ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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 やっと、更新ができました。


抽選会とすれ違う姉妹

 

 戦車道大会の参加が正式に決まり、静岡の抽選会会場に行った時の出来事だった。

 

 戦車道の選手と隊長と副隊長はもちろんのこと全員で抽選会に行っていた。初出場の大洗が白い目で見られるのは当然だが、それをかき消すかのように、去年は全座席六分の一を占めていた黒森峰の生徒が異様に少ない事に会場がざわついていたのだ。

 

 「なんか、今年の黒森峰の生徒が少なくない?」

 

 「でも、あれだけの不祥事をやってて良く出られるよ」

 

 やっぱり、耳にするのはマウスの暴発事故の話題だった。

 

 内法から話を聞いていたから、まさかだと思いたい。

 

 だけど事実、黒森峰の人数は一回戦で十両出せるぎりぎりの人数の50人位だったのだ。 

  

 かつては内部組と外部組を合わせても200人以上は居た黒森峰だったのに・・・・・

 

 それでも、なんとか参加出来る人数を確保して参加した隊長はさすがだと言いたい。

 

 私達も指定された席に着き、くじを引く順番を待ったのだ。

 

 そして、呼ばれたのだ。

 

 『県立大洗女子学園』

 

 みほが壇上に上がると、黒森峰の一部の生徒が騒ぎ出したのだ。

 

 「なんで、副隊長が?」

 

 「嘘でしょ!?」

 

 「どうして、大洗に?」

 

 騒ぐのも無理もない。

 

 みほや私、小梅が転校をしたことを知って居るのは姉のまほさんと西住師範、学園の教職員と学園長くらいだった。

 

 そう、私達は黒森峰を去るように転校したから・・・・

 

 そして、みほが引いた番号は六番だった。

 

 トーナメント表を見ると、一回戦の相手はサンダース大学付属高等学校だった。そして、二回戦に勝ち上がってくるのは、アンツィオ高校だろうと私は思う。

 

 黒森峰の一回戦の相手はヴァイキング水産高校、二回戦は勝ち上がれば知波単学園かヨーグルト学園だったが、三回戦にもし勝ち残ると大洗に当たるのだ。

 

 抽選会もおわり、会場を出て帰ろうとすると黒森峰の数名の生徒が立ち阻み私達に話しかけて来たのだ。

 

 「ちょっと、大洗学園待ちなさい!」

 

 「私達に何か用かなぁ?」

 

 対応したのは生徒会長である杏さんだった。

 

 「なんで、大洗にそんなに裏切り者が居るのよ!」

 

 「おかしいなぁ?ここに居るのはうちの学園の生徒だけどなぁ?」

 

 「あんた、私達を馬鹿にしてんの!そこに居るのは副隊長と逸見、赤星達は元は黒森峰の生徒じゃない!裏切り者じゃなくてなんのよ!」

 

 私達は裏切り者ね。

 

 確かに、黒森峰を去った私達は黒森峰の生徒からしたら裏切り者かもしれない。でも、私達をそうさせたのは紛れも無い黒森峰であり、そこに居場所を無くした私達の末路かも知れない。だけど、今の居場所である大洗は心から暖かくなれて、居心地が良くて、今まで笑えなかった私達に笑いながら楽しむ事を与えてくれたのだ。

 

 「喧嘩なの?」

 

 「なんか、初出場の学校が黒森峰に絡まれてるぽっいよ」

 

 「えっ、何で?」

 

 「ほら、やっぱり噂は本当だったんだよ」

 

 「あぁ、制裁を理由にイジメられて嫌になった機甲科と整備科の生徒が一気に転校したあれね・・・」

 

 「一部の生徒が流れ着いた先が大洗らしいよ・・・」

 

 「えっ、マジで・・・」

 

 騒ぎを聞き付けて、私達の周りには他校の生徒が集まっていたのだ。

 

 「杏会長、行くわよ。ここで、問題を起こしたら出場停止も有り得るわよ。ほら、みほも小梅も皆も行くわよ」

 

 「う、うん・・・・・」

 

 「そうだねぇ。じゃあ、逸見ちゃん行こうか」

 

 私達は何も言い返さず帰ろうとしたが

 

 「元黒森峰の狂犬が聞いて呆れるわね」

 

 「そうよね。あの連中は、あのまま川の中で死んでいれば良かったのにね」

 

 大丈夫・・・・・

 

 私達ならいくらでも堪えるから・・・・

 

 みほは立ち止まると暴言を吐いた生徒に言ったのだ。

 

