航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

75 / 168
第67話~ラリーの制限解除と、アルディアから見たガルム隊~

「ラリー!」

 

ドアを蹴り開けてラリーの部屋に飛び込んだ俺は、ベッドに隣接している壁に背をつけてガタガタ震えているラリーに声を掛けた。

 

「あっ……相棒……」

 

震えながら振り向いたラリーの表情は青ざめていた。

 

「どうした?何があった!?」

 

あのラリーがこんなにも怯えるとなれば、ただ事じゃないだろう。

俺はラリーの肩をつかみ、何があったのかを問い質す。

 

「コレよ」

 

後ろからエメルに呼び掛けられ、俺は振り向く。

その視線の先では、床に落ちていたステータスプレートを拾い上げているエメルが居た。

そして、俺の元に歩いてきたエメルは、言葉を続けた。

「ラリーに、制限解除(リミット・ブレイク)とか言う新しい特殊能力が加わったらしいんだけど、そのステータスが凄かったらしいの」

「……………」

 

何だ、そんな事かよ。

 

「全く、驚かせるなよなぁ~………」

 

もう1つのベッドにボフンと腰掛け、俺はそう言った。

 

「ちょっと相棒!何ぐだぁ~っとしてるのさ!?僕のステータスが滅茶苦茶な事になってるんだよ!?」

「そんなモン知ってるよ。俺と同じように、桁が万越えてるんだろ?」

「そうなんだけど大変なんだよ!兎に角見てよコレ!」

 

そう言って、ラリーはベッドから降りると、エメルからステータスプレートを引ったくり、俺に突きつけてきた。

 

「あ~、はいはい、分かった分かった。ちゃんと見るから、少し落ち着けって」

 

そう言ってステータスプレートを受け取り、俺はラリーのステータス(制限解除(リミット・ブレイク)したもの)に目を通した。

 

そのステータスは以下の通りだ。

 

 

 

名前:ラリー・トヴァルカイン

種族:ヒューマン族

年齢:18歳

性別:男

称号:追いやられし者、片羽の妖精、伝説となりし魔術師(レジェンダリー・ウィザード)、人の域を破りし者、自重知らず

天職:航空傭兵

レベル:200

体力:29700

筋力:27600

防御:27800

魔力:300000

魔耐:324000

俊敏性:30000

特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声、アルコール耐性、気配察知、魔法威力倍加(マジック・ブースト)制限解除(リミット・ブレイク)

 

 

 

「あ~、成る程ね………」

 

ラリーがあんなに驚いていた理由が分かったような気がする。

 

「ホラ、見ただろ?ステータス値は全部桁が万だし、魔力系なら桁が十万になってるんだよ!制限解除したものとは言え、最早ヒューマン族の比じゃないよコレ!」

 

俺の隣に腰掛けて、ラリーが騒ぐ。

耳にガンガン響くから止めてもらいたい。正直、スッゲー五月蝿い。

こんな大声出されると、『拡声』使ってるんじゃないかとすら思ってしまう。

 

「まあ、ステータス値の桁が万になってるのは俺も同じなんだが…………魔力系の桁が十万なのは、『ラリーだから』の一言で片付くだろ」

「いやいや!片付かねぇよ!?何言ってんだよ!?」

 

ラリーの口調が盛大に乱れる。

正直、其処まで取り乱すような事なのかと思うのだが…………よく考えたら、俺も制限解除した自分のステータスを見た時、大声出して驚いたんだよな。

コレじゃ、人の事言えねぇや。

 

「ねえ、相棒…………僕、自分がヒューマン族である自信が無くなってきたよ…………」

 

ラリーの魔力や魔耐がヒューマン族の比じゃないのは今に始まった事ではないのだが、それは言わない事にする。

 

「まあ、その…………何だ」

 

ラリーに投げ掛けてやる言葉を模索しながら、俺はラリーに近づく。

 

「ラリーよ、そう肩を落とすなって」

 

俺はそう言って、ベッドの上で項垂れるラリーの肩に手を置いた。

 

「確かにお前の魔力や魔耐はヒューマン族の比じゃねぇが………やっぱ、ステータス値は低いよりも高い方が良いだろ?」

「た、確かにそうだけど…………」

 

いまいち納得いかない様子を見せるラリー。

 

