デート・ア・ファンタジー   作:ノクトに幸せを……

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この作品はノクトだけでも幸せになってほしいという願いから生まれたもの一発ものです。


十香デッドエンド——プロローグ

「ありがとな、ルーナ、みんな」

 

うつろわざる王は玉座に座し、ここに至るまでの旅路に想いを馳せる。

本当に、長い旅だったと、王は目を細める。その瞳には今もありありと旅の光景が浮かぶ。楽しかった……本当に楽しかったのだとうつろわざる王は虚空を見つめた。

 

「オヤジ、一緒に過ごせて……幸せだった」

 

今は亡き父王に語りかけるように、うつろわざる王は呟く。そして細めていた目を瞑り、天を仰いだ。それが伝えることが出来る最期の機会だと知って……

 

「ルシスの王よ————集え!」

 

うつろわざる王は召喚した父王の剣を大理石の床に突き立て、それに呼応するがごとくその場に光が集結する。

その光はそれぞれ武器の形を模っており、それらを突如として出現した鎧の王達が携えた。

その中の一人が先ずは駆けた。そして携えた剣を真なる王へと突き立てる。

 

「ごぁっ!」

 

光となった王の力がうつろわざる王の指輪へと取り込まれていく。それを確認した他の王もまた武器を取り、次々とうつろわざる王へと突き立ててゆく。

 

「っあ、うが、ぐぁ!」

 

その度にうつろわざる王は苦悶の声をあげ、息絶え絶えになりながら、なんとか父王の剣を離さぬようにと意識を保ち続けた。それを手放すのは最後であると決めていたから。

 

「っ……オヤジ———後は任せろ」

 

そして最後に燃え盛るように現れたのは手放した父王の剣を携えたうつろわざる王の父。

 

父は構えた父王の剣でうつろわざる王を玉座ごと貫いた。

 

「う……ぁ」

 

うつろわざる王の意識は次の瞬間には光へと飲み込まれて、光の粒子たちが渦巻く異界に浮かんでいた。その手には父王の剣。それを徐に下へと投げ、シフトする事でそしてさらなる深層へと足を踏み入れた。

 

 

 

その先で、うつろわざる王を闇が待ち構えていた。

 

互いに手を差し出し、構える。しかし闇に光が触れた。その瞬間、光に気を取られた闇には決定的な隙が生まれ、その隙にうつろわざる王は歴代の王達を召喚した。

うつろわざる王の体内から突き破るように、現れた歴代の王達は次々に闇へと殺到し、次の瞬間には闇は跡形もなく消滅した。

 

そして、うつろわざる王もまた、闇歴代の王達を召喚した……闇を祓った代償として、崩れ去る。

 

「……長かったなぁ」

 

うつろわざる王、クリスタルに選ばれし真なる王もまた闇と同じようにそこで終わりを迎えた。

 

筈……だった。

 

 

 

 

電子音が部屋に鳴り響く。丸まった布団から手が伸びて、その音の元である時計を止めようと奮闘する。が電子音が鳴り止むことはなかった

もぞもぞと動き、布団の隙間から時計を睨みつける。

 

「たく、なんだよ。人が気持ちよく寝てるってのに……誰だよ……あ、俺か」

 

ぶつくさと言いながら、布団から抜け出すのは黒髪の男。

比較的イケメンに部類されるであろう彼はボサボサの頭を掻きながら、目覚ましを止める。

 

「あーそうか、おやっさんとお袋さんが出張だっけか……メシを作んなきゃいけねぇのか、それでこんな時間に。あーも、メンドクセェ」

 

乱雑に着替えながら、寝癖を適当に手で抑える。ぽりぽりと手櫛をするついでに頭を掻く。欠伸をしながら、ぽつりと呟いた。

 

「こんな時、イグニスがいてくれりゃぁな……イグニス?」

 

はて、誰だったか……そう考えると頭痛がした。

 

「いってぇ……たく、なんだってんだよ」

 

