これで決勝戦は終わりです。次から劇場版に入ります
補給が終わり、追撃して来たプラウダ高校を返り討ちにすべくLにKポイントからFポイントに向けてゆっくり目立つ様に走っていた。
「楓ちゃん、砲塔の上に立ち上がるなんて危ないよ!」
「大丈夫。弾なんて中々当たるもんじゃないし」
こうしている間にも後方から迫るプラウダ高校を見付けたのだ。
「B中隊は私達のA小隊と一緒に一撃を加えたらFポイントへ逃げるよ!」
「「「「了解!」」」」
「全車、突撃!」
A中隊とB中隊はUの字を描く様に反転してプラウダ高校の戦車隊に突撃を刊行。
戦車隊を目前に二手に別れ、挟み込むように主砲や機関砲を浴びせたのだ。
「チィ!やっぱり、ここに来てみんなの疲れが一気に出たみたい」
嘆くのも無理もない。
これが中高生の体力の差だと嫌でも分かる。
すれ違い様に叩けたのは、たったの合計で四両だけだった。
逆にB中隊に被害が出て残った八両の内、逆に喰われたのが四両もやられたのだ。そして、私達のA中隊も一両が操縦を誤り、T-26と正面衝突を起こして二両とも白旗が上がったのだ。
再び、反転して一撃を加えようとした時だった。
ズッガァァァン
「なっ!?」
「エッ!?」
私達の戦車隊とプラウダ高校の戦車隊の間に榴弾が落下して雪煙が上がったのだ。
『プラウダ高校生徒会である!双方、試合を中止せよ!試合を続けるなら力付くでも止める用意がある!』
相手から叫ばれた方角には主砲を放ったと思われるプラウダ高校生徒会の旗を掲げたIS-2後期型を先頭にT-34/76を二十両を引き連れやって来たのだ。
私達の38(t)ではIS--2やT--34/76には敵わないし、37mm機関砲では豆鉄砲も良いところだし、疲労困憊のみんなには荷が重過ぎる。私は苦汁の選択をしたのだ。
「全車、停止!次の指示があるまで待機」
全車に停止を命じたのだ。
向こうでも、カチューシャが停止命令を出して停車していた。IS-2が向こうの指揮しているだろうT-26の脇に止まり、少し話した後に無線で指示が来たのだ。
『大洗女子学園付属中の隊長車はこちらに来る様に』
指示に従い、私の戦車はIS-2の脇に止める。38(t)から降りるとカチューシャも降りていた。
「あんたが付属中の隊長?」
「はい、付属中の隊長飛騨楓です」
「ふ~ん、あんた、去年の大会で川に墜ちたⅢ号戦車の車長をしてた生徒に似てるわね」
「その生徒は、元黒森峰女学園の生徒で大洗女子学園の戦車道の副隊長の逸見エリカですね。エリカさんとはいとこです」
「エッ?いとこ・・・・ごめんなさい・・・」
「それは、本人に言って上げて下さい。私はいとこというだけで、エリカさんとはただの身内なだけですから」
「判ったわ。そうさせて貰うわ」
「付属中の隊長とカチューシャ」
驚いた表情き謝ってきたのだが、それよりもIS--2から降りて来た生徒に声を掛けられ、私は驚いてしまった。
「エッ?うっ、嘘でしょ?」
「うふふふ、何かしら?」
何故なら、その生徒は今は富士演習場でみほ隊長と決勝戦で戦っているはずの人物に似ていたからだった。だけど、次の彼女の一言で杞憂に終わった。
「自己紹介がまだだったですね。私はプラウダ高校生徒会、会長のエリツィンよ。双方、試合を中断させてごめんなさい」
「私は気にしてないわ」
「プラウダ高校に勝てそうだっただけに残念かな」
私の思った一言だった。
でも、彼女はニッコリ笑っていた。
「お気になさらずにして頂くと助かりますが?」
「稼ぐチャンスだったから・・・・」
「ご心配なさらずとも大丈夫です。後ほど、それなりに埋め合わせて頂きます。それと、カチューシャ」
「はい?」
「現時刻を持って、プラウダ高校戦車道への復帰を認め、戦車道関係者は全員解放します」
「エッ?」
「それと、風紀委員長をこちらに連れて来なさい」
ロープに簀巻きにされて生徒会役員に連行されてきた風紀委員長
