ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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 土日が忙しくて投稿できなかった・・・・・


師範達の乱入

 

 

 アンツィオ戦は勝利で終わり、今は熊本に入港して補給を受けているが黒森峰戦に向けて準備をしており、みほと愛里寿と私の三人で作戦会議を開き黒森峰戦での人員の配置なら早く終わるが、車両の組み合わせや黒森峰の重戦車にどんな作戦でどのように封殺するなどで紛糾。気付けば時間は深夜を回っていたのだ。

  

 「みほ、黒森峰戦は車両はどうするのよ?」

 

 「そうですね。黒森峰はティーガー、ティーガーⅡ、パンター、ヤークトティーガー、エレファントに出てくれば、マウスも考えられますね。こちらも、ティーガーⅡ、パンター、シュトルムティーガーが有効だけど・・・・・・数の差から正面から戦いたくないし・・・・」

 

 「確かに、正面から無理ね。」

  

 「アンツィオの時の様に榴弾射撃はうまくいかないのは念頭に置く必要があるし、慎重に行かないと・・・・」

 

 三人で揉めているところに、ある人物が肩を組みながら二人も乱入して来たのだ。

 

 ガチャリ

 

 「ヒックゥ・・・・しぽりんと飲んでるついでに会いに来たわよ~ほら、愛里寿ちゃん、ママだよ~」

 

 「ちよきち・・・飲み過ぎだ・・・ヒックゥ・・・・せっかく熊本に立ち寄ったんだから、みほを見に来たわよ!」

 

 「えッ?ママ!?」

 

 「えッ?お母さん!?」

 

 そう、隊長室に乱入したのは、西住師範と島田師範だったのだ。

 

 だだ、問題なのは日本酒の入った酒瓶を持っており、かなり酒臭く泥酔しているみたいだが・・・・・

 

 「みほ~、愛里寿~エリカ~あなた達に良いもの持って来たわよ~ヒックゥ・・・・まぁ、明日には届くから使いなさいなと言っても元は大洗女子の戦車だけどねぇ・・・・・」

 

 「ちよきちばかりずるいぞ!ヒックゥ・・・・みほと愛里寿にはボコの熊本限定を・・・・」

 

 ドッサァ

 

 「「Zzzz・・・・」」

 

 「「「えッ?倒れて寝たの?」」」

 

 やっぱり、酷く泥酔していた様で床に倒れると西住師範も島田師範も眠っていたのだ。

 

 パッサァ

 

 「ん?何だろ・・・」

 

 みほが西住師範のかばんの中身から落ちたらしく何かを拾っていたようだが、二人を保健室のベッドに運んで寝かせると私達も会議を続ける為に隊長室に戻り、再び、どの車両を選び、いろいろな車両の組み合わせをしながら何十何百の作戦を立てては紛糾し、絶叫していたのだ。

 

 朝になり、私達は気付けば髪はボサボサになっており目の下にも隈が出来ていたのだ。

 

 そして、窓の外は日は高くなり時計は午前11時を回っていたのだ。

 

 「みほ、ひとまずシャワーを浴びてご飯でも食べようか?」

 

 「そうですね。休憩にしましょうか・・・・」

 

 「エリカ、私はエリカの手料理が食べたい・・・・」

 

 「愛里寿、私に料理をするだけの気力はないわよ・・・・悪いけど、食堂に行くわよ・・・・」

 

 「うん、エリカの手作りハンバーグが食べたかったけど仕方ないかな」

 

 「エリカさん、何か戦車倉庫の方が騒がしくないですか?」

 

 「言われて見ればそうね?」

 

 「はっ!?みほ、エリカ!戦略的撤退を進言するよ!見付かったら・・・・」

 

 「えッ?愛里寿ちゃん?」

 

 「一体、愛里寿は何を見たのよ・・・・・あっ・・・・」

 

