fate/SN GO   作:ひとりのリク

1 / 95
【プロローグⅠ】
誰かの為に生きたいと
寸前に迫る死を拒む小さな勇気

死に震える指先はしかし熱く
死を拒む声に生命が点滅する

神秘に抗う瞳は疑問に満ちていた
まるで何処の誰かの最期のようだ

走り、転び、立つ

避け、躱し、立つ

少年は執念を糧に、恐怖を誤魔化す
やがてぶつかる壁、欠片程の才能しかない者の限界を肌で知る

しかし、その姿が絶望に膝をつく事はなかった

どう見ても不恰好なのに
かつての己を見た
バカで愚直なくせ、今、求めている姿

「その生き様、しかと見たぜ」

手を伸ばせ、そして手に入れる

錆びるはずのない、銀色の魂を
終わりは自分の手で着ける為に















「俺は…聖杯を手に入れる」












IF 運命の夜
金髪と銀髪


そこは日陰の泊まり宿。敗者が座るに相応(ふさわ)しい、色のない地。

やんわりと。

薄く、光が届く。

 

「…また、私は呼ばれたのですね」

 

光を肌で感じて、ゆっくりと立ち上がる。

端正で柔和(にゅうわ)な顔立ちの騎士は静かに呟いた。

暖かい光が、騎士を導く。騎士は金色の髪がなびいた先を、見つめる。

どこかに繋がっている、(ほの)かに灯りが差し込む(みち)が浮かび上がっていた。

あそこを通れば、騎士はサーヴァントとなる。

求める声に応じ、必要な知識を得る。最低限の準備を済ませれば、騎士は剣となり栄光と誇りを問われる。

誰も文句は言わない。騎士の姿は栄光を掴み取るに相応しい也をしている。それに対する姿勢は、堅実な理想を追い求める王だ。

 

「騎士王の名にかけて。次こそは聖杯を……」

 

浅く深呼吸。肺に満ちる空気は少しだけ冷たい。これから行く場所が冬なのか、それとも己の感情がそう感じているのかは、はっきりしない。

手に持つ不可視の聖剣を握り締め、灯りが灯る方向へ走り出した。

なぜ召喚されるのに武器を持つのか。

必要だから、だ。

自身を呼ぶマスターの身に危険が迫っている。

絶対に間に合う。また浅く深呼吸する。

心を引き寄せる呼びかけに、やや心拍数が跳ねる。珍しく、急かす感情が表に現れる。そんな彼女の足元に、風が吹いた。

魔力の風に乗り、駆け出す。ほんの三秒ほどで、出口が眼前に迫る。

 

「次は……!」

 

次は、理想を是と言ってくれるメイガス(魔術師)なら少しは気が楽になれるかもしれない。

前回の事を考えると、そんな愚痴が溢れそうになる。無意識に。不安かは解らない。願望なのかもしれない。しかし、自身の成り立ち故に、邪念は振り払う他になかった。気持ちを落ち着かせようと、一瞬目を瞑る。

騎士王は思いもしない。

 

「悪いな嬢ちゃん」

「ぎゃふぅ!?」

 

己すら気付けないほど油断していたとは。

 

「この道、俺が一歩先を行かせてもらうぜ」

 

騎士王の美しい金色の髪の後頭部に衝撃が走った。次に、顔面から地面にぶつかり「ぶきぁっ!?」とクシャクシャな悲鳴が飛び出して、ドテンドテンと気持ちよく転がる。

突如背後から現れた何者かの足が、騎士王の後頭部を踏み土台にした。男は悪気があるのか、一瞬だけ騎士王が倒れている姿を見て、無言で駆け出す。そこは、騎士王が行くはずの、あと一歩先。

 

「……待ちなさい」

 

待てという言葉の説得力に期待は込めない。

沈黙は金。それは極光のよう。起き上がった騎士の目には、怒気が表れている。

黄金の粒子が不可視の剣から発生し、ソレの手には金色に輝く剣が露わになる。その姿を隠していた魔力は、風となり先行く男の背中に待てと語る。

マスターの身が危ない。時間をかける暇は、微塵(みじん)もない。

 

ゆえに、不可視の剣だったソレを、天に掲げる。

 

「げっ!」

 

男は、騎士王の剣に集まる魔力に目を見開き、向き直ると腰にさしている木刀を抜く。躱す素振りも、背を向ける気もない。ましてや、騎士王が″宝具″を開放するのを″止める気″はないようだ。

 

「通りたいのなら、我が一撃を受けてからにするがいい。

 

約束された勝利の剣(エクスッッカリバァァァー)!!!!!

 

 

聖剣から放たれた収束の光。凝縮されたソレを一気に解放する騎士王。天へと駆ける極光は、振りおろした聖剣の切っ先をなぞる。まるでムチのよう。極上の伝説だ。

音で聞くのと同時に、ソレは特急列車の如く男の眼前に迫った。

男は交、わす言葉が少なかったな、と考えて次に。この光が戦う者同士の言葉なのだと、瞬時に理解した。

 

「そうかい、そんじゃお言葉に甘えるとしますかぁーー!!」

 

光に包み込まれる直前、彼の口元がニヤリと笑っていたのは聖剣の使い手すらも知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜、今のが宝具か。

対城宝具っつーのだったら、まじでやばかったぜ?」

 

四散する光。ただ美しいだけの光景が広がる。黄金の輝きは、あと一瞬で消えてしまうだろう。複雑ながらも、男は思った。

砕け散る木刀が消えていく。使い慣れていた木刀が消失するが、あまり困った風には見えない。振り向いて視線を上げて、騎士王の姿を見ずに駆け出す。

今の言葉は余計な気遣いだろう。きっとそれに怒りの一つも覚える。

だが、相手に戦意の欠片も無いと見て取れた時、気遣う心は空振ってしまう。ならば、何もしない。情は送らないし、受け取らない。彼女の前に飛び出し、路を行くと決めた瞬間に、坂田 銀時は立ち去る事を選んでいたのだから。

 

ここに、もしもの聖杯戦争は再び発生する。

 

 

 

 

 

「……そんな。

 

 

私のエクスカリバーが……

 

 

……負けた……」

 

光の向こうへと走り去る銀髪の男を、呆然と見送る事しかできなかった。情に駆られ、解放した必殺にしても、あまりに簡単すぎる。聖剣の敗北が、呆気なさすぎる……!

粗末な決着に、異議を唱える気力もなかった。頭がどうにかなってしまいそうな、″可笑し″な感覚。

霧散した光の粒子が消えていく。約束された勝利の剣(エクスカリバー)の使い手、アルトリア・ペンドラゴンはここで退場となる。対城宝具が真っ向から負けた悔しさが、失意へと変わり。いつの間にか足元を覆う黒い何か。闇のような、しかし違うモノ。彼女の全身を徐々に呑み込んでいく。それを反発する声音もなく、受け入れる。

やがてその場所は、一滴の涙を残し消失した。

 

 






はじめまして。これから銀魂とのクロスオーバー作品を書いていきます、ひとりのリクです。
そして、閲覧ありがとうございます。fate、銀魂好きの人たちの目に留まった事を嬉しく思い、私が作っていくストーリーを永く終わりまで付き合って頂けるような作品にしていきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。