fate/SN GO   作:ひとりのリク

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三節 源外庵へⅡ

 

 

 

金時は吉原に残った。

こちら側の現在位置を観測して、目的を果たした場合や、正鬼が攻めてきたときに鳳仙に吉原の入り口を出してもらうための通信役だ。

カルデアとの通信が出来ない今、サポートに回ってくれるのは非常に助かる。

 

「どうやら仁鉄の言葉は真実らしい。

連日地上を歩いていた正鬼がどこにも見当たらない」

 

地上に続く吉原の門の前で待機する僕たちは、伍丸のその言葉に僅かに安堵を漏らした。

毎日昼夜問わず、正鬼や十界による追跡を躱しながら江戸の町を探索していたという。拳を振るだけで地形を変える真祖を相手に、どれほどの苦汁を飲まされたのか。身が凍る内容を聞いた者として、これほどの朗報はない。

 

「誘い込まれてるように見えねぇか?

似蔵なんざ、腐るほど余ってんだろ」

「危険は重々承知の上で行く。

娘たちを江戸全域に配備した、ヤツらがどこから現れようとも即座に対応してみせる」

 

伍丸が送り出したメイドによる中継地点は百を超える。その何処にも正鬼はおろか、似蔵の1人さえ見当たらない。逆に、こちらに進撃する影があったら丸わかりだ。

 

探知は伍丸に頼り切りになるけど、僕に出来ることも増えている。伍丸に強化してもらったカルデア戦闘服の性能は確認済みだ。出来ることは増えているけど、実践で使いこなすのは難しいかもしれない。

カルデア戦闘服に登録したサーヴァント全員への強化付与は変わらない。問題はガンドとオーダーチェンジだ。

ガンドを当てた相手をカルデア戦闘服に登録できる、というもの。場面ごとに使い方が変わる性能だから、これを使いこなせるイメージが湧かない。……まぁ、伍丸から惨たらしい用途は聞いているけど。

 

「こちらの世界の空は初めて見ました」

 

伍丸の話を思い出して苦笑いしていると、マシュの吐息が隣から聞こえてきた。

 

大きく息を吸い込みながら、目を輝かせて空を仰ぐマシュ。彼女はレイシフトすると空を仰ぎ見るかとが多い。

自分の世界の空を肉眼で見たことがないんだ。青空や星空に想いを馳せてきた想いが、こうして表れている。

 

オルレアンで空に浮かぶ光帯を見つけたのも───。

 

「あ、れ、」

 

空を見て、鮮血に染まる空を思い出した。

快晴な空を見渡したが、レイシフト直後の異常事態は見当たらない。今の今まで忘れていた。

昨日の夜に思い出せよ、僕っ!

 

「土方さん。僕を探して外に出てた時、空が赤くなったりしましたか」

「? いいや。今日くらいの天気だったろ」

 

昨日の話をする取っ掛かりとして投げた質問に、予想外の返答を貰う。昨日のときに話題にならなかったのは、こちらでは当たり前の現象だからと思ったのに。

 

……僕だけに赤く見えていた、ってこと?

 

「先輩。日本から見る月面は、あのような形でしたか?」

「えっ?」

 

マシュに袖を掴まれて、指を指したほうを見る。

 

「えっ、いや………」

 

日本から観察できる月といえば、ウサギの餅つきだ。

南欧では蟹のはさみ、東ヨーロッパでは女性の横顔に見えると聞いた。こういう不透明なものから形を見出そうとする錯覚は、パレイドリア効果っていっていたっけ。

 

「日本から見るとウサギの餅つきだから、アレは違う…。なんか瞳みたいで」

 

いま僕たちが見ている月は、瞳のようでいて棺のようにも見えて、果実のように潤っているのに一面が白世界になった孤独感を抱く。

 

「ここは別世界だ。君たちの世界の月とは違うさ」

「そう、かもしれませんね。こちらでは月の表面はどのように見えていたんでしょう」

「はあ?月といえば───」

「さて。私は天体観測には疎かった。娘ならはっきりと答えられるかもしれないが……ほら、今は先を急ぐぞ」

「ちょっ、それくらいいいでしょう!?」

 

神楽の言葉を遮り、先を促す。

 

無関心すぎないだろうか…?