 一時中断してシャワーを浴びて、遅い朝食にしようとしたが外が騒がしかったのだ。そして、私達が見たのは・・・・・

 

 「しぽりん!一応、大洗女子の戦車道の生徒は私の門下生なのよ!鍛えてくれるのは嬉しいけど、やり過ぎないでよ!」

 

 「ちよきちのやり方では軟弱者しか出来ません!鋼の心と肉体を身に付けるにはこれぐらいが丁度良いのです!」

 

 「その前に、生徒が潰れるわよ!」

 

 そう、大洗女子の戦車道の生徒が島田師範と西住師範の訓練を受けていたのだ。

 

 そして、二人共二日酔いもせずにジャージ姿で一緒になって訓練をしていたのだ。

 

 恐るべし、師範・・・・・

 

 ただ、問題なのは二人が火花を散らしながら訓練をしたために、体力を切らして横たわる死屍累々の生徒達。元黒森峰の生徒達も黒森峰で西住師範の訓練を受けていたとは言え、何をどうしたらこんな結末になるのだろう。

 

 私は二人の服装に気付いが、ここで突っ込んではいけないのだ。

 

 師範達が着ているジャージは大洗女子の体育のジャージだとは間違えても言えないのだ。

 

 犯罪臭漂うとは言ってはいけないのだ。そう、年齢的にアウトだと・・・・

 

 言ったら最後、地獄の果てまで追われるだろう。

 

 そして、私達は既に徹夜での作戦会議で体力を消耗しており、その場から撤退しようとするが・・・・・

 

 「みほに逸見・・・・・」

 

 「愛里寿ちゃん・・・・」

 

 ガッシィ

 

 名前を呼ばれ、誰かに背後から肩を掴まれたのだ。

 

 私達は油の切れた歯車の様に首を振り向かせると、師範二人がニッコリ笑っていたのだ。

 

 「「「ぴっぃぃ!?」」」

 

 「あなた達、隊長と副隊長が訓練にいないのはどんな領分かしら?」

 

 「いくら、作戦会議で徹夜明けでもねぇ・・・・」

 

 「「逃がさないわよ!」」

 

 私達は此処に来た段階で師範達に見付かって居たのだ。

 

 そして、二人から来る威圧感からその場から逃げ出したかった。

 

 だが、出来なかったのだ。

 

 私は車長になる前は装填手だったが、西住師範のように腕力と握力はない。

 

 そう、西住師範に捕まった時点で逃げると言う道が途絶えていたのだ。

 

 既にみほと愛里寿は涙目になっており、新たに作られた手信号で聞くが・・・

 

 (逃げられないです・・・)

 

 (無理よ!力の差が在りすぎるわよ!愛里寿は?)

 

 (駄目、体力を消耗し過ぎて逃げられない)

 

 諦めるしかないのだろうか?

 

 今の三人の状態では死を意味する。

 

 (みほ、愛里寿に良い手があるわ)

 

 (どんな手ですか?)

 

 (興味がある。どんな手?)

 

 (下手すると西住師範と島田師範が大泣きするわよ?それでも?)

 

 (ママから逃げる為なら・・・)

 

 (みほは?)

 

 (愛里寿ちゃんの様子次第で・・・)

 

 (愛里寿、島田師範に『ママなんかだっきらい』って言って見なさい)

 

 (えッ?それって、ママが絶対に泣くよ?)

 

 (戦略的撤退するためよ!)

 

 「ほほぅ・・・逸見、逃げる手立てか?」

 

 ぎっりぃ

 

 「ぐぅ!」

 

 どうやら、西住師範には読まれていたらしい。更に、掴まれている肩に力が入る。

 

 「さぁ、みほ、逸見、愛里寿・・・・訓練を受けるのか、特別メニューを受けるのか決めて貰うぞ?」

 

 (愛里寿、頼む!)

 

 (無理!)

