魔術王ソロモンを前にして、地球の眼は機能を落とされた。
ソレが目の前に現れるまで、存在を認識すらできなかった。正鬼には地球上の生命を全て把握できる権限があり、概念ならば一息で消すなど容易い。しかし、生命であるはずの男には一切通じない。英霊、それが理由でないことは十界を見れば分かる。
壊滅的に人という種を拒絶している。
連鎖的に人という人格を否定し続ける。
絶望的に人と分かり合えない。
(これが、全人類の悪…)
恐ろしくはない。
一対一で負けることもない。
ゆえに、正鬼は願った。
魔術王ソロモンの瞳にある虚が、この場で愛に満たされてほしいと。
他でもない地球の手で、愛を教えよう。
人々の泥臭い愛を思い出させよう、と。
▼
魔術王ソロモンとの対峙、攻撃を真っ先に仕掛けたのは正鬼だった。
右脚で大広間を踏みしめ、城を揺らす。伝わる振動に十界らへの指示を含み、ソロモンに対しては精神汚染を与える。勢いよく駆け抜け、大気圏へと放り出せる威力を込めた右拳を打ち抜いた。
「………」
ソロモンが展開する術式が一撃必殺を阻止する。
だが、四人とは違い直撃を避けていた。当たれば効くことを意味する行為であり、十界は正鬼を中心にした戦闘へと意識を切り替える。
『攻撃のたびに地上の森羅万象注ぎ込んでいく。
全員、協力よろしく。防御捨てていいから』
正鬼の指示が伝わる。
すでにソロモンへの精神干渉は遮断、逆干渉経路を封鎖した。会話は可能、しかし心は通い合わない。それが正鬼の判断であり外客排除の理由だ。
防御を気にしない攻撃一辺倒の指示。
十界は疑問に思わない。先ほどの攻防で正鬼の言葉を信じられると確信したからだ。
「うし、俺の目ェ見合え!」
正鬼の規格外の火力に紛れ、桃時の張り手がソロモンへと放たれる。高速移動しながらの張り手はやはり、ソロモンには肌すら届かない。
「義儀技アアアアアア!!」
入れ替わり、信秋の大鉈が背後から首へ振られる。
「シっ〜、ね!」
ソロモンを挟むかたちで、十右衛門の豪速の裏蹴りが炸裂。
両者の一撃、触れる気配すらない。
悠然と立つソロモン、腕を振り上げ魔術を起動するだけで江戸城が揺れる。
ソロモンが呼吸をする間に神代の術式が組み上がり、目を瞑るほどの光線が地を
だが、斬り込む十界たちにこれは当たらない。
正鬼が目視し、術式を外れるように仕向けたのだ。
「粉々にしてくれよう」
光々が踏み込む。
居合いによる抜刀、続けて返す刀、再び閃く剣線。
横を行き来していた刀は次第に斜めが混じり、ソロモンを微塵切りにするべく百を超える。全攻撃が違う特性を持ち、斬りながら治療、解毒、解呪、分断、解脱と。凡ゆる超常を付与して無敵の裂け目を探る。
(ぬゥ、やはり届かない…。吾ら英霊は、正鬼の権限を行使してもかすり傷も与えられんのか!?)
悉く否定される。
隙間を縫うように攻撃を放つ正鬼も、全て見切られて防がれる。
ソロモンは大広間一面に術式を展開する。
若干のヤケクソとも受け取れる方法に、視線を交わす正鬼はその意味を分かっていた。
魔神柱と呼ばれる肉柱を使役するソロモン。一柱が複数の英霊によって妥当すべき存在で、これをソロモンは現在、江戸城周辺に複数召喚を実行している。
いまの均衡を終わらせるための選択を、正鬼は召喚陣を視認するよりも早く破壊していた。
地球上、正鬼が見ようとしたものは全てを視認できる。それが正鬼の眼であり、そしてソロモンの降臨が”最後の一押し”となり瘴気によって霞んでしまった。それでも、修復や復元などを駆使して激闘の最中、片手間を使うことで召喚陣を完封していた。
それでもソロモンの無敵性を突破できないのは、正鬼にすら触れられない障壁があるせいだ。
(正鬼、どうだ、届きそうか?)