時たまこういうことがあった。知らない筈の人物の顔を思い出し、その度に頭痛がする。キッチンに着いた男はとりあえず水を呷った。

 

どうにか落ち着いてきた頭痛にイライラして、冷蔵庫を蹴った。

しかし生身が無機物に勝てる筈もなく、男は痛みで無言のままうずくまった。

 

「おっはよー!」

 

そこに珍獣がやってきた

 

無理やり痛みから立ち直った男は珍獣に対し、何事もなかったかのように見栄を張る。

 

「おう、琴里」

「ん?どうしたのだおにーちゃん?なんか涙目だけど」

「なんでもねぇよ。ほらさっさとソファーにでも行け、邪魔だ邪魔だ」

 

適当にあしらって、そのままキッチンから珍獣——琴里を追い出す。

 

それから簡単な料理を開始して、数分後、琴里がつけたのかテレビのニュースがやっていた。

 

『——今日未明、天宮市近郊の——』

「あん?なんだよ、近いな」

 

いつもはBGMにしかならないニュースで、男はつい反応した。何故ならば、アナウンサーの声に聞きなれた街の名前が入っていたからだ。

 

世界情勢などに興味のかけらも示さない男でもそればかりは気になり目を向ける。

 

画面には滅茶苦茶に破壊された街の様子が映し出されていた。

建物は挙って崩壊し、道路もズタズタに崩落し、瓦礫の山を築いている。

 

男は息を吐く。

 

「空間震かよ」

 

心底うんざりした様子で首を振る男。

空間の地震と言われる広域空間震動現象。

発生原因、発生時期が一切分かっていない、被害規模不確定の爆発、震動、消失などの現象の総称だ。

この現象が初めて確認されたのは30年前のユーラシア大陸のど真ん中——当時のソ連、中国、モンゴル一帯がくりぬかれたかのごとく消失したのだ。

男の世代では教科書でも写真が載っている。

死傷者、およそ1億5000万人。人類史上、最大最悪の災害である。

そしてそれから半年間、世界各地で似たような現象が起きていた。

場所は不特定で、地球上の至る所でそれは起こっていた。

もちろん日本も例外でない。

ユーラシア大陸の惨事から6か月後、東京南部から神奈川県北部、今、男と琴里たちが住んでいる地域がごっそりと焦土に変わってしまった。

空間震はそれを最後にしばらく確認されなかった。

だが5年前、再開発された天宮市の一角で再び空間震が発生したの皮切りにまたちらほらとだが、発生し始めたのだ。それもその多くが日本で……

もちろん人間も空白の25年間で何もしてこなかったわけではない。

再開発をなされた箇所を中心に全国の地下シェルターの稼働率は爆発的に上昇。

更に空間震の兆候を事前に観測することもできるようになり、最終的には自衛隊に災害復興部隊を言うのもできた。

被災地に赴き、崩壊した施設、道路を再建するのが目的なのだがその仕事ぶりはまさしく魔法だ。

 

「なんでこんな時に起こるかねぇ……起こらなくなったんじゃねえのかよ」

「なんでだろーねー」

 

琴里は曖昧に答える。

 

「去年からマジで多いっての……」

「そだねーちょっと予定より早いかな」

「早い?なにがだよ」

「んー、こっちの話ー」

「あっそ、それはいいからメシを運べ。さっさと食ってしまうぞ」

「はーい!」

 

カウンターテーブルに出した簡単な朝食を出し、それを受け取った琴里がさっさと居間に運んでしまう。

 

ふと、キッチンの窓から見える空を見て、男、士道はため息を吐いた。

 

「あつそ……」

 

なにやら厄介ごとでも来そうだなと、士道は考えた。

 




今のノクト(士道)は魂だけが転生した形ですので、記憶に枷がかかってる状態です。なので、仲間たちの事も今は封じられている形です。

前書きでも書いた通り、ノクトだけでも幸せになってほしいという願いから生まれたものですので一発ものです。なので、続きません。

なので、誰か描いてくれませんでしょうか?

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