ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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集いし英国淑女と怒りのダージリン

 

 朝のまほさんの侵入事件の後、私は叔母さんとキッチンの換気扇を直すハメになってしまった。理由は言わずとも分かるだろう。まほさんがここの換気扇を外枠ごと外して侵入したからだった。

 

 「この換気扇高いのよ!」

 

 ギャアギャア言いながらもドライバー一本で手際よくハメ直していく叔母さん。

 

 一体、何者かと思ってしまう。

 

 現に学生と学園の教員向けのアパートを数棟を経営していており、大洗女子付属中の戦車道の監督をしている事を娘である楓から聴いていた。そして、今度は複数の高校生を対象としたシェアハウスまで始めたのだから経営者としての腕はあるのだろう。

 

 モデルケースとして私達の新しい自宅だったりする。

 

 さておき、ミカさんはみほと愛里寿に一緒に登校する形で生徒会室へ連行され、小梅とレイラで登校したのだ。

 

 ただ、レイラの荷物は黒森峰から直送で来る予定だが、大洗女子の制服をまだ貰っていない為に鞄に入っていた黒森峰の制服で登校していた。

 

 昨日、風紀委員に言われたのだが大丈夫かと心配になる。

 

 それは、レイラが許可書を忘れていたからだった。

 

 私も叔母さんとの修復作業が終わり、急いで学園に登校したのだった。

 

 

 そして、予想は当たっていた。

 

 「ちょっと、校則違反よ!制服が違うわよ!」 

 

 「昨日の今日で制服が間に合う訳ないでしょ!」

 

 「そうだよ!園さん、生徒会長に許可を貰ってます!」

 

 「それでも、規則は規則よ!」

 

 レイラは風紀委員会の委員長の園に捕まっていたのだ。

 

 「風紀委員長、ちょっと良いかしら?」

 

 「逸見エリカじゃない。あなたまで、私に文句を言いに来たの?」

 

 「違うわ。これをレイラに渡すのを忘れただけよ」

 

 私は生徒会長の直筆の許可書を見せたのだ。

 

 制服が出来るまでの一週間、元の黒森峰の制服が使用出来るように生徒会が認可した許可書だった。

 

 「まぁ、良いわ。風紀委員会は逸見エリカを何時でも睨んでいることを忘れないでよ」

 

 そう言って園は校門に戻って行ったのだ。

 

 「ありがとう、エリカちゃん・・・・」

 

 「別に構わないわよ。まだ、レイラには許されてなんだから」

 

 「そうね。黙って去った事は怒ってはいるけどね。でも、こうして一緒に戦車道が出来るのはうれしいな。だから、おあいこだよ。エリカちゃん、これでどうかな?」

 

 「そう?レイラ、改めてよろしく頼むわね」

 

 「エリカちゃん、レイラちゃん!私を忘れないでよ!」

 

 「小梅も居たわね」

 

 「もう、エリカちゃんは!」

 

 「ところで、みほは?」

 

 「先に生徒会室に行ったよ。ミカさん達の処遇を会議で決めてるみいたいだよ」

 

 

 

 話しをているうちに校舎前に来たが、十台の黒塗りのロールスロイスが停まっていた。

 

 「ねぇ、何処のお嬢様だろう」

 

 「でも、車に掲げられてる旗って、聖グロリアーナ女学院のよね?」

 

 「えっ、じゃあ・・・聖グロリアーナからの転入生かな?」

 

 車の周りには生徒の人盛りが出来ていたのだ。

 

 「エリカちゃん、あの車・・・・」

 

 「多分、聖グロリアーナ女学院の車ね」

 

 一台の車から付きのメイドが後部座席の扉を開けると、見慣れた女子生徒が降りて来たのだ。

 

 「エリカ様、久しぶりですわ」

 

 「ダージリンだったのね。こんな人数で押し寄せて、一体何のようかしら?」

 

 「あら、あんまりですわね。一昨日の継続高校の事を知らせたのに」

 

 「えぇ、聴いたわ。それにしても、かなり怒っているわね」

 

 「えぇ、当たり前ですわね。ローズヒップではありませんが、腹腸が煮え繰り返すほど怒っていますわ。昨日、我が校の生徒会長が自ら杏様に電話を差し上げましたが返答が帰って来ませんでしたので、こうして、直接来たのですわ」

 

 今の非常にまずい状況だった。

 

 生徒会室は、継続高校の生徒とミカさんの処遇に付いてみほを交えて会議中だ。

 