(皆んなに地球上の概念、それこそ生命の冒涜すら切っ先に付与してるけどダメ。…悔しいけど、地球の力だけじゃ足りない)
正鬼は右腕を振るうだけで二十の術式を崩壊させ、振るった右腕をただ下げると十界に狙い注がれる三十の術式を霧散させる。
世界を滅ぼす最悪、世界を救う至高の報せが衝突し現状維持に留まる。
(なんだその思わせぶりは!?地球上のありったけでダメならどうしようもないだろうがっ!)
(正鬼くん、なにか解ったってこと〜?)
(ソロモンの憎悪は地球の運営に支障をきたす勢いだ。けどね…ようやく解析は終わったよ)
正鬼の眼が見開かれる。
同種の術式が発動した瞬間に自壊する環境を整えたことを、魔術王は江戸城から溢れる神代級の魔力濃度で知る。
「…ほう。私たちの歴史をその身で再現するのか」
お前は人類を否定する者、ソレらを産み出す者だろうに」
ソロモンが呟いたとき、ものの数秒で都度百を超える神秘が色を無くす。
次々と編まれる魔術もまた、江戸城の新しい環境によって即座に消え去っていく。
『キミも、自分の感情を伝えられない生命だ。言葉を話せるのに、言葉に変換するのは星々よりも下手くそだ』
地球と繋がる時点で、地球上に存在する瞬間から、森羅万象を倒せない道理はない。
それは正鬼自身もであり、ソロモンを倒す手段は必ず一つ以上ある。それが生命の絶対厳守である。
「人類史とは違う価値観を押しつける者、私はお前の生き方に問いたい。生命はなにを見て生きる。
人類の正義、悪意に辟易しないのか、吸血鬼」
光々たちは立ち止まり、その場で構える。
攻撃手段を封殺された魔術王。
しかし、攻撃を貫通する手段のない以上、十界に勝利はない。だが、魔術の使えないソロモンを相手に負ける道理はなく。最後の一手を握るのは十界である。
ソロモンに通じる手段の準備はすでに秒読み。
十界は各々が感情を押し殺し、最後の瞬間を待つ。
『そりゃあもう、地球だって怒るよ。
地球は愛をもって
「……なんだと」
正鬼は手段の最終調整を終えるまで、ソロモンの質問に応えることにした。万が一、あり得ないと思っている和解の道が残されているかもしれない。
最後まで心に探りを入れるのが、地球としての使命というように。
『人類は皆んな、地球の愛の結晶だよ。
惑星と共同設計した生命、それが人。
人間をベースに、星々は人型の生命を産み出した』
生命から始まり、人に至る。
空想世界の人間の原点を明かし、ソロモンの問いに答えた。
『地球は人を、全ての生命を愛している。
無表情だった正鬼に、僅かな変換が生まれる。
その微笑みを、ソロモンは───。
「愚か…。あまりにも愚かな発端だ」
「…なぜじゃ」
ため息を吐き、一笑に伏した。
「全てを視れないお前が羨ましい。肉眼でしか見ることのできない吸血鬼よ、あぁ…なんと愚かな存在か!」
噴き出す言葉とともに、身体から黒い瘴気が漂う。
癇癪の類か、本心が漏れている証拠かまでは分からない。ただ、この場で初めて見せる本心だということを理解した。
「愛…?愛だと言ったな!ならば問おう。
この世界に飢餓する者がいなかったか?
無様にも、惨めな思いをして死んでいく者がいないのか?
