ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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ダージリンからの呼び出しと集う旧黒森峰 

 

 昨夜のみほと愛里寿のボコ劇場版のDVD鑑賞が原因による暴走で全く睡眠が取れなかった私に追い討ちをかけるべく、朝早くからダージリンから電話が来たのだ。

 

 「ん・・・はい・・・・?」

 

 「エリカお姉様、昨日いらした際に来ていた事を知ったらしくて整備科の生徒と一般生徒が是非、エリカお姉様とみほ様にお会いしたいと言ってましたの。みほ様達、旧黒森峰のメンバーだけで来ては頂けないですか?」

 

 昨日、ダージリンの料理の酷さに呆れ、短時間ながら徹底的に教えた為に何故か、お姉様と呼ばれる様になってしまったのだ。そして、オレンジペコにまでエリカお母さんと呼ばれる始末だった。

 

 でも何故、旧黒森峰のメンバーなのだろう?

 

 だけども、それより・・・・

 

 「ダージリン、あんたねぇ!今、何時だと思っているのよ!」

 

 「朝の5時ですわ」

 

 「まだ、隣にみほと愛里寿が寝てんのよ!」

 

 私は後から、叫ばなければ良かったと思ったが遅かった。

 

 「う~ん・・・エリカさん、朝から叫んでどうしたの?」

 

 「エリカ・・・・朝からうるさい・・・・」

 

 お揃いのボコのパジャマを着た、みほと愛里寿が目覚めてしまったのだ。

 

 目覚めるだけなら、まだ、マシかも知れない。私とみほ、小梅は黒森峰時代は起床が5時だったから慣れている。みほと小梅は戦車道を再びやり始めてからは、5時半には起きて、かつての日課だったランニングを再びするようになったから。

 

 だが、愛里寿は違う。

 

 愛里寿はスッキリ目覚めて起床するのは6時だ。

 

 そして、今は5時・・・・その意味は・・・・・

 

 途中で起こすようなら機嫌が悪くなる。

 

 さて、今の愛里寿の状況は最悪の一言に尽きる。

 

 「ねぇ、誰から電話なの?」

 

 「ヒッィ!?」

 

 ガラッン

 

 そう、愛里寿は寝起きで機嫌が非常に悪かったのだ。

 

 そして、既にみほは勘で何かを察したのか、私と愛里寿に気付かれない様にランニングウェアーに着替えて、既に部屋にはいなかったのだ。

 

 部屋に残された私と不機嫌な愛里寿・・・・

 

 目の前に居るのはボコられグマのパジャマを着た愛里寿だ。普通の状態なら誰もが可愛いと言うだろう。しかし、目付きは鋭く不機嫌な愛里寿は逆に怖いのだ。そう、例えるなら鉈を持った般若が私を睨み付けている感じがしたのだ。

 

 見た目、可愛い天使が一辺して獰猛な悪魔になっているのだ。

 

 危険を感じてランニングに脱出したみほの判断は正しいと私は思う。

 

 先程から落とした携帯は通話状態であり

 

 『エリカお姉様!どうかしましたの?』

 

 ダージリンの声が聴こえてくるが逃げる方法がないのだ。

 

 「エリカ、電話の相手が元凶?」

 

 威圧感丸出しの愛里寿の追及・・・・

 

 私はダージリンを売る事にしたのだ。

 

 だけど、愛里寿の無言の威圧から言葉を発せられず首を縦に振ったのだ。

 

 「そう・・・・私も行くから・・・・」

 

 愛里寿はそう言うと布団を被り眠りに就いたのだ。

 

 「ふぅ・・・・・・朝ごはんの仕度を・・・・・あっ・・・・腰が抜けてる・・・・・」

 

 私は愛里寿の威圧から解放されるとペタリと座り込み、一息入れるて朝食の準備をしようとするが腰が抜けているのに気付いたのだった。

 

 結局、朝食はランニングから戻ったみほが行ってもらい、朝食を食べながら小梅が話を聞いて爆笑する始末だったのだ。

 

 「エリカちゃんが腰を抜かすって・・・・」

 

 「小梅!あんたねぇ、島田師範の威圧を受けた事がないから言えんよ!」

 

