ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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 ガールズ&パンツァーにはあまり詳しくありませんがゆっくり投稿出来たらと思います。


プロローグ

 

 私は最初は西住みほが嫌いだった。

 

 尊敬し憧れる西住まほ隊長の妹っていうだけで副隊長に就任したからだ。

 

 しかし、現実は違っていた。

 

 私がどんなに足掻いてもみほの才能には勝てなかったのだ。

 

 でも、みほの身の回りの世話をしている内に違う何かが芽生えていたのも事実だった。

  

 そんな、気持ちに気付いたのは決勝戦のプラウダ高校との試合で起きた事故からだった。

 

 

 崖沿いを追撃しなから、酷く降りしきる雨の中をフラッグ車であるみほが駆るティーガーを護衛するかのように私が車長を勤めるⅢ号戦車の目の前にはプラウダのT-34/85を中心に率いる本隊と遭遇したのだ。

 

 飛んで来る砲弾

 

 今、思うと徹甲弾ならさぞ良かっただろう。

 

 Ⅲ号戦車なら一撃で走行不能になり道を塞げたから・・・

 

 しかし、撃って来たのは榴弾だった。

 

 着弾したのは私のⅢ号戦車の側だった。

 

 崩れる戦車の足元

 

 ずり落ちるようにⅢ号戦車は濁流化した川に落ちたのだ。

 

 「「「「「キャァァァァ!?」」」」」

 

 車内は私達の悲鳴で響き渡る。

 

 濁流に飲み込まれて行く私達とⅢ号戦車

 

 車内にも水は入り込み、内部がいくら特殊カーボンでコーティングされているとは言われても侵入して来る水だけは防げないのだ。ただ、恨めしく思うならⅢ号戦車M型なら多少は違ったと思う。

 

 「やだ、死にたくない!」

 

 「小梅、落ち着きなさい!」

 

 私も全員に落ち着く様に叫んでも車内に侵入して来る大量の水に錯乱する砲手の小梅は扉を開けようとするが水圧で開かないのだ。

 

 他の搭乗員までも脱出しようと扉を開けようとしても水圧で開かなかったのだ。

 

 「あっ、ハッチが開かない!誰か、助けて!」

 

 「いっ、いやぁぁぁぁ!?」

 

 正直、私も死にたくなかった。

 

 試合が終わったら、みほと小梅の三人で買い物に行く予定だったのに・・・・・

 

 私も死ぬのだろうか?

 

 「あっぷぅ、嫌だ!死にたくない!助けて!」

 

 「ぶっはぁ、小梅、内法、藤木は砲塔側に上がりなさい!まだ、空気があるわよ」

 

 辛うじて、顔だけが出せるところまで車内には水が貯まり、私達は絶望的な状態だった。背の低い小梅は溺れ始め、私が足を車長席につけて支えていた。他の乗組員も同じく支え合ったのだ。しかし、侵入して来る大量の水はとどまることを知らず、戦車内を満たし私達を飲み込んだのだ。。

 

 私が最後に見たのは車内で意識を無くし水中に力無く漂う小梅や他の乗組員だった・・・・

 

 「みほ・・・・ごめん・・・・・・ゴッボォ・・・・」

 

 私は意識を手放したのだ。

 

 

 

 

 

 エリカさんと小梅ちゃん達が乗るⅢ号戦車が転落し濁流に流され飲まれていく光景。

 

 私はプラウダの戦車隊に激しい砲撃に晒される中、味方と相手高校、審判団に事故を知らせる発煙弾を出すように命令した。

 

 「信号弾を取って下さい!」

 

 しかし、Ⅲ号戦車は流され始め、沈み始めたのだ。

 

 救護隊は今の状況では絶対に間に合わない。

 

 早くしなければ、エリカさんと小梅ちゃんが・・・・

 

 浮かぶのは大切な友達の死だった。

 

 焦る私に不安になる乗組員達。

 

 最早、信号弾を撃つ暇は無い。

 

 「私が救助に向かいます。すいませんが信号弾をお願いします」

 

 「副隊長!」

 

 私は激しい砲撃の中、ティーガーのハッチを開けて降りると体にロープを巻き、濁流に身を投げたのだ。

 

 泳げないのも忘れ、がむしゃらに三号戦車が沈んだ場所に向かって泳ぎ潜ったのだ。

 

 川底にはⅢ号戦車が横たわり沈んでいた。Ⅲ号戦車の射撃手ハッチを開けるとエリカさんや小梅ちゃん達が力無く漂う姿に意識が無いのに気付いた。まずは、近くにいる小梅ちゃんからだと思い、小梅ちゃんを抱えて浮き上がり、岸にあげた時に見た光景はフラッグ車のティーガーが白旗を上げてやられた後だった。しかし、私は構わずに再び潜りエリカさん、内法さんに藤木さんを救助したのだ。

