最近、眠れない日々・・・・
茜叔母さんが乱入した後、私達三人は島田師範と茜叔母さんに隊長室に呼び出された。
理由は分かりきっている。
強化合宿の件だろう。
「エリカ、みほちゃんに小梅ちゃんは来たわね」
「三人共、長話になるから座ってくれるかしら?」
どうやら、違う話のようだった。
ただ、師範に促されるままソファーに座ると茜叔母さんがDVDプレイヤーに電源を入れたのだ。
「エリカとみほちゃんに小梅ちゃんには聖グロリアーナとプラウダとの二回戦の試合を見て貰うわね」
「叔母さん何故です?」
「確か、去年のプラウダの副隊長はカチューシャとノンナだったわね?」
確かに、プラウダの副隊長は忘れもしないカチューシャとノンナだったはずだ。
「茜さん、まさか二人とも出てないですか?」
「いえ、みほちゃん二人とも出でるわ。ただ、隊長でも副隊長でもない感じだったわね。ただ、新しい隊長は調べたら赤軍高校からの転入生でカツコフらしいわ。でも、プラウダ高校で何か重大な事件が起きたのは確実のみたいね。」
DVDが再生されると、映し出されたのはプラウダの重戦車群だった。
「えッ!嘘でしょ?試作型のT-44Vじゃない!」
「えぇ、確認出来たのは一両だけね」
その他にはIS-3が二両にIS-2初期生産型が四両、ISU-152が二両、T-34/85が二両の編成だった。そして、対する聖グロリアーナは高い防御を持つブラックプリンスが一両に走攻守のバランスの取れたセンチュリオンが四両と機動力のあるコメット五両の編成だったが次々と撃破されて行く光景だったのだ。もはや、122ミリ砲や100ミリ砲、152ミリ砲の雨では殲滅戦のような一方的な蹂躙だった。
それは、練習試合でも知っていたが聖グロリアーナの戦車の主砲は全て17ポンド砲に統一されていた。それでも、意地だったのだろう。撃破が出来たのはISU-152とT-34/85の二両だけだった。IS-3やT-44Vが余りにも装甲が堅く17ポンド砲でも虚しく弾かれ装甲にノックするだけだった。
DVDを見終えたが話が掴めずにいたのだ。
「プラウダは三回戦は継続高校とやるわ。ちよきち、どっちが勝つかな?」
ニヤリと笑いながら島田師範に聞き出す茜叔母さん。
「継続高校も奮戦するけど勝つのはプラウダ高校かもしれない。でも、今年の継続高校にはアンツィオ高校に及ばないものの元黒森峰の生徒も居るから所有する全戦力を出せるわね」
「あら、残念ね。親ba・・・「手が滑ったわ」・・・・・ガッハァ!?」
ヒュン・・・・・・・・・スッコン・・・・・ドッサァ
島田師範は小梅やみほが見えないスピードで茜叔母さんに本棚にある広辞苑を投げてけて居たのだ。おでこに命中した茜叔母さんには白い煙りを出しながら気絶していた。
撃てば必中は西住流だけど、何かを言おうとした茜叔母さんを一瞬で封じてからの忍者殺法による暗殺?いや、瞬殺が正しいのだろか?
