ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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練習試合の後と新たな出会い

 

 練習試合も終わり、私の乗ったティーガーⅡはそのまま修理業者に運ばれ修理することになったのだ。それは、現状を見た自動車部の話では砲塔のターレットリングが酷く歪み学園では直せないらしい。一応、黒森峰でも使っている業者なので大丈夫だろう。

 

 それだけ、ゼロ距離射撃の衝撃が凄かったのだ。

 

 だけど、相打ちだったダージリンのセンチュリオンも主砲が裂けており、ターレットリングが歪むほど酷かったのだ。

 

 当の本人は角谷会長の黒い笑みの餌食となり、今頃はステージであれを踊る事になったのだ。

 

 

 そう、角谷会長は

 

 「やあぁ、ダージリンさん、挨拶してるのに流石に無視は無いよね?そうだ、ちょうど街上げての交流会だからステージの踊りを頼んでも良いかなぁ?」

 

 「えっ?聞いておりませんが・・・・」

 

 「戦車道は礼に始まり礼に終わるだよね?なら、当然だよね?」

 

 あの、ダージリンに有無も言わせなかったのだ。

 

 ダージリン達は仕方なく踊る事になったのだ。

 

 恥ずかしいあんこう形をしたピンク色のタイツ衣装を着てステージで踊る、ダージリン達をしり目に私達は負けなくて良かったとみほと一緒に見ていたのだ。

 

 顔を真っ赤にしながらステージであんこう踊りを踊るダージリン達を含む、聖グロリアーナ女学院の戦車道の生徒一同。

 

 もしかしたら、あのステージに立っていたのは私達だったかも知れなかったのだ。

 

 「ねぇ、エリカさん?」

 

 「どうしたの?みほ」

 

 「私が乗る車両にはあんこうのエンブレム書いても良いかな?」

 

 「どうしてなのよ?」

 

 「もしかしたら、負けたのは私達だったかも知れない。だから、それを忘れない意味を込めたいの」

 

 「別に良いんじゃない?みほが隊長なんだからさ」

 

 「うん、エリカさんありがとう・・・・」

 

 視線を感じて感じた方にはダージリンが何故かハンカチを噛みながら踊っていたのだ。

 

 私の前でクルリと周り、満面の笑顔のみほ。

 

 「エリカさん、じゃあ行こうか?」

 

 そうだった。

 

 忘れていたのだ。

 

 今日のラスボスはダージリンではなく、みほだったのだ。

 

 これから、ボコミュージアムに行かなくはいけないのだ。

 

 うん、諦めよう・・・・・・

 

 「車を借りて来るわ」

 

 「うん」

 

 くろがね四起(四人乗り)を借りて向かったのだ。

 

 

 

 そして、運転しながら思い出したのは私がみほとまほと出会い、ボコを初めて知ったのは幼き日の熊本だった。

 

 あれは忘れもしない雨が止んだ後だった。

 

 あの日はいつものお気に入りのフリルの着いた白いワンピースを着て麦わら帽子を被りワニの人形を抱きしめながら歩いてる時だった。一台の自動車が通り過ぎ、もう一台の自動車?いや、Ⅱ号戦車が物凄いスピードで通り過ぎたのだ。

 

 「お姉ちゃん!行け、行け!」

 

 「よし、みほ飛ばすぞ!」

 

 バッシャ

 

 私の全身は跳ねた泥水で泥だらけだったのだ。お気に入りのワンピースと人形の酷い惨状にショックで泣き出したのだ。

 

 「うっ、うぇぇぇぇぇん!?」

 

 泣き出した私にみほが気付いたのだ。

 

 「お姉ちゃん、止まって!」

 

 「どうした?」

 

 Ⅱ号戦車が止まり、みほとまほが降りて来たのだ。

 

 「ねぇ、大丈夫?」

 

 みほが声を掛けて来るが、私は泣いたままだった。

 

 「うぇぇぇぇん!?」

 

 「済まない・・・」

 

 「ごめんなさい・・・・」

 

 二人が謝って来るけど、素直になれないで言ってしまったのだ。

 

 「ひっくぅ・・・・許さないもん!子供だけで、戦車に乗ってるの先生に言い付けてやるんだから!」

 

 そのあとは、まほに手を繋がれて公園まで連れて行かれたのだ。

 

