Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
遊園地の話の後編になります。
今回も、アニメには全然関係ないです。



2年生と布屋さん(下)

曜ちゃんの膝枕を、目潰しされた状態で堪能していると、千歌ちゃんたちが戻ってきた。

 

「あー!曜ちゃんずるい!」

「へっへーん。勝者の特権です!」

「ああ、おかえり、2人とも迷惑かけてすまなかったね」

「それより大丈夫?これ、よかったら」

 

そう言って、水をくれる梨子ちゃん。

ありがたい。

少し喉が渇いてたんだ。

 

「ああ、ありがとう。いただくよ」

 

状態を起こして、水を受け取る。

なんとなく受け取っていたが、どうやら両手に持っていたらしい。

理由もなく右手に持っていた方をもらった。

 

「あ、そっちは…」

「ごくごく…ぷはあ。ん、ありがと…う?」

 

梨子ちゃんが真っ赤だ。

どうしたんだろう。

 

「間接キス…」

「ハルくん、セクハラだー!」

「〜〜〜〜〜っ///」

 

そういうことか。

2本持ってたのは、片方は自分用ってことだったのか。

悪いことをしてしまった。

 

「えーと。すまない。悪気はなかったんだ」

「あ、えと、うん。わかってる。大丈夫だから///」

「ずるいよハルくん!ほら、私のも飲んでいいよ!」

「い、痛い、痛いから。キャップついたまま押し付けるんじゃない」

 

ギザギザが当たってるから。

跡つくから。

 

 

 

 

午後は、絶叫系以外に行こう。

そういう話を、食事をとりながらしていた。

俺が休んでいる間に、周れる限りは周ってきたんだそうだ。

午後に行く場所は、お化け屋敷や観覧車の、非絶叫系。

まあ、それなら問題は全くない。

 

 

〜お化け屋敷〜

 

「あはは!暗い暗ーい!」

「あ、千歌ちゃん待ってー!」

「ちゃんと出口で待ってるんだぞー」

「「はーい!」」

 

さすが、あの2人はこういうものも平気らしい。

そもそも、住んでいる町が、夜はかなり暗くなるからね。

暗さに慣れているのもあるんだろう。

 

対して、梨子ちゃんは。

 

『ゔぁあああ』

「ひいいいいいー!」

 

『ギェアアア』

「ひゃああああ!」

 

『どうおおおおお』

「もういやああああ!」

 

ある意味、最も正しい楽しみ方と言える。

さすが、音楽をやってて、アイドルもやってるだけはある。

悲鳴の出し方もとてもきれいだ。

 

「梨子ちゃん、大丈夫かい?」

「大丈夫じゃない!大丈夫じゃないです!」

「よくそんな状態で、ついてこようと思ったね」

「ハルさんが船乗ったり、絶叫系乗ったのと同じよ!」

「要するに強がりかい」

 

意外なような、そうでもないような。

さっきから腕にしがみつかれているが、それもあまり意識してやっているわけではないのだろう。

 

 

〜ゴーカート〜

 

「千歌ちゃん、くれぐれも安全運転で頼むよ」

「オッケー、しっかり捕まっててね。飛ばすよー!」

「俺の話聞いている?」

 

思い切りアクセルを踏み込む千歌ちゃん。

って、正面壁、壁!

 

「あっぶなーい!」

「ぐえっ」

 

急ハンドルでかわす。

そのまま、左に右に、壁スレスレを全速力で走り抜ける。

酔いはしないが、ヒヤヒヤする。

 

「も、もうちょっと安全運転をだね…」

「よっしゃー、次のカーブ!」

「話を聞けえ!」

 

「あの、あれ大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。なんだかんだ言って、ハルくん付き合いいいから。それより、梨子ちゃんもしっかりつかまってなよ」

「へ?」

「負けないよお!千歌ちゃーん!」

「え、きゃああー!」

 

何事も、中途半端を嫌がり、全力の千歌ちゃんは

アクセルも中途半端に踏まず

ベタ踏みオンリーでした。

 

…何かがおかしい。

 

 

〜メリーゴーランド〜

 

「…どうして、メリーゴーランドで俺は馬に乗ってるんだ」

「あははは!似合ってるよー!」

「はははは!うんうん!白馬の王子様ー!」

「2人とも、あんまり笑ったら…っく…くくっ」

「…………」

 

3人が乗っているのは、コーヒーカップみたいなやつだ。

そこに俺も入れればよかったのだが、4人入るには狭かった。

しかし、客の数的に、2人ずつに分かれるほど乗り物が空いておらず、結果としてこうなったわけだ。

これはもう、普通に恥ずかしい。

 

「ハルくーん!写真撮るからこっち向いてー!」

「あ、その写真、後で私にもちょうだい!」

「あ、私も」

「いや、勘弁してくれ」

 

なんて言っていたのだが。

 

『カシャシャシャシャシャシャシャ!』

 

