デート・ア・ファンタジー   作:ノクトに幸せを……

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もりぞーとピッコロ様、評価感謝です!


十香デッドエンド——説明

—やっと、やっと会えたね、■■■

 

 

—嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って

 

 

—もう、絶対に離さない。もう、絶対に間違わない。だから

 

 

 

「ノクト、ねぇノクトってば!」

「ん……あ、プロンプト?」

「あ、やーっと起きた。ねぇ、見て見て、ノクトの寝顔ー」

「あ?っておま、何撮ってんだよ⁉︎カメラ取り上げろグラティオ!」

「無防備に寝てるお前が悪い」

「お前も敵かよグラティオ⁉︎」

「静かにしていてくれ。運転に集中できない」

「あ、ワリィ、イグニス……ってなんで俺が謝なきゃいけねぇんだよ!」

「あはは、ノクト怒られてやんの」

「誰のせいだ誰の!」

 

 

 

 

懐かしい、そして大切な夢を見ていた。そんな気がした。

 

「!」

 

目が醒める。と同時に士道は驚きの声をあげた。

それもそうだ。見知らぬ女性が士道の瞼を指であけてペンライトの光を当ててるのだから。

 

「……ん?目覚めたかね?」

 

妙に眠たげに、というか目の下の隈がすごいことになっている女性はぼう、とした声でそう言う。

どうやら気絶していた士道の眼球運動を見ていたようだ。だから顔が近く、そこはかとなくいい匂いがする様な気がした。

 

「あーっと、誰?」

 

状況が飲み込めない士道は取り敢えず基本的な事を聞いてみた。

 

「……ん、ああ」

 

女性はぼうっとしたまま体を起こすと垂れていた前髪を鬱陶しげにかき上げた。

よく見れば、軍服らしき服を纏った20位の女性だ。分厚い隈に彩られた目、そしてなぜか服のポケットに傷だらけの熊のぬいぐるみが入っていた。

 

「……ここで解析官をやっている村雨令音だ。あいにく医務官が席を外していてね。……まあ安心してくれ。免許こそ持っていないが簡単な看護くらいならできる」

「解析官?って事はどっかの基地かここは?」

 

解析官という言葉に引っかかり、独自の結論に達した士道。何せ最後に見た光景が謎の空飛ぶ軍隊とドレスを纏ったこれまた謎の少女である。そこからあの謎の軍隊の施設に収容されたのかと考えたのだ。

自分が寝ているのは簡素なパイプベッド。そして周りを取り囲むように白いカーテンが仕切を作っている。学校の保健室のような場所だ。

だが、天井には無数の配線と配管がむき出しになっている。それもまた彼の考えを助長させた。

 

「……いや、ここは《フラクシナス》の医療室だ。で、それよりも、だ。大丈夫かね?」

「あ?なんで?」

「……なんでも何も、泣いているじゃないか?」

「は?」

 

士道は無意識のうちに目元に触れていた。触れた部分の指を濡らす。そう、彼は泣いていたのだ。

 

「な、なんで」

 

慌てて袖で涙を拭う。すぐに涙は止まったが、目は真っ赤に腫れているのが士道にはわかった。

 

「くそ、なんだよこれ。なんで泣いてんだよ……」

「……さてね。本人もわからないならわかりようもないさ」

 

ちくしょうと、苛立つ士道。それを令音は宥めるように肩を叩いた。

 

「……落ち着きたまえ、君にはこれから色々と説明せねばならないんだ」

「はぁ?説明?なんの?」

「……行けばわかる」

「あーもう、分かったよ!」

 

涙を見られた事からの羞恥心からくる苛立ちを全面に出す士道。

それに嘆息した令音はフラフラとした足取りで士道を先導する為にカーテンを開ける。外は少し広い空間になっておりベッドがいくつか並んでおり、奥には見られぬ医療器具が見える。

令音は部屋の出入り口らしき方向に向かってフラフラと歩いていき、

足をもつれさせてガンっ!と音を立てて壁に頭をぶつけた。

 

「っておい、大丈夫か⁉︎」

 

生来の優しさから恥ずかしさも忘れ、令音の心配をする士道。そんな彼の横で倒れなかったが令音は壁にもたれかかり、呻く。

 

「……ああ、すまんね。最近寝不足なんだ」

「見りゃわかる、どんだけ寝てねぇんだよ」

 

士道が聞くと令音は少し考え指を三つ立てる。

 

「三日?そりゃ眠いな」

「……30年かな」

「なわけねぇだろ⁉︎」

 