「ねぇ、エリカちゃん。茜さんに何か飛んで行ったように見えたけど?」
「小梅、島田師範に消されたく無かったら気にしない事よ」
「あっ・・・・茜さんが気絶してる・・・・何で?」
「みほも気にしたら負けよ。人には触れてはいけないものがあるのよ」
「エリカさん、そういう物なの?」
茜叔母さんを余所に師範は合宿について話始めたのだ。
「さて、これが今年のプラウダ高校よ。って言いたいけど、黒森峰戦までは強化合宿に強制参加して貰うわね。場所は横浜の島田流家元が合宿場所よ。大洗女子の戦車は私が責任を持って整備班に整備させるわ」
「あの、アンツィオからも来て居るので全部で54人ですが大丈夫ですか?」
「みほさん、何を言っているの?横浜に行くのはみほさんのあんこうチーム全員とエリカのワニさんチームからはエリカと赤星に小山、かめさんチームからは内法、藤木、レオポンチーム全員の全部で15名だけよ。他は別れてそれぞれの合宿場所に行って貰うわ。それと、明日から同じ場所で聖グロリアーナ女学院と大洗女子付属中の戦車道の一部の生徒と合同で行うから遅れない様に来なさい」
「「「えッ?明日から?!」」」
つまり、聖グロリアーナと大洗女子付属中と合同合宿って事らしい。
だが、私は肝心な事を思い出していた。
ここは、熊本だ。
横浜に向かうには新幹線で横浜駅に行くか、熊本空港から羽田空港まで行かないといけない。そして、島田流家元の場所は横浜港から少し離れた場所にある。一番早い方法は横浜港にある飛行艇で行った方が早いのだ。
つまり、私の実家にある飛行機コレクションの一つの二式大艇の輸送機型である『晴空』で横浜に行けと・・・・・
横浜だから飛行場は遠いから飛行艇よね・・・・・
「分かりましたよ。私が飛行艇を出せば良いんでしょ!ここからなら私の実家も近いから・・・・・」
「あら、エリカ。まだ、私は自分達で来いとは言ってないわよ♪それじゃあ、エリカに頼もうかしら?」
ニッコリ笑う島田師範。
「ぬぐぐぅ・・・嵌められた・・・・」
「嵌めてないわよ。エリカの自爆よ」
結局、私は実家に電話して晴空を熊本港に準備させてる間に横浜行きのメンバーの召集をしたのだ。1時間後には晴空準備が終え、横浜行きのメンバー15名と島田師範と茜叔母さんが一緒に乗り込み熊本港を後にしたのだ。
熊本港から横浜港までは片道約1000㎞はあり飛行時間で2時半位で到着する予定だ。私は使用人が持参してくれた飛行服に着替え、操縦席では計器をチェックしながら飛行を続けている。副操縦席には小梅が座り、無線席にはアマチュア無線二級を習得した沙織さんが座り無線手を担当している。沙織さんは二級を一回戦終了後に習得していたために宇都宮での合宿は参加せずにこちらに参加する事になっている。
みほと愛里寿はと言うと・・・・・
師範が暇だからと持参した携帯型のDVDプレイヤーを上目遣いをしながらお願いして愛里寿が奪い取り、自宅から持参したOVA版ボコを一緒に観賞していた。そして、操縦席まで響く歓喜と悲鳴・・・・・
誰かは察するだろう。
「「ボォォォコォォォ!?」」
「グッェェェ!?あっ、愛里寿ちゃん?ママ死んじゃうから、首絞めないで!?」
「こう殴って脳を揺らさないと!」
バッキィ
「グッヘェ!?ちょっと、みほさん!私までボコにしないでぇぇ!」
「「キャァァ!ボォォォコォォォ!?」」
ギュウゥゥゥ・・・・バッキィ・・・ドッガァ・・・・・・・
「ギャァァァァァ!?」
副操縦席の小梅が心配そうに海図席の三人を心配している。
「ねえ、後ろ大丈夫なの?」
「小梅、安全な飛行な為に師範には生け贄になって貰うわ」
「えっ、エリカちゃん?良いの?」
「小梅なら判るはずよ。ああなった、みほと愛里寿は誰にも手に負えない事を・・・・・」
熱いパトスは既に止まらないことを私は悟っていたから・・・
私は黄昏れる様に遥か彼方の空を眺めたのだ。
「そうだね・・・・・毎回いや毎晩、エリカちゃんが生け贄だったもんね・・・・」
小梅も一緒に黄昏れる様に空を眺めたのだ。
2時半後には、無事に横浜港の飛行艇用の桟橋に着水して横浜に着いた。
桟橋では二人の生け贄となって気絶して担架で運ばれるボコ状態の島田師範の姿はシュールだったが、私達は迎えに来たバスに乗り込み島田流家元に向かった。
合宿宿舎に着いた私達は割り当てられた部屋に荷物と渡された訓練着に着替えるため、宿舎に入る時に入口の真ん中で喚き叫ぶ訓練着姿の中学生にぶつかってしまったのだ。
