航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第72話~グループデートその1《可愛い受付嬢編》~

「お、お待たせしました……ミカゲさん」

 

さて、ラリーとの話を終え、1日目の相手を待っていると、後ろから足音が聞こえ、声を掛けられる。

振り向くと、其所には茶髪ショートボブの小柄な女の子が立っていた。

エスリアさんだった。

どうやら、1日目の相手は彼女のようだ。

 

「今日はよろしくお願いします、エスリアさん」

 

そう言って、俺は軽く頭を下げた。

 

「こ、此方こそ!不束者ではありますが、よろしくお願いします!」

 

アワアワしながら、エスリアさんも頭を下げてきた。

ギルドの受付カウンターに居た時の、ニパッとした笑顔もそうだが、こうやってアワアワしているのも可愛いな。見ててスッゲー癒される。

 

…………っと、こんな所でボーッとしてる場合じゃないんだよな。

 

「それじゃあ………どうしましょうか?」

 

俺はそう言った。

実を言うと、俺は今日のデートプランを全く考えてなかった。

誰かと付き合った事が1回も無い俺にとって、デートプランを考えるってのは至難の技なんですよ。ええ、もうホントに。

 

「もしかして、ミカゲさん………今日の予定、全く考えてなかったり……?」

 

まるで、俺が考えている事を読み取ったかのように、エスリアさんがそんな事を聞いてきた。

 

「…………はい。何分、デートなんて初めてなモンで」

 

此処で下手に誤魔化しても仕方無いので、素直に頷く。

 

「あらら……そうだったんですね………」

 

そう言って、苦笑を浮かべるエスリアさん。

 

「それなら、町をぶらぶら歩き回るのはどうですか?何か良いものが見つかるかもしれませんし」

「そうですね」

 

エスリアさんが提案してくれたので、それに便乗する。

我ながら情けない話だ。

……………良し。今度からは、ちゃんとしたデートプランを考えられるようにしておこう。

まあ、明日と明後日もデートなんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………それで、あのお店は肉料理が美味しい事で評判なんですよ!ギルド支部長も気に入ってますからね!」

「おお、マジですか」

 

あれから俺とエスリアさんは、ルージュの町を歩き回っている。

クルゼレイ皇国に行く前、この町には長い間世話になっていたのだが、基本的に宿とギルドを行き来していただけの俺は、この町の施設をよく知らない。

そのため、エスリアさんが案内してくれる事になったのだ。

 

「それから、あのお店では様々な種類のアクセサリーを売ってて、女性達の間で人気なんです!」

 

視界に入る店を、自慢気に紹介してくれるエスリアさん。

 

その店に目を向けると、如何にもアクセサリー専門店らしい装飾が施されていた。

「(あの店、夜になったらライトが光ったりしそうだな………)」

 

その店を横目に見ながら、俺は内心そう呟いた。

 

それからも様々な店を紹介してくれるエスリアさんだったが、終いには、俺が泊まっている宿の紹介も始めた。

既にエスリアさんから話を聞いていた上に、今も世話になっている宿だったので、それを指摘したら顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。

あれはめっちゃ可愛かったな。是非とも写真に収めたかったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしたか?ミカゲさん」

「ええ、結構色々な店があったんですね。この町って」

 

あちこち歩き回っている内に昼になり、俺とエスリアさんは、適当に入った飲食店で昼食を摂っていた。

それにしても、本当に色々な店があったな。

結構長い間世話になってた町なのに、この町の事を殆んど知らなかったんだな、俺は……………

 

「ミカゲさんは、何か気になるお店はありましたか?」

 

不意に、エスリアさんがそんな事を聞いてきた。

 

「いやぁ~………俺、店とかはあまり気にならないタイプなんで、そう言った感じの店とかは、ちょっと………」

「そうですか………」

 

俺が答えると、エスリアさんは残念そうに言った。

 

「因みに、エスリアさんはどうですか?何か気になる店はあったんですか?」

「わ、私ですか?」

 

キョトンとした表情で、エスリアさんは自分を指差した。

 

「えっと………気になるお店……ではないんですけど、よく行くお店があって」

 

それから話を続けるエスリアさん曰く、その店は、さっき紹介してくれたアクセサリー専門店らしい。

 

「仕事が無い時は、よく行ってたんです。其所で買ったアクセサリーでおしゃれして、友達と遊びに行ったりして……」

「成る程ね………」

それから俺は、エスリアさんの話を聞いていた。

楽しそうに話すエスリアさんは、時間が流れるのすら忘れて話し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺達が飲食店を出た頃には、既に3時を過ぎていた。