 「だって、あのエリカちゃんが腰を抜かすって・・・・・あっははははは!」

 

 「エリカさん仕方ないよ」

 

 「エリカだから・・・・」

 

 「ほらぁ、早く食べないと遅刻するわよ!」

 

 私はごまかす様に言うけど、みほと愛里寿は私だからと何故か納得していた。

 

 「エリカさん、私達はダージリンさんから呼ばれてるんでしょ?」

 

 「そうね、行くしかなさそうね」

 

 ご飯を済ませ、私達は学校へと急いだ。

 

 学校では、連絡を受けた内法と藤木が来ており、沙織さん達も一緒に戦車を用意して倉庫前にはⅣ号戦車とパンターが出ていたのだ。しかし、手狭だがパンターだけでいけるのだが、パンターには沙織さん、華さん、麻子、優花里がスタンバイして待っていたのだ。

 

 「みほ、今日はみほのチームを少し鍛えるから借りるね」

 

 「えっ?」

 

 「ちょっと、愛里寿待ちなさい!一緒に行くんでしょ?」

 

 「うん、一緒に行くよ。訓練の相手は聖グロリアーナの生徒とダージリンを捕まえるから・・・・」

 

 未だに、今朝の無理矢理に起こされた事を根に持っているようだった。

 

 配置だが、パンターには愛里寿が車長として行き、Ⅳ号戦車には車長はみほで操縦手は内法、無線手は藤木、砲手は小梅、装填手は私だった。この配置は黒森峰にいた一年生の時の紅白戦でパンターを使った時以来だった。

 

 聖グロリアーナ女学院の中までは一緒に向かったが、私達のⅣ号戦車はダージリンから言われた戦車を整備する倉庫へと向かい、愛里寿達が乗るパンターは訓練に乱入すべく、今頃は戦車道の生徒が訓練しているだろう演習場へと向かったのだ。

 

 念のため、藤木にパンターの無線を聴くとみほが反応したのだ。

 

 「えっ?愛里寿ちゃん、これって・・・・おいらボコだぜ!を歌ってる・・・・」

 

 まさかだと思いたい。

 

 確かに・・・・

 

 『やってるやる やってるやる やってるやるぜ!

 

 イヤなあいつをボコボコに・・・・・・・・』

 

 歌っている。

 

 嫌な予感がして演習場へと向かうと愛里寿は一対複数で練習試合方式で訓練していたのだ。

 

 「あれ、パンターの動きじゃないよね?」

 

 内法が疑問系で小梅に聞き、

  

 「内法さん、私に聞かれても・・・・・」

 

 パンターを見て内法に聞かれ逆に困惑する小梅。

 

 「みほ、あの動きって・・・・」

 

 「うん、今、あんこうチームで練習している技だね・・・・」

 

 「あんな、動きしたら普通なら履帯切れるわよ?」

 

 「うん、パンターは重いもんね・・・・」

 

 そう、私達が見た光景はパンターが囲まれても、とこぞのドリフト族よろしくの様に砲弾を交わし、砲塔を回しながら射撃してウィークポイントに的確に撃ち込んでいたのだ。それも、無線越しけど的確な指示を出しているのが判る。それだけでなく、沙織さん達も普段からの訓練量は他のチームより多くやっているから努力の結果だと思う。

 

 私も経験者だけに沙織さん達を期待しているが・・・・・

 

 あえて、彼女らの名誉の為に名前を伏せるが新たにセンチュリオンの車長になった茶髪で三つ編みで短気な生徒やコメット巡航戦車の車長になった赤髪の自称、聖グロの俊足がいる紅白戦中に乱入したのだ。既に両名の戦車には白旗を掲げており撃破されたのがわかる。他の車両も白旗のオブジェクト化していたのだ。

 

 そして、最後に残るダージリンが乗るブラックプリンスも愛里寿の標的にしていた。

 

 しかし、愛里寿はあれはわざとなのだろうか?