いや、()()()()()()()()()()()()()()()か。

 

「やけに関心が低いような……」

「全身機械にゃ情景は退屈なんだろ」

「────あぁ。ほら、源外庵に入ってしまおう」

 

マシュの疑問に答えることなく、源外庵の引き戸を開け放った。

 

少しばかり胸にあった違和感をすぐに忘れながら、僕たちは伍丸に続く。

 

「お邪魔しま〜す」

 

帰ってくる音は何もない。

 

何度か呼び掛けても、人の気配に当たることはなかった。

 

江戸全域の建物が全く同じ反応を示すだろう。寂しさと不気味さを感じるが、ここは少しだけ明るいとも思った。

色形は違えども、どれだけ家主が空けようとも、この工房には職人の愛が染み込んでいるのが見て分かるからだ。

目利きが出来るわけじゃない。ただ、カルデアにも似たような工房を持つ画家がいるんだ。街の喧騒はなにも音だけじゃない。こういった細かい場所にこそ潜んでいる。

 

「相変わらず埃臭いな」

 

伍丸の呟く横顔は笑っていた。……ように見える。

仄かな暖かみを含んでいる声音が、江戸の街のようで頬が緩みそうになっていた。

いや僕が緩んでどうする。気を引き締めよう。

 

「以前に来た時から違和感はあった」

 

いざ探索!手がかりを探せ!と来るかと思いきや、伍丸は迷わずに工房の中心にあるブラウン管テレビを調べ始める。

懐から、預けたチップを取り出して弄ること数秒。ものの見事に反応して側面から電子回路が出てきた。

 

「早いっ」

「埋め込めと。やはり」

 

取り出したチップを繋げると、待ちくたびれた時に吐く息のように起動音を鳴らして、古びたブラウン管テレビは1人の老人を映し出した。

 

「源外!!」

「この人が…」

 

赤い遮光眼鏡を着け、アルムのおんJリスペクト(僕談)の髭を蓄えた老人が平賀 源外のようだ。伍丸は面白くなさそうに鼻を鳴らして、「ちっ、録画か」と呟いた。

 

『これを観てるってことは、カルデアと合流したってことだな。あとは江戸城に乗り込んで銀時の身体を乗っ取ったやつを倒せば一件落着だ』

 

「………これ、誰に言ってるのかな」

「私たちじゃないですよね」

 

『言いたいことは分かってる。江戸城に入る手段、それと正鬼を倒す方法を探してんだろ。

この映像を観てるのが誰かは知らねえが、流山なら話が早い。下準備は済ませてるはずだ』

 

「………ふん」

 

『もしも流山……伍丸弐號が退去()ないなら鳳仙を探せ。鳳仙に切り札を託してるだろう。

こっからは、お前たちの置かれた状況を掻い摘んで説明していく。倒す敵を確認するためだ』

 

「んだよ。鳳仙も死んでたらどうするつもりだ」

「考える必要はない。()()()()()からな」

「えらい自信じゃねえか」

 

『お前たちのいる江戸は“銀の大地”で再現した江戸だ。

地球の裏側(しろがねのだいち)…正鬼の庭園に居着いた小人ってとこか』

 

「確証はなかったが予想はしていた。

然し、どうやって調べたんだ?」

 

『実力差そのままにお前たちは保護される側だ。

正鬼は人間を銀の大地に保管し回っている。存命に特化させるためだ。小人から人へ、人から巨人に。過酷な環境下でも存命出来る人類に生まれ変えるために。

人理焼却と白詛。2つの終末を克服する。魔王となった正鬼の最優先事項、その名も“人類災星計画”』

 

「つまり、魔王になる条件がコレか」

「今ので分かったんですか」

「魔王化は吸血衝動を起こした吸血鬼のことです。終末の克服と関係があるのですか?」

「人類の強度強化。外敵を排除するのではなく、人類を熾烈な環境に適応させて外敵を排除する。

それがヤツの…かの世界の真祖の役目なんだ」

「えーと、あ〜、つまり?」

「私たちの世界の真祖と、この世界の真祖では魔王化の条件が違う。そう考えたという事ですよね」

 

伍丸が頷いた。

 

この世界で真祖が魔王になるのは、世界の危機に瀕した時ということ。真祖であるよりも、魔王になる方が人類存続に有利な状態となれる訳だ。最も、魔王化する利点の詳細は分からない。

 

……………ん?