「私をどうする気よ!」
「あなたを含む風紀委員会の幹部には西住流家元及び黒森峰女学園に身柄を引き渡します。それと、本日付けで退学を言い渡します」
「何でよ!私が何をしたのよ!」
「大洗女子学園に保護されているクラーラが全て話してくれました」
「エッ!クラーラが生きていたの?あんな所から飛び降りて!?」
「クラーラは無事なの?」
「はい、怪我をして入院してますが無事ですよカチューシャ」
カチューシャはその場に座り込み声を上げて泣いていた。
「良かった・・・・・・ノンナ!クラーラが、クラーラが生きてたよ!うわぁぁぁぁぁ!?」
「はい、はい・・・・カチューシャ様・・・・・」
「・・・・・」
「風紀委員長達をヘリポートへ連行し、九州の西住流家元へ護送しなさい!」
うなだれ、連行されて行く風紀委員会の人達。
ただ、虚しいタンカスロンだったと私は思う。
「それと、みなさんは決勝戦をご覧になりますか?今、体育館で全生徒が観戦中です。既に付属中には席とボルシチや暖かい物を用意してあります」
「見ます」
生徒会長の案内で体育館へ移動して決勝戦を見る事にしたのだ。
丁度、体育館に着いた頃には大洗女子が市街地に入る所だった。
掲示板には残りの台数を見て、言葉を無くす付属中の面々。
「嘘・・・・」
「これって、まずくない?」
私も絶望的だとは思う。
プラウダ高校の戦力はT--44/100、IS--3が三両、ISU--152が三両に対して大洗女子はティーガーⅡが三両、センチュリオン、パンターF型だけだ。そして、パンターはズタボロでいつ止まってもおかしくないダメージを受けている。
でも、希望がある。
みほ隊長が得意とする市街地戦だ。
ここで見守る事しかできない私はただ歯痒さだけを感じていた。
市街地に無事に入る事が出来た。
しかし、断然不利であることには変わらない。
「みほのティーガーⅡにタングステン弾頭は残りいくつなの?」
『エリカさん、ちょっと待って下さい。優花里さん、タングステンは残りいくつですか?・・・・・・二発ですか。ありがとうございます』
「アンチョビは?」
『わたしか?ちょっと待ってろ。カルパッチョ、タングステンは残りいくつだ?・・・・八発まるまるあるが、どうした?』
「アンチョビ、悪いけど、みほと私に二発づつ分けてくれない?」
『その前に、逸見の残弾はいくつなんだ?』
「悪いわね。最初のIS--2の迎撃で残弾は無しよ。もし、エレファントが残っていたらそっちから分けて貰う積もりだったから」
『だから、IS--2を正面からぶち抜けたのか?』
「いえ、バイザーブロックを狙う様に指示しただけよ。ただ、通常弾では不安だったからタングステン弾を使わせたわよ」
「よし、判った。タングステン弾を分けてやるから通常弾を二発よこせ。それで、残弾数は同じになるだろう。それにしても、高速徹甲弾はないのか?」
「買ってないわよ。みんな口を揃えて言って来るけど何気に高いのよ。まだ、安いタングステン弾の方がましよ」
『そうでね。私だけだったら両方買わずにいたかも。でも、エリカさんには弾薬の仕入れをやって貰っていたから感謝ですね』
急ぎ、アンチョビのティーガーⅡに横付けしてタングステン弾を貰い通常弾を渡したのだ。
同じくらいにして、プラウダ高校の戦車隊が市街地へ入ったと偵察に出ているレイラと愛里寿から無線が入って来た。
『プラウダ高校の本隊が市街地に入ったわよ。先頭にはIS--3で固められて、後方にはISU--152が脇を固めてる。私と愛里寿副隊長車は路地から迂回して合流するね』
『ちょっと待って下さい。そのまま、作戦を発動します。待ち伏せして各個撃破します。名付けて〈こそこそ作戦〉です。私もT--44/100と決着をつけます。なので学校の校舎の中庭におびき寄せる必要があります。皆さんも各個撃破か誘導をお願いします』