「それに、コレはあくまでも制限解除した場合のステータスであって、通常時のステータスじゃないんだ。そうだろ?」

「う、うん………」

「なら、良いじゃねぇか。ここぞと言う時にだけ、制限解除を使えば良いからな」

 

俺がそう言うと、ラリーは漸く納得した。

まあ、どうこう言っておきながら、俺も若干戸惑ってるんだがな。

 

「…………ん?」

 

そうしていると、ドアの向こうに人の気配を感じた。数は3つだ。

 

「ちょっと失礼」

 

そう言ってベッドから立ち上がると、ドアの方へと歩いていき、そのままドアを開ける。

 

「「「きゃあっ!?」」」

 

アニメでもありがちな可愛らしい悲鳴を上げて、3人の美女が雪崩れ込んできた。

ソブリナとエリス、そしてニコルだった。

 

何の前触れも無くドアを開けたため、3人は今、床に倒れ込んでおり、ソブリナとエリスの上にニコルが倒れている。

 

「よう、お前等。盗み聞きとは随分と悪趣味じゃねぇか」

「ぬ、盗み聞きなんてしてないわ!」

「そうよ!最後辺りがチラッと聞こえただけよ!」

 

俺が言うと、ソブリナとエリスが即座に反論してきた。

 

「"最後辺り"って…………具体的に、どの辺り?」

「「「………………」」」

 

ラリーが訊ねると、3人は黙り込んでしまう。

そして、暫く沈黙した後、ニコルがポツリポツリと口を開いた。

 

「『ラリーに制限解除とか言う新しい特殊能力が加わったらしいんだけど~』…………の、辺りから……」

「「それ、ほぼ始めの方じゃねぇか!?」」

 

俺とラリーが同時にツッコミを入れる。

 

「し、仕方無いじゃない。依頼を終えて宿に帰ってきたらラリーの叫び声が聞こえて、何事かと思って、荷物を置いてから部屋に行ったら、さっきの話が聞こえてきたのよ」

ソブリナが言い訳した。

 

「それじゃあ、つまり……僕のステータスの事を…………?」

「ええ」

「思いっきり聞かせてもらったわ」

「ですよね~」

 

ソブリナとエリスの返答に、ラリーはそう答えた。

コレがアニメなら、ラリーは真っ白になった後、そのまま風に吹かれた砂のように、サラサラ………と、消えているだろう。

 

「ま、まあ大丈夫よ、ラリー」

「そ、そうよ。この話を聞いていたのは私達だけなんだから」

「………誰にも、言わない…………約束、する……」

 

そんなラリーを慰める3人。

 

「うん………ありがとう」

 

ラリーはそう言った。

 

「それで?ミカゲの方はどうだったの?」

「え?俺!?」

 

不意に、エリスが話の矛先を俺へと向けてきた。

 

「そう言えばラリーのは聞いたけど、ミカゲのステータスは未だ聞いてなかったわねぇ~………」

「……ミカゲの、気になる………」

 

ソブリナとニコルも同調する。

 

えっ、ちょっと…………コレ、マジでどうしたら良いんだ?

 

「相棒」

 

ジリジリと迫ってくる3人に戸惑っていると、何時の間にか背後に居たラリーが肩に手を置いてきた。

 

「君も道連れだよ」

「…………」

 

そう言うラリーに、俺はどのように返したら良いのか分からなかった。

そんなこんなで、結局は俺も、3人に制限解除したステータスを見せる事になった。

その際、アルディアの3人は勿論だが、リーアにも驚かれたのは言うまでもない。

それと同時に、俺は此処で初めて、アルディアの3人に自分の正体を打ち明ける事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、あんなトンでもないステータスを見せられると………」

「つくづく、ミカゲ達は普通の人間じゃないって思うわね」

「……………」

 

あれから少しして、俺達は夕食を摂っていた。

ソブリナとエリスが言うと、ニコルが2人の意見に同意するかのようにコクコク頷いている。

 

「ミカゲさんとラリーさん………凄いです」

 

夕食で出されたパンを両手に持ち、リーアがそう言った。

それからパンを頬張るのだが、その際にほっぺが膨らむため、見ていて凄く和む。

 

「それに、2人共レベルが200になってるからね、制限解除していない状態でも、ステータス値は高かったわ」

 

エメルが続けた。

 

「レベル200………」

「最早……人間の域、超えてる……」

 

エメルの言葉に、ソブリナとニコルがそんな感想を溢した。

ニコルも目を丸くして、手を口に当てて驚いている。

 

