それと、最後の方で、遂に神影とF組の面々との再会のフラグが………!
そのキノコ雲が発生したのは、王都から1㎞離れた地点。
其所には巨大なクレーターが出来ており、地面も焦げていた。
衝撃波によって王都の外壁にも亀裂が入っており、砕け散っている部分も少なくない。
その爆心地には、満足そうな表情を浮かべた2人の青年が、仰向けで倒れている。
その2人と言うのは勿論、古代神影と、その相棒、ラリー・トヴァルカインである。
大の字で寝転がる彼等はボロボロになっていた。
あちこちに傷が出来ており、着ている服も、所々が破れたりしている。
「はぁ……はぁ…………あ~疲れた、満足だ」
息を整えながら、神影はそう呟いた。
今回の手合わせに終止符を打ったのは、先程のキノコ雲を生み出した爆発である。
それが起こった経緯を、簡単に語らせていただこう。
激戦を繰り広げていた2人だが、それなりに体力を消耗していたと言うのもあり、最後の技として、ラリーが全力で『
結果、2人仲良く爆発によるダメージを受け、引き分けに終わったのだ。
「はぁ……はぁ……ククッ……まさか、相棒だけに当てる筈の攻撃に自分も巻き込まれるとはな…………」
そう言って、ラリーは小さく笑う。
そして、僚機念話で神影に話し掛けた。
《……Yo,buddy.You still alive?(よう相棒、未だ生きてるか?)》
《………Yeah(ああ).》
流暢な英語で訊ねるラリーに、神影も英語で返した。
《お疲れさんだな、ラリー》
《ああ、そっちもお疲れ。中々良い勝負だったね》
散々暴れて興奮も収まったのか、ラリーの口調も何時も通りになっていた。
《それにしても、まさか『
《まあ、あのまま大人しく当たりたくねぇからな。当たるくらいなら、お前も道連れにしたかったのさ》
《ククッ………成る程ねぇ…………》
神影からの言葉にそう答え、ラリーは小さく笑った。
《ところでラリー、1つ聞きたい事があるんだが………》
《ん?何だい?》
ラリーがそう言うと、神影は少しの間を開けてから言った。
《満足したか?》
《……………》
その問いに、暫く沈黙するラリー。
そして、フッと笑みを浮かべ、サムズアップした右手を上げて答えた。
《ああ、思いっきり暴れたからね……この平野も、僕自身もボロボロになるまで戦えたんだ……とても、満足だよ………》
そう言うと、ラリーは右手を下ろす。
《そうか、それなら良かったな》
それから2人は、暫く勝負を終えた余韻に浸り、その後、ポーションを使って体力を回復し、改めて自分達が戦った跡を眺め、あまりにも荒れ果てた平野に言葉を失ったのは余談である。
その頃、王都では大騒ぎになっていた。
立て続けに起こる謎の爆発や、王宮の訓練場に着弾した、巨大な魔力弾。そして最後にキノコ雲…………こんな連鎖に落ち着いていられる者など、居ないだろう。
「ううっ……い、一体……何が………?」
王宮にて、衝撃波で吹き飛ばされて壁に叩きつけられたシロナが、ゆっくりと起き上がりながら言う。
「み、皆!無事!?」
何とか立ち上がったシロナは、自分の生徒達に呼び掛ける。
「だ、大丈夫で~す………」
「な、何とか生きてます………」
「此方も大丈夫です」
あちこちから、生徒達の返事が返される。
気を失っている者も居るが、息がある事は確認出来た。
一先ず、自分の生徒達が全員生きている事に、シロナは安堵の溜め息をついた。
「それにしても、あの爆発とキノコ雲は一体…………?」
起き上がった正義が、立ち上るキノコ雲を見ながらそう言った。
その後、沙那や桜花、他に治療魔法を覚えている生徒達が、気絶した生徒や他の負傷者達に治療魔法を掛け、気絶した生徒が起きるのを待ってから、爆心地へと向かうのであった。
その頃、爆心地には未だ、神影とラリーが残っていた。
「さて、ラリー。此処で1つの問題が起こったんだが………」
「"問題"?」
神影が言うと、キョトンとした表情を浮かべたラリーが聞き返す。
「ああ…………コレ、どうする?」