 そして、継続高校の生徒も食堂で処遇が決まるまで待機させている。

 

 それにしても、ダージリンだけで来るはずがないのだ。

 

 だが、いつもならオレンジペコとアッサムが居るはずなのに・・・・

 

 「ところで、連れはどうしたのよ?」

 

 「あら、オレンジペコとアッサムの事ですの?お二人でしたら、プラウダ高校の潜入調査ですわ」

 

 「あんた、二人を見殺しにする気なの?」

 

 「確かに、今のプラウダ高校は魔の巣窟ですわね。ですが、1時間後にこの学園に戻ると連絡が在りましてよ。ところで、みほ様はどちらに?」

 

 いつも以上に揺さぶりを掛けて来るダージリン。

 

 私には用がないらしい。

 

 「みほなら職員と生徒会を交えての会議中よ」

 

 「アッサムの情報は正しかったようですわね。上空から見た時に、荒れた演習場と壁が崩れた戦車倉庫が見えましたの。結論からして、その会議は継続高校の処遇かしら?」

 

 「そっ、その通りよ」

 

 知っていたから、校舎前に待機していたってところね。

 

 「では、わたくし達は会議が終わるまではティータイムかしらね?」

 

 「もし、参戦が駄目ならどうする気なのよ?」

 

 「あら、断れない理由を作れば良いだけですわ。プラウダ高校のお陰でわたくし達の戦車はほとんどがスクラップになりましたのよ?でも、こちらにもセンチュリオンがありますわ。準決勝ではエンジンブローでエンジンが駄目にしている。なら、スクラップになったセンチュリオンのエンジンやいろいろな手土産を持参してきたとなれば、多少は違くてよ」

 

 「本当、あんたは食えないわね」

 

 「ウフフフ・・・・・褒め言葉として受け取りますわね」

 

 ニヤリと微笑すると、そのまま校舎に入って行ったのだ。

 

 「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

 「何かしら?」

 

 「何処に行くつもりよ?」

 

 「決まってますわ。食堂で待機してますわ」

 

 「全く、仕方ないわね。食堂に案内するわ」

 

 私は、ひとまず食堂へと案内してダージリンと別れたのだ。

 

 別れた後、私は教室に向かったのだった。

 

 

 HRでは私のクラスに転入生がやってきた。

 

 「転入生を紹介するから皆さんは席に着いて下さい!」

 

 副担任が全員に席に着く様に促していた。

 

 全員が席に着き、副担任は紹介を始めたのだ。

 

 「今日から二人の新しい生徒が来ます。では、入って下さい」

 

 教室に入って来たのは、レイラとローズヒップだった。

 

 「黒森峰女学院から来ました楼レイラです。よろしくね」

 

 「聖グロリアーナ女学院から短期転入で来ました野薔薇里美ですわ。よろしくですわ」

 

 まさか、ローズヒップが二年生だったとは知らなかった。

 

 いつも、オレンジペコかアッサムに怒られていた記憶しかないのだから・・・・

 

 ローズヒップがクラスに来たって事は聖グロリアーナ女学院の短期転入を生徒会が認めたらしい。これは、ローズヒップに確認するしかなかったが、先に生徒会から呼び出しが掛かったのだ。

 

 『三年普通Ⅱ科A組安斎千代美、三年普通Ⅰ科B組三田麗華、二年普通Ⅰ科B組逸見エリカ、二年普通Ⅰ科B組楼レイラ、二年普通Ⅰ科A組西住みほ、一年普通Ⅰ科A組島田愛里寿以上の者は至急、生徒会室に来て下さい。もう一度、繰り返します・・・・』

 

 その前に三田麗華は誰だろと思って居ると、ローズヒップが呟いて居るのが聞こえたのだ。

 

 「えッ?ダー様の本名が・・・・」

 

 ダージリンだったらしい。

 

 「えッ?」

 

 ちょっと、待って欲しい。

 

 私は三田麗華の名前に聞き覚えがあった。

 

 それよりも、呼び出しが掛かっているため急いでレイラと生徒会室へ向かったのだ。

 

 

 生徒会室では、既にメンバーが揃っていた。オレンジペコとアッサムは川嶋さんの手伝いを受けながら撮影してきた映像の準備を終わらしていた。

 

 「やあぁ、授業中でも集まって貰って悪いねぇ。オレンジペコちゃんとアッサムちゃんの二名がプラウダ高校を映して来たから見るよ。映像の説明はアッサムちゃんに任せるよ」

 