 

 脅え涙目で愛里寿が無理と言っている意味が島田師範を見て判ってしまった。

 

 「愛里寿ちゃん?せっかく、センチュリオンを持って来たのよ?やるわよね?」

 

 と言いつつも、愛里寿を見る目は獲物を狩る狩人の目だった。私もそんな目で見られたら泣くだろう。正直、怖い。

 

 三両のⅣ号戦車と、ある人物達がやって来たのだ。

 

 『ノリと勢いとパスタの国からドゥーチェ参上!』

 

 何故かⅣ号戦車G型に乗りアンチョビがやって来たのだ。

 

 だが、タイミングが悪い。

 

 これほどまでにタイミングが悪いのは見たことがない。

 

 何故なら・・・・

 

 「なっ、何故、西住師範と島田師範が学園に居る!?」

 

 師範達を見て固まるアンチョビに

 

 「たかちゃん!?どうしたの?」

 

 体力切れで倒れているカエサルを介抱するカルパッチョ

 

 「あら、確か今日から短期転入でやって来たアンツィオの・・・・」

 

 「そうだな・・・・丁度いいな。みほ、逸見、愛里寿はちよきちが持って来たセンチュリオンに乗りなさい」

 

 新しい獲物を見付けた師範二人に師範達に睨まれ一斉に固まるアンツィオの生徒達・・・・

 

 西住師範のはみほを見ながら聞くが・・・・・

 

 「お母さん、拒否権は?」

 

 「無いわよ。西住流に撤退の文字はないわ」

 

 「お母さん?私、もう西住流じゃないだよ?それに私達はまだ作戦会議中だよ?シャワーに浴びに来ただけだよ?」

 

 どうやら、撤退の文字はないの一言にみほがキレたらしい。

 

 「ちょっと、みほ?」

 

 「何かな?エリカさん?」

 

 「せっかく、西住師範と仲直りしたのに・・・」

 

 「うん、知ってるよ?だから、普通の西住みほとして、初めて親子喧嘩するんだよ?せっかく、お姉ちゃんの説得の為とエリカさんや愛里寿ちゃんを驚かそうと短期転入でアンチョビさん達を呼んだのに・・・・」

 

 正直、怒ったみほが怖かった。

 

 いや、久しぶりに見たとでも言うのだろうか?

 

 「いや、そんなに怒らなくても?」

 

 「エリカさん違うの。訓練ならいくらで受けるよ。ただ、お母さんのバックに入っていた物に怒っているの。ねぇお母さん、これ何?」

 

 ドッサァ

 

 「こっ、これは・・・」

 

 みほがスカートのポケットから取り出して西住師範の前に投げたのは一冊の本だった。それを見た私もそうだが、島田師範も言葉を無くしていた。

 

 西住師範はみるみる顔が真っ青になって行くのが判る。そして、これを見ていた、愛里寿が島田師範を見てニヤリと笑っていた事から、何かを企んでいたようだった。

 

 みほが西住師範の前に投げた、その本の題名は

 

 『娘との正しい付き合い方』

 

 みほはその本を拾いページをめくりながら西住師範への尋問が始まったのだ。

 

 「お母さん?これはどういう事かな?『適度なお小遣いを上げる』だよね?何で、挟まっていた封筒には使用金額が無制限のブラックカードが二枚もあるのかな?しかも、カードには私とお姉ちゃんの名前が在るんだけど?」

 

 「えッ?それはお小遣いとして渡そうかと・・・・」

 

 「お母さんなら、絶対に無言で渡すよね?」

 

 「そっ、それは・・・・」

 

 図星だったらしい。凄い剣幕で責め立てるみほ。

 

 「もし、無言で渡されたら勘当されるかと思いますよ!ただでさえ、無口で威圧感が有るんだよ!」

 

 「娘から威圧感があると言われた・・・・・」

 

 みほにはっきり言われ、がっくりとうなだれる西住師範だが、それで終わるみほでは無かった。そう、たたみ掛けたのだ。

 