 「一先ず、泥を落とそう」

 

 「お姉ちゃん、水を掛けて洗ったら速いよ!えっぃ!」

 

 みほは考え無しに水道に繋いだホースで私に水を掛けたのだ。

 

 バッシャァァァァ

 

 「!?」

 

 「落ちたから・・・・」

 

 バッシャァァァァ

 

 「落ちたって言ってるでしょ!」

 

 ベッチィィィン

 

 私はワニの人形をみほの顔面に投げ付けたのだ。ぶつかった衝撃でみほのバッグから落ちたのは包帯の巻かれた熊のぬいぐるみだった。私は腹いせにそのぬいぐるみを地面に叩き付けてぼこぼこに殴ったのだ。

 

 「こんな、ぬいぐるみ殴ってやるんだから!」

 

 ところが、みほはそのぬいぐるみがボコボコになる姿を見て、瞳を輝かせ見ていたのだ。

 

 「うっわぁぁぁ、ボコがぼこぼこだぁぁ!」

 

 「えっ?」

 

 私はみほの一言にフリーズしたのだ。

 

 何故、ぼこぼこにされると喜ぶの?

 

 普通は大切なぬいぐるみだから、泣くはずなのに・・・・

 

 まほが、申し訳なさそうにタオルを持って来たけど、みほの暴走は止まらなかった。

 

 「済まない、濡れたままだと風邪引くからタオルで・・・・」

 

 バッシャ

 

 「「!?」」

 

 みほはあろう事か、私とまほにバケツで水を掛けたのだ。ずぶ濡れになる私とまほ。

 

 「何すんのよ!」

 

 「あっはははは!えっぃ!」

 

 バッシャ

 

 みほは自分で水を被ったのだ。

 

 「これで、みんな一緒だね?」

 

 「ふぅ・・・うっぷぅ・・」

 

 「仕方ないんだからね!・・・うっぷ・・・・」

 

 「「「あっはははは・・・・」」」

 

 みほの呆れた行動に一斉に吹きだし、三人で笑い合ったのだ。そして、濡れたままだと風邪引くからとまほに言われ、近くまで送って行く事になったのだ。

 

 「ヤッホー!」

 

 「いっ、イヤァァァァァァ!?」

 

 Ⅱ号戦車の砲塔の上に乗る、私とみほ。猛スピードの中を笑いながらみほは楽しみ、私は顔を真っ青にして怖さから絶叫していたのだ。

 

 そして、近所まで来ると止めて貰い降りたのだ。みほに感想を聞かれたけど私は髪はボサボサで体がボロボロだった。でも、本当は楽しくて良かったのに私は・・・・・

 

 「どう、だった?」

 

 「せっ、戦車なんて・・・・大っきらいよ!うっわぁぁぁぁぁん!?」

 

 そんな気持ちを認めたくなかったから泣いて二人から逃げるように帰ったのだった。でも、それがみほと長い付き合いになるとは今でも懐かしく思えるのだ。

 

 

 

 

 「懐かしいわね・・・・」

 

 「エリカさん、何が懐かしいですか?かなり、にやけてましたが?」

 

 「そうね。みほと初めて会った時の事を思い出していたのよ」

 

 「えっ、中学だったかな?」

 

 「違うわよ!忘れたとは言わせないわよ!ワニの人形を抱いた女の子を覚えて無い?」

 

 みほに聞いて見たのだ。多分、覚えていないと思うが、黒森峰でも隊長とみほの会話でも何回か話に出ていたけど不安だった。みほは申し訳なさそうに答えたのだ。

 

 「もしかして・・・・あの時のツンデレの女の子?」

 

 「そうよ」

 

 「じゃあ、ロリータファッションはあの頃からだったんだね」

 

 確かに、みほと隊長には思い出して欲しくてロリータファッションをしていたけど・・・・

 

 グッサァ

 

 みほに思い出して貰えたが、何かを失った様なそんな気がしたのは気のせいだと思いたい。そして、胸に何か突き刺さる様な痛みは何故だろう・・・・

 

 そして、ボコミュージアムに着いたのだ。

 

 ボコミュージアムは大洗町の郊外にある総合アミューズメントセンターでもあり、ボコをメインにしたテーマパークである。しかし、現物を見るまでは

 