理不尽に、他者のどうでもいい憎悪を浴びて発狂した愚者はゼロか!?」
それは後付け。後出しの論弁。
どう反論しても、全てが矛盾する。
だが、それは正鬼は百も承知。
『…うん、地球は過ちも犯した。もとから完璧じゃなかったから、愛が届かないこともあったよ。
だから言おう、何度でもぶつける。愛は起源だ。
地球が本当の愛を…暖かい場所を知れたように、キミもまた、愛を理解しようとしているんだ』
簡単な話、ソロモンの姿と重なる部分があった。
江戸に、堀田 正鬼の名を授かる以前の自分と似ている。
だから、必ず理解し合える場所が存在する。
「それが人だと?
そうだ、そうなんだよ。お前の言う通りだ、吸血鬼。
だから、私たちはお前たちが嫌いだ。これまでも、いまも。そして、これからも───」
現時点でソロモンは聞き入れない。
吸血鬼としての価値観が人に似通う時点で、正鬼のことは視界の隅にまで弾かれていた。
ソロモンの返答をもって、正鬼は全ての工程を完了とした。
表情が元に戻る。
『それでも地球は、キミも救いたい』
「よくぞ言った!」
手をかざす。
それが合図となり、光々ら四人が一気に駆ける。
正鬼の手から湧き出る黒い影。それらが尖り、無数の黒い針となってソロモンへと迫る。
その正体は白詛を”体内”から抽出し加工した、
ソロモンと対面し、その正体を探るなかで見つけた共通点。それは地球を終わらせにきた星崩しと概念が重なるところだった。
星々を滅ぼし、幾つもの生命を死においやる存在。
地球上の歴史を焼却し、人々が紡ぐ歴史を灰と化す事業。
終末装置であり、生命の敵であり、歴史の冒涜者。その在り方ならばソロモンの喉元に届く。
届いたが最期、内側から侵食し、ソロモンのルールを書き換える。
かくして人類始祖と人類の悪、戦いの結末は訪れた。
「───悪意が全てを穿つ」
深愛の針が散り、朽ち果てる世界が加速する。
『が、あぁ!?』
正鬼の声色が、ソロモンの嘲笑で地の底に叩きつけられた。
光々が振り向いたさき、正鬼の背後から貫通し突き立てられるモノ。口と傷口から流れ出る大量の血液。
背後に立つ存在が、血飛沫の向こうで嗤う。銀髪の男が穿つ木刀が、抵抗も許さずに正鬼の腹部を貫いていた。
事態は更に転落していく。
「…………な、に!?」
「正鬼っ!?」
届かない刃、届かない想い。
振り抜かれた桃時の右拳、怪力のもとに放たれた信秋の大鉈、叩き込まれる十右衛門のかかと落とし、一閃される光々の居合い斬り。
届くはずだった
続いて展開される術式は、霊気を砕くためのもの。
「ヅッッッ!ゴラア!」
「義イイイイイイイ!」
桃時は残った左拳で光々を殴り飛ばす。
信秋は十右衛門の左足を掴み、正鬼へ向けて放り投げる。
それが、二人を確認できた最期の光景。
降り注ぐ魔術がソロモン周辺を乱走し、光の粒子が空へと昇っていく。
(まだだ……正鬼を死なせるわけにいくものか!)
