「さあ、どうぞ」
『『『お邪魔します』』』
さてさて、晴れて恋人となった俺達は、エスリアさんの家にお邪魔しようとしていた。
その理由を語るには、6人とキスを終えた時にまで遡らなければならない。
キスを終えた俺達は、夜遅いのもあり、解散する事になった。
この7人の中で、エスリアさんだけが宿に泊まっていないと言うのもあり、彼女を自宅まで送り届けてから宿に向かおうとしたのだが、寂しそうな表情を浮かべたエスリアさんに引き留められたのだ。
どうもエスリアさんは、自分だけが自宅に居ると言うので疎外感を感じてしまったらしい。
そのため、俺達はエスリアさんの家に泊まる事にしたのだ。
「何か、すみませんね。こんな大勢で」
「いえいえ。私が言い出したんですから」
俺が謝ると、エスリアさんはそう返してきた。
「それからミカゲさん、私の事は呼び捨てで……後、タメ口で話してくださいね?恋人なんですから………」
そう言い終えてから顔を真っ赤にして俯くエスリアさん…………もとい、エスリアはめっちゃ可愛いかった。
それからエスリアの寝室(8畳ぐらいの広さ)に案内された俺達は、其所で雑魚寝する事になった。
その際、誰が俺の隣で寝るかで揉め事になったため、じゃんけんで決めてもらった結果、エスリアとニコルが、俺の隣で寝た。
「(一通り落ち着いたら、ルージュに家でも建てようかな)」
両サイドからエスリアとニコルに抱きつかれながら、俺はそんな事を考えていた。
…………え?『初めてはどうした』って?流石にいきなりは無理ですよ、うん。
こう言うのは、ちゃんとした手順を経てからだな。
「……………そうか、彼女等と恋人関係になったんだね」
「ああ」
翌朝、7人仲良く起きた俺達は、エスリアの家で朝食を済ませてギルドの前で解散し、エスリア以外の6人は宿に戻っていた。
それからラリーに会ったため、他の5人を先に部屋へと戻し、俺はラリーと話していた。
「まあ、コレは昨日も言ったけど…………改めておめでとう、相棒」
「おう、ありがとな」
祝福してくれる相棒に、俺は礼を言った。
すると、ラリーは昔を思い出している老人のような、穏やかな表情を浮かべた。
「それにしても、あの鈍感の中の鈍感だった相棒が、今では6人もの恋人を…………いやぁ、成長したねぇ…………ちょっと前までは、どうしようもない鈍感野郎だったのに…………」
「お前、俺の事そんな風に思ってたのか?」
"鈍感の中の鈍感"だの"どうしようもない鈍感野郎"だの…………酷ぇ言われようだな。
おまけに、両方とも意味同じだし。態々似たような事言わなくても良いだろうに…………
「そうは言うけど、事実だろ?ゾーイやアドリアにエッチなアピールされても気づかないし、他の4人からのアプローチを受けても気づいてなかったんだから」
「うぐっ………あまりにも正論過ぎて言い返せねぇ………」
ラリーに言われ、俺は返す言葉を失った。
…………認めるしかなさそうだな。
そんな俺を見て、ラリーがクスッと笑う。
「まあ、何はともあれ彼女等の恋人になったんだ。ちゃんと幸せにしてやるんだよ?」
「そりゃ、勿論そうするつもりさ」
ソブリナ達が俺を愛してくれているなら、それに最大限答えてやるのが彼氏の義務だ。
「何なら、この町に家でも建てて、彼女等と暮らしたらどうだい?勿論、ある程度落ち着いてから」
「それは良い考えだが、お前はどうすんだよ?」
「…………それは考えてなかったな」
「おいおい、それじゃ駄目じゃん………」
俺は苦笑混じりにツッコミを入れた。
「そ、それより!昨日迷宮を攻略した訳だけど、ステータスはどうだったの?」
話題を変えようとしているのか、ラリーがそんな事を聞いてきた。
「……ああ、それがだな…………」
取り敢えず空気を読んで、俺は昨日見たステータスを伝える。
「…………まあ、こんな感じかな」
「相変わらず、誰が見ても顔面蒼白になるようなチートステータスをお持ちのようで」
ラリーは苦笑混じりにそう言った。
それから俺は、ラリーにもステータスを見せてもらった。
名前:ラリー・トヴァルカイン
種族:ヒューマン族
年齢:19歳
性別:男
称号:追いやられし者、
天職:航空傭兵
レベル:250
体力:7700
筋力:7600
防御:7700
魔力:40000
魔耐:42000
俊敏性:7900
特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声、アルコール耐性、気配察知、
ふむ、相変わらず魔法系ではチートだな。魔力なんて俺の8倍以上だ。
それじゃあ、今度は
名前:ラリー・トヴァルカイン
種族:ヒューマン族
年齢:19歳
性別:男
称号:追いやられし者、
天職:航空傭兵
レベル:250
体力:39500
筋力:36000
防御:36500
魔力:480000
魔耐:500000
俊敏性:45500
特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声、アルコール耐性、気配察知、
「うわぁ~…………」
ラリーのステータスを見た俺は、何とも言えない表情を浮かべた。
前々から思ってたが、コイツその気になれば、魔法で国1つ滅ぼせるんじゃね?