 まるで、西住流のように・・・・

 

 「しかも、何かな?『親子で適度に遊ぶ』って在るけど、同じところに挟まりれた編成表は門下生を集めた紅白戦だよね?何で三十対三の殲滅戦なのかな?普通に考えたら無理な編成だよね?エリカさん、この編成を見てどう思うかな?」

 

 「えッ・・・何・・・・これ・・・・・」

 

 私に飛び火して、みほから紅白戦の編成表がわたされ、編成を見て言葉を失った。

 

 どう見ても、不可能だ。

 

 勝てる要素が全くないのだ。

 

 ドイツ軍戦車隊の大エースのミハエル・ヴィットマンでも逃げ出す編成だったのだ。

 

 門下生チームはマウスが四両、ティーガーⅡが八両、ヤークトティーガーが六両、パンターG型が八両、Ⅲ号戦車が四両の合計三十両の編成に対して師範のチームはティーガーが二両とティーガーⅡが一両の三両だけだった。

 

 「ねぇエリカ、私にも見せて・・・」

 

 「そうね。見せて下さる?」

 

 島田親子で編成を見て、島田師範が叫び、愛里寿は呟きながら脅えていた。

 

 「えッ・・・しぽりん、これ本当にやろうとしてるの?しぽりん、これは無謀よ!」

 

 「あっ・・・・これ、死んだ・・・・」

 

 「確かに無理よ。マウスが四両、ヤークトティーガーが六両が居る時点で88ミリ砲で撃ち抜くのは無理よねって、その前に、これは適度に遊ぶレベルじゃないわよ!ヘビィよ。ヘビィ!何、何なの?このレベルが適度なの?これ、普通に遊びなの?違うでしょ!」

 

 思わず叫んでしまった。

 

 「逸見、違うのか?」

 

 「エリカさん、違うのかな?」

 

 キョトンと私を見るみほと西住師範。

 

 「あっ、もう!何で親子揃いも揃って天然ですか?適度に遊ぶなら、自宅でテレビゲームをするとか遊園地とか水族館に出かけるとかあるでしょ!みほ、あんたも突っ込むところが間違っているわよ!お小遣いで、ブラックカードって何よ!普通、お小遣いなら15万ぐらいよ!」

 

 「ちょっと待て!お前もだ!逸見エリカ!」

 

 突っ込んで来たのはアンチョビだった。

 

 「なっ、何よ?」

 

 「適度な遊びなら自宅でテレビゲームするとか遊園地とか水族館に出かけるは正解だろう。しかし、おこずかいの金額が根本的に間違っているぞ!普通なら貰えて2万円ぐらいだぞ!逸見エリカが言っている金額は成人した人の給料の手取りぐらいだ!」

 

 「えッ?私、実際に生活費以外にお小遣いで、それくらいは貰っているわよ?」

 

 「どっ、何処のお嬢様だぁ!」

 

 「こう見えても社長令嬢よ!」

 

 「えッ?マジ?」

 

 社長令嬢に何故か驚くアンチョビ。

 

 私は社長令嬢に見えないのだろうか?

 

 「エリカさん、社長令嬢だったんだ。知らなかったよ・・・・」

 

 そして、長く付き合いながも社長令嬢だった事を知らなかった天然がいたのだ。

 

 「みほ、大洗にも競技用の砲弾を納めてるでしょ!あれは、パパの会社よ!西住師範に聞いてみなさいよ」

 

 実際、この学園にも私がパパに問い合わせて協会を通して格安で砲弾を仕入れている。流石に、中古の競技用の砲弾では事故が起きかねないからだ。

 

 「確かにそうね。逸見の母親は西住流の門下生にして黒森峰付属中で戦車道の顧問として教鞭を振るっているし、父親は競技用の戦車砲の砲弾を製作している会社の社長ね」

 