 

 砲塔の車長席側だけを執拗に狙い、ダージリンに紅茶を飲ませまいと砲弾が弾くように射撃をさせて追い回していたのだ。それを見ていた、聖グロリアーナの生徒は顔を真っ青にするほどだったのだから・・・・・

 

 私達は聖グロリアーナの名誉を守る為に、これを見なかった事にして整備倉庫へと向かったのだった。

 

 

 整備倉庫の前には、私達を待って居たのか11人の生徒が待っていたのだ。

 

 Ⅳ号戦車が倉庫の前に止まり、私達が降りると一斉に私達を取り囲んだのだ。しかし、みほは何かに気付き言葉にしていたのだ。

 

 「えっ、板野優さんに山下霞さんなの?」

 

 「「はい、みほ副隊長・・・・」」

 

 私は二人の名前で気付いたのだ。

 

 二人は黒森峰の戦車の整備班ではエースの二人だった。

 

 黒森峰の戦車はエンジンやトランスミッションが良く不調を起こす事があった。それでも、高い稼働率を出していたのが板野さんと山下さんのほかに黒田さん、伊藤さん、加藤さんの五名のチームだった。

 

 他に、よく見ると元整備科の生徒や元機甲科の生徒もいたのだ。

 

 そして、元機甲科の四人の生徒が藤木と内法の前に行くと他の生徒がいるにも関わらず土下座したのだ。

 

 「「「「藤木先輩、内法先輩、先輩から脅されたとは言え、マウスの砲弾をすり替えてすみませんでした!」」」」

 

 私は四人の一年生に見覚えがあった。

 

 黒森峰付属中学校で戦車道をしていた生徒だった。

 

 駆逐戦車を良く使っていた生徒で、リーダー格の岩下歩、砲手の山形唯、操縦手の岩上一美、装填手兼無線手の浜田絵里だった。私と小梅、みほが転校した後に入部した生徒だったのだ。

 

 内法から聞いた話だと、今年期待の一年生だったらしいがイジメから逃げる為に従ったらしい。

 

 藤木がマウスで暴発事故を起こす前にもⅣ号駆逐戦車ラングでも暴発事故が起きており、射撃手だった生徒は暴発した破片で顔を重度の負傷をして自主退学している。

 

 要は見せしめだった。

 

 ラングの砲手の様になりたくなければ、有無言わずに従えと先輩に酷く脅されたと四人が口を揃えて言っていたのだ。

 

 そして、従った結果がマウスの暴発事故だった。

 

 しかし、マウスの暴発事故は当時、射撃訓練で車内に居たのは藤木と内法だけだった。

 

 いつも二人は一緒だっただけに狙われたと私は思う。

 

 暴発事故はマウスの主砲が竹の様に裂け、逃げきれない熱風と破片が車内を襲い、熱風と破片が内法と藤木を襲ったがゴーグルをしていた為に失明を避けられたのだ。しかし、藤木は左腕を火傷し、内法は背中を火傷している。

 

 指示した生徒は黒森峰でも泣く子も黙る風紀委員会に次々と捕まり、計8名が退学処分となり、岩下達は事の全てを戦車道協会の調査委員会に話して責任を取る形で転校したのだ。

 

 ただ、脅され、友達を仲間を守りたいからと従っただけなのに・・・・

 

 岩下達は私とみほに全てを話してくれたのだ。

 

 ここにも、私達の居場所がない。

 

 出来るなら、内法先輩と藤木先輩に償う機会をくれるなら、もし、出来るなら転校して協力したいと。

 

 同じ様に整備科の生徒もマウスの暴発事故で主犯格の先輩から罪をなすりつけられて、イジメられた挙げ句に一緒に転校したのだ。そして、全員はバラバラに転校したが、受け入れ先がなく偶然にも聖グロリアーナ女学院が受け入れられ、チームを組んでいた生徒は全員が揃い、全部で11名が受け入れられたねのだ。

 

 私は彼女達の話を聴いて、ぐちゃぐちゃの気持ちで一杯だった。

 

 これが、今の黒森峰の戦車道なのか?

 

 隊長は何をして居るんだ?