 「エリカさんや小梅ちゃん、内法さん、藤木さんに謝って下さい!死んでいれば良かったって・・・・」

 

 「副隊長、いや元副隊長でしたね!本当の事を言って何が悪いの?」

 

 「みほ、気にしてないから、ほら、行くわよ」

 

 「でも、エリカさん・・・・」

 

 「大丈夫よ。戦車道で語れば良いのよ。みほが正しかった事をね」

 

 「逸見!無視するなぁぁ!」

 

 私達は叫ぶ黒森峰の生徒を無視するように後にしたのだ。

 

 

 

 

 そのあとは、私達は沙織さんに喫茶店で気分転換をしよって言われ、連れて行かれて向かったのは、女子高生に大人気の戦車喫茶だった。

 

 私も黒森峰に居た頃は小梅とみほの三人で大会の度に通っていた。

 

 私が頼んだのはチョコレートケーキだ。ケーキがしっとりとしていて三種類の苦味の違うチョコレートクリームの組み合わせがお気に入りだ。小梅は酸味と甘みのバランスが美味しい、ベリータルトを頼み、内法、藤木はそれぞれイチゴショートとチーズケーキを頼み二人でシェアしている。

 

 隣の席にはみほ、沙織さん、華さん、優花里、麻子、愛里寿の六人で座っている。

 

 隣で談笑を楽しむ中、みほが動きを止めて見上げていたのはまほ隊長だった。

 

 「みほ、先ほどはうちの生徒が済まないことをした」

 

 「えっ、お姉ちゃん!?」

 

 「「「「「えっ?」」」」」

 

 姉の登場に一斉に驚く沙織さん達。

 

 姉の登場にみほも驚いて居たが、みほの様子がおかしかった。

 

 いや、空気が急に変わったのだ。

 

 まるで、みほと姉のまほさんが砲弾が装填された戦車砲を向け合っているような感じだったのだ。

 

 「あと、再び戦車道をはじめたそうだな?」

 

 みほは間を置き、口を開いたのだ。

 

 「・・・・・うん、お姉ちゃんはじめたよ。でも、お母さんは再びはじめた事は知っているよ」

 

 あの頃のみほなら、姉とは笑って会話したはずなのに何故か違和感しか感じない。

 

 みほに笑顔や悲しい顔ではない。

 

 私は、はじて見るかも知れない

 

 みほが初めて私達に見せる、姉に対して怒りが滲み出ている表情に・・・・・

 

 「そうか・・・・」

 

 「お姉ちゃん、今なら聞けるけど、どうして、部屋に来てくれなかったの?私、あの日、お姉ちゃんが来てくれると信じてたのに、助けて欲しかったのにどうして?」

 

 まほさんに聞きたかった事だった。

 

 だけど、言葉の一言の一つ一つが鋭利な刃物の様に鋭く感じるのは何故だろう。

 

 私も転校した後にみほに言われたが、あの日、みほの部屋の鍵を開けて居たらしく。もしかしたら、お姉ちゃんが来てくれるかも知れない。みほはそんな淡い期待をしていた。そして、あの時の苦しかった思いをまほさんに話したかったと言っていた。

 

 現実は残酷で姉のまほさんが部屋の中で痛みと苦痛で泣くみほに怖くなり、どう接していいのか判らなくなり、一度も来なかったのだ。

 

 ただ、みほは姉の優しさと姉の温もりが欲しいだけなのに・・・・・

 

 実際にみほの部屋の中に来たのは食事を持って来た私だった。

 

 そして、みほは泣きながら私に苦してつらい事を全てを話してくれたのだ。

 

 みほは私に言ったのだ。

 

 エリカさん、私を助けてと・・・・・・

 

 元より、私はみほを最初から支える積もりだったし、命を助けられた事もあるだからだ。

 

 それよりも、私はみほが一番大切な友達でもあり、大好きで大切なみほの為なら一生を捧げる積もりだった。

 

 「あの日、行けなかった事は済まない」

 

 だけど、まほさんの遅すぎた謝罪が引き金となり、みほは涙目になりがらも沙織さん達に隠し続けた事を言ってしまう事になったのだ。

 