神影が指差したのは、王都の外の平野。
其所は、神影とラリーのガチバトルによって荒れ地と化しており、直径数メートルのクレーターや焦げ目が目立つ上に、神影の
おまけに、ラリーの
それはまるで、月の裏側のような状態だ。少なくとも、普通に通れるような状態ではない。
「王宮の被害はどうでも良いが、流石にコレはな………まあ、自分等でこんなにしておいて言うのも変な話だが」
苦笑混じりにそう言う神影だが、ラリーは余裕そうな表情を浮かべていた。
「心配には及ばないよ、相棒」
「え?」
ラリーから放たれた、まさかの言葉に、神影は間の抜けた声で聞き返す。
「ラリー…………それって、どういう意味なんだ?」
「まあ、見てなって」
そう言うと、ラリーは浮遊魔法を使って浮き上がり、荒れ地と化した平野を見渡す。
「この程度なら、未だ大丈夫かな………」
そう言うと、ラリーは両手を前に出した。
《ラリー、何する気なんだ?》
《簡単な事だよ、相棒。この平野を元に戻すんだ………まあ、修復作業ってヤツさ》
そう答え、ラリーは魔法を発動した。
「"
一方、気絶した生徒達が全員回復したF組の面々は、爆心地の様子を見るために王都の北門へと向かっていた。
「見たところ、どうやら被害を受けたのは王宮だけみてぇだな………ったく、ピンポイントでの攻撃ってヤツかよ」
殆んど被害を受けていない建物を横目に見ながら、航がそう言った。
「にしても、さっきのが魔人族の仕業だと仮定して、王宮だけを狙ったのはなんでだ?さっぱり分からねぇ」
「そうだな………まあ、さっきのが魔人族の仕業だと言う決定的証拠は無い訳だから、一先ず爆心地に行くのが先…………ん?」
航にそう返した正義は、空中に浮かぶ影を見て足を止めた。
「うおっ!?おい正義、急に立ち止まるなよ」
「す、すまない。航」
ぶつかりそうになって文句を言う航に、正義はそう言った。
「何だよ、一体何があるって………え?」
正義の横に出た航は、目を丸くした。
「ま、マジかよ……なんで、彼奴が居るんだよ………!?」
そう言う航の様子に疑問を覚えるF組の面々だが、前方で浮かんでいる人物の姿を見ると、表情を驚愕に染めた。
忘れられない……忘れる訳が無い。
何故なら、前方に浮いている金髪の少年が、山岳地帯にて神影と共に暴力騒ぎを起こし、それより前にも、神影を見つけ出すために、F組総出でルビーンの町に来た時、沙那や桜花を言葉攻めにして、その後、沙那を一時期引き籠り状態に陥らせた、神影の相棒にして、ガルム隊2番機、TACネーム"ピクシー"こと、ラリー・トヴァルカインだったのだから。
さてさて、俺等が大暴れした事によって、荒れに荒れまくった平野をどうするかと頭を悩ませた俺だが、何故か余裕そうな表情を浮かべたラリーが、突然宙に浮かんだと思ったら、何やら魔法を発動させた。
「にしても彼奴、『この平野を元に戻す』とか言ってたけど、んなモンどうやって………うおっ!?」
ラリーが言っていた事の意味が全く分からず、首を傾げていた俺だが、再び起こった地震でフラつき、危うく転けそうになる。
それを何とか持ちこたえて前を見ると、俺は思わず、目を見開いた。
何と、俺等のガチバトルによって、クレーターや焦げ目だらけになっていたり、俺の技によって、あちこち掘り返されてボロボロになっていた平野が、元の状態に戻り始めたのだ。
「……………」
まるで、映像をゆっくり巻き戻しているような光景に、俺は言葉を失う。
「ラリーの奴、馬鹿高い威力の攻撃魔法使えたり、姿や気配を消す魔法使えたりするのに加えて、今度はものを直す魔法か?魔法系の腕なら、ラリーは完璧にチートだな……………多分だが、ラリーと魔法で勝負したら御劔でも勝てないんじゃね?」
何と無く、そんな事を呟いてみる。
そうしていると、思いの外早く、平野は元に戻った。
「大暴れした際に散々魔法攻撃放ったのに、未だこんな魔法を使うなんて…………王国も、惜しい人材を逃がしちまったな」
俺はそう言って、ラリーの受け入れを拒否したと言う王国軍の連中を内心嘲笑った。