 一枚目の写真に映し出されたのは金髪碧眼の美少女だった。それは、気高く気丈な女性だと分かる。例えるなら、北欧神話の戦乙女を連想できた。

 

 「アッサムことアンリー・R・澤村が説明致しますわ。まず、プラウダ高校の隊長は元赤軍高校の二年生のカツコフでありますわ。そして、赤軍高校では白百合戦車旅団の総隊長を経験しており、赤軍高校での内部抗争により生徒会長を失脚。指揮する、白百合戦車旅団を連れプラウダ高校へ転入しましたわ。白百合戦車旅団に付いてですが、総数百五十両の戦車旅団です。装備はT-44/100が十両、IS-3初期型が十両、ISU-152初期型が二十両、IS-2初期型が三十両、SU-100が十五両、SU-122が十五両、T-34/76が三十両、T-34/85が二十両です」

 

 数を聞いて唖然とする私達。

 

 仕方ないのかもれない。

 

 だけど出て来るのはその中の二十両だけだ。

 アッサムの説明が続く。

 

 「カツコフが隊長まで就任した経緯ですが、ダージリン様が睨んだ通り次期隊長候補はカチューシャで副隊長のノンナでしたわ。そして、直後に起きた前隊長の責任追及で失っていたようです。その時にカツコフは指揮能力の高さから隊長に抜擢され隊長になりましたわ。ですが、カツコフの指揮とは裏腹に暴走しているのはプラウダ高校の風紀委員会でしたわ。戦車道の生徒として多数を占めていただけにカツコフが就任以前にプラウダ高校と継続高校は戦車を賭けての賭博試合をかなりの頻度でしていた。ミカ様、間違いないですか?」

 

 「その通りさ。私が隊長になってからは八両の戦車を試合に勝ってプラウダ高校から手に入れたのさ。それと、訂正するとこうさ。最初の試合でKV-Ⅰを二両を勝ったら譲るとなって試合をしたのさ。もちろん、私達は戦力が欲しかったから試合に承諾したさ。そして、殲滅戦で勝った。ところが、負けたのが悔しかったんだろうね。次はIS-2を賭け、次はSU-152を賭けて行きプラウダ高校は連敗を重ねたのさ。今回の一件だってそうさ。カツコフ隊長は全く悪くない。むしろ、その八両の所有すら認めていたさ」

 

 ミカさんの一言にざわめく生徒会室。

 

 ミカさんは全てを話すようだった。

 

 「ところが、認めない人達が居たのさ」

 

 「プラウダ高校の風紀委員会の面々だった?」

 

 「杏さん、そうさ。風紀委員会から代々隊長が選出されて来た伝統があるが、最初に隊長に選ばれたのはカチューシャだった。彼女も小さな暴君と言われるだけに期待していた。しかし、去年の大会での行動を隊長の命令と言われても責任を取らされたのさ。カチューシャの就任を良しとしない風紀委員会の謀略でね。そして、風紀委員会は北海道にある赤軍高校の次期生徒会長を選出する内部抗争を利用したのさ。自分達の新しいマリオネットになる隊長を呼び寄せる為に民主派の派閥に力を貸して赤派が敗北したのさ。そして、赤派にいたカツコフは白百合を連れてプラウダに流れた。そして、結果的にプラウダ高校には風紀委員会の力が強まると共に強力な戦車や高い熟練度を誇る生徒を大量に確保出来たのさ」

 

 今度は杏さんが説明を始めたのだ。

 

 「ところが、風紀委員会にしたら妹の転入は計算外だったんだね。カツコフちゃんは赤派には居たが実は民主派の生徒だった。双子の妹を人質に赤派に取られていたが赤派の敗北と同じして妹を救出してプラウダに逃げ込んだんだよ。それの深い事情を知らずに風紀委員会は受け入れたんだ。転入後にカツコフちゃんの双子の妹のエリツィンちゃんは元々在った高いカリスマ性で生徒会長に就任してしまった。武にカツコフ、知にエリツィンで風紀委員会は力を急速に失って行った。そして、風紀委員会は最悪の一手を思い付いたんだよ。戦車道の試合中に問題を起こせば生徒会長と隊長の失脚のチャンスになる。外道なやり方だけど、あの準決勝が一番早い方法だった。以前から因縁が在った継続高校との準決勝を利用したんだね。いやぁ、こちらでも調べたからね。丁度、聖グロリアーナ女学院から参戦の打診が来たからね。ある意味、助かったよ」