嘘であってくれと叫ぶ。本当だとしたら、もはや生物の領域を超えている。彼女の外見年齢も。

 

「……まあ、最後に睡眠をとった日が思い出せないのは本当だ。最近不眠症気味でね」

「いや、それにしては……」

 

本気の口調だったような。という言葉を飲み込む。

 

「……と、失礼。薬の時間だ」

 

と、令音は懐を探ると錠剤の入ったピルケースを取り出す。

そしてふたを開けると錠剤をラッパ飲みのように一気に口にほおり込む。

それに慌てたのは士道だ。

 

「っておい!」

「……なんだね騒々しい」

「飲み過ぎだっての!てか、何の薬だそれ!」

「……すべて睡眠導入剤だが?」

「死ぬぞ⁉︎」

「……でも、今一つ効きが悪くてね」

「どんな体してんだよ!」

「……まあ甘くておいしいからいいんだが」

「……偽物じゃねぇの?それ」

「……とにかく、こっちだ。ついてきたまえ」

 

令音は空になったピルケースを懐に戻してまた危なっかしい足取りで歩きだし、医務室の扉を開ける。

士道もすぐに靴を履いてそれに続く。

 

「……こりゃ……」

 

部屋の外は単色で構成された機械的な床と壁の狭い廊下のようになっていた。

士道は感心したように目を細めたがすぐに令音を見つけるとその後に続く。

フラフラとおぼつかない足取りの後をついて行きながら士道は通路を歩いていくと、通路の突き当りに隣に小さな電子パネルが備え付けられた。扉の前で足を止め、令音が言う。

令音が電子パネルを操作すると滑らかに扉がスライドする。

 

「……さ、入りたまえ」

 

令音が中に入っていき、士道もそれに続く。

 

「……凄え」

 

そこは言ってしまえば船の艦橋のような場所だった。士道がくぐった扉から半楕円の形に床が広がっており、その中心には漢潮汐のような席が設けられている。

左右両側になだらかな階段があり、そこから下段にはコンソールを操作するクルーたちが見受けられる。中は全体的に暗い感じがする。

 

ここまで未来的なものを見るのは帝国のものくらいだった。

 

「……帝国?なんじゃそりゃ……」

 

また馬鹿な思考をしたと頭を振る士道。そんな彼をよそに、令音は言い放つ。

 

「……連れてきたよ」

「ご苦労様です」

 

それに応えた艦長席の横に立った長身の男が執事のように軽く礼をする。ウェーブのかかった髪に日本人離れした鼻梁を持つ青年だ。

 

「初めまして。私はここの副指令、神無月恭平と申します。以後お見知りおきを」

「……おう」

 

士道は小さく頷く。

 

「司令、村雨解析官が戻りました」

 

神無月が声をかけると、こちらに背を向けていた艦長席がゆっくりと回転する。

そして、

 

「——歓迎するわ。ようこそ、《ラタトスク》へ」

 

司令と言うには幼い女の声を響かせ、真紅の軍服を肩掛けしたにした少女の姿が明らかになった。

 

「……なんでよりにもよってお前なんだよ……」

 

頭を抱えるように士道は呻く。

大きな黒いリボンでツインテールにまとめられた髪、小柄な体躯、どんぐりの見たいな丸っこい目。そして口にはキャンディーのチュッパチャプスを加えてる。

 

「琴里」

 

全体的に多くの違いがあるが、その少女は間違いなく士道の妹、五河琴里だった。

それに少女はニヤリと口の端を歪めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「——で、これが精霊と呼ばれてる怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊。厄介なものに巻き込まれてくれたわね。私たちが回収してなかったら今頃2,3回ぐらい死んでたかもしれないわよ。で、次に行くけど——」

「いや、待てよ」

 

ぺらぺらと説明を続ける琴里を士道は制す。

 

「何、どうしたのよ。折角司令官じきじきに説明してあげてるいるっていうのに。もっと光栄にむせび泣いてみなさいよ。今なら特別に足の裏ぐらいなら舐めさせてあげるわよ」

 

士道を見下すような視線を作りながら琴里が普段とは全く違う暴言を吐いてくる。

 

「ほ・・・・・・っ、本当ですか!?」

 

喜びの声を上げたのは琴里の横に立っている神無月だったが、すぐに琴理が

 

「あんたじゃないわよ」

「ぎゃぉふ・・・・・・!」

 

神無月のみぞおちに肘鉄を打ちこむ。それを一通り見た後に、士道は口を開いた。

 