 「お姉ちゃんだから言うよ。私が大会が終わってから他の生徒に何をされて来たか、何を言われて来たか、エリカさんや小梅ちゃんが目覚めない間に機甲科の先輩やOGに私が、どんな嫌がらせをされて来たか、お姉ちゃんは知っているの?知らないなら話そうか?先輩やOGに決勝で負けたから、全部、私の責任にされて、指導(制裁)を理由にお腹を殴られたり蹴られて痛かったよ。教室では、教科書やノートが破られたり捨てられたりして辛かった。毎日が怖くて気が狂いそうだったよ。だから、堪えられなくて、全てが嫌になって部屋に閉じ篭ったんだよ!でも、エリカさんや小梅ちゃんが居たから戦車道だけは嫌いにはならなかった。だって、戦車道が在ったからエリカさんと小梅ちゃんと友達になれたんだもん。でも、お姉ちゃんがあの時も、今もどんなに大変だったかは私も判るよ。でも・・・・・・・」

 

 正直、私もこの事はあの日にみほから聴いていた。

 

 だけど、まだ、みほはマシかもしれない。

 

 私達、事故の当事者だった四人はみほ以上に悲惨だったから。

 

 (だけど、この事はみほには言っていないし、本編でも語る気はない。余りにも悲惨すぎるから)

 

 だから・・・・

 

 「みほ!もう、話さなくていいわよ!いいから・・・・」

 

 「嘘・・・こんな事が・・・・みぽりんに・・・・・ひど過ぎるよ・・・・」

 

 「みほさんに・・・・・」

 

 「西住殿・・・・」

 

 「惨い・・・」

 

 咄嗟にみほを抱きしめる私。

 

 「うっぐぅ・・・・エリカさん・・・うわぁぁぁぁ」

 

 みほさんに全てを吐き出し、胸の中で泣きじゃくるみほ。

 

 「そうか・・・・・・済まない」

 

 隊長に謝られたが、私はどうしたら良いのか判らなくなったのだ。

 

 内法や岩下から私達が去った後のことは全て聞いていたし、毎日みほの部屋と隊長室を行き来していたから隊長室で隊長が誰と話していたのかは大体は想像出来る。あの時も、隊長室では戦車道協会へ提出する、プラウダ高校への非人道的な行いを非難する抗議文を作成していたのだから。妹のみほを助ける為に・・・・

 

 「私は・・・・・まほさんが私達が居なくなった後が大変だったことは知っています。それでも、あの時のみほに残った心の傷は一生残る傷です。なので、私はまほさんが謝ったとしても許すことができないです。以前にも言ったと思いますが、戦車道も黒森峰も関係ない普通の姉として接していたらと私は残念に思います。今もこれからも・・・・・」

 

 「みほにエリカ、私は何処で道を間違えたのだろうか?」

 

 「・・・・・・・お姉ちゃんには私とエリカさん達のあの辛さは判らないと思うよ・・・・・・」

 

 「だけど、みほ。帰る前に一言だけ言わせて欲しい。あの時、あんな命令をして済まなかった。そして、助けに行けなくて、本当にごめんなさい・・・・・」

 

 「今更、お姉ちゃんが謝っても、許す、許さないは決められないし黒森峰には戻らないよ。だから・・・」

 

 「みほ、私が代わりに言うわ。まほさん、後は戦車道で語り合って下さい」

 

 「そうか・・・・・・・判った。三回戦で待っている」

 

 そう、言うとまほさんはお店を出て行ったのだ。

 

 だけど、私には判ってしまった。

 

 まほさんの瞳は以前の憧れた西住隊長に戻っていた事に私は気付いたのだった。

 

 

 「みぽりん、大丈夫?」

 

 「みほさん?」

 

 「西住殿?」

 

 「みほ?」

 

 「沙織さんも華さんも優花里さんも麻子さんも大丈夫だよ。ごめんね、心配かけちゃって・・・・でも、いつかは解決しないといけない姉妹の問題だから・・・・・」

 

 こうなったら、ケーキをみんなでとことん食べて楽しんでやろう。

 

 みほの気が紛れるなら・・・・・

 

 「ほら、みほも沙織さん達もケーキを頼みなさいよ。ケーキを食べて、楽しみまくるわよ!ほら、みんなも注文さしなさい!仕方ないから奢るわよ!」

 

 「エリカ殿、太っ腹ですな」

 

 「おっ、おぉぉぉエリカありがとう・・・・」

 

 麻子の重ねられた皿を見ると既に四皿目だったのだ。

 

 「ちょっと、麻子は何皿食べれば気が済むのよ!」

 

 「そうだよ麻子!太っちゃうよ!」

 

 「沙織には言われたくない。エリカが奢るって言うなら財布が空になるまで食べる」

 

 「麻子、それはマジで勘弁して!」

 

 「「「「「はっははははは」」」」」

 

 戦車喫茶に私の絶叫と笑い声が響いたのは言うまでもない。

 