 「かなり、建物がボロボロね」

 

 「うっ、うわぁぁぁぁぁぁ!ボコミュージアムだぁぁ!」

 

 みほはボコミュージアムを見て、戦車道では見せない満面の笑みを浮かべながらハイテンションになっていたのだ。そして、気になるのは私達の他に駐車場にロールスロイスが一台止まっていたが、私が考える暇さえなくみほに中へと連行されて行ったのだ。

 

 「さぁ、行くよ!」

 

 「ちょっと、みほぉぉぉ!?」

 

 みほに有り得ない力で引っ張られて中に入ると、入口にはボコの等身大があり入場者を迎える。

 

 「うわぁぁぁぁぁぁ!?エリカさん、見てよ!等身大のボコだよ!」

 

 最早、手の付けようがない状態のみほ。ここまでになると諦めるしかないのだ。それは、中学から付き合いだから何となく判る。これから、私の身に起こることも・・・・・

 

 私は、みほに嬉しさのあまり首に抱き着かれ体を揺さぶられる状況だった。

 

 「グッエェェ!?みほ、首が締まるわよ!」

 

 「しゅごぉぉい!ボコだよ!ボコがいっぱい居るんだよ!アァァァァ!」

 

 「だから、首を締めないでぇぇぇ!?」

 

 抱き着くのは構わないが、首を絞めないで欲しい。

 

 一瞬だけど、川の向こうに花畑が見え、川と川辺に積まれた石が見えた気がしたのだ。

 

 超ハイテンションのみほにズタボロにされながらも、ボコワールドをまわり、スペースボコワールドを見学し、最後に辿り着いたのはショーをするための劇場だった。

 

 劇場の椅子には一人の少女が居たのだ。髪の色は私と似ており顔付きは以前見た記憶があるが思い出せなかった。

 

 「隣、良いかな?」

 

 「うん・・・・」

 

 みほは少女に話掛けると、少女は頷くだけだった。

 

 私も少女に袖を引っ張られる形でみほと少女に挟まれる形で座りショーが始まると、既に二人の瞳は輝いており、この少女もかと内心突っ込みを入れていた。

 

 「ボコ、頑張れ!」

 

 「ボコ、頑張れ!」

 

 二人は既に意気投合してボコを必至に応援したのだ。

 

 しかし・・・・・ボコがライバル猫にぼこぼこにされると・・・・

 

 「「あっ、あぁぁぁぁぁぁ!?しゅごぉぉいよ!ボコの腕が有り得ない方向に曲がったぁぁぁ!それでも、立つよ!ボコ、頑張れぇぇぇ!」」

 

 「グッエェェ!?ちょっと、首が締まってるわよ!みほ、お願いだから胸を顔に押し付けないでよ!・・・・・・・・・・・ぐるしいぃぃ・・・・・・・・」

 

 二人してボコハイによる興奮状態でハァハァしながらも、この状態までも二人は一緒なのだ。そして、私に抱き着くのも同時で少女には首を絞められる様に抱き着かれ、みほには胸を顔に押し付けられた状態で二人はボコを応援したのだ。

 

 私は息が苦しくなって来ると、意識が遠くなって落ちたのだった。

 

 気がつくとショーは終わっており、みほに膝枕をされていたのだ。抱き着いた少女も私を見て申し訳なさそうに見て居たのだ。

 

 「エリカさん、大丈夫?」

 

 「まぁ、何時もの事だからなんとかね」

 

 「あの・・・ごめんなさい・・・・」

 

 「別に気にして無いわ。ところで、あんたの名前は?」

 

 「島田愛里寿・・・・」

 

 名前を聴いて判ってしまったのだ。私と同じ色のライトグレーの髪にあの目付きはやはり・・・・

 

 「まさかだけど、島田師範の娘さんなの?」

 

 「うん・・・」

 

 「私は逸見エリカよ」

 

 「私は西住みほだよ」

 

 「西住・・・・みほは西住流の?」

 

 「元かな。愛里寿ちゃん」

 

 「ねぇ、みほ。学園艦は来てるの?」

 

 「えっ?どうしてなの?」

 

 「ママに大洗女子学園に行けって言われたの・・・・」

 