 

なにか、違和感がある。

人類の強度強化という言葉だ。

思い当たる節がある感覚なのに原因が分からない。

 

『小人を巨人にする方法は分からん。こればっかりは江戸城の向こう、正鬼の寝室に行くしかねぇな。

城門を突破する方法はギリギリ手に入った。この映像を観てる頃には手筈を整えとく。

合流地点は江戸城城門前だ』

 

疑問をぶつける必要がない事は分かる。

時間が無いこと、答えるピースが出揃っていないこと、そして真実は向こうからやってくる…という予感が口をつぐませる。

 

『城門を破って、正鬼のところに行ったとしよう。

暴走する正鬼を止めて、銀時を騙るヤツを倒した。

────────で、特異点の歪みは解消するのか』

 

……また源外は不思議な質問をする。

初歩的で最も大切な話だ。

特異点とは、未来が変わってしまう出来事への介入が原因だ。僕たちはこの介入の原因…主には聖杯やその欠片を回収することで歴史の修復を試みている。

 

「それは、聖杯を回収すれば……」

 

『悪い悪い、少し意地が悪かった。

そもそも、この特異点はどの時代に介入する特異点か分かってたか?』

 

どの時代、という問いに思考を巡らせる。

これまでの特異点、どれも地名や大凡の年代は分かっていた。年の特定とはいかずとも、特異点(若しくは微小特異点)を作ったサーヴァントが関係する年に近いからだ。

それが、今回はどうだ。

 

“……すごく危険なこと以外、なにも分からない”

 

モニターに映し出された人理定礎値だけは『E』と記載されていた。特異点の規模としては最小値に近い。

それなのに、すごく危険とロマニは言い切った。

特異点が危険じゃないことはなかったけど、6つの特異点やこれに派生して生まれた特異点を解決してきた後で、ロマニは危険度に警鐘をした。

源外の疑問とロマニの警鐘は解答の一助になる筈だ。これが終わったら伍丸たちに相談しなくては。

 

『原因は分からん。だがカルデアが来た以上、正鬼が特異点の原因なのは明らかだ。カルデアを奪取し、魔術王に復讐するんだろうよ。

この戦い、ただ勝てば良いってわけじゃねえ。

正鬼の意志を……魔術王への復讐心をほぐさなきゃ江戸の街は特異点としてカルデアに観測され続ける』

 

それってつまり…。

 

「吸血衝動を……魔王化を解けと」

「出来なかったら、カルデアを経由して魔術王に復讐しに行くんだ。そんな、そんなこと────」

 

伍丸の言葉に続けて、最悪の復讐劇を予想する。

そんなこと出来るはずがない。白詛で弱体化している正鬼だぞ、魔王化してもマシになったって伍丸がいうくらい弱ってるんだ。

 

僕たちが止められなかったら、最悪の共倒れになる。

 

『そうさせないために開発したのが、このImaginary Crossover(空想と正史を繋ぐ)チップ。略してI.Cチップだ。その中に正鬼攻略に役立つモンを入れといた。解凍に時間が掛かるのは難点だがな』

 

源外の言葉で僕たちは目を合わる。

行き詰まりの道にヒビが入った。これを回収すれば、伍丸頼りにはなるけど城門の突破と正鬼との対面が実現する。

 

『藤丸 立香、マシュ・キリエライト。厚かましいのは重々承知だが、正鬼の復讐を止めて、銀時を休ませてやってくれ。

銀時が最期まで守ろうとしたこの世界ごと、銀時の手で俺たちの未来は消えることになる。それだけは…ここまでの銀時の努力を繋いでほしい』

 

そう言うと深々と頭を下げる源外。

陰で奔走しているのは、坂田 銀時の汚名を少しでも濯ぎ、魂に安らぎを与えるためだ。

余程、坂田 銀時のことを信頼しているんだ。

この世界を守りたいと強く願っている筈だ。

 

気づけばマシュを見ていて、マシュもこちらを見ていた。

僕たちの意志は…方向は相変わらずだ。然し、想いは強く堅くなった。

 