 何故か、私が社長令嬢に見える見えないの話でみほと西住師範の親子喧嘩はパタリと止んでしまったのだ。だが、師範達がお姉ちゃんのキーワードを聞き逃すほど甘く無かった。

 

 「みほさん、アンツィオからの短期転入と西住まほさんの件は私に話が無かったのは何故かしら?」

 

 「何、まほがどうかしたのか?」

 

 「えッ?お母さんは黒森峰と知波単との試合を見てないの?」

 

 「まほが勝つに決まっているから見るが必要ない」

 

 「しぽりん、私が飲みに誘った理由がそれだったのよ?」

 

 「あぁ、西住流に裏の西住流の話だな。それがどうしたのだ?」

 

 「ママ、私が話す。西住師範、去年の11月の対外試合を覚えてますか?」

 

 「知っている。島田流の門下生が中心のチームがドイツのプロリーグのチームに惨敗した件だったな」

 

 「はい、私はあの試合では総隊長をしてました。そして、知波単戦でまほさんが使った手も作戦も対外試合と全く同じでした。西住師範ならその意味が判るかと思いますが?」

 

 「えッ?そんなはずはない!まほは西住流の後継者よ!邪道の裏の西住流を使うのよ!」

 

 「じゃあ、お母さんは黒森峰のOGの事も知らないのね?」

 

 「いえ・・・・それは知っている。まほにあの事件に絡んだOGと在校生を粛清(退学)するように言ったのは私だから・・・・みほや逸見達をあんな風にしたOGを潰して膿を出さなければ黒森峰に未来はない。あと、逸見にはごめんなさい。家元として事故の原因を調べていれば、戦犯としてみほも逸見達が責められずに済んだはずなのに・・・・」

 

 「師範は知っていたんですね?」

 

 「ごめんなさい。全て調べさせて貰いました。逸見達、Ⅲ号戦車の乗組員が退院した後、逸見と赤星がみほを面倒を見ていた事も。そして、みほの身代わりになってリンチを受けた事も知っています。逸見・・・・いや、逸見さんには謝っても謝っても許されない事は判っています。貴方がリンチで・・・・」

 

 「西住師範、待って下さい。その事は私がみほに言います」

 

 「えっ、エリカさんどういう事なの?」

 

 みほに隠して来た事を話すしか無かった。アンツィオ戦ではまほさんの事で流れたけど、隠せないは判っていた。

 

 私はみんなが居る前で話す事にしたのだ。

 

 「みほ、ゴメン!私と小梅が退院する前にみほが部屋に閉じこもった後、私達も先輩やOGから制裁を受けたのよ。みほはいくら制裁を受けたとしても隊長や師範の後ろ楯が在ったから命の心配は無かった。だけど、私達は違っていたのよ。先輩達にまた落ちても大丈夫な様に訓練しましょと言われて、手足を縛られたまま天井クレーンに吊されて下水を貯めたドラム缶に頭からドラム缶の中に入れられて溺れるまで浸され、上げられては下水の臭いで自分の顔を嘔吐物で汚して、再び、ドラム缶の中に浸され気絶すると角材で背中やお腹を叩かれて逆さまに吊されたまま放置されて死にそうにもなった。クラスでもノートや教科書の紛失は当たり前で、顔以外の暴行も当たり前の様に日常だった。私は運が悪くてお腹を安全靴で蹴られた衝撃で左側の卵巣が潰れたわ。だけど、不幸中の幸いで卵巣が片方が残っているから子供は産めるわ。でもね、こんな辛い思いをしないといけないのって、一時期、みほに助けられた事を恨んだ事も在った。こんな辛い思いをするなら、あのまま死んでいればどれだけ良かったかって、気が狂いそうにもなった・・・・・・」

 

 「エリカさん・・・・」

 