 

 ただ、私は西住流の西住みほではなく、普通の西住みほとして見てくれて、大切な友達のエリカさんと小梅ちゃんを助けたいだけだったのに・・・・

 

 救助が終わる頃には、事故の知らせを受けた救護隊が来ていた。

 

 だけど、私が見たのは意識が無く腕が力無く垂れ下がるエリカさんと小梅ちゃんが搬送される姿だった。

 

 エリカさん、小梅ちゃん嫌だよ!私を置いて行かないで!

 

 私の心で叫び、Ⅲ号戦車の乗組員は救護隊によって病院に搬送されたのだった。

 

 乗組員全員は命に別状も無く無事だったが、エリカさんと小梅ちゃんは意識が中々戻らなかった。その後、学園に戻った私は十連覇を逃した事に加えて、敗北の責任を押し付けられる形でOGや在校生に責めらたり、肉体的な指導をされたりと肉体的にも精神的にも堪えられなくなり、それを苦に私は部屋に閉じこもってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 私が目覚めたのは白い天井のある部屋だった。

 

 数日して退院したがみほの姿が無かった。

 

 当時のみほが乗っていたティーガーの乗組員を問い詰めたところ全てを知ってしまった。

 

 

 結果はみほが助けに入った事で指揮系統が乱れフラッグ車は撃破されプラウダに敗北したのだ。

 

 当然な結果かもしれない。

 

 しかし、実際はみほは装填手に事故を知らせる発煙弾を撃つように指示してから川に飛び込んだが発煙弾は撃たれる事は無かった。三年生だった操縦手に邪魔され揉め合っている間にプラウダに攻撃され撃破されたのだ。

 

 その三年生はその事実を隠したのだ。

 

 OGや在校生から非難されるのを逃れるために・・・・

 

 生け贄はみほがなってしまった。

 

 気がつけば、私と小梅は自分を責めるようになっていた。

 

 あの時、私達が濁流に落ちなければと・・・・

 

 しかし、事実を知った私達は全力でみほを庇い奔走したのだ。

 

 私達の命を救ってくれたみほを守る為に・・・・

 

 それでも、みほは十連覇を逃し勝手な行動をしたとかでOGや在校生に敗北の責任を押し付けられ責められたのだ。

 

 みほはその日を境に部屋に閉じこもってしまったのだ。

 

 みほを守れないで何が友達だ。

 

 いや、私はやっと、みほへの気持ちが分かった瞬間だった。

 

 私はみほが大好きだったのだ。

 

 だから、私が出来る事をしよう。

 

 それから毎日、いくら私達が責められても肉体的に指導されも我慢した。そして、食事を作ってはみほの部屋に通ったが中に入れてくれる事は無く、お盆に載せて入口に置いておいたが食べ終わる頃に行くと、それでも食事だけは食べてくれた様で安心していた。

 

 私も現状打破の為に隊長のまほ隊長に相談しようとしたが、実家や学園と話し合いをしている様で取り合って貰えず、歯痒さだけが残ったのだ。

 

 みほが閉じこもってから数日が経った夜に、私の部屋に隊長が訪ねて来たのだ。

 

 「エリカ、入るぞ」

 

 「隊長、今頃何ですか?」

 

 隊長も師範や学園から責められたのだろう。隊長の目の下には隈ができており憔悴しているのが判る。だけど、今更だと思い怒りが込み上げていたのだ。

 

 「みほの事なんだが・・・」

 

 「くっ、相変わらず、みほは部屋に閉じこもったままです」

 

 「そうか・・・・引き続き、みほを頼む」

 

 「頼まれなくても、みほは私の大切な友達です。隊長はみほと話さなくていいんですか?いや、姉として話すべきじゃないですか!いま、みほが苦しんでいるのに助けようとしないですか!」

 

 「くっ・・・・」

 

 みほへの気持ちが不満として溜まっていた事を隊長にぶつけてしまった。

 

 隊長は自分の唇を噛み私に睨むだけで何も言わなかった。

 

 これが、みほが大好きだった隊長の姿なのか?