 

 張り裂けそうな怒りと今の黒森峰に悲しくなる混沌としたこの気持ち・・・・・

 

 私がかつて、憧れた黒森峰は一体何処に行ってしまったのだろう・・・・・

 

 もう、怒りを通り過ぎて悲しさが浮き上がってくるのだ。

 

 そして、私は・・・・・・

 

 気が付けば、私は泣いていたのだ。

 

 「・・・・・あれ?・・・涙・・・なんで?・・・・私、なんで泣いてるのよ・・・・」

 

 「エリカちゃん・・・・・ひっくぅ・・・・どうして・・・・涙が止まらないの?」

 

 「私もだよ・・・・どうしてかな?・・・・黒森峰にはエリカさんと小梅ちゃんだけの思い出しか無いのに、どうしてかな?・・・・」

 

 つられる様に、小梅もみほも泣いていたのだ。

 

 涙の連鎖は周りにも伝わり、ここに居た元黒森峰の私達は泣いていたのだ。ある人は抱き合いながら泣き合い、ある人はその場に座り込んで泣き、ある人は子供の様に泣きじゃくっていたのだ。

 

 みほの前では二度と泣かないと、決めていたのに・・・・

 

 私は涙が止まらないのだ。

 

 「どうしてなのよ!どうして・・・・・うっ・・・・あぁぁぁぁぁ・・・・」

 

 少しだけ、黒森峰が立ち直って欲しかった淡い期待だったのかも知れない。

 

 でも、私は黒森峰ではなく、みほを選んだのだ。

 

 それだけは後悔していない。

 

 でも、悲しくて堪らないのだ。

 

 

 みんなが泣き止む頃には、日が傾きかけていたのだから・・・・・・

 

 

 

 翌日、整備科の生徒7名と普通科の生徒4名の合わせて11名は聖グロリアーナ女学院から大洗女子学園の普通Ⅱ科として転校が決まった。ダージリンからの話では、元々、みほを受け入れる積もりが何かの手違いで受け入れてしまったらしく処遇に困っていたらしい。丁度よく、みほ副隊長がいるなら、大洗に移りたいと学園長に直談判していたところだったのだ。

 

 今、正門には聖グロリアーナを去る11名の生徒にダージリンは言葉を贈ったのだ。

 

 「あなた方の門出に、この言葉を贈りますわ」

 

 「「「「えっ、ダージリン様から?」」」」

 

 「ねぇ、この言葉知ってる?『涙と共にパンを食べたものでなければ人生の味はわからない』」

 

 「ゲーテですね」

 

 「ですので、大洗に行っても頑張って下さい」

 

 「「「「ありがとうごさいました!うっ、うわぁぁぁぁ」」」」

 

 ダージリンからの言葉に泣き出す生徒達。

 

 なんか、美味しいところはダージリンに持って行かれたように感じたが気のせいだろうか?

 

 

 転校後、元整備科の生徒は整備倉庫にバラバラになってオーバーホール中のシュトルムティーガーを見て目を輝かせていたのだ。

 

 「隊長!是非やらせて下さい!」

 

 「整備班エースの力を見せてやります!」

 

 「えっ、ナカジマさん達がいらしゃるんですか!」

 

 と自動車部に入り、そして、戦車の整備も担当となって稼働率が上がったのは言うまでもない。

 

 また、岩下達は改造が終わったばかりのヘッツァーを見ると、駆逐戦車乗りの血が騒いだようで四人一緒にチームを組んでヘッツァーを愛車に参加したのだ。

 

 「駆逐戦車がある!」

 

 「ねぇ、あっちにはレストア中のエレファントがあるし、ポルシェティーガーからの改造中のもあるよ!」

 

 「じゃあ、エレファントが二両になるんだね」

 

 「乗るなら、これでしょ!」

 

 「おっ、ヘッツァーだ!私達の車両はこれに決まりだね!」

 

 「あんた達、作戦次第では車両も代わるわよ!」

 

 「「「「えっ?エリカ副隊長、マジで・・・・」」」」

 

 「本当よ」

 

 「お願いします!私達には駆逐戦車を!」

 

 「わかったわよ。じゃあ、西住隊長と島田副隊長に伝えておくわ。でも、期待しないないでね」

 

 私は倉庫を後にすると、整備倉庫に向かった。

 

 「どう?本戦には間に合いそう?」

 

 「一回戦には間に合いませんが、二回戦前までは終わらせますよ!」

 

 ようやく、パーツ交換が終えて組み立て作業中のシュトルムティーガーだった。

 