 「でもね、気付いたのよ。私はみほが大好きで、小梅も内法も藤木もみほが大切な友達でみほは私達を大切な友達だと思っている。だから、耐えて耐えて、ずっと、耐えて行こう。そうしたら、今の学園の様に一緒に暮らせて心から笑える日が絶対に来る。そう信じて耐えようってね。みほの為に私達が側に居よう、みほに出来る事をやろうって決めたのよ。そして、私はみほとの転校を選んだの。小梅は置いて行かれるのが怖くて一緒に行くと言ってたわね。でも、本心はみほと一緒に居たかった。こんなにも暖かくて優しくなれる場所だから。みほに黙っていたのはごめんなさい」

 

 「うんん、エリカさん。私、知っていたよ。だって、あの日に来てくれた時のエリカさんの体がボコの様に見てて痛々しいだもん。だから、私も転校を選んだんだよ。だから・・・・・ずっと一緒だよ」

 

 「みほ!」

 

 私は嬉しくなり、みほに抱き着いたのだが

 

 「えっ、エリカさん!?」

 

 「コッホン。逸見、誰がみほに抱き着い良いと?」

 

 「しっ、師範!?」

 

 「まぁ、良いわ。これからもみほを頼むわ」

 

 「しぽりん達が和んでいるところで悪いけど、黒森峰戦の作戦に目処は付いたの?」

 

 「はい、アンチョビさん達が来てくれたおかげで何とかなりそうです。島田師範、センチュリオンはありがたく使わせて頂きます」

 

 「なら、良かったわ。私が家元に運び込めたのは元大洗で使っていたセンチュリオンだけだったし、家元で飾って置くのもね・・・」

 

 そして、師範達の帰り際に西住師範からは

 

 「みほ、逸見には済まないと思いますが、まほの心を助けてあげて。敗北を知ればきっと、裏の西住流が間違いだと気付くはずですから・・・」

 

 「わかりました。私もお姉ちゃんと仲直りしたいから・・・・」

 

 「そう・・・・」

 

 何故か、寂しそうに島田師範と一緒に帰る西住師範だった。

 

 「ところで、みほは黒森峰で使用する車両を決めたの?」

 

 「うん、決まったよ。ティーガーⅡが三両、パンターF型が三両、センチュリオンが一両、シュトルムティーガーが一両、Ⅲ号突撃砲が一両、ヘッツァーが一両、Ⅳ号戦車F2型が一両の十一両で挑みます。今回のフラッグ車はあんこうチームでやります」

 

 「みほ、センチュリオンには私が乗る」

 

 愛里寿がセンチュリオン乗るとなると・・・・

 

 「わかりました。愛里寿ちゃんにはセンチュリオンを任せる積もりだったので大丈夫です。その代わりにパンター小隊の人選と指揮をお願いします」

 

 「判ったよ。じゃあ、私は四両編成の小隊の指揮を取るんだね」

 

 「はい、お願いします。特に、愛里寿ちゃんには小隊規模で黒森峰の戦車隊を掻き回してもらいます」

 

 「みほ、私はどうするのよ?」

 

 「エリカさんとアンチョビさんには私のティーガーⅡの小隊に入って貰います。丁度、ティーガーⅡが三両あるので小隊を組んで黒森峰のフラッグ車を狙い、シュトルムティーガーはⅣ号戦車と組み隙が在ればロケット弾を撃ち込んで相手の錯乱と分断を狙って貰いましょう。Ⅲ号突撃砲とヘッツァーには待ち伏せで撃破よりも履帯を切る事に専念して貰いましょう。とにかく正面からは戦いません。分断と待ち伏せがメインで行きましょう」

 

 「じゃあ、私の小隊の役目は引っ掻き回してキルゾーンに誘導したり分断だね」

 

 「それだと、会場が決まるまでは待ち伏せと分断の訓練がメインになりそうね」

 

 「安心しろ、私も決勝が終わるまでは大洗の味方でいるつもりだ」

 