 

 「そうさ。これがあの試合で起きた事さ」

 

 「ところでさぁ、橘ちゃんはあれを買ってきたかな?」

 

 「あの、良いですか?これを積ませても・・・・」

 

 オレンジペコがテーブルの上に置いたのは二種類の砲弾だった。

 

 「非殺傷性の砲弾だからね。実際に野良試合で使われているけどさぁ、砲弾は戦車を貫通するけど服だけが破けて裸になる砲弾と同じくキャニスター弾だよ」

 

 それを聞いた私達は顔を真っ青になった。

 

 正直、冗談ではない。

 

 もし、みほがやられたら全裸のみほを見る事になる。それをまほさんが見たら鼻血を大量にだして倒れているだろう。

 

 そんなものを見られたら、下手したらお嫁にいけないレベルだろう。

 

 いや、その前に戦車道の公式試合に出られなくなるだろう。

 

 「あの、杏さんさすがにその砲弾は・・・・」

 

 「西住ちゃん、その砲弾はうちら(決勝戦組)には積まないよ。積ませるのは付属中に貸し出したヘッツァー、Ⅲ号突撃砲F型、三式中戦車に積めるだけ積んで貰うよ。あと、無償で38(t)C型を十一両を貸す事にしたよ。勿論、付属中の校章には書き換えるけどね。決行は決勝と同じ日に付属中には編成が済み次第プラウダ高校にタンカスロンに行って貰うよ」

 

 ガッタァ

 

 「杏さん無謀です!無茶です!下手したら全滅します!せめて、作戦が細かく練られる人がいないと!それに弾薬だって無限じゃないんです!」

 

 席から立ち上がり叫ぶみほ。

 

 全滅の可能性が高いのは分かる。タンカスロンは10t未満の戦車だけだがプラウダにも大量の軽戦車がある。数の暴力に曝され事を予見したのだ。

 

 「みほ様、心配には及びませんわ。聖グロリアーナ女学院からは弾薬運搬型のチャーチルが行きますわ。それに、同行するのは監督の茜様に参謀には角谷学園長ですわ」

 

 「それに、第二弾薬庫の弾薬も積めるだけ持って行かせるからよろしく」

 

 第二弾薬庫と聞いて私は分からなかった。

 

 「杏さん、第二弾薬庫の中身は何なの?」

 

 「えっとねぇ、川嶋!」

 

 「逸見、これがリストだ」

 

 私は川嶋さんからリストを渡されたのだ。

 

 中身は・・・・

 

 「えッ?戦車道対応型のパンツァーファウストに中身が催涙ガスの手榴弾に吸着地雷・・・・」

 

 まさかだとは思いたいが叔母さんはタンカスロンで使って暴れていた風景しか思い浮かばない。

 

 「エリカ様、あと宜しければパンジャンドラムもありますわよ?」

 

 そんな、欠陥兵器は要らない。下手したら仲間まで巻き込み兼ねない。とあるコミックでは仲間まで巻き込み窮地に陥った様子が描かれていただけに断りたい。

 

 それもだが、決勝に向けて準備しないといけないのだ。

 

 そして、愛里寿も

 

 「ダージリン、あんな欠陥兵器は要らないから弾薬運搬戦車と野外飯事車をもっと出して。みほが言ってた通り、確実に数の暴力で来るはず。タンカスロンなら補給ポイントさえ決めれば長期戦も大丈夫」

 

 とバッサリ切られたのだった。

 

 「あら、厳しいですわね。分かりましたわ。弾薬運搬戦車を増やしますわね」

 

 「野外飯事車ならアンツィオから調理が出来る生徒付きで出そう。動けるのはアンツィオと聖グロリアーナ女学院だけだしな」

 

 今度はみほが立ち上がり、プラウダ戦に着いて話始めた。

 

 「この度は聖グロリアーナ女学院まで短期転入の件はありがとうございます。はっきり言って去年のプラウダとは全く違います。白百合戦車旅団の戦い方は優花里さんにも見に行って貰いましたが、結論からして野良試合で付けた力だと思われます。実戦と変わらない戦い方が予見出来ますので細心注意が必要です。聖グロリアーナ女学院の生徒にはエレファントが二両、レオパルド偵察戦車が二両、ミカさんが発見し返却してくれた戦車であるクロムウェル巡航戦車の五両を使って貰います」

 

 「作戦はございますの?」

 