「何で、私まで強化合宿に行かないと行けないのよ!」
ドッン
「キャア!?」
ドッサァ
「なっ、何すんのよ!」
尻餅を付いた中学生は何故か、私の中学生時代を思わせる様な風貌で私と同じく肩まで伸びた白銀の髪に鋭い目付きをしていた。まるで、みほへの気持ちが変わる前の牙剥きだしの私を見ている様な気分だった。
「あなた、大丈夫なの?」
「ふん、大丈夫に決まっているでしょ!」
「そう、ならよかった」
「あの、大丈夫ですか?」
私が手を貸して立たせるとみほがその中学生に心配して様子を見に来たのだが、何か様子がおかしい。みほを見ると顔を真っ赤にしながらもじもじしているのだ。
「えッ?大洗女子のにっ、西住先輩!?はっ、はじめまして!わっ、私は大洗女子付属中の戦車道の隊長をしています飛騨楓でっ、でしゅ!」
「あっ、噛んだ・・・」
楓は更に顔を真っ赤にして私にキッと見て叫んだのだ。
「かっ、噛んでなんかないもん!ただ、舌を歯で挟んだだけだもん!」
あっ・・・・やっぱり、昔の私だ。
みほと小梅が何かに気付き言ったのだ。
「ねぇ、みほちゃん。楓ちゃんってエリカちゃんにそっくりだよねぇ」
「「えッ?」」
楓と一緒にハモってしまった。
「うん、エリカさんが二人居るみたいだね」
「「にっ、似てないわよ!」」
「ほら、息もピッタリだね」
「「ち、違うわよ!」」
そして、次の一言が止めになった。
「エリカちゃんの妹みたいだね♪」
「こっ、小梅!誰が、楓の姉よ!」
「嘘・・・・こんな奴の妹扱いだなんて・・・・」
私と楓が落ち込むのを余所に宿舎の中からもう一人の中学生が出て来たのだ。
「楓ちゃん!監督が点呼を取るから早く!」
それを見た、沙織さんが気付き叫んだのだ。
「えッ!詩織!?」
「えッ?おっ、お姉ちゃん!」
「詩織も戦車道をしてたの?」
「えッ、お姉ちゃんもなの?」
どうやら、沙織さんの妹らしい。
「お姉ちゃん!ごめんね!遅刻したら、パンターの履帯を抱えてランニングになるから行くね!ほら、楓ちゃんも行くよ!じゃないと、監督にまたどやされるから!」
「ヒッィ!?それは嫌!おぼえときなさい!絶対に似てないんだからね!」
そう、言って楓と詩織は走ってグランドの方に走って行ったのだ。
「やっぱり、ツンデレのエリカちゃんだったね・・・・」
「誰が!」
「じゃあ、エリカさん。私達も着替えて行きましょうか?」
「そっ、そうね・・・・」
私達も着替えてグラウンドに行くと、既に学校別に生徒が整列していた。聖グロリアーナからはダージリン、アッサム、オレンジペコ達の隊長車のメンバーとセンチュリオン隊隊長のルクリリ、コメット隊隊長のローズヒップの15名と楓と詩織を含む大洗女子付属中の10名、私達の大洗女子の15名の計40名の合同合宿だったのだ。
私がまとめて訓練の様子を見ていたが、大洗女子と付属中には訓練に基礎体力の練習を入れるように楓とエリカには言っていたから大丈夫だろう。
しかし、聖グロリアーナの生徒は・・・・
「ハァハァ・・・・ぺっ、ペコ・・・・・」
「何ですか?」
「・・・・紅茶が飲みたいわね・・・・」
「ダージリン様、紅茶は諦めて下さい。宿舎に入った時に全て没収されたのをお忘れですか?」
「そうだったわね・・・・それにしても、ペコは何故、そんなに余裕なのかしら?」
「自主練習で毎日、ランニング10㎞とバーベル上げ70㎏を欠かさずにしてますから」
「そっ、そうよね・・・・優雅に装填出来ませんものね・・・・・それにしても、ルクリリとアッサムにローズヒップは良く体力が持ちますわね・・・・」
「ダージリン様、わたくしは走る事が好きですのよ」
「わたくしはローズヒップを捕まえて、作法を身につけさせる為に追っているだけよ」
「アッサムと同じく・・・」
やはり、頭脳派であるダージリンは他の生徒よりは体力はあるけど問題ね。
次は・・・付属中ね。
「ヒィィィ!鬼!悪魔!糞ババァ!何で、私だけパンターの履帯を抱えてランニングなのよ!」
「仕方ないよ」
「隊長だもんね・・・」
私の娘ながら履帯を抱えて走れるのは中々やるわね・・・・・
確かに、遅刻した罰で言ったのは私だけど・・・・
大洗女子もみほちゃんが中心に元黒森峰の生徒と一緒に訓練をさせていただけはある。
ただ、それにしても・・・・・・
反抗期真っ盛りなのはいたけない。