 結局、麻子には八皿も食べられ、愛里寿もケーキ喫茶のケーキの味に火が付いたようで四皿を食べたようで、会計時に一枚の諭吉が羽を生やして飛んで行ったのだった。

 

 

 

 学園に戻り、私とみほ、愛里寿は生徒会室に呼ばれていた。

 

 「一回戦の相手は強豪のサンダース大学付属だねぇ。西住ちゃんは何か勝算はある?」

 

 「去年のサンダースを考えると一回戦の車両は十両までだからシャーマンフライはないと思う。でも、エリカさんからの情報を照らし合わせると、今年はパーシングとシャーマンフライが出てくる可能性があります。でも、車両の編成が分かれば・・・・」

 

 「西住、逸見、それは確かなのか?」

 

 「河嶋さん、信じたく無いけど、聖グロリアーナがセンチュリオン、コメット、ブラックプリンスを導入していた。それは、噂が確実ならプラウダがIS-3を導入していて、サンダースも対抗処置でなら考えられるわ」

 

 「第二次末期の戦車ばかりね」

 

 愛里寿は何故か納得の様子だった。

 

 結局、サンダースが何を使うかが、とある人物の行動で判ることになる。

 

 

 翌日、優花里と同じクラスになった整備担当の板野の話では優花里が学校を休んでいると知ったのだ。

 

 まさかと思い、優花里に電話をするが圏外だったのだ。

 

 みほ達のクラスに行くとみほ達も優花里が休んでいると知っていたようで帰りに優花里の自宅に見に行くらしい。一緒に行きたいが、私と小梅は整備担当と一緒に一回戦の会場である雪原に向けた準備をしないとならないのだ。

 

 まず、水性塗料による冬季迷彩への変更だった。

 

 もし、パーシングが出るならティーガーⅡとパンターF型は出番になる。六両の迷彩は全て三色による光と闇の迷彩だった。

 

 私も久しぶりに整備用の繋ぎ服に着替えて作業を始めたのだ。

 

 まずは、みほのティーガーⅡからだ。

 

 あんこうチームのエンブレムと大洗のマークをホワイトで消さない様にマスキングを施してから塗装するのだ。

 

 「ティーガーⅡだけに、意外に塗りでがあるわね・・・・」

 

 「だね。エリカちゃん・・・・」

 

 私は大型のエアスプレーでホワイトを吹き付けつつ悪態は吐いたのだ。周りでも、同じ様に整備担当者達が他の車両を冬季迷彩へと変えていく。ティーガーⅡが二両とパンターが三両を塗り終えたところでみほから電話が来たのだ。

 

 『もしもし、エリカさん』

 

 「みほ、どうしたの?」

 

 『優花里さん、実はコンビニの貨物船に乗って、サンダースに潜入調査をしてたらしくて・・・・・』

 

 「はっ、はぁぁぁ!?優花里は何してんのよ!」

 

 『あっははは・・・でしょ!優花里さんらしいよ。エリカさんは今、何してるの?』

 

 「私?会場が雪原に決まったから、今は整備担当者達と冬季迷彩への変更と防寒対策の準備をしているわ。みほの事だから、迷彩を変えないで出るだろうからね」

 

 『うぅ~エリカさん酷いよ』

 

 「冗談よ。でも、優花里からサンダースの使用する車両は判ったの?」

 

 『はい、判りました。エリカさんの言っていた通り、パーシングが二両とM4A1シャーマンが六両でシャーマンファイアフライが二両の全部で十両です」

 

 「五両編成の二小隊編成ってところね。フラッグ車は?」

 

 『パーシングみたいです』

 

 「一応、私の方でティーガーⅡが三両とパンターが三両を用意してるけど、みほは変更するの?」

 

 『そうですね。組めるチームが八組だから、ティーガーⅡが二両、パンターが三両、Ⅳ号戦車が一両、Ⅲ号突撃砲が一両、ヘッツァーが一両かな』

 

 「用意しとくわね。配車は私でするから、みほは沙織さん達と楽しんで来なさい。あと、今夜は愛里寿は島田師範と夕飯を食べに行っているみたいだから、もしかすると一泊すかも知れないわね」

 

 『うん、エリカさんありがとう』

 

 私は電話が切れると作業を再開したのだ。

 

 「板野さん悪いけど、ティーガーⅡヘンシェルは無しでⅣ号戦車とヘッツァー、Ⅲ号突撃砲が追加よ。一緒にウインターケッテンに変更よ」

 

