Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは
アニメ6話の前半になります。
先にそちらのご視聴をお勧めします。


学院事情と布屋さん

沼津の高校と統合し、浦の星女学院を廃校とする。

 

そんな話が出ていることを、先ほどマリーちゃんから聞いた。

いわゆる統廃合というやつだ。

 

ダイヤちゃんは、とてもショックを受けていた。

薄々感づいていたとはいえ、いざ言葉にされるとキツかったんだろう。

 

マリーちゃんも、珍しく茶化す雰囲気は出してなかった。

そうさせないために、理事長にまでなったんだと、彼女は言っていた。

 

そして俺は

 

「さて。早速、廃校を阻止する手段を考えようか」

「「……」」

「おや?どうしたんだい2人とも?」

「いや…」

「なんというか…」

 

おかしいな。

彼女たちも廃校は絶対に阻止したいはずだが。

どうも乗り気ではないのか。

 

「協力してくださるのはありがたいですけど」

「なんでそんなにやる気なの?」

「なんだ、そんなことかい。決まってるじゃないか」

 

もちろん、お得意様というのもある。

 

けど、それだけじゃない。

 

あそこには、俺の思い出もたくさんある。

目の前にいる2人とだって、色んな思い出を作ってきた。

浦の星女学院は、それらが全部詰まっているんだ。

 

だから

 

「女子高生が見たいから間違えた綺麗な太ももじゃなくてみずみずしい肌。おっけーもう嘘つくのやめるよ」

「何一つ嘘すらつけてないですわ!」

「隠し事できないのは知ってたケド…これは重症すぎよ」

 

ダイヤちゃんが机をバンバンする。

マリーちゃんは呆れ気味だ。

 

「簡単に言えば、女子高生が見れなくなるから廃校を阻止したいと」

「…うん。まあ端的に言ってしまえばそうなるね」

 

身も蓋もない説明だが。

 

「まあ、ふじゅーんな動機であっても、行動しようとしてくれるだけイイわ」

「はあ…。そうですわね」

「どうにも後ろ向きな感じがするが…まあいいだろう」

 

2人に席に座ってもらい、早速話し合いをスタートする。

題目は当然、廃校阻止の方法だ。

 

「私は、まずは知名度を広めることが重要だと思いますわ」

「そうだね。問題は、その手段かな」

「…ええ」

「ノー!あるでしょ?知名度を上げる、手っ取り早い方法が!」

「ほう」

「…」

 

そんな方法があるのか。

それはぜひ知りたいところだが。

 

「スクールアイドル!これに尽きるわ!」

「なるほど」

「…やっぱり、そうですか。申し訳ありませんが、用事を思い出しましたわ」

「な!ダイヤ…!」

 

ダイヤちゃんが席を立つ。

俺が何を言っても止まりそうにはなかった。

 

「帰るのかい?」

「…ええ」

「そうかい。また来てくれ」

「ちょっ、ハル…」

「また来てくれるんだろう?」

 

俺がそう言うと、ダイヤちゃんは少しだけこちらを見て

 

「…ええ。また来ますわ」

 

そう言ってくれた。

 

「だそうだよ、マリーちゃん。だから大丈夫さ」

「ハル…」

「すぐに解決する問題ではないんだ。焦らずいこうじゃないか」

 

マリーちゃんは、一応は納得してくれたみたいだ。

渋々と言った感じではあるが、引き下がってくれた。

 

ダイヤちゃんが出て行ってから数分。

少しの間2人とも黙っていたが、マリーちゃんがその沈黙を破った。

 

「ハルは、相変わらずダイヤに甘いわね」

「俺は美少女に優しいんだ。だから君や果南ちゃんにも優しいだろう?」

「…ふふ。またダイヤに、『破廉恥ですわ!』って怒られるわよ?」

「それは困った。けど」

「ん?けど…なに?」

「君と果南ちゃんがいる場でなら、それもまた一興さ」

 

彼女たちが1年の時は、そんな景色も珍しくはなかったのだ。

それが、日常だったから。

 

「…うん。また、果南とダイヤに怒ってもらわないとね」

「怒られる役は、君に任せるよ」

「そのときは道連れよ」

「お手柔らかに頼むよ」

「2人に言ってちょうだい」

「それもそうだ」

 

完全な笑顔とは言えなかったけど

マリーちゃんは、少しだけ笑ってくれていた。

 

 

 

 

マリーちゃんが帰って1時間ほどして、花丸ちゃんたち1年生組がやってきた。

 

「今日は君たちかい」

「こ、こんにちはハルさん」

「こんにちはずら〜」

「ふふふ…堕天使ヨハネ、降臨」

「魂ならあげないよ」

「それは悪魔!」

 

乗り出してくる善子ちゃん。

なんだ、知っていたのか?