 「大洗女子の戦車は全部で十六両が参加します。それを四つの小隊に分けます。シュトルムティーガーとブルムベアーの砲撃支援小隊、センチュリオンを小隊長車に切り込み役のパンター小隊、重戦車が中心の小隊、それを支援する小隊で全部で四つです。フラッグ戦ですので二つの小隊を援護しつつプラウダ本隊に奇襲します。ただ、奇襲の鍵は真っ先にIS--3とT-44/100を倒す必要があります。この戦車だけはとにかく堅いので集中して叩きたいと思います」

 

 黒板に貼られた要注意車両をタクトて指しながら淡々と説明していく。

 

 私もIS-3とT-44/100は危険だと思う。

 

 あの異常な程の硬さはティーガーⅡの主砲で撃ち抜くのは正直キツイ。

 

 むしろ、弾かれる。

 

 そして、出来るなら一番やりたくない戦車だ。

 

 「ちょっとよろしくて?」

 

 「ダージリンさんどうかしましたか?」

 

 「その二両の他に追加したい車両が在りましてよ。ISU-152を追加してくださるかしら?」

 

 「どうしてですか?ISU-152はそんなに厄介ではありませんが?だだ、気をつけるなら152ミリカノン砲位です」

 

 確かに、ISU-152は厄介ではない。

 

 側面に当てれば簡単なはずだ。

 

 「いえ、言いにくいのですが、わたくし達はあれにやられたので・・・・」

 

 確かに、二回戦の映像ではダージリン達はIS-3とISU-152の集中砲火でやられていたわね・・・・・

 

 「いざとなれば、私達で片付けるわ」

 

 「助かりますわ」

 

 「それでは、具体策を詰めて行きたいと思いますので放課後に付属中を加えての作戦会議を開きますのでお願いします」

 

 みほが締めると解散となった。

 

 一応、ミカさん率いる継続高校の面々の処遇だったが一切のお咎め無しとなったが、それは表向きだ。実際は見付けた、クロムウェル巡航戦車が二両、IS-2後期生産型だったがクロムウェル巡航戦車を一両だけを返還させて、残りは適性価格で継続高校に売却したのだった。

 

 

 

 

 

 場所が変わり、西住家ではニコニコ顔の島田師範と対面するかの様に顔を真っ赤にしているお母様が座っていた。そして、私は島田師範の脇に置かれ手土産の様に布団とロープで簀巻きにされたまま放置されていた。

 

 「島田流家元、まほは物ではありませんが?」

 

 「あら、本当ね。返却物って貼られてるわね」

 

 師範の事だ。

 

 お母様を徹底的に弄り倒す気なのだろ。

 

 それよりも、私を解放して欲しい。

 

 私はみほの元に行く使命が在るのだ。

 

 そして、みほに言ってやるのだ。

 

 私は『返却物』ではない!

 

 私はお姉ちゃんだと!

 

 それにしても、最近のみほとエリカが冷たいのは何故だろうか?

 

 そして、二人は一緒のベッドで抱き合う様に眠っていた。

 

 そして、二人の表情は安心した様な寝顔だった。

 

 お母様と島田師範が居なければ叫びたい。

 

 みほの寝顔と一緒に寝るのは私だと・・・・・

 

 仕方ない。

 

 やりたくないが、芋虫の様に脱出を・・・・・

 

 ガッシィ

 

 「えッ?」

 

 進めないのは何故?

 

 私はこっそり、島田師範の手を見てみた。

 

 握られているのはロープだった。

 

 そして、繋がっている先は・・・・

 

 私だった。

 

 「まほ・・・」

 

 「まほさんどちらに?」

 

 顔は笑顔だが目の笑ってない二人。

 

 逃げる事を許されない状況に私はこの先どうなるのか予想が出来た。

 

 だが、私はみほの元に帰るのだ。

 

 私は西住流だから引かないのだ。

 

 なら、やることは一つだった。

 

 私は師範達から逃げるのではない。

 

 みほに向かって進むのだ。

 

 「ぬぉぉぉぉ!」

 

 私は叫びながら出せるだけの力で島田師範を引っ張ろうとしたが

 

 「クッス、あら残念・・・・」

 

 嘲笑うかの様に引っ張り返される私。

 

 底掌の構えをする島田師範

 

 そして、引き戻された力をフルに利用され島田師範が布団に打ち込んだのだ。

 

 「島田流格闘術、鎧通し」

 

 ドッガァ

  

 「ガッァ・・・ハッァ・・・・・」

 

 背中に突き抜けるような痛みと衝撃に私は意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 





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