 「じゃあ、履帯も履き替えだね。みんなぁ!さぁ、やるよ!後、ティーガーⅡの鉄道輸送用の履帯も準備するよ!」

 

 「「「「「おぉぉぉ!」」」」」

 

 ウインターケッテンやティーガーⅡの鉄道輸送用の履帯は何故か島田流の家元に保管されていたらしく、島田師範が来たのも三両分の鉄道輸送用履帯とウインターケッテンを届けに来て、ついでに愛里寿と一緒に夕飯が食べたかったらしい。

 

 「私は非常食と冬季装備を準備して来るわ」

 

 私は八両分の非常食と冬季装備を整えなければならない。

 

 用意する非常食はライ麦パン、ウインナー、チーズにフリーズドライの野菜とスープの元で良いだろう。それを各車両に積んで、後は裁縫部に頼んだパンツァージャケットと防寒服だけだ。

 

 カイロや手袋、箱に入れたりしてある程度の準備が終わったのだ。

 

 次に私が取り組んだのは、大会の配車だった。

 

 聖グロリアーナ女学院との練習試合の編成を元に編成したのだが、みほが組んだ編成に私は

 

 「ふぅ、やっぱり、みほには敵わないわね」

 

 と頭を掻きながら悩むのだった。

 

 

 

 

 

  おまけ

 

 紅白戦が終わった後、私は寮の部屋で砕けたお気に入りのティーセットを前に膝を折って両手を床に付く形で泣いていた。

 

 「ひっくっ・・・・・・高かったのに・・・・・」

 

 私はダージリン様に島田流、島田師範のご息女の愛里寿様が大洗女子学園に編入されて、自宅はエリカお母様の家に住んでいるから、連絡するなら七時以降にして下さいと言ったのに・・・・

 

 

 そう、ダージリン様は私の忠告を全く、聞かなかったのだ。

 

 そして、悪夢は大会のレギュラーを決める紅白戦で起こったのだ。

 

 十両対十両の殲滅戦だった。

 

 私はいつものように、ダージリン様の乗るブラックプリンスの装填手席に入りダージリン様に紅茶を淹れてダージリン様が開始の合図を出して、紅茶で喉を潤す時に起こった。

 

 「では、全車前進」

 

 ガッツン

 

 「ガッバァ!?熱っ!」

 

 バッシャ・・・ガッシャン

 

 ブラックプリンスの砲塔に砲弾が掠めたのだ。ダージリン様は紅茶で喉を潤す途中だったのか、ダージリン様も衝撃で顔面に紅茶を被り、私も衝撃でティーポットを落としたのだ。

 

 「誰ですの?」

 

 怒りをあらわにするダージリン様。

 

 その時は、いきなりの乱入だから、ダージリン様が怒ったのかもしれない。しかし、ダージリン様がペリスコープで裏を見ると

 

 「大洗のパンター?誰だかは知りませんがお仕置きしましょう。全車に・・・」

 

 指示を出す前に無線手の生徒が叫んだのだ。

 

 「ダージリン様、歌が聞こえます」

 

 「えっ?」

 

 無線をオープンにして聞こえきたのは確かに歌だった。

 

 『やってやる やってやる やってやるぜ イヤなあいつをボコボコに ケンカは売るもの 堂々と 肩で風きり 啖呵きる・・・・・』

 

 そして、ペリスコープで見るとキュポラーから半身出している少女を見てダージリン様か怯え出したのだ。

 

 「えっ?愛里寿様が?まさか・・・・・」

 

 「ダージリン様、愛里寿様に何かしたんですか?」

 

 「したわよ。エリカお姉様に電話したら、愛里寿様が丁度よく寝てたわね・・・・」

 

 まさか、ダージリン様は愛里寿様を起こしたと・・・・・

 

 「これでは、私達全員は死刑宣告に等しいじゃないですか!」

 

 「ペコ、大丈夫よ。いくら、愛里寿様でも・・・・・」

 

 だけど、あの戦車の動きは・・・・・・

 

 「ダージリン様、あの動きはみほ様のチームの操縦手の癖に似てますよ?」

 

 「ペコ、こんな言葉知ってる?」

 

 「はい?」

 

 「逃げるが勝ちよ」

 

 もう、ダメじゃないですか!

 

 「ハァー、ダメダメですね。ここは素直に謝りましょうよ!」

 

 結局、他の車両は紅白戦で撃破されたのもあるけど、ダージリン様を守ろうとした車両は問答無用で全て撃破され、最後は私達の車両のみ残されて島田師範が来るまで追い回れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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