 「絶対、黒森峰戦とプラウダ戦には必要になるわ。お願いね」

 

 「お願いされました!」

 

 私は各班の見回りが終えると、みほが居る部室へと向かった。

 

 部室では、みほ達あんこうチームと愛里寿が書類とにらめっこしながら処理していた。そこは、島田流のチームで元隊長をしていた愛里寿だけに手際が良かった。

 

 「みほ、見回りが終わったわよ。一応、一回戦までに使える戦車をまとめて置いたわ」

 

 「ありがとう、エリカさん。う~ん、やっぱり、重戦車が多いな・・・・」

 

 確かに、重戦車が多い。

 

 ティーガーⅡが三両、パンターF型が三両、Ⅳ号戦車F2型が一両、レオパルドが二両、三式中戦車(長砲身)が一両、Ⅲ号突撃砲が一両、ヘッツァーが一両の合計が十一両。

 

 そして、レストア中がエレファントが一両、エレファントに改造中のポルシェティーガーが一両、オーバーホール中のシュトルムティーガーが一両だった。

 

 「どうしてよ?」

 

 「もし、会場が砂漠だったら、ティーガーⅡとパンターは防塵とラジエーターの関係で使えないかも」

 

 「確かにね。でも、最低でもパンターは使いたいわ」

 

 「う~ん・・・・パンターは絶対にオーバーヒートしそうだね」

 

 「みほ、しそうだね。じゃなくてする」

 

 愛里寿かみほに突っ込んだ時だった。

 

 「西住ちゃん、居る?」

 

 「杏さん、どうかしたの?」

 

 「あのさぁ、さっき空輸便で西住ちゃん宛てに戦車が二両も届いてるんだよねぇ。で、贈り主が判らなくてさぁ、何か知ってる?」

 

 「えっ?誰からなの?」

 

 私が校庭のすみには、確かに戦車が二両が置かれていた。

 

 特徴ある二両は見た感じで判る。

 

 あの角張った、車両に太くて短い砲身は150ミリはあるのはやはりブルムベアだった。

 

 「あと、一緒に手紙も一緒に合ったよ」

 

 みほは杏さんから受け取り、封を切ると誰かからだと判ったようで手紙を読み続けたのだ。

 

 その手紙を読み終わると顔を手で被うように泣き出したのだ。

 

 「なんで?・・・・どうして?・・・・・・うっ、うわぁぁぁぁ!」

 

 「みほ、手紙を見るわよ!」

 

 「ひっくぅ・・・うん、見て・・・・」

 

 「わかったわ。読むわよ・・・・」

 

 私はみほが読んだ手紙を読んだのだ。

 

 

 

 拝啓

 

 みほ、体の管理を怠らずしていますか?

 

 あの日、大洗に転校してからは私はずっと、みほを破門にしたことを悔やみ続けました。

 

 私は友人に言われて、初めて気付きました。

 

 撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 

 

 それが西住流・・・・

 

 あの日、みほは違う形で西住流を守ってくれました。

 

 今を守るのではなく、未来を守る。そして、実は西住流を汚してはいなかったこと

 

 ですが、全てが遅かった。いえ、私がその事に気付くのが遅すぎたのです。

 

 私はみほがもし、島田流を習うのあれば止めはしません。いや、止める理由がありません。

 

 今のみほは、西住流の西住みほではなく、西住家の娘・・・・普通の西住みほなのですから。

 

 その代わり、自分の戦車道を見つけて下さい

 

 学校でもがき苦しむみほに気付かずに破門にして、何も母親らしいことができなかったことは謝っても許されることではありません。むしろ、嫌われて当然かも知れません。

 

 本当に不器用な母親ですいません。

 

 ですが、母親として出来る事で、みほの部屋はそのままにしてあります。

 

 また、親子としてやれるなら、帰って来たら大洗での出来事を聞かせてください。

 

 みほへのせめてもの償いで、家元の倉庫に眠っていたブルムベア二両をお贈りします。

 

 

 

 

 手紙の内容は西住師範からの謝罪だったのだ。

 

 みほはうれしくて泣いていたのだ。

 

 私も嬉しくて、少し泣いたのは秘密である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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