 

 私が憧れる隊長像が壊れていったのだ。

 

 そして、私は隊長に言ってはいけない事を言ってしまった。隊長だって、みほの事が心配で堪らないはずなのに・・・・・・

 

 「隊長・・・・見損ないました。みほに関しては、私と小梅で見ますので関わらないで下さい。それと、みほが助けを求めているのに行かないで、そんな時だけお姉ちゃんぶらないで下さい!」

 

 「エリカ!私だって・・・・」

 

 「帰って下さい。隊長とはもう話したくないです」

 

 隊長はショックだったのか、私の部屋から出て行った。隊長の背中は小さく震えていたいたのは気のせいだったんだろうか・・・・

 

 

 

 翌日、私はみほの部屋に向かった。

 

 「みほ、朝ごはんを持って来たわよ」

 

 その日に限って部屋の鍵が開いていた。

 

 「入るわよ」

 

 ガチャリ

 

 「あっ、エリカさんありがとう・・・」

 

 「中に入ってもいいかしら?」

 

 「うん・・・・」

 

 やっと、みほの部屋に入る事が出来たのだ。部屋は薄暗く泣いて居たのだろうベッドのシーツは涙で濡れた後があり、みほ自身も元気はなく大分参っているようだった。

 

 「エリカさん毎日ご飯ありがとう」

 

 「別にいいわよ。それより、みほは大丈夫なの?」

 

 カッラン

 

 フォークが落ちるとみほは泣き出したのだ。

 

 「ヒックゥ・・・・分からない。私、どうしたらいいのか分からない。話したくてもお姉ちゃんは来てくれないし、お母さんは今度、帰港したら一度、自宅に帰るように言われたから・・・・」

 

 多分、隊長がやたらと電話していたのは母親と連絡していたのだろう。私も隊長には事実を全て話してある。だが、私は隊長を許せない。

 

 「みほは間違っていない。私と小梅が傍に居るから頼ってね」

 

 「エリカさん・・・・うわぁぁぁぁぁ」

 

 泣きじゃくるみほを抱きしめ、私はその日の授業を休んだ。みほを支える為に・・・・・

 

 私と小梅はそう決心したのだから・・・・

 

 

 

 一週間が経ち、熊本の母港に学園艦が帰港した。

 

 案の定、私と小梅はみほの母親の西住師範に来るように呼び出されたのだ。

 

 みほと三人でみほの自宅ではなく、西住流家元へと向かう事になった。

 

 執務室に通された私達は西住流師範と対峙することになったのだ。

 

 「良く来てくれました」

 

 「私達に何か用ですか?」

 

 「話はまほから全て聞きました。ですが、内容からしても西住流を汚した事には変わりません」

 

 私の中で何かが切れた・・・・

 

 「お言葉を返すようですが、あれは完全に事故でした。なのに、救助が間に合わない状況で、咄嗟の判断でみほは私達を助けてくれました。師範は私達が死んでまで勝利を掴めと言うのですか?」

 

 「いえ、そうは言ってないわ!」

 

 「隊長から話は聞いているんですよね!だったら、何故、みほが責められなければならないのですか?」

 

 「・・・・」

 

 「何も言えないですか?」

 

 「エリカさん止めて!」

 

 「みほ・・・」

 

 「お母さん、私が信号弾を使用していれば良かっただけです。でも、私は・・・・」

 

 「みほ、言い訳は聴きたくありません。みほにはもう呆れました。だから、あなたには破門を言い渡します。そして、私に刃向かった逸見エリカにも破門を言い渡します」

 

 執務室を後にした私達は学園艦に戻る事にしたのだ。

 

 「小梅、あなたには悪いけど隊長の事を任せられるかな?」

 

 「えっ?どうしてなのエリカちゃん?」

 

 「私とみほはもう黒森峰には居られないと思うわ。多分だけど、私とみほは転校になる。破門されてない小梅なら隊長の事を任せられる。それで、私はみほと話し合ってこれからを決めるから・・・・」

 

 「駄目!みほちゃんもエリカちゃんも居なくなるなら私も付いていく!私にはみほちゃんとエリカちゃんしか居ないもん!私も一人にはなりたくない!だから、私も連れてってよ!」

 

 私達は三人で話し合い黒森峰の戦車道を辞める事にしたのだ。そして、精神的に参っているみほのため、戦車道が無い学校へ転校することを決めたのだ。もちろん、私と小梅も一緒にだ。

 

 ただ、私は親からの猛反発があったが破門された事とみほを支える為に一緒に転校する旨を伝えて何とか承諾を取れたのだ。

 

 決まった翌日、私達三人は隊長の部屋に向かった。

 

 「失礼します」

 

 「三人揃ってどうしたんだ?」

 

 「隊長、私達三人は戦車道を辞める事にしました」

 

 隊長に辞める事を伝えて退部届けを出したのだ。

 

 「なっ、何故辞める?みほやエリカ達は間違っていないのに・・・・」

 