「簡単に言ってくれるわね」

「新撰組ならできる」

「万事屋にだって出来るけど?」

 

神楽と土方が看板の張り合いをするのを他所にして、伍丸が身を翻す。

 

「正鬼を倒す手段と江戸城の城門を破壊するフラグは回収した。I.Cチップから出てくる物を回収して吉原に…」

 

『俺から言えるのはこれくらいだ』

 

彼の足が止まったのは、源外の最後の映像が流れたからだ。

 

 

 

『あとのことはI.Cチップを預けた“たま”に任せた。おめえらの健闘を祈る』

 

 

 

たま。

源外が後任を指した名前を聞いて首を傾げる。銀時から聞いた話のなかや、この特異点に来ても聞いたことはない。

そもそも、I.Cチップを渡してくれたのは土方だ。

 

確か、メイドの残骸から回収したはず────

 

「答えろ、芙蓉をどうした」

「!?」

 

源外庵が揺さぶられる衝撃に全員が目を見開く。

 

次いで、聞いたことのある駆動音が始動していることに気づく。

人間の怒号を燃料に動く機関車の如く、伍丸の腕が臨戦態勢に移行したことを告げる。

壁に土方を押しつけて、右手五指を喉に減り込ませた状態だ。答えを誤れば、夕暮れ空のように赤く灯る右腕が土方を襲うのは間違いない。

 

「…………消えたよ」

 

少しの間を置いて、ひと呼吸の時間にきっと見届けた風景を思い出して、一直線に事実を告げた。

 

たまは、芙蓉の別名なんだ。

このことを確認する暇はなく、落ち着けるほど油断も出来ず、伍丸の言葉に場を任せるしかない。

 

「なぜI.Cチップを破壊しなかった、裏切り者」

 

伍丸の右腕が圧力を上げていく。

土方の喉からは肉の締まる音が鳴る。

 

否定すれば、全力で擁護する。

きっと事情があるんだと、土方の前に立てる。真選組の面倒を見る貴方が、僕たちの敵の筈がない。

 

「十界、四聖・声聞(ししょう・しょうもん)の席に就いた」

 

────呆気なく、所属を明かした。

 

「光々が組織した国の抑止力ね…!

けど変よ伍丸!あいつらは全員やられたのに…」

 

悪手なのは承知している。

バーサーカーにあるまじき冷静な発言を行える土方に、ここで狂った言動は出来ない。

 

彼の言葉は紛う事なく、事実だ。

 

「そんなことは聞いていない。質問に手早く答えろ」

 

神楽の声を遮って、怒りに行動を投げ出した伍丸の右腕は駆動音を鳴らし始める。すぐにでもクラッチが入ろうかとするその時、

 

『ろ伍丸‼︎ おい繋がってんだろ⁉︎ こっちは通信状態は問題ねェぞ‼︎伍丸ーーーー‼︎』

 

金時の飛び散る焦燥が源外庵に轟いた。

それも、突然通信が繋がったように、いきなりだだ。

 

雰囲気が一変する。

水を差されて苛立ちが増す伍丸。相変わらず右腕は土方を離さないが、通信が入った以上は只事ではないと返事をする。

 

「なんだクソ。いきなりボリュームMAXにして叫『聞こえたか‼︎ 聞け‼︎ 江戸中に似蔵が溢れてやがる‼︎』────なんだと」

 

伍丸の蔑んだ言葉を押し退けて伝える危機。

即座に伍丸は江戸中に配置したメイド達に通信を繋げて、「問題がない……街には人影1つない」ありのままを口にする。

 

「伍丸さん、外に居ます…‼︎ 恐らくランクE相当の気配遮断を似蔵は持っているようです」

「嘘の映像を観せられていたのか⁉︎」

 

マシュが似蔵の存在に気づいて、伍丸のメイド達が異常事態に陥っていることを認識した。伍丸に気づかれず、そんな芸当が出来る敵が他にいるんだ。

 

土方の差し金かと、庇いようがない状況にある。

それでも諦めたくない僕とマシュ。

無言の伍丸と神楽。

全員が外に意識を向けつつ、土方の動向を見守っているのは、これまでの土方を知っているからで。嘘と分かる……嘘と本人が嘲笑った瞬間、未来は決定する。

 