 

「今日はハルさんに報告があって来たずら」

「報告?」

「実は…」

「浦の星女学院、廃校になるかもしれないのよ」

「ああ、そのことかい」

「知ってたんですか?」

「まあね。ダイヤちゃんから聞いてるんだ」

 

むしろ、一般生徒である彼女たちに伝わっていることの方が驚きだ。

人数の少ない高校だし、生徒全員が把握するのも時間の問題だろう。

 

「それで、Aqoursのメンバーはなんて言ってるんだい?」

 

気になるのはそこだ。

廃校を推進する子はいないとは思うが…。

 

「丸は、都会の高校通えるならそれもアリかなって」

 

そういう考えの子もいるのか。

廃校賛成とまではいかなくとも、特に反対ではないと。

 

「私は断固として反対よ!」

 

まあ善子ちゃんはそうだろうさ。

中学のときの友達が大勢いるところとの合併だからね。

この子が高校を浦の星にした意味がなくなる。

 

「私は…知らない人が一杯になるのはちょっと…」

 

これが一番普通の反応だろう。

ようやく生活に慣れてきた1年生にとって、また一から生活を作り直すなど、考えたくない話だ。

 

「一応、みんなで廃校阻止の方法を考えてたんですけど…」

「ふむ」

 

俺たちが先ほどまでやってたことと同じか。

彼女たちはどんな答えを出したんだろうか。

 

「最初は、μ'sを参考にしようってなったずら」

「μ'sを?」

「そうよ。でも…」

 

μ'sは自分たちの高校を有名にするためにスクールアイドルを立ち上げた。

結果としては大成功だったわけだが、その過程といえば…

 

「スクールアイドルとして、何か特別なことをしていたわけじゃないってことかい」

「そうなんです。ランキングシステムに登録して、予選を勝ち抜いて、ラブライブで有名になる…考えてみれば、スクールアイドルとしては普通というか、当たり前のことというか」

「まあ、だからこそ『スクールアイドル』の伝説なんだろうしね」

 

スクールアイドルとしてやるべきことを全うし、その上で頂点に立ったからこその今だ。

とはいえ。

 

「千歌先輩が、それだけじゃだめだーって言ってたずら」

「そうだろうねえ」

 

なんとなく想像できることだ。

 

「で、μ'sがやってたことの一つに、PV作成があったの」

「ああ。そういえばいくつか見せてもらった記憶があるよ」

 

確かにPVなら、宣伝効果はあるだろう。

もちろん、Aqoursの知名度がそれなりにあってこそだが。

 

「早速撮りに行くのかい?」

「はい。今から色々周る予定です」

「そうかい。頑張ってくれ」

「ハルは来ないの?」

「まさかと思うけど、俺が今仕事中だということを忘れているのかい?」

 

ちょっと失礼じゃないかな、善子ちゃん。

確かにお客がいなさすぎて、読書に熱中していたが。

 

「まあ、できたら見せておくれ。楽しみにしとくから」

「ずら!これは頑張らないといけないずら…!」

「は、ハルさんに見てもらうなんて…!失敗できない…!」

「き、気にしすぎよ!あ、あんた達は!か、加工だってできるんだから」

「?」

 

若干、空気が変わったような気が…。

一応やる気にはなってくれたみたいだし、まあいいか。

 

しかしこの町のいいところか。

女子高生がいることとか、女の子の比率が若干高いとことか、優しい女の子が多いとことか…

 

あれ?

PVで魅力を伝えるの、結構難しくない?

 

 




ご視聴ありがとうございました。
PV撮影、実際にやるとどれくらい時間がかかるものなんですかね?
気になるところです。

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