消える友に思う暇も許されず、光々は最悪のなかで最も最善の手を選ぶ。
正鬼の救出、そして離脱。
正鬼が生きているのなら、まだ江戸は終わらない。
展開する術式、数百が正鬼に辿り着く道中に刻まれている。
「退けッ!!!」
それを、小太刀を抜いて斬り捌いていく。
一瞬だけソロモンのほうに意識を向けると、追撃してくる様子がない。構うものかと猛進し、正鬼の背後に立つ男へと駆ける。
しかし、足りない。
術式は黙って斬られてはくれない。
常に発動し、肌を掠めるだけで意識が飛びそうになる威力を振り撒いている。
だから止まれない、唸り猛り続ける。
進み続けているのに遠い。一つ、一つ荒いながらも壊しているというのに、術式は初代晴明を凌ぐ威力で江戸を終わりに囃し立てる。
ただ側を通り抜けるだけで意識が朦朧とさせられる。身体にも異常が起き、喉奥から血が吐き出る。
視界の奥。
正鬼の胸から抜かれる木刀。
血に染まる男は、視線をこちらに向けると細く嗤い、木刀を振り上げた。
そのとき、撃鉄を落とすように火花が地を蹴る。
「解放・
光々の意識を繋ぎ止めるのは、大広間を覆いたくさんとする術式を焼き払う大車輪だった。
右脚が飛ばされ、意識が飛んでいた十右衛門。彼女は光々の歯を食いしばる激情によって目が覚め、最善の宝具を選んだ。
身体能力の限界を越え、あたり一面に拳/腱圧を振るう体術。回転しながら放たれる対軍演武は、術式をたちまちに打ち壊し、ついに正鬼への道は切り開かれた。
「………」
十右衛門と男の視線が交差する。
その男は、誰が見ても死体と分かる。
そこには在るべき魂が無く、しかし外殻だけは霊気を纏う屍人だった。
術式を砕くように、男の顔面に裏拳を叩き込む。
しかし、高速の演武を、男はこともなげに見切った。木刀が先に十右衛門の拳を貫き、回転が殺された。十右衛門にはもう、殴る蹴るという余力はない。あとは消えるばかりの霊気で歯を食いばり、男の木刀を握り締め離さない。
「頼んだよ、将軍」
「十右衛門……っ。感謝する…!」
最後の一歩を踏みしめ、光々の小太刀は男の全身を細切りにした。
それを見届けた十右衛門は微笑み、光の粒子となって消える。
「……ハァ……ガ、ぁ……」
同時に、力なく倒れた。
視線の先には正鬼が見える。
浅く呼吸をしているから、なんとか命は繋いでいる。それでも、長くはない。無意識に修復をしてはいるだろうが、ソロモンの瘴気は防ぎきれていない。あと少しで全滅する。
打つ手がなくなった。
言葉も出ないほどに意識が遠くなるなか。
「用は済んだ」
「……」
そんな声がして。
「ざ、ける…な」
怒りに身を奮い立たせていた。
霞む視界、踵を返すソロモンがいる。
本当に、帰るつもりだ。
なんの興味も湧かないと、帰るのだ。
そのまま、帰せばいい。そうすれば、いいのに。
「ぬし、は…なにを、さがしとる…」
疑問をぶつけずにはいられなかった。
「テメーまで、ふてくされて…バカ、みるだけじゃ」
正鬼が望んだように。
光々は、ソロモンを説こうと言葉を掻き出す。
「たましい、くさらせんな…おお、バカもん…」
「…期待外れだ」
それが最後の姿。
ソロモンはトドメを刺すこともせず、次元の向こうへと消えていった。
───
──
─
荒れ果てた大広間。
あと少し動けば霊気が砕け散る光々、いつ目覚めるのかも分からない正鬼。
なぜ、ソロモンの魔術にも負けない正鬼が、たかが木刀に貫かれたのか。短い時間で出せるほど頭が回らない。全身を巡る呪いがそれを邪魔した。
なによりも、散々たる結果に嘆くことは許されない。じきに人理焼却は実行される。あと何秒先か、それは正鬼だけが感じ取れることだ。
ならば、最後の最後でソロモンの思惑を出し抜いてやるほかにない。
最後の力を振り絞り、家紋を懐から取り出したとき。
「おい、光々公!いったいこれはどういう……」