「誤解してるようだから言っておく。

俺は誠の旗を裏切りはしない。それが────」

 

土方が答えを示すために手を伸ばしたのは、腰に引っ提げた雷管銃。

 

同時に、源外庵の外壁が乱雑に崩れた。

見るまでもなく似蔵が攻め入ってきた。妖刀紅桜、昼間でも怪しく輝く刀で近くにいる神楽を狙う。

 

壁を突き破って侵入してきた不埒者へと、雷管銃の照準が定まり、

 

「新撰組副長、土方 歳三だ。覚えとけ」

 

似蔵を撃ち抜き、霊気を吹き飛ばす。

その姿には確かな誇りを感じる。演技では生み出せない、漢の瞳を誰もが目撃した。

これで決まりだ。土方は味方だ‼︎

 

「自演かもしれんのに信じろと? 戯言だな」

「お前なんざに背中は預けねェよ」

 

鼻を鳴らした土方は、おもむろに洋飾の上着を脱いでブラウン管テレビに放り投げる。

 

「ここも新撰組の屯所にする。誠に叛いた奴は切腹だ」

 

縄張りだと、そう主張するために。

源外庵の壁を斬り崩し、外から中の様子を伺う無数の似蔵へと、粛清の最後通牒を轟かせた。

 

「今のは、まさか…」

 

漢たる宣言に胸が熱くなるなか、上着が覆いかぶさる直前に一瞬見えた、ブラウン菅テレビに映っていたものが頭の中で引っかかった。

輪郭しか見えなかったが、思い当たるものがある。

 

「相変わらず巫山戯た男だ。十界の席に着いておきながら、正鬼の言うことには耳を貸さない」

 

こっちの思考を遮って、土方の示す最後通牒手前で立ち止まる似蔵。下卑た笑みを舌で転がし、左手で点鼻薬を差して、土方の在り方に眉をひそめて不快感を前面に出した。

 

「話せるバーサーカーって話だったが、その魂はメイドにでも握られたかねぇ?」

 

伍丸の拘束が解けた土方は、入り口に立って威圧を強める。

 

「俺が誠の旗を裏切るはずねえだろ。

それに、無機物で満足できるほど乾いてねえ」

「おまっ……! 令呪、令呪があるだろう!

一騎に十画の令呪があるのは解析済みだ!」

 

……………十画!? なんじゃそりゃ!

 

「令呪?あぁ、鬱陶しいだけの呪いだろ。

沢庵食って寝りゃ治った」

「治った!?なに言ってんのこの人!?」

 

令呪一画の命令権を風邪と勘違いしている!

やっぱりバーサーカーだった!

 

「アンタみたいに強い拘りがあるヤツを知ってる。

窮地で本領を発揮して、絶対に折れない芯を銀色で守る、眩しい光のような侍を。そんなヤツですら死んだ。この世界は悪に負けたんだ、敗残兵が粋がるな…」

「生き死にで語った時点で底が知れる」

 

似蔵の頭をレーザー光線が吹き飛ばした。

右手からソレを放った伍丸が土方に並び立つ。

 

「私を葬ったあの男が、死んだ程度で諦めるものか」

「伍丸………」

「勘違いするな、神楽。ヤツの評価は私の名誉に関わる。一々訂正を入れてもいいくらいには、あの男の図太さを買っているだけだ」

「言われなくても分かってるわよ」

 

伝わり難い励ましを入れる伍丸に、神楽は訂正を入れる。

 

「というか? 量産型になんと言われようと、銀ちゃんの名誉なんて落ちないっての。もう底にあるんだから」

「ダメだろう‼︎」

「いいのよ。

そっちの方が、手を伸ばせば届くんだから」

 

銀時に対する、長年付き添った者の願いだった。

真実には辿り着いているんだ。

 

「I.Cチップの解凍が終わるまで防衛しよう」

 

銀時が居ないことを受け入れて、その先があることを信じる彼女に、僕たちは背中を押すことを躊躇わない。

 

「了解‼︎」「勿論よ」「承った」

 

三者三様の返事を聞き届けて、ここに切り札を手にするための防衛戦が幕を上げた。

 

 

 


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