当時の思い出を話している内にスイッチが入ったのか、エスリアさんはマシンガンの如く当時の思い出を語りまくったのだ。

捲し立てるように言うので、彼女が何を言っていたのかは殆んど覚えていない。

俺はただ、苦笑を浮かべて相槌を打つしかなかった。

 

「それにしても、まさか2時間も語るとは思いませんでしたね」

「うう、すみません………」

 

俺が言うと、エスリアさんは顔を真っ赤にしながら言葉を返した。

それから続けるエスリアさん曰く、どうやら、思出話を始めると止まらなくなるのが癖らしく、そう言った類いの話は、なるべくしないようにしていたらしい。

 

「えっと………迷惑、でしたよね………?」

不安そうな表情で俺を見上げ、エスリアさんはそう聞いてきた。

 

彼女の質問への答えは、当然"NO"だ。迷惑に感じる訳が無い。

そりゃ、確かにマシンガンの如く語っている姿には戸惑ったし、彼女の話が終わる頃には2時間も経っていたと言うのを知った時には、かなり驚いた。

だが、それで迷惑に感じたりはしないだろう。

 

だから俺は、首を横に振った。

 

「そんな事はありませんよ。色々聞けて楽しかったですからね…………また機会があったら、もっと話を聞かせてください。その時は、他の奴等も交えて、ね」

 

俺は、軽く笑みを浮かべてそう言った。

 

「ありがとうございます、ミカゲさん」

 

そう言って、エスリアさんも微笑み返してきた。

 

さてさて、もう3時を思いっきり過ぎてる訳だが、これからどうしようかなぁ………?

ラノベやネット小説で見掛けるデートみたいに、どっか良さそうな店に入って、プレゼントでも買うか?

いや、流石にそれではベタすぎるか………

 

「ところでミカゲさん」

 

この後の予定を考えていると、エスリアさんが話し掛けてきた。

 

「はい?」

「ミカゲさんって、確か空を飛べるんですよね?あの鎧みたいなのを纏って」

「……はい、そうですけど………?」

 

エスリアさんの質問に、俺はそう答える。

 

「あれって、私でも使えるでしょうか………?」

「えっ!?」

 

突拍子も無い事を言い出したエスリアさんに、俺は大声で驚いてしまう。

 

「な、なんで……そんな事を………?」

「じ、実は私………幼い頃、空を飛ぶ事に凄く憧れてて………まあ、今もなんですけど………」

 

エスリアさんはそう言うと、頬を赤らめながら、胸の前で両手の人差し指をツンツン突き合わせる。

 

それは凄く可愛いのだが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

「そ、それで……どうなんですか?」

「……………」

 

不安そうに聞いてくるエスリアさんに、俺は答える代わりにエスリアさんの手を引き、町の外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この辺りで良いかな」

 

町の外に出ると、俺はエスリアさんの手を離す。

 

「えっと……ミカゲさん…………?」

 

すると、後ろからエスリアさんが、恐る恐る声を掛けてきた。

急に町の外に連れ出された事に戸惑っているのだろう。

 

「ああ、急にすみません。コレ、他の人に聞かれたら色々マズい事なんでね」

 

俺はエスリアさんの方を向いてそう言った。

 

「結論から言いますと…………一応、エスリアさんでも使えます。と言うか、誰でも使えます」

 

俺が"僚機勧誘"を使えば………の話だけどね。

 

「ッ!」

 

すると、エスリアさんが表情を輝かせた。

まるで、念願の玩具を買ってもらう子供のように、目をキラキラさせている。

 

「でもね」

「……………?」

 

キョトンとした表情で首を傾げるエスリアさんを見て、俺は罪悪感を覚えつつも口を開く。

 

「この力は、そう簡単に与えられるようなものじゃないんですよ」

「どういう事ですか?」

 

そう訊ねてくるエスリアさんに、俺は一切合切話した。

 

俺が持っている力は、俺が元々住んでいた世界の兵器が、ちょっと姿を変えただけのものであり、それが、ただ空を飛ぶためだけのものではないと言う事。

そしてコレが、この世界のパワーバランスを一気に崩してしまうような、トンでもない破壊兵器であると言う事も……………

 

「だから、そう簡単に誰かに与えられるようなものじゃないんです」

「そうですか………なら、仕方ありませんね」

 

どうやら納得してくれたようで、エスリアさんはそう言った。

 

「まあ、そう言う訳ですので……………取り敢えず、町に戻りましょうか」

 

そう言って、ルージュの方へ歩き出そうとした時だった。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

未だ何かあるらしく、エスリアさんが呼び止める。

 