 アンチョビ達はどうやら決勝までは大洗に居るつもりのようで、みほとどんな契約をしたか気になるが聞かないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 アンツィオ戦終了後、私はアンツィオの寮に帰った。

 

 「ハァ・・・負けちゃったな・・・・」

 

 雑誌や衣類が散らかる部屋の中、ベッドに座りながら今日の試合を振り返る。

 

 結果は負けだ。得意な砂漠戦なだけに、とても悔しかった。

 

 だけど、私的には新しい発見とこれからの戦術を考えさせられるのも事実だった。

 

 今までの戦車道の試合は戦車同士の平面での殴り合いがメインだったが大洗が使った手は平面ではなく立体的な攻撃だった。

 

 これの意味は大きいと私は思う。

 

 プロリーグや大学でも、シュトルムティーガーやブルムベアなどの導入する話を聞いた事があるが、実際はまだ試行錯誤の繰り返しだったりするのが現状だった。

 

 だけど、負けた以上は黒森峰からの資金の融資はないだろし、多分だけど大洗も対黒森峰対策を練っているだろう。貧乏高であるアンツィオではこれ以上の戦力の充実は難しいのが現状だし、考えるなら戦略を一から練る必要が在るだろう。

 

 だけど、私には来年がないのだ。

 

 来年からは大学生だし、次期隊長はカルパッチョと決まっている。

 

 「せめて、まほに一泡吹かせてやりたかったなぁ・・・・・」

 

 思うのは黒森峰の隊長であり、幼なじみのまほだった。

 

 まほとは小学生までは一緒の学校だった。

 

 あの頃のまほとの戦車道は楽しかった。

 

 だけど、私は茨城に引っ越してしまった。

 

 親の転勤だった。

 

 だが、次に出会ったのは角谷杏だった。

 

 中学卒業までは角谷杏と戦車道をしていた。

 

 私が車長で杏が砲手をしてくれた。他には、杏の幼なじみの小山柚子や川嶋桃と四人でつるんだりもした。私もこのまま杏達と戦車道が出来るかと思っていたが、中学卒業と同じくして今度は母親の宇都宮基地への移動だった。

 

 仕方なく、アンツィオへと入学した。

 

 そこでは、戦車道の経験者は私だけだった。

 

 二年の歳月を掛けて、アンツィオの戦車道の育成に力を入れ、気付けば私はドゥーチェになっていた。

 

 思い出に浸っていると携帯が鳴ったのだ。

 

 ディスプレイは『非通知』だった。

 

 「もしもし、安斎だが?」

 

 「あの、アンチョビさんですか?大洗女子の西住みほです」

 

 電話の相手は西住みほからだった。

 

 「西住、どうしたんだ?」

 

 「アンチョビさんにお願いがあります。決勝までで構わないので10人だけでも良いので短期転入はできませんか?どうしても、お姉ちゃんを止めたいんです。だから、力を貸して下さい」

 

 まさかの西住みほからの頼みだった。

 

 みほとも小学の時に面識があるが、私の事など覚えて居ないだろうと思っていたが・・・・

 

 だけど、まほに一泡吹かせるチャンスだった。

 

 小学生の時にⅡ号戦車を使った試合での決着を付けてやろう。

 

 ただ、行くだけではつまらない。

 

 条件を付けて行ってやろう。

 

 「良いだろう。短期転入で私を含めた10名で行ってやる。だが、二つだけ条件がある」

 

 「えッ?どんな条件ですか?」

 

 「一つは角谷杏を私が乗る戦車の砲手にする事と滞在期間中のパスタを用意する事だ」

 

 「わかりました。その条件なら大丈夫です」

 

 「よし、契約成立だな。行くのは私とカルパッチョ、ペパロニと元黒森峰の生徒で練度が高い生徒で良いだろう。その方が連携も取りやすいだろう」

 

 「ありがとうございます。アンチョビさん・・・・」

 

 私は直ぐに生徒会へと連絡して大洗へ行く準備を始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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