「みほ、その作戦乗ったわよ。ただ、私はIS--3をやらせて貰うわよ。なんか、向こうの副隊長は昔の私の様に見えるし、もしかしたらみほの邪魔をするかもしれないわね」
『分かりました。IS--3の引き付けはエリカさんにお任せします』
「ありがとう、みほ」
『じゃあ、みほ。私はISU--152をレイラと一緒に撃破する。みほはT--44と戦う事だけを考えて』
『では、皆さん作戦開始です』
私は一路、みほと別れて市街地へと入った。
メインストリートからは愛里寿のセンチュリオとパンターがプラウダ高校の戦車隊を引き付けて誘導していた。私も路地から単独でIS--3が通るのを待ったのだ。
『エリカ、もう少しでそちらに着く。IS--3の引き離しを任せる』
「了解。小梅、機銃用意」
「了解。IS--3が来たら撃つね」
『こちら、レオポンチームISU--152の引き離しに成功。そちらにT-44/100とIS--3が向かった。ワニさんチームIS--3を任せる』
「了解。アンチョビ、やるわよ!』
『任せろ!後ろから、一撃をくれてやる!』
ドッゴォォン
『よし、一両撃破!マズイ!?もう一両居たぞ!ペパロニ、下がれ!』
とみほのティーガーⅡが通り過ぎるとアンチョビのティーガーⅡかメインストリートに出て、右端のIS--3に主砲を撃ち込み撃破。しかし、もう一両に気付かれ追われる事になった。アンチョビも必死に逃げて引き離しに成功したのだ。
私もT--44/100の後ろのIS--3に機銃を撃ち込んだのだ。
「今よ!」
「了解!」
ガッガガガガガガガガ
MG-34がIS--3の側面を機銃でノックする。
「また、貴様か!」
「あら、奇遇ね。私も隊長の所には行かせないわよ!」
キュポーラから身を乗りだし激昂するジェーコフ。
私もみほには生かせまいとIS--3目掛けて突撃したのだ。
「正気か!?突っ込んで来るなんて聞いた事がないぞ!撃て!なんとしても、カツコフ様の後を追うのだ!」
慌てたジェーコフのIS--3が主砲を放つ前に体当たりで射線をずらす。
「あんたこそ、私の事を何て呼ばれているか知ってる?」
「知らん!野良試合ばかりだったからな!」
私はジェーコフの顔を睨みながら、ニヤリと笑う。
「知って置くのね。私は大洗女子の狂犬、逸見エリカよ!あんたなんかにみほの所には絶対に行かせないわよ!」
「なら、狂犬らしく調教をしてやろう!」
「調教だけならみほだけで充分よ!それにしても、IS--3は軽いわね!ティーガーⅡで簡単に押せるわ!」
「ティーガーⅡが重過ぎるのだ!」
キュポーラから叫び合う私達。
ティーガーⅡはバス乗り場のスロープまでIS--3を押して行く。
「良いこと教えてあげるわ!あそこのスロープまで押したら、あなたの戦車はどうなるかしら?」
「ハッ!?やめろ!そんな事したらひっくり返るだろう!」
「叫んでも無駄よ!いい加減に寝てなさいよ!」
ガッガガガガカガ
履帯が装甲を掠める度に火花を散らし、IS--3をスロープに押し上げる。
そして、IS--3の履帯か片方が法面に落ちるとシーソー状態になったのだ。
「そのまま寝てなさい!」
上がっていた左側の履帯を勢い良く体当たりしたのだ。
「うっ、わぁぁぁぁぁぁ!?」
ジェーコフは叫びながらIS--3はひっくり返り、白旗を掲げたのだ。
一方、目を覚ました私は市街地での戦闘をモニターから見ていた。
「ペコ、装甲の堅いIS--3をあんなふうに倒せるのね」
「ダージリン様、あれはエリカさんだけじゃないですか?」
「いえ、今度、試してみようかしら」
「やめたほうが良いかもしれませんよ?」
そして、ケイがお腹を抱えて笑うのは一回戦以来かもしれない。
「あっ、ハハハハ!?」
「ケイ、笑ってどうした?」
「だって、ナオミ。久しぶりにエキサイティングな戦いを見られたのよ!笑わないともったいないじゃない」
市街地に入ってからは味方からの立て続けの被害報告に私は愕然としていた。
私の作戦の読みは間違っていないはず。
何故、逆を突かれた?