「え、うそでしょ……」
大広間に現れる影が二人。
ふらつきながら視線を移せば、新八と神楽が驚愕に瞳を揺らしていた。
「アンタ、その傷……」
「近寄るな!」
「っ!?」
駆け寄る二人に目一杯叫ぶ。
呪われたこの身に触れればなにがあるか分からない。だから、眼力だけでそれを伝える。そのとき、情けなくもふらついて床に転げてしまった。それでも駆けつけない二人は、しっかりと光々の真意を察してくれていた。
「これを、受け取れ…」
だから、家紋を放り投げる。
床に落ちたソレを新八が拾い上げた。
「これは…?」
「吾の宝具…。宝物じゃ、それを、正鬼に…」
絶えかけの声色で、正鬼がどこにいるのかも分からなくなってきた。
浅くなる呼吸のなか。光々は異常にいち早く気がついた。
”なにか”が立ち上がる音。
正鬼ではないと解るのは、近くで小さな寝息が聞こえるからだ。新八と神楽の背後で、”転がっていたもの”が立った。
少し遅れて二人もその存在に気づく。各々で構えた武器を振るわなかったのは、それが安全なものと判断したからか。
(…いや、まさか)
寒気が走る。
ここにきて、まだ感情が生きていることに救われた。
光々は、新八と神楽と会い、江戸のことについて話を聞いていた。そのなかには、江戸に住む人々や、行方不明の男の話もある。
行方不明の男の話は、あちこちから聞いていた。
民は心配していた。銀髪で天パ、ロクでもない人間のくせにやるときはやる男。
その男は、誰なのか。
答えは今しがた斬ったのではないか?
「あ、あ……あなた、は……?」
新八が声を震わせる。
神楽は血塗れの姿に声が出ていない。
その反応だけで全てを知る。
「坂田 銀時。星を崩す、人類最後の侍だ」
そう名乗る男が、無様な笑みを浮かべた。
立ち上がる。
「銀──────」
「いか…ん…っ!」
否、全ての優先事項を二人の安全に回したから、立ち上がるなんて悠長なものではない。
ガムシャラに、二人を遠くへと押し飛ばした。
間髪入れず穿たれる木刀は、やはり腹部を貫通していた。
「バカ、たれが…っ。仲間ぁ…斬るやつが、あるか」
砕けた。
徹底的に、全てが砕ける。
「そ、んな…!?」
「将軍…!」
最早、正鬼を起こす力はない。
震える視界、近距離のはずの男の表情も見えない。
「キ──────キキ、ギャハハハハハハ!
面が同じなら、お前たちは中身に気を向けない。
あぁ、欺きやすい。簡単すぎて演技かと疑うだろ」
「ハッ……貴様じゃねェ……身体に、言うた……」
魂に訴える。
吾は、その男を坂田 銀時とは認めない、と。
最後の力を振り絞り、魂を削り叫ぶ。
「霧イイイイイイイイイイイイ!!!」
「…は、なんだ?」
大広間、天井付近の空間を裂き、幼い子供が姿を現す。
「光々!う、う…!」
辛い場面を任せてしまったことに申し訳なく思いながら、それでも言うことを聞いてくれることに感謝を込めて、笑顔を向けた。
「うん…分かったよ、必ず江戸を守るから…!」
すぐさま新八と神楽を抱き抱えて、一気に大広間から飛び出した。あまりの速さに男は一拍遅れて行動しようとする、次の瞬間。
男は空高く死に上がる。
「ゴバア!?」
高く放り出されたそれは、すぐに大広間の隅に落下し無残な姿となる。
まだ息はあったが、ソレはどうでも良い。
『地球の、光……遺していった、光……!』
泣きながら、ボロボロの光々の身体を支える存在。
正鬼が意識を取り戻してくれた。現状はどうであれ、間に合ってくれた。光々は喜ぶ。ここまで悲惨になりながら、それでも江戸を守ろうとしてくれる正鬼の想いを感じで、そこが意識を保っていられる最後だった。
「江戸を…愛してくれて、ありがとう」
最期に、正鬼が大好きな感謝の言葉を伝える。
憂うことがなによりも好きな正鬼に、光々は自身の想いを伝えて笑う。
「あ、ぁぁ…」