国の魔術師団は勿論だが、F組勇者共でもラリーに魔法で勝つのは無理だろう。
そう思いながらラリーの方を向くと、ラリーはひきつった表情で自分のステータスを見ていた。
「…………何このふざけたステータスは?」
「いやいや、お前のステータスだろ」
唖然とした表情で言うラリーに、俺はそう言った。
「………………」
それから暫く黙っていたラリーだが、不意に、自嘲するような表情で小さく笑った。
「相棒のみならず、僕も人間を辞めてしまったと言う事か……………」
「まあ、"人の域を破りし者"だの "人間失格"だの書かれてるしな。俺等の称号には」
ラリーの呟きに言葉を返すと、俺達は揃って遠い目をした。
「そういや気になったんだが、この世界では称号を複数持ってる奴って多いのか?」
今更ながらの疑問を投げ掛けると、ラリーは首を横に振った。
「まあ、居なくはないけど………大概は1つだね。稀に、2つ持ちの人が居るって噂を聞くけど」
「………………」
ラリーにそう言われた俺は、言葉を失った。
今までは称号が増えても、『あ、何か知らんけど称号増えてる』程度しか思ってなかったが、ラリーに言われてから改めて考えると…………
「…………俺等、トンでもねぇ事してるんじゃね?称号10個は取ってるし」
「それ、今更気づいたのかい?」
俺の呟きに、ラリーがそう言った。
「ねえ、相棒。この前君のクラスメイト達と会った時、誰かにステータスプレート見せてもらったりした?」
不意に、ラリーがそんな事を訊ねてくる。
「ああ、天野のヤツを見せてもらったけど………」
「その人の称号、幾つあったか覚えてる?」
そう聞かれた俺は、目を瞑って天野のステータスを思い出す。
そういや彼奴の称号って…………
「"勇者"の称号以外は何も無かったな。それに、全員そうだって言ってたし………」
「つまり、そう言う事さ」
ラリーがそう言った。
「勇者でさえ、称号は1つしか持ってない。なのに僕等は10個以上持っている。となれば…………」
「もう良い、皆まで言うな」
俺はそう言って、強制的に話を終わらせた。
「はぁ…………クルゼレイ皇国に戻るタイミング、早めた方が良いかもしれねぇな」
「何時戻るか決めてる訳じゃないけどね…………それで相棒、あの念魔石は渡したのかい?」
「…………ハッ!?」
ラリーにそう言われた俺は、収納腕輪から念話石を引っ張り出す。
「すっかり忘れてた…………」
「何やってんだよ相棒…………」
俺の言葉に、ラリーが盛大に溜め息をついた。
それから俺達は、グダグダと話して午前を過ごした。
午後になり、昼食を終えると、ラリーとエメル、リーアは用事があるとかで何処かへ行ってしまったため、俺は今、ゾーイやアドリアと共に自室へ戻ってベッドに寝転がっていた。
因みにアルディアの3人は、彼女等の部屋に戻っている。
「………………」
「何か、考え事ですか?」
右半身に抱きついているゾーイが聞いてくる。
反対側に抱きついているアドリアも、此方を向いている。
「ああ、実はな…………」
そうして俺は、今朝の事を話した。
俺とラリーのステータスがトンでもない数値になっていた事や、大抵の人が称号を1つか2つぐらいしか取れていないのに対して、俺とラリーは、10個以上の称号を獲得していると言う事を…………
「成る程、そんな事が…………」
ゾーイはそう言い、アドリアは目を丸くしている。
「今まで何の違和感も無く称号増やしてたから、結構驚いたよ」
俺は苦笑混じりにそう言った。
「それにしても、まさか称号に人外扱いされるとは…………」
「ああ、それは俺も思った」
アドリアの言葉に、俺はそう返す。
すると、突然ゾーイが抱きつく力を強めてきた。
「…………?どうした?」
いきなりキツく抱きつかれた俺は、ゾーイに訊ねる。
「………………」
暫く黙っていたゾーイは、やがて、ポツリポツリと口を開いた。
「たとえ、称号に人外扱いされていようと…………本当に化物になっても…………私達は、貴方を愛しています」
ゾーイはそう言った。
「私もです、ミカゲ様」
今度は、アドリアが抱きつく力を強めてきた事により、俺は両サイドからの柔らかな感触に挟まれた。
「…………ありがとな、2人共」
俺はそう言うと、2人の背中に手を回す。
くすぐったかったのか、一瞬身を捩らせた2人だが、やがて大人しくなり、頬擦りしてきた。
やはり、こうして俺を想ってくれる恋人達は、本当に愛しいものだ。
イチャイチャしてる様子って、書くの難しいな。
こう言うの書ける人をマジで尊敬しましたよ。