だって、現に西住みほの作戦を全てを読み切り、奇襲を掛けさせて破綻させたのに・・・・・
地図を見て、遠距離からの砲撃を事前に察知できたから砲撃される前に叩き潰したのに・・・・
島田愛里寿のプロフィールや流派を確認して別方向からの奇襲を警戒し、逆に奇襲をしたのに・・・・・
どうして・・・・・
そして、聖グロリアーナのダージリンも性格的にリベンジを掛けて来る事も察知して参加を見越して重駆逐戦車を用意した。これだけは上手く行き、完封無きに叩き潰した。
だけど、西住みほは間違っていた。
IS--2による重戦車による奇襲を跳ね退け、丘を取る事を事前に察知して残りのIS--2で防御陣地まで作らせたのに丘を奪取された。しかし、数の不利から何処かに消えた。
私は市街地に来ると読んでいた。
読みは当たっていた。
その、予想を裏切る形だったが・・・・・
市街地戦を仕掛けられた私達に襲い掛かるのは破滅への序曲だった。
市街地戦では駆逐戦車は使い物にならない。
しかし、待ち伏せなら違っていただろう。
しかし、攻める側になれば、相手は通り過ぎるのを待って居れば後ろはがら空きでただの鴨に成り下がる。
予想通りに狭い路地に誘導されセンチュリオンとパンターに撃破された。
次に狙われたのは、白百合戦車旅団が誇る重戦車のIS--3だった。
市街地の路地を巧に使い、後ろからの撃破。
あのヘンシェル砲塔のティーガーⅡの車長は待ち伏せを心得た人物だろう。
そして、あの西住みほの脇にいる副隊長だ。
白百合でもかなりの熟練度を誇る彼女のIS--3をひっくり返すやり方で撃破したのだ。
本当に、この西住みほと副隊長の逸見エリカと島田愛里寿は楽しませてくれる。
まるで、チェスをしながら紅茶を嗜むように私が浮かばない様な新しい戦術や作戦をいくつも繰り出してくる。
あの時の島田かのんの様に・・・・・・・・・・
彼女がドイツに行く時に言われたな。
《カツコフちゃん、私達は野良試合で名を上げたけど、戦車道は全くの別物よ。私はバイパーちゃんの後を追ってドイツに行って、戦車道は何なのか肌で感じて来るよ。だから、戦車道をするなら今までの戦術は通用しない》
全くその通りだ。
しかし、西住みほは野良試合で使われた手を幾つもやって来た。
そうか。
そうだったのか。
だから、私は事前に察知出来た。
そして、逆に叩き潰せたのか。
かのん、判ったよ。
言っていた意味が・・・・・
そして、彼女の立てた作戦は戦車道のやり方そのものなのだな。
私も釣られて、西住みほのティーガーⅡを追って学校の中庭でサシの勝負を挑もうとしている。
なら、丁度良いじゃない。
お互い、フラッグ車同士だ。
今は目の前の事に集中しよう。
先に走り出したのはティーガーⅡだった。
まるで、正面から戦わない様に走り出す。
私も後を追う様に走り出す。
「戦車、前進。あのティーガーⅡを必ず仕留めろ!」
私も誇れる仲間と共にティーガーⅡを追う。
「カツコフ様、ぐるぐる回られたら照準がつけられません!」
この100ミリ戦車砲ならティーガーⅡの正面装甲を撃ち抜ける。
しかし、当たればの話しだ。
T--44も前面装甲は堅いが軽量化の為に側面は薄い。
殺気を感じて停車を叫ぶ。
「ハッ!?急停止!」
校舎の窓からの砲撃だった。
向こうの砲手はかなり手慣れだ。
窓と窓が真っ直ぐなら躊躇せずに撃ってくる。
100メートルも離れていないからお互い、一撃が決まれば決まる距離だ。
「打ち返せ!アーゴイ!」
虚しく校舎を破壊するだけだった。
なら、これはどうかしら?
「榴弾装填!校舎を崩して進路を阻め!」
これで逃げ道が無くなるはずだ。
「砲手、次の角を曲がったら砲撃!」
しかし、砲撃は当たらない。
それは、急速にバックして体当たりをされたからだ。
信地旋回で真っ先に逃げられ、再び中庭で対峙する。
次は決める・・・・
再び、走り出すティーガーⅡ
私は砲撃を命じた。
「アーゴイ!」
しかし、砲撃は当たらず砲弾は虚しく空を切るだけだった。
「何処に行った!」
まさか・・・・私は顔を横に振り向いた。
私の視界に映し出された光景。
こんな機動をして良いのか?