泣きじゃくる正鬼の頭に手を乗せて撫でる。
正鬼が抱きしめる力は強くなるのに、光々の力は無くなっていく。そして、足元から光の粒子に変換されて、あっさりと正鬼の抱擁は空を掴んだ。
なにも残らない。
眼前に、なにも遺すことができなかった。
『光々、そんな…!!』
誰に届くでもない嘆き。
行き場のない言葉を惜しむまま、空を見上げる。
赤く、黒く、白く、蒼く、そして色彩に変わる空。
あらゆるものを焼却する憎悪の概念が、空想の世界にたどり着く。
止める術は無い。地球を消費する勢いの力も、いまは出せない。
全てが燃えて、ソロモンの思惑に沿う。
そう考えるだけで、怒りで狂い死にそうになる。
『
人類が滅ぼす悪は、必ず地球が排除するッ!』
ありったけを。
封印していた衝動を駆り立てる。
それだけが、正鬼ができる人類への愛。
歴史を護るための最善最悪の一手。
変容する己を感じながら、ただ願う。
次に目が覚めたとき、人理焼却が成されていれば良かったと思う結末が、視界に広がっていないようにと。
「星よ、
空を焼き尽くす炎が地上に達する直前。
世界は、銀色の光に包まれていった。
坂田 銀時[オルタ]なんていう妄想、皆んなしたことありますよね?
という感じで、緒戦が終了しました。
元々は書かずに回想で流そうと思っていたのですが、回想を書くうちに全部書くかとなりました。ほら、こういう序盤って飛ばされがちじゃないですか。主人公たちが来る前のお話。
なので書いちゃえ!ってなったのです。
自分でも驚きの退場スピードで、もっとオリキャラ(英霊)掘り下げたかったと思いつつ…。原作にいないキャラばかりで進めてもね〜、という自分がいました。これくらいが丁度いい長さだと思います。
さて、ここまで知らないキャラの登場で困惑させたかと思います。
これからは銀魂に登場した人物、名前だけ聞いたことある人物が続々登場します。
皆さんに楽しんでもらえるよう試行錯誤しますので、これからもよろしくお願いします!
それではオマケをどうぞ!!
坂田 銀時のステータス情報が一部更新されました。
なお、更新されたステータスは35話「門番と弓兵」後書きにて、Profileその1に隠しステータスとして記述しています。
宝具
星砕き『洞爺湖』:E
坂田 銀時の愛用する木刀、洞爺湖。
替えの利く利便性から、捨てても即座に新しい洞爺湖を使用可能。
本作品1/4〜3/4章では、あらゆる宝具、魔術を貫通する神秘殺しとして大英雄や神代の魔女を相手に戦った。
その実態は星の触覚、吸血鬼に致命傷を与えたことに由来する。原作での星砕きという解釈が坂田 銀時の死後、何者かによる手で正鬼を貫いたことにより、”星砕き”という形だけの言葉が意味を宿した。
魔術王ですら傷つけられなかった吸血鬼。銀時という殻が与えた事実。異色にして地球上全てのモノを砕く、最強の怪刀はここに証明されてしまった。
”誰も”意図しないイレギュラーの誕生を綴る。
【次回予告】
一節、荒廃都市江戸
「これが、最後に観測した江戸だ。
俺の身体だけは現地にまだ存在し活動してる。俺の魂が抜けた代わりに、なにかが俺の身体を動かしてやがった」
藤丸 立香の前に現れた男、坂田 銀時。
「……どうして貴女が″ここ″にいるんですか」
次々と登場するサーヴァント。
そこには正史、空想など関係ない。
「それは簡単なお話だ、藤丸くん。奴らの手中には聖杯がある。これ以上に英霊が従える理由はそうないだろう」
願いのみを成就する影法師。
閉ざされた世界の管理者。
人類未踏の世界地図。
「
鳴り続ける鬼哭の姿にキミはなにを思う。
大激戦の序章、ここに。
fgoを知っていますか?
-
二部まで知っている
-
一部まで知っている
-
どういうストーリーかは知っている
-
全く知りません
-
知らないけど気にせず読む