「1つ、お願いがあるんです」

「"お願い"?」

 

俺が聞き返すと、エスリアさんは頷く。

 

「私を抱いて、空を飛ぶ事って出来ますか?」

 

エスリアさんはそう言った。

そういや、空を飛ぶ事に憧れてるって言ってたな…………

「ああ、それなら出来ますよ」

 

そう言うと、俺はVTOL機であるハリアーを展開し、エスリアさんの方を向いて言った。

 

「…………やってみますか?」

「はい!」

 

すると、残念そうな顔から一転して、何時ものような可愛らしい笑顔を浮かべ、エスリアさんは小走りで駆け寄ってくる。

機体を纏っているためにおんぶは出来ないため、横抱きにする。

所謂、"お姫様抱っこ"と言うものだ。

 

「えへへぇ~……」

 

にへら~っと、笑っているエスリアさんに内心ニヨニヨしつつ、俺はノズルに意識を向ける。

下を向いたノズルからの噴射で、俺はゆっくりと地面から離れる。

空へ上がっていくにつれて、エスリアさんの目が一層輝く。

高度100メートル程度に達すると、町全体を見渡せるような場所へと移動する。

こうして見ると、町がジオラマのようだ。

 

「…………ん?」

 

町を眺めていると、エスリアさんが服を引っ張ってきた。

視線を落とすと、エスリアさんがはにかむような笑みを浮かべて此方を見ている。

 

「夢、叶っちゃいました」

頬を赤く染めながら、エスリアさんはそう言った。

 

「そうですね」

 

俺も、軽く微笑んで返した。

それから、俺達はハリアーでの空中散歩を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色々廻りましたね」

「はい!まるで、国一周旅行をした気分です!」

 

あれから長い間飛び回り、ルージュの町に戻る頃には、すっかり日も暮れてしまった。

ルージュの町上空に着くと、ノズルを下に向けて噴射し、ゆっくりと高度を下げていく。

そして、足の裏から出てきたタイヤが地面に接すると、噴射を止めてエンジンを切り、機体を解除する。

「さて………エスリアさん、ルージュに着きましたよ」

 

俺はそう言って、エスリアさんを地面に下ろす。

 

「もう、着いちゃったんですね………」

 

地面に降り立ったエスリアさんが、残念そうに言った。

実を言うと、俺も少し残念な気分だった。

もう少し、2人で飛んでいたかったと言う気持ちもある。

だが、流石に日が傾いてくると、そうも言ってはいられないからな……

 

「ありがとうございました、ミカゲさん」

「いえいえ、此方こそ」

 

そうして、俺達はゆっくりと、宿へ歩みを進める。

 

「本当に、夢みたいです………」

 

不意に、エスリアさんが口を開いた。

 

「叶う筈が無いと思ってた夢が叶って………こうして、好きな人と一緒に歩けるなんて………」

「……………」

 

嬉しそうな表情を浮かべるエスリアさんの話を、俺は黙って聞いていた。

それからエスリアさんは、何故、俺の事を好きになったのかを語ってくれた。

元々は、普通に受付嬢と冒険者程度の関係にしか思っていなかったが、俺等がルージュに滞在している間は何度も話したし、宴会で一緒に騒いだりしている内に、何時の間にか好きになっていたらしい。

特に大したきっかけも無かったが、その辺りについては、『惚れる理由って、人其々なんですよ』と言っていた。

 

そんなこんなで話していると、俺達は、ある一軒家の前で足を止めた。

どうやらエスリアさんの家らしく、此処で1日目のデートは終わりだ。

 

「それじゃあエスリアさん、今日はありがとうございました」

「いえ、此方こそ」

 

そう言って頭を下げると、エスリアさんも同じように返事を返してきた。

 

「ではまた、明々後日に」

 

そう言って踵を返し、宿に向かおうとした時だった。

 

「ミカゲさん!」

「ん?」

 

急に後ろから呼ばれ、俺は足を止めて振り返る。

 

「どうしました?エスリアs……」

 

その言葉を最後まで言い終える事は無かった。

何故なら、直ぐ目の前にエスリアさんの顔があったからだ。

そして唇に感じる、柔らかく、しっとりした感触…………

 

コレがキスだと気づくのに、時間は掛からなかった。

 

短いような、長いような、そんなキスを終えて、エスリアさんは唇を離す。

 

「お返事、待ってますね」

 

それだけ言うと、エスリアさんは家に引っ込んでしまった。

 

「……………」

 

唖然としながらそれを見送った後、俺は宿へと戻るのであった。


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