 隊長は慌てて立ち上がると辞めない様に引き止めたのだ。

 

 「お姉ちゃん、私とエリカさんはお母さんから破門だって言われたの。だから、辞めて転校する事に決めたんだ。戦車道が無い学校に・・・・」

 

 「みほ、お母さんがそう言ったのか?」

 

 「うん、言われたよ。破門だって・・・」

 

 「そうか・・・・エリカも小梅も辞めるんだな?」

 

 「隊長、私もそう言ったはずですが?」

 

 「そうか、分かった・・・・・・・みほ、済まない・・・・」

 

 隊長は俯き振り向くと窓を眺めながら何かを呟いていた。

 

 

 隊長の部屋を後にした私達は部屋に戻り、荷物をまとめると新学期から編入するために一路、大洗へと向かった。唯一、戦車道が無いのは大洗女子学園だけだったから・・・・

 

 大洗駅に着いた私はあることに気付いた。

 

 「みほ、小梅、少し良いか?」

 

 「どうかしたんですかエリカさん」

 

 「エリカちゃん、何かあったの?」

 

 「いや、私のお母さんの妹が学園艦に住んで居るんだ。元西住流の門下生でかつて大洗女子学園の戦車道の隊長を務めていたのよ。アパートの件でお世話になるから挨拶だけでもなと思ってね。だから・・・・」

 

 「大丈夫だから、私も行くよ?」

 

 「みほは小梅と一緒にこれから住むアパートで荷物の整理を頼めるかな?」

 

 「エリカさん、やっぱり行くよ。だって、これからお世話になるんだよね。だったら行くよ」

 

 「そうだよ。お世話になるなら私も行かないと」

 

 「気分が悪くなったら、直ぐに言ってよね」

 

 「うん」

 

 一路、学園艦行きのバスに乗り学園艦へと向かった。

 

 私達が住む事になったアパートは私の母親の妹の飛騨茜が所有するアパートだった。学生にも人気があったが一部屋だけ余っていたが、それは教職員用に作られた家族寮だった。しかし、母親から茜叔母さんに連絡を入れたらしく一部屋を用意してくれたのだ。

 

 部屋は2LDKの広い部屋だった。学生には広すぎるかも知れないが住むのは三人で住むのだから大丈夫だろう。

 

 そうしている内に茜叔母さんが住む近くのバス停だった。

 

 そこから、徒歩で数分だが途中、眠そうにふらつきながら歩いて帰る生徒が歩いていたが気のせいだろう。

 

 ピンポーン

 

 「ハァァイ!」

 

 茜叔母さんに会うのは何年ぶりだろうか。今は、中学生三年生になる一人娘と二人で暮らしていたと思ったけど・・・・

 

 玄関が開くと母親にそっくりな女性が出て来た。

 

 「良く来たわね。エリカ・・・・・」

 

 私が睨まれるのは仕方の無い事だった。

 

 代々、逸見家は西住流の門下生として続いた家柄だった。茜叔母さんも元は西住流の門下生で一年生の途中までは私達が居た黒森峰の生徒だった。しかし、私達と同じ事故が起きた時にみほと同じ様に助けに入ったが先代の師範によって破門にされたのだ。叔母さんも私達と同じくこの学園に転校したのだ。当時、私の母親と喧嘩をしたが今は仲を取り戻している。

 

 だけど、私は当時は幼かったが叔母さんに面汚しと言ってしまった。

 

 だからだろうか?

 

 「皆さんの事情は全て聞いていますから大丈夫ですよ」

 

 「叔母さん、お世話になります」

 

 「畏まらないでも良いわよ。みほさんと赤星さんは少し外で待ってて貰えるかな?」

 

 みほと小梅が外に出ると私は茜叔母さんに寝室に連れて行かれたのだ。

 

 「ちょっと、私はそんな趣味はないわよ!」

 

 「違うわよ!エリカだけに話して置きたい事があるの。聞いてくれるかな?」

 

 「なによ・・・」

 

 「転校して早々だけど、学園がきな臭いの。もしかしたら廃校かも知れない」

 

 「えっ?私、そんなの知らないわよ!」

 

 「もしかしたら、あなた達は弘子の娘に睨まれる可能性があるからこれを持って行きなさい。絶対に必要な力になるから・・・・」

 

 「その前に、弘子の娘って誰よ?」

 

 「この学園の生徒会長の角谷杏よ」

 

 私が渡されたのは電子錠の鍵とこの学園艦のマップだった。

 

 私達がまた、戦車道をやる事になるとはこの時はまだ知らなかったのだ。

 

 これから、起こる事に苦労して行く事にまだ、気づけないで居たのだから・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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