「誰がするかよ、誰が。ていうか琴里、無事だったんだな。心配させやがって」

「あら、心配なら無用よ。っていうか、士道こそ、空間震警報が鳴ってるのに外に出てるなんて馬鹿なの?少しでも巻き込まれれば死んでたのよ?」

「原因がよくもまぁぬけぬけと……ほれ、ケータイの位置情報。ファミレスの前で止まってるだろ?」

「ん?ああ、これの事?」

「?なんで持ってるんだ?」

 

琴里が見せたケータイに、士道はてっきり落としたものだと思い込んでいた為に首を傾げた。

 

「ここ、ファミレスの地下とか?」

「残念。逆よ逆。見てもらった方が早いわね。一度フィルターを切って」

 

そう船員に指示を出すと、途端に地面が消えた。

 

「うおっ⁉︎こりゃ……」

「騒がない。これは外の景色が見えてるだけよ。ここは天宮市上空1万5000メートル。位置的には待ち合わせしてたファミレスの辺りになるわね」

「……成る程な、漸く合点がいった。で?説明の続きは?」

「本当ふてぶてしいわね……まぁいいわ。彼女はこの世界に存在しないモノであり——この世界に出現するだけで己の石とは関係なく、あたり一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 

 琴里が両手をドーン!と広げ、爆発を表現する。

 

「?」

「つまり、空間震って呼ばれる現象はこの子たちによって起こされてるの」

「……へぇ……」

 

一度は首を傾げた士道だったが、琴里のセリフによって漸く理解した。空間の地震、空間震。人類を、世界を蝕む理不尽な現象の原因が彼女とは士道は思わず眉をひそめる。

 

「ま、規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければーそれこそ、大陸に穴が開くぐらい」

「……30年前のユーラシア大空災?」

「その通り」

 

士道の言葉に琴里は頷く。

 

「それはさておき……こっちがAST。精霊専門の部隊よ」

「精霊専門の部隊ね…………で、具体的にはどうするんだ?」

「簡単よ。精霊が出現したら、その場に飛んで行って処理をするのよ」

「処理?……まさか殺すのか?」

「そのまさかよ」

「くそったれ」

 

士道はそう吐き捨てる。それを意外に思ったのか琴里は眉をあげる。

 

「どうして?あれは怪物よ?この世界に現れるだけで空間震を起こす最凶最悪の猛毒よ」

「……お前言わなかったか?空間震は精霊の意思とは関係なく起こるって」

「ええ。少なくとも現界時の爆発は本人の意思とはかかわりが無いというのが有力な見方よ。でも、そのあとのASTとのドンパチでの破壊痕も空災被害に数えられるけど」

「それは、なんだっけ?ASTだったかなんだったかが攻撃するからだろう。と言うかほとんどあっちのせいって気がするが……」

「そうかもしれないけど……それは推測でしかない。もしかしたらASTが攻撃しなくても破壊活動するかもしれないのよ?」

「ありえねぇよ」

「どうして?」

「壊すことが好きな奴があんな顔できっかよ」

 

そう士道は吐き捨てる。そう、破壊が好きな奴はもっと違う顔をする。

 

「……随意か不随意かなんて関係ない。精霊が現れるだけで空間震が起こる。そんな核弾頭レベルの危険生物をかわいそうって理由だけで放置はできないのよ」

「ごちゃごちゃ五月蝿えよ。取り敢えず話してみねぇとわかんねぇだろうが」

 

ふん。と息を荒げる士道。それに琴里は溜息を吐くかと思いきや、こんな事を言い出した。

 

「そう、それじゃあ……手伝ってあげる」

「は?」

 

士道が怪訝そうに視線を向けると琴里が両手を広げる。

令音を、神無月を、下段に広がるクルーたちを、そしてこのフラクシナスを示すように。

 

「私たちがそれを手伝ってあげるって言ったのよ。《ラタトスク機関》の総力を以て、士道をサポートしてあげるって」

「そりゃ、頼もしい事で……」

「ええ。だってそのために作られた組織だもの」

「…………はぁ?」

 

士道はそこで漸く気の抜けた顔をした。

 

「教えてあげるわ。武力を持って殲滅する以外の方法を……」

「……」

 

しかし琴里の言葉に一気に気が引き締まった。そして琴里は言い放つ。

 

「デートしてデレさせるの」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」

 

今度こそ、士道はズッコケた。




感想下されば更に執筆スピードが上がります。(意訳:感想下さい)

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