 「来てるわよ。何なら、お土産を買ったら家に来る?」

 

 「うん、行く・・・・」

 

 お土産を買い、駐車場に行くと私達の車には何故か大きなバッグが三つも積まれていたのだ。そして、駐車場に止まっていたロールスロイスから降りて来たのは一人の女性だった。

 

 「あっ、ママ」

 

 「エリカ、久しぶりね」

 

 「島田師範・・・」

 

 「それに、西住みほさんですね?」

 

 島田師範だったのだ。

 

 「はい、西住みほです」

 

 「そう、茜としほりんから聴いているわ。そして、西住流を破門された事も・・・・」

 

 「えっ?しほりん?あっ・・・・・・」

 

 私は一瞬、みほを守るために構えたが・・・・

 

 「エリカ、構えなくても大丈夫よ。それに、しほりん・・・こっほん、西住師範から面白い反応が見られたからね」

 

 「えっ?お母さんに?」

 

 

 

 

 そう、博多の屋台の駆逐戦車おでんは私達が唯一、邪魔されずに娘の話や愚痴を零す場所だった。良く、集まるメンバーはしほりんに私、茜に弘子だったりする。時々、しほりんの門下生の蝶野や私の門下生の馬鹿三人組も来たりする。

 

 「ちよきち、聴いてよ。まほが全然、話し相手をしてくれないのよ」

 

 「黒森峰があんな風になったら、忙しくて無理じゃないの?」

 

 「私は悪く無いもん。ただ、みほと逸見を破門にしただけよ?」

 

 最近、黒森峰の戦車道の生徒が転校が目立ちすぎるのは、今までは目を光らせていた逸見エリカと西住みほ、赤星小梅が居たからいじめがあまり無かったらしい。ところが、決勝の敗北の責任を副隊長のみほに押し付けただけでなく、酷いいじめと嫌がらせからみほさんは疲弊と衰弱が要因となり、三人が一気に転校し抜けた為にブレーキが効かなくなり、いじめが内部でエスカレートしたのだ。そして、転校の拍車を掛けたのはマウスの暴発事故だった。それにより、内法泰子、藤木月乃が転校。藤木月乃は運良く、ゴーグルをしていた為に失明せずに済んでいたが左腕に火傷をしている。だから、最初の三人が抜けたのが原因かもしれない。

 

 「あなたねぇ、みほさんがした事はあなたの西住流を守っただけでなく、私達の戦車道までも守ったのが分からないの?」

 

 「そんな事ぐらい判っているわよ!みほに守られた事ぐらい!でもね、認めてしまったら他の門下生に示しが付かないのよ!私だって、苦しいのよ!だから、みほを守る為に破門にしたの。そして、逸見さんには悪いと思ったけど、あの状態のみほを任せられるのは逸見さんと赤星さんしか居なかった。汚れ役は私とまほで充分なのよ!おじさん、日本酒頂戴!」

 

 全く、不器用過ぎるわよ。

 

 「じゃあ、みほさんが戦車道を再び、始めたのは知っているかしら?」

 

 「ちよきち、冗談は顔だけにしてよ。嘘よ。今のみほにそんな勇気はないわ。」

 

 「本当よ。しかも、騙されて買わされたレギュレーション違反の戦車を一部を除いて戦車を直して使用しているわ。今年の大洗は手強くなるわよ。なんだって、私達があの頃に対黒森峰対策で考え抜いた戦車ばかりだから」

 

 「本当なの?」

 

 「車両は教えられないわ。ただ、西住流と島田流の両方の作戦が組みやすいかもね。特に、みほさんなら」

 

 「なら、勘当を言わないといけないわね」

 

 「この、脳筋馬鹿!そんなことしたら間違いなく娘の二人に嫌われるわよ。特にまほさんに面と向かって大っきらいって言われて、妹を追って転校しちゃうかもね?特にまほさん、みほさんが大好きだもんね♪」 

 

 「そっ、それだけはいやぁぁぁぁ!?娘に嫌われたら・・・・うわぁぁぁぁん!?」

 

 一升瓶を抱きながら泣きわめくしほりん。

 

 だけど、みほさん、エリカ、小梅ちゃんは間違いなく強化選手になる逸材だ。

 