連中がラリーを受け入れていたら、当然ながら、こうして一緒に冒険者としての旅は出来なかったが、それでも、散々馬鹿にされてきた奴が、実はトンでもないチート野郎だったとなれば、それを知った連中は腰を抜かすだろう。
1度で良いから、そんな光景を見たり、実践したりしてみたいものだ。
「ねえ、相棒」
すると、この辺りの修復を終えたのか、何時の間にか降りてきていたラリーが話し掛けてきた。
「どうせだから、他の所にも行っておかないかい?僕等、結構あちこちで暴れたからさ」
「………ああ、そうだな」
ラリーの尤もな意見に賛同し、俺はF-35Bを展開して垂直離陸の準備をする。
「あっ、そうだ………ねえ、相棒。気づいてる?」
同じようにF-35Bを展開したラリーが話し掛けてきた。
「………?『気づいてる?』って言われても………何に?」
そう聞き返すと、ラリーはある方向を向いた。
ラリーの視線の先にあったのは、エリージュ王国へ入るための門だった。
平野とは言え1㎞も離れているために、かなり小さくなっているが、壊れた外壁に混じるように聳える門が、辛うじて見える。
「あの門の向こうに、そこそこ強力な反応があるんだ。それも、徐々に近づいてきてる…………数にして、30人以上」
それを聞いて、恐らくF組と王国の騎士団だろうと、俺は予想を立てた。
「まあ、君のお仲間だと思うけど………相棒、どうする?連中が此処に来るのを待つ?」
「…………」
そう聞かれた俺は、少し悩んだ。
ラリーの口ぶりから察するに、F組全員、それから騎士数名が此方に向かってきている。
面倒事になるとは思うが、顔だけチラッと見るのも悪くない。
「ラリー、お前確か転移魔法使えたよな?」
「転移魔法?うん、使えるけど………それがどうかしたの?」
ラリーが不思議そうな表情で聞いてくる。
「何か面倒な事が起こりそうな時、それ使って、俺と一緒にルージュに戻る事って出来るか?」
「勿論!」
自信満々と言った様子で、ラリーは頷いた。
「良し…………なら、それで頼む」
「了解、その時は任せといて!」
そう言って、ラリーは自身の胸をドンと叩いた。
アニメで見るような仕草に、俺はつい吹き出してしまう。
「まあ、それもそうだが……………」
そう言って、俺は門の方を見る。
数百メートル前方に小さな人影が幾つも見えており、それらは徐々に近づいてきている。
新たな特殊能力である『気配察知』を使うと、ラリーが言っていたように、かなり強力な反応を幾つも見つけた。F組の連中と、騎士が数人だ。
連中が此処に来たら、面倒事は避けられなくなるだろう。男子は俺を見た途端に突っ掛かってきそうだ。
だが、そんなものは関係無い。
連中もそれなりに厳しい訓練をしてきているだろうが、此方だって、クラスを離脱してから遊び呆けていた訳ではない。
ある時には盗賊を殺し、またある時にはワイバーンの群れや小型~中型のドラゴンを倒し、またまたある時には、魔物の群れに襲われていたお姫様と護衛騎士団を助けたりしてきたんだ。
仲間も増やして、パーティーランクも最高のSSSにまで上げた。
依頼で魔物を討伐したり、迷宮を荒らし回って、レベルも200に上げた。
もし、男子が襲ってくるなら、簡単に負けるつもりは毛頭無い。此方も全力で抵抗させてもらう。
国への反逆者として殺しに来るなら、此方は使用可能な全戦闘機を投入して徹底的に捻り潰す。
戦闘機が使えなくなったら、
戦争になるなら…………一切の容赦はしない。
「さあ、どうする?勇者共」
近づいてくるF組の面々と数人の騎士達を睨み、俺はそう呟くのであった。
横に並び立つラリーも、『情け』、『容赦』と言ったものを全て捨てた鋭い目でF組の面々と数人の騎士達を睨み、警戒している。
だが、この後俺達は、勇者共とのレベルの差に色々な意味で驚く事になるのだが、そんなの、今の俺達には知る由も無かった。
一応言っておきますと、神影はF組の訓練の内容を知らないので、F組の面々が非常に強いものだと思っています。