「ねえそれ、連射してない?音すごい聞こえるんだけど」

「はーい、笑ってー。王子様ー」

 

いっそ殺してくれ…。

 

 

 

 

そんなこんなで、遊園地最後のアトラクションに乗る俺たち。

 

「やっぱ、遊園地の締めといえば観覧車だよねー」

「ねー」

「たしかに、それはあるわね」

 

夕日が景色を赤く染める。

上から眺めるその景色は、普段のそれとはまた別の美しさを映し出す。

 

「楽しかったね、今日」

「うん!」

「ええ。楽しかったわ」

 

千歌ちゃんは、それを聞いて嬉しそうにして

俺に向き直った。

 

「ハルくんは?」

「もちろん、楽しかったさ」

「また、来たい?」

「そうだね」

 

でもそれは。

遊園地に限った話ではなく。

 

「君たちとなら、多分どこへ行っても楽しいよ。今日、そう思った」

 

少し恥ずかしいけど。

俺は嘘が苦手だから。

そうやって、正直に伝えておく。

 

「そっか。えへへ」

 

千歌ちゃんは、とても嬉しそうに笑ってくれる。

曜ちゃんも、梨子ちゃんも、笑顔だ。

夕日より、眩しい笑顔だった。

 

 

 

「ねえハルくん、これ、どこ向かってるの?」

「あんまり見ない場所だねー」

「山、ですか?」

「俺のお気に入りの場所だよ。あと15分くらいだ」

 

大きな山ではない。

ちょっとだけ高くて、人気の少ない山。

整地はあまりされていないが、一応頂上までは車で行けるのだ。

 

「ま、まさかハルくん、私たちを山に連れ込んで変なことを…」

「できると思ってるのかい?」

「「無理だね」」

「男としては複雑だよ」

 

もちろん、やらしいことをするつもりはない。

上から見る景色、それを見て欲しいのだ。

 

「っと、この辺だね。外に出ようか」

「あれ?ここ頂上じゃないよ」

「頂上まで行くと、木が邪魔で景色が見にくいんだ。ここが一番いいスポットなんだよ」

「へ〜…随分詳しいね。はっ!まさか」

「ん?」

「誰かとデートでここにきたことが!?」

「「!?」」

 

その瞬間、曜ちゃんと梨子ちゃんがすごい勢いでこちらを向いた。

早っ!

しかも怖い怖い。

気のせいか寒気を感じる。

 

「そんなわけないだろう。俺、生まれてこのかた、お付き合いすらしたことないんだから」

「そうだよねー。あはは」

「「ほっ」」

「なんで安心するんだい君達。…ほら、見てくれ。これが、今日俺が君達にできる最後の労いだよ」

 

そこにあるのは。

 

光り輝く、町。

ビル、住居、店。

その他多くの、人がいるからこそ浮き上がる、光たち。

 

大都会の夜景に比べれば、それはあまりに規模が小さいものだけど。

千歌ちゃんたちには珍しい景色のはずだ。

梨子ちゃんは、もしかしたらこれよりずっと綺麗な景色も見慣れているのかもしれないけど。

それでも、見てもらいたかった。

だって。

 

「この景色、俺がこの前のライブで見た君達そっくりなんだ」

「へ?」

「この町、行きに通ったんだよ。でも、こんな風には見えなかっただろう?…それが今、こんなにも輝いてる」

 

千歌ちゃんが言っていた。

普段は普通の女子高生が、

とても輝くスクールアイドル。

Aqoursだって、ちゃんと輝いていたんだと、伝えたかった。

 

「そっか…」

 

伝わったかはわからない。

でも。

 

「綺麗だね」

「うん」

「ええ」

 

3人は、そう言ってくれた。

 

「ハルくん!」

「なんだい?」

「大好きだよ!」

「え?」

「千歌ちゃん!?」

「ほう?」

 

思わぬセリフ。

ドキッとするじゃないか。

 

「は、ハルくん!私も、私もだよ!」

「ええ、そんな。わ、私だって…っ」

 

なんてことだ。

まさか、彼女たちがそんなに慕ってくれていたとは。

しかしだね。

 

「とてもありがたいが、それは本当に好きになった人用にとっておかないと」

 

そう。

軽率に男に言っていいセリフではないのだ。

 

「あー…うん。そうだね…ハルくんは、そうだよね…」

 

なぜか落ち込む千歌ちゃん。

 

「…ハルくん、さすがにそれはひどすぎるよ…」

「…ハルさん、ひどい…」

 

そしてなぜか2人からも責められてしまった。

うーん…わからん。

 

「「「はあ…」」」

 

せっかく綺麗な景色を見ながらだというのに。

 

彼女たちは、息の揃ったため息を着いていた。

 

 




ご視聴ありがとうございました。
のたのたした雰囲気ですが、これが平常運転です。
それでは、ご意見等ありましたらお願いします。

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