 他にも、弘子を通じて大洗女子学園の戦車道の選手の名簿を見て感じたが訓練次第だが、冷泉麻子、五十鈴華、秋山優花里、武部沙織はみほさんと一緒のチームなら強化選手候補いや強化選手に化けるだろう。

 

 ある意味、大洗女子学園はダイヤの原石の宝庫だったのだ。

 

 私としては大洗は島田流の息のかかる学園にしたいのだ。一応、聖グロリアーナ女学院も同じだが、両校は私の母校だからだ。

 

 黒い話、磨けば光るダイヤの原石を見逃すほど私は甘くない。これから発展していく島田流には必要な人材だから・・・・・・

 

 そんな事も分からない、しほりんに呆れつつ止めを刺そうか・・・・

 

 「ねぇ、まだ本人には言ってないんだけど、みほさんと逸見さん、赤星さん他にも大洗女子学園の生徒を私の門下生に迎えても良いかなぁ?破門にしたんだから良いよね?」

 

 「みほと逸見、赤星はダメだぁぁぁ!特にみほは私の娘よ!いくら破門にしても・・・・」

 

 「家元が破門を言った意味判る?みほさんの未来をしほりんが奪ったのよ!はっきり言うわよ!母親失格よ!それに、強化選手の条件は流派の家元の推薦が必要なのよ!破門を言ったしほりんにみほさんを推薦する資格はないわ。だから、私が育てるわ。私の門下生として・・・・・・」

 

 「ひっくぅ・・・・みほ、ごめんなさい!うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 しほりんは泣き崩れたのだ。

 

 しほりんは娘を破門にした事の重大さに気付いたが全てが遅すぎたのだ。

 

 事の重大さをエリカ達に隠しつつ話したのだ。

 

 

 

 

 

 「って、感じに泣いて居たかな?」

 

 それを聴いた私は、あの西住師範を泣かす島田師範が怖くなったのだ。

 

 「でも、実は言うと私は表立って教えられない。西住流とは喧嘩をしたくないからね。だから、こう考えたの。私がダメなら、娘を生徒として送ればいいとね。愛里寿ちゃんは丁度、門下生との試合で怪我して三ヶ月ほど寝込んでいたから進学してないのよ。学園長との話し合いで入学式を逃したけど、一年生として飛び級して転入する事になったわ。住む場所も茜に頼んでアパートもエリカ達の部屋だからよろしくね」

 

 「えっ?」

 

 「エリカ、みほさん、私の島田流に門下生になる、ならないはまだ、答えなくて構わないわ。だから、ゆっくり考えなさい。自分はどうしたいかを答えが見付かったら力を貸すわ」

 

 

 島田師範はいろんな爆弾を投下して帰ったのだ。

 

 まずは、爆弾を解体、もとい島田師範の言葉を整理しよう。

 

 私とみほ、小梅は島田流で育てるらしいが答えはゆっくり考えてからにする。

 

 直接、教えられないから代わりに娘の愛里寿を師範の代役として学園に編入させた。

 

 

 考えてみると、いろんな意味で大変だとわかる。いや、考えるのを手放したと言った方が正解だろう。

 

 それにしても、みほの実家は今頃、大変な事になっているのが判ってしまったのだ。

 

 

 私は学園に戻る為、埠頭に急いで戻ったのだ。車は学園艦でも返却出来る為、バイパスから入ると風紀委員会が居たのだ。

 

 「ちょっと、待ちなさい!」

 

 風紀委員会に止められる私。

 

 「何よ」

 

 「免許も無いのに車を乗っているの?校則違反よ!」

 

 「免許なら有るわよ。はい、これ」

 

 私はポケットから免許証を纏めた手帳を渡したのだ。一応、黒森峰に居た時に普通免許からヘリコプター、大型特殊、セスナ、危険物取り扱いなど戦車道に関わる資格を全て習得したのだ。そして、大洗女子学園に来ても資格だけは更新してある。みほや小梅も大型特殊と危険物取り扱いだけは更新させている。

 

 「有るわね・・・・」

 

 「じゃあ、行くわよ」

 

 これからの生活に不安を覚えつつ、自宅への足取りはとても重く感じたのだった。助手席と後ろの座席にはみほと愛里寿がボコを抱きしめ寝息を立てて眠っていたのだった。

 

 




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