絶対に足周りが壊れる。
それは、ティーガーⅡが足回りの転輪や履帯を吹き飛ばしながら慣性ドリフトをして背後を取ったのだ。
ティーガーⅡによって放たれる砲弾。
エンジンルームに直撃したT--44
言われずとも分かっている。
パッシュ
T--44に揚がる白旗。
「負けたのだな・・・・・」
私は瞳を閉じて敗北を認めたのだ。
そして、アナウンスが流れる。
『プラウダ高校、フラッグ車走行不能!よって、優勝は県立大洗女子学園!』
プラウダ高校の体育館でその瞬間を見た私達は一斉に叫んでいた。
「「「大洗女子学園が優勝だぁぁぁぁ!?」」」」
詩織が泣きながらやって来る。
「楓ちゃん、来年から通えるよ!うわぁぁぁぁん」
「良かったじゃない。あんこうチームにいるお姉ちゃんと通えるからさ。でも、泣くんじゃないわよ!。釣られて、私まで・・・・・ひっくぅ・・・・やっと、通えると思うと私だって・・・・・うわぁぁぁぁ」
泣いていたのは、私達だけではなかった。
付属中の三年生は来年からは大洗女子学園に入学が決まっている。
だからなのだ。
私達、三年生は全員抱き合い、声を上げて泣き叫んだ。
後ろでは、悔しくて泣くプラウダ高校の生徒達が拍手で大洗女子学園の優勝を讃えていた。
同じくして、富士演習場でも勇猛果敢に戦い傷付いた私が乗るティーガーⅡとサイドアーマーや工具箱が破壊されボロボロの愛里寿のセンチュリオン、装甲がベコベコに凹みかろうじて動いているレイラ達が乗るパンターF型の三両と回収車にワイヤーで牽引されたみほが乗るティーガーⅡが大洗女子の生徒が待っている観戦席まで戻って来たのだ。
一斉に駆け寄る生徒達や泣き出す生徒までいた。
私もティーガーⅡを止めて降りると小梅が泣きながら抱き着いて来た。
「うぇぇぇん!?エリカちゃん!やったよ!優勝出か来たよ!うわぁぁぁぁん」
「ほら、小梅。ハンカチで顔を拭きなさい。涙で顔がグチャグチャじゃない」
「うん、ありがとう」
涙を拭くまでは良かったが、鼻をかんだのだ。
「ちょっと小梅!鼻をかむんじゃないわよ!」
向こうでは、アンチョビのティーガーⅡの砲手を努めた杏会長と無線手をした河嶋さん、私のティーガーⅡの操縦手をした小山さんがみほにお礼を言って河嶋さんが号泣していた。
そして、杏会長は
「西住ちゃん、これで学校が廃校にならずにすむよ・・・・」
「はい・・・えっ、会長さ・・・」
みほに抱き着いて
「ありがとね・・・・」
杏会長が見せる初めての涙だった。どれだけの重責だったかは、私には分からない。でも、一つだけ言えるならみほ以上に孤独で辛い戦いをしていたのは彼女だったかもしれない。
そして、みほも
「いえ・・・・わたしこそ・・・・ありがとうございました!」
私でも、実感できる学校を守った事実。
「エリカさん!」
抱き着いて来たのは、みほだった。
「エリカさん、やっと夢が叶ったよ」
「そうね。わたしもよ」
私もみほににこやかに微笑みを返す。
「エリカさん、わたし・・・・」
「言わなくて良いわ。だって、みほと肩を並べて戦車道が出来て、こうして、優勝が出来たのよ。最高じゃない」
「うん!エリカさん!」
私に最高の笑顔を見せるみほは私の唇に優しく唇を重ねたのだ。
「「「「「えっ、えぇぇぇぇぇ!?隊長と逸見さんって恋人同士だったの!?」」」」」
今更ながら、騒ぎ出す一年生と生徒会の三人。
「良し!みんなで打ち上げだよ!ガールズトークもしちゃうよ!ついでに、二人のなれ染めを聞いちゃおう!」
「「「「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
杏会長からの打ち上げで根掘り葉掘り聞く積もりだ。
そんな事実に気付いた、みほは瞬間湯沸かし器の様に顔が真っ赤にしていた。
「あわ、あわわ。どっ、どうしよう、エリカさん!」
「馬鹿ね。どうしようもないでしょ!しかも、全国中継で何かましているのよ!」
「だって、嬉しかったから・・・・」
「だからって・・・・みほ、逃げるわよ!」
「うん、エリカさん!」
私はみほの手を握り走り出す。
小梅もレイラも気付き、私達を追って叫んでいた。
「えっ!エリカちゃん、みほちゃん!わたしを置いて行かないでよ!」
「小梅ちゃんの言う通りよ!エリカちゃん、私まで置いて行くな!」
そんな日常がいつまでも続けばと私はみほの笑顔を見ながらそう思っていたのだ。
三日後、私達は地元である大洗に帰還した。
大洗女子学園、アンツィオ、聖グロリアーナの学園艦が大洗港に停泊している。
大洗駅から降りた戦車群は大洗女子学園の十七両の後ろからは付属中の二十二両の38(t)も参加している。
何とか、整備担当が動けるまでは修理したが私達も付属中も激戦だった事を戦車がボロボロな事で物語っている。
もちろん、優勝旗を掲げるのはみほのティーガーⅡだ。
大洗港にある私達の学園艦まで凱旋パレードだ。
「小梅、帰って来たわね」
「そうだね。エリカちゃん」
私達は、学園へ帰って行ったのだ。
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