「最早、この2人には常識なんて通じやしないわね…………一体、何をどうやったらそんなレベルになるのよ………」

 

驚くのを通り越して呆れてしまったのか、ソブリナが溜め息混じりにそう言った。

 

「まあ、魔物の群れを殲滅したり、迷宮攻略したり、小型~中型のドラゴン叩きのめしたりしてたからな」

「…………もう何も言わないわ」

 

そう言うと、ソブリナはテーブルに突っ伏した。

「それにしても、貴方達………いえ、コレはミカゲとラリーに言いたい事なんだけど………」

「「ん?」」

 

不意にエリスが話を切り出してきて、俺とラリーが同時に聞き返す。

 

「2人共、この世界の風潮が何なのか知ってる?」

「風潮?」

 

突拍子も無い話に、俺は聞き返した。

頷くエリスだが、正直、風潮がどうとか言われてもパッとしないと言うのが素直な意見だ。

だが、どうやらラリーだけは違うようで…………

 

「『力を持つ者はハーレムを作るべきだ』…………ってヤツかい?」

「ええ、そうよ」

 

ラリーはそう言い、エリスは頷いた。

 

「はっきり言うと、貴方達は強い……いえ、強すぎる。あの飛行能力を持つ摩訶不思議な魔道具………確か、戦闘機とか言ったかしら?それの力もあるかもしれないけど、そもそもレベル200とか制限解除の能力なんてものを持ってたら、その気になれば国1つを相手取れるわ。それ程までの力を持ってるなら、自惚れたって不思議ではない。他の人なら、きっと調子に乗ってるでしょうね」

 

まあ、そうなるだろうな。

 

「でも………」

 

そう言って、エリスは神妙な面持ちで俺とラリーを見据える。

 

「貴方達は違う」

「「…………?」」

 

彼女の言う意味がよく分からず、俺とラリーは首を傾げる。

 

「そんな力を持っておきながら、自分達の能力をひけらかしたりしない上に、人柄も良い。それに加えて、風潮を利用してハーレムを作ろうともしない…………正直な話、何か裏があるんじゃないかとすら思ったわ」

 

…………俺等って、そんなに信用無いの?

 

「ああ、勘違いしないでね?別に私は、貴方達を信用していない訳じゃないの」

 

言い方がマズいと思ったのか、フォローを加えてくれた。

 

「実は私達、依頼で王都に行った事があるんだけど…………」

「へぇ、王都に?」

 

話を切り出してきたソブリナに、俺は聞き返す。

 

「ええ。結構久し振りだったわ」

「そっか…………で?王都はどうだったの?」

 

ラリーが続けて言う。

 

「相変わらず賑わっていたわ」

 

そりゃ、王都なんだから賑わってナンボだ。

 

「私達、王都みたいに賑やかな場所って、結構好きなのよ。だから王都に滞在していた時は、楽しかったわ」

 

ソブリナはそう言った。

 

「でもね………」

 

すると、表情を曇らせたエリスが口を開いた。

 

「1つだけ、気に入らない事があるの………」

「「"気に入らない事"?」」

 

俺とラリーが、同時に聞き返す。

 

「王都の連中………と言っても、士官学校出身の連中なんだけど…………皆エリート面してるのよ。『自分は特別なんだ』とか、『自分は強いんだ』とか言って、自分より下と見なした人を見下すの。おまけに、風潮を利用してハーレムを作ろうとしてるんでしょうけど、ハーレム目的で私達に声を掛けてくるのも居るのよ」

 

うっわ~…………そりゃ、さぞかし苦労しただろうな…………

 

「その時だって、銀髪長身の騎士に絡まれたわ。士官学校の騎士科を首席で卒業したとか、公爵様の息子だとか言ってたわ」

「「……………」」

 

エリスの話に、俺もラリーは言葉を失った。

エリスが言う銀髪長身の騎士ってのは、恐らく彼奴だろうな。あの銀髪ナルシスト野郎め、婚約者居るのに天野達を口説こうとしてた上に、今度はアルディアの3人にも手を出そうとしてたのか。つくづく女癖の悪い奴だな。

 

「でも、貴方達は違う。何時だって気取らず、自然体で………」

 

それから続けるソブリナの話を、俺達は黙って聞いていた。

 

 

 

結局、その話は食堂が閉まる時間まで続いた。





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。