「ふむ………」
さて、ラリーにお説教(?)されてから一夜明けたその日、俺はベッドの上で胡座をかき、自分のステータスを確認していた。
名前:古代 神影
種族:ヒューマン族
年齢:17歳
性別:男
称号:異世界人、
天職:航空傭兵
レベル:187
体力:2930
筋力:2740
防御:2880
魔力:1500
魔耐:1900
俊敏性:3000
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機勧誘、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声
レベル90ぐらいの頃と比べて、ステータス値は其々倍以上になっており、俊敏性に至っては、3倍に増えていた。
相変わらず俺、俊敏性の伸びが一番良いんだよな。富永一味のリンチを喰らった時は、コレに助けられたものだ。
それに加えて、特殊能力は3つ、称号が1つ増えた。
それにしても、増えた称号が『死神』って……………もしかして、あれか?『
コレさぁ、下手したら俺、人間辞めてるって事になるんじゃね?ステータス的に、色々と。
つか、特殊能力で最後のヤツ意味分からん。何だよ『拡声』って?何に使えってんだよ?
因みに、他のヤツのステータスは以下の通りだ。
名前:ラリー・トヴァルカイン
種族:ヒューマン族
年齢:18歳
性別:男
称号:追いやられし者、
天職:航空傭兵
レベル:185
体力:2600
筋力:2100
防御:2200
魔力:14000
魔耐:16000
俊敏性:2600
特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』
名前:エメラリア・モルガネード
種族:人型戦闘機(ADFX-01/02 Morgan)
年齢:17歳
性別:女
称号:戦う理由
天職:航空傭兵
レベル:180
体力:2000
筋力:1860
防御:1900
魔力:2100
魔耐:2200
俊敏性:2000
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化
名前:ゾーイ・ファルケン
種族:人型戦闘機(ADF-01 Falken)
年齢:16歳
性別:女
称号:機械仕掛けの女神
天職:航空傭兵
レベル:175
体力:1850
筋力:1700
防御:1650
魔力:1800
魔耐:1650
俊敏性:1900
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化
名前:アドリア・アドラー
種族:人型戦闘機(ADA-01B Adler)
年齢:16歳
性別:女
称号:ロマンティックな愚か者
天職:航空傭兵
レベル:175
体力:2340
筋力:3210
防御:2670
魔力:1350
魔耐:1400
俊敏性:1800
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化
名前:ユリシア・フェリアーネ
種族:人型戦闘機(XFA-33 Fenrir)
年齢:12歳
性別:女
称号:寂しがりな一匹狼
天職:航空傭兵
レベル:155
体力:1200
筋力:