに、Aqoursのサポートは色々してくれているのだ。

 

だからこそ。

彼女達の自信を奪ってしまうような現実を、叩きつけたくないと考えるだろう。

それがダイヤちゃんなりの優しさなのだ。

 

「でも私はね、この壁は、越えなきゃいけないと思っているの」

「本気でスクールアイドルやるなら、かい?」

「スクールアイドルとして、学校を救おうとしているなら、よ」

「そうかい」

 

そしてこれも、マリーちゃんなりの優しさだ。

マリーちゃんとダイヤちゃん。

2人の考えがこういう形で食い違うのは、昔から変わっていない。

 

「2人とも不器用だからね、相変わらず」

 

言葉で伝えてあげればいいものを。

自分たちの思いも経験も、結局隠したままなんて。

頑固なとこまで、そっくりだよ。

 

 

 

 

千歌ちゃん達が東京へ行く当日。

俺は千歌ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃんの4人を駅まで送ることになった。

 

『ハルくんが送ってあげたほうが、多分嬉しいと思うから』

 

そうやって志満さんから連絡があったのだ。

まあそれは構わないのだが。

 

「東京トップス!東京スカート!東京シューズ!そして…東京バッグ!」

「…一体、何がどうしたの?」

「かわいいでしょ!」

「君は一度東京に行ったんじゃないのかい?」

 

その時に何を見てきたんだ、この子は?

まるでバブル時代の女性のような服に身を包む千歌ちゃん。

 

「俺、最近は東京行ってなかったから知らないんだけどさ。もしかして、最近は東京だとこういうのが普通なのかい?」

「いや、全然そんなことないから」

「安心したよ」

 

なんて言っていたら。

 

「「おはようございまーす」」

 

花丸ちゃんとルビィちゃんが来たみたいだ。

 

「やあ、おはよ…う?」

「うぇっ?」

 

思わず俺と梨子ちゃんの声が上ずる。

なんというか、ルビィちゃんはやたらピンクだ。

装飾も多い。

 

対して花丸ちゃん。

なんの格好だ?冒険家?

 

「ちゃ、ちゃんとしてますか?」

「こ、これで、渋谷の険しい谷も大丈夫ずら!」

 

言いながらピッケルを構える花丸ちゃん。

まさかそれで電車に乗るつもりだったのか…。

 

「…何、その仰々しい格好は…?」

「「ガーン」」

 

2人はショックを受けているようだった。

いや、当たり前でしょ。

君たちにとって東京はどこにあるんだい。

 

「2人とも地方感丸出しだよ」

 

千歌ちゃんがそう言って笑っている。

君、人のこと言えないからね?

 

 

着替えた3人と梨子ちゃんを乗せて、車を走らせる。

 

「結局、いつもの服になってしまった…」

「いいじゃないか。今の花丸ちゃん、かわいいよ」

「ほ、ほんとずら!?」

「ああ、ほんとさ」

「そ、そっか…えへへ」

「むー…ハルさん!運転に集中してちょうだいっ」

「おっと、すまないね」

 

梨子ちゃんに怒られてしまった。

集中集中。

 

少しして、無事に駅に到着した。

近くの駐車場に車を止める。

短い時間だ、駐車料金のことはこの際忘れよう。

 

「そう、たかが一食か二食我慢するだけなのだ…」

「何をブツブツ言ってるの?」

「いや、こちらの話さ。あれ?千歌ちゃんたちは?」

「ああ、あの子達なら…」

 

そう言いながら梨子ちゃんが目線をやる。

そこにいたのは…

 

「私はヨハネ!せっかくのステージ、溜まりに溜まった堕天使キャラを、開放しまくるの!」

「「「「お、おう」」」」

 

…なんですかね、あれ。

できれば近づきたくないのだが。

 

その後、千歌ちゃん達の友達がやってきて、激励を受けていた2年生組。

時間もそろそろだ。

 

「梨子ちゃん」

「ん?」

「彼女達を頼むよ。東京、慣れてない子たちなんでね」

「ふふ。ええ」

 

梨子ちゃんはそう言ってくれた。

 

「いってきまーす!!」

「あい、いってらっしゃい」

 

手を振って彼女達を見送った。

さて。

どうなることやら。

 

 

 

夕方。

最近は買い物をしないお客さんが多かったので、久しぶりに商売のためだけに接客をした一日だった。

こういう日は久しいな。

 

時間もいい頃合いだし、店の札を閉店に返す。

そのまま店に戻ろうとした時だった。

 

「こんにちは、ハルさん」

「おや、ダイヤちゃん。こんにちは」

「今、よろしくて?」

「ああ、今日は結構暇なんだ。中、入るかい?」

「あら。いつもは暇ではないみたいですわね」

「普段は忙しくて仕方ないんだ」

「ふふ。そういうことにしときますわ」

「なんか用かい?」

「いえ…用事があった方がよかったですの?」

「そんなことないさ」

 

学校帰りの暇つぶしらしい。

用事もなく来るのは珍しいことだ。

ルビィちゃんがいなくて寂しいのだろうか。

それともそういう気分だったのか。

いずれにしても、独り身同士仲良くしようじゃないか。

 

「晩御飯、食べてくかい?」

「え?いいんですの?」

「ダイヤちゃんには普段から贔屓にしてもらってるからね」

「ではご一緒させていただきますわ」

「ご両親に聞かなくていいのかい?」

「この時間ならまだ作ってないでしょうから。すぐ連絡を入れれば大丈夫ですわ」

「そうかい」

 

じゃあ心配なさそうだ。

いいね。

今日は美人さんと一緒に夜ご飯だ。

 

「それで、夕食は何にするつもりですの?」

「ああ、今から買い物に行こうと思ってたんだ。その時に決めるつもりだったんだよね」

「そうだったんですの?じゃあ、買い物、ご一緒してもよろしくて?」

「もちろんだよ。ありがたい。少し待っててくれ、準備してくるよ」

「ええ」

 

 

「将来結婚とかしたら、こうして奥さんと歩くのかなあ」

「なえ!?け、結婚!?」

「あ、でもこんな甲斐性なしと結婚してくれる人はいないか」

「…そ、そんなことはないのでは?あなたの周り、女の子は多いですわよ?」

「ははは。こんなおっさんに恋愛感情持ってる子なんていないだろうさ」

「ハルさん、まだ20歳ですわよ?」

「20歳超えたら、10代から見たらもれなくおっさんだよ」

「それでも、あなたを好きになる人もいますわ」

「へえ。それは不思議な子だ。ぜひ会ってみたいね」

「…はあ」

「あれ?なんでため息?」

「なんでもありませんわ」

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

今日は麻婆豆腐にした。

ひき肉が安かったのだ。

片付けを適当にしつつ、ダイヤちゃんとお話をする。

 

「あの子達、元気にやってるかね」

「そうですわね。一応は学校の名を背負っていること、自覚していればいいですけど」

「心配だって、素直に言えばいいのに」

「な!心配などしてませんわ!」

「そうかいそうかい」

「話を聞きなさーい!」

 

部屋に、ダイヤちゃんの声が響き渡る。

 

ダイヤちゃんの心配しているみんなは…

今、何してるかな。

 

 

 




ご視聴ありがとうございます。
主人公が東京行くのはちょっと無理があったので、留守番してもらいました。
何かありましたらお願いします。

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