「楓!親に向かって誰が糞ババァよ!付属中、連帯責任でランニング五周追加よ!」
「「「「隊長の馬鹿ぁぁ!」」」」
「地獄耳!」
私達も茜叔母さんの指示の下、ランニングしていた。
「ハァハァ・・・さすがにきついわね」
「エリカさん、付属中よりはマシですね。楓ちゃんは茜さんの娘さんだったんですね。道理でエリカさんに似ていたんですね」
「みほ、似ているのは認めるわよ」
「でも、エリカちゃんにみほちゃん。来年は付属中から上がって来るから戦力の強化はできるね」
「でも、戦車道の試合よりタンカスロンの経験があるみたいだね」
タンカスロンと聞いて、黒森峰でも出ていた事を知っている。
特に、試合に出る事がない機甲科の生徒で有志を募り経験を積む為に出ていたらしい。
「みほもタンカスロンには興味があるの?」
「う~ん、大洗女子は出ないほうが無難かも。もし、出るにしても一番軽くてもヘッツァーの15.9tだし、Ⅱ号戦車F型か38(t)があれば考えるけど纏まった数が要るからね。あれは・・・・」
「そうね。私もタンカスロンだけはやりたくないわね」
ただ、後に奉納祭で巻き込まれる事になるのは遠くない話だったりする。
ランニングが終わり、次は筋肉トレーニングだったが、今日は初日ということで筋肉トレーニングが終わり次第、今日の訓練は終了した。
昼食の時間になり食堂ではいつものメンバーで食事を取る事にしたのだが、そこにダージリンやオレンジペコ、アッサムとも食事を食べる事になったのだ。
もちろん、私のお昼ごはんはハンバーグ定食である。
「で、何でダージリンまで居るのよ?」
「あら、別に良いじゃない。みほさんやエリカさんとたまにはご一緒したいわ」
「すいません。私もダージリン様にお邪魔しない様に言ったのですが、荷物検査で紅茶の茶葉とティーセットを没収されてしまったので、せめて、みほ様とお昼をご一緒にと聞かないものでしたので・・・・」
「オレンジペコさん没収って、どんだけ持って来たのよ?」
「茶葉でダージリンとアールグレイ、アッサムなどを鞄で三つとティーセットの入ったケースを三つほどですが?」
「持って来て良いのは着替えと携帯までよ。見なかったの?」
「はい、見たのですが・・・・・」
「ダージリンに押し切られたと?」
「はい・・・・」
「苦労してるわね・・・・」
オレンジペコの苦労に同情したくもなる。私とオレンジペコが話している間にダージリンはみほと会話を弾ませて食事をしていたのだ。ただ、それだけなら私がキレることは無かっただろうと思う。
だって、私の前には・・・・
「逸見エリカ!」
「何よ?」
茜叔母さんの娘の楓が居たのだ。
「何で、お前が大洗女子に居るのよ!何で黒森峰に居ないのよ!」
「私が居たら悪い?」
「悪いわよ!」
楓に絡まれたのだ。
何故、私が黒森峰に居ないのかか・・・・・
みほを支える為もあったし黒森峰に私達の居場所は無いのも確かだ。
だけど、私の本心は立ち直ったみほと一緒に戦車道がやりたいのだ。
歪んでいると言われれば歪んでいるかも知れない。
愛してしまったみほの全てを独占したい。
そんな感情も混ざっているのも確かだ。
「ふん!どうせ、去年の決勝で負けて居場所を無くしたでしょ?」
「えぇ、無くしたわよ。それを、あんたはみほに同じ事言えるの?今でも、私は後悔しているわ。あの時、私達が濁流に落ちなければ良かったってね」
今でもあの時の事は後悔している。
「でもね。みほが助けてくれたから、私達がこうして生きてる実感を感じられる。だから、私はみほに着いていけるのよ・・・・」
「で、結局、負けた原因はあんたじゃん!あのまま流されていれba・・・グッヘェ!?」
バッキィ
ガッシャーン
気付けば、私は楓の顔面をぶん殴っていた。
殴られた楓は食堂のテーブルを薙ぎ倒してルクリリやローズヒップが食べていたテーブルまで吹き飛んだのだ。人が飛んで来た事に驚く、ルクリリとローズヒップ。テーブルが薙ぎ倒された事でみほや小梅達も気付いたのだ。
「楓!もういっぺん言って見なさいよ!それは・・・・」
「エリカさん止めて!」
「何度でも言ってやるわよ!あのまま流されていれば良かったのよ!」
「えっ?楓ちゃん?あっ・・・・・・・」
「あっ・・・・・・・嫌だ!?しっ、死にたくない!あっぁぁぁぁ!?」
「みっ、みほ!?小梅!?」
「みほさん!?貴女もしっかりなさって!」
「みぽりん!?小梅ちゃん!」
そんな言葉を聞いてしまったみほは瞳から光が消え放心状態になっていたのだ。ダージリンがみほを支えていたから倒れずに済み、小梅もあの時の開かなかったハッチを思い出してしまいその場で頭を抱えたまま錯乱状態だった。そして、その元凶に対して私の中で何かが切れた・・・・
「かっ、かえでぇぇぇ!あんたは、みほの笑顔だけでなく、小梅までも奪う積もりなの!」
バッキィ
「グッヘェ!?」
楓の胸ぐらを掴み殴ったのだ。
「誰か!あの二人を止めて!」
騒ぎになる食堂。一方的に殴られる楓に同級生達は叫ぶだけだった。
「お姉ちゃん!止めてよ!あのままだと、楓ちゃんが!」
「詩織、楓ちゃんはエリカさんやみぽりんへの、それだけじゃないのみぽりんの大切な黒森峰からの友達への禁句、いえ、トラウマを呼び起こしたの。それより、みぽりんと小梅ちゃんを」
「直ぐに、医務室に運びましょう。みほさんの瞳孔が開いているわ!それと、赤星さんには鎮静剤を!」
「わたくしが小梅さんのお薬を持って来ます!」
「ダージリンさん、急ぎましょ」
みほは優花里が持って来た担架で運ばれ、華さんは小梅のバッグに薬が在るのを知っていたため、持って来て飲ませていた。愛里寿は急いで師範と茜叔母さんの所に向かったのだ。そして、騒ぎを聞き付けた師範と茜叔母さん、警備員に私は取り押さえられたのだ。
師範の執務室では警備員に連行され、私と楓は正座をさせられていた。
鋭い眼光で私達を睨む島田師範と茜叔母さん。
「赤星さんと西住さんは医務室で落ち着いて眠っていますが、二度とあんな騒ぎを起こさないように!」
「師範、叔母さんすいませんでした」
「エリカ、楓に手を出した事にはそれなりの罰は受けてもらいます。一応、中学生に暴力を振るった事が問題です。エリカさん軽率な行動で、下手したら出場停止だって有り得ますよ考えなかったのですか?」
「返す言葉もないわ」
「ふん、エリカ怒られてやんの」
「楓!貴女もです!喧嘩を売る様な真似は二度としない様に!」
「何で、私までお母さんに怒られないと行けないのよ!本当の事言って悪いのよ!」
「エリカ、楓に背中を見せてやりなさい!」
「えッ?何でよ!」
「私も一年生の夏までは黒森峰の生徒よ。黒森峰の指導と名ばかりの制裁は知っているつもりよ」
私は仕方なく、上着を脱いだのだ。
「何、これ・・・・」
「ひっ、酷い・・・・」
背中にある無数の傷痕を楓に見せたのだ。
同じ様に小梅も内法も藤木も同じ様に傷痕がある。
島田師範も初めて見る様で絶句していた。
「楓、これがエリカ達が大洗女子に来た理由よ。エリカ、ごめんなさい。隠してはいたけど、転入して来た段階で調べさせて貰ったわ。エリカと小梅はみほさんの精神的な面を支える為に一緒来たと言っていたけどね。みほさん以上に身の危険を感じた事とみほさんを守るのが本来の理由でしょ?」
「叔母さんには敵わないですね。確かに身の危険を感じてました。だけど、みほを支える事に偽りは無いわ。だって、やっと両思いになれたからね」
「そう・・・・」
「あの、エリカ先輩?」
「何よ?」
「あんな、深い事情があるに傷をえぐる様な事を言ってすいませんでした」
「私も殴って悪かったわね。同じ事をみほや小梅に言ってやりなさい。みほなら今以上に可愛がって貰えるわよ」
「コホン・・・・エリカ、楓の罰は合宿が終わるまでの間はエリカは厨房で調理を担当し、楓にはトイレ掃除を言い渡すわね。拒否権は無いから、よろしくね」
「「分かりました」」
「なら、部屋に戻りなさい!」
こうして、部屋に戻ったのだ。
「全く、茜も人が悪いわよ」
二人が部屋に戻った後、私は茜に文句を言ったのだ。
「そうかな?エリカ達にはあれを見つめ直す為に娘を噛ませ犬にした事かな?」
「娘の反抗期を終わらせ、尚且つみほさんやエリカ達に見つめ直す機会を与えるって、下手したら皆潰れているわよ」
「でも、見つめ直して貰わないと駄目なのよ。傷の舐め合いは終わらせて欲しいのよ。彼女達が強くなる為には・・・・」
「そして、数年後にはプロリーグのチームを作ると?」
「さぁ、どうかしらね?」
本当、茜は本気になると恐ろしい。
どんな策を張り巡らし、どんな相手でも狩り取る姿勢は全く、私でも予想が出来ない。だだ、言えるのは味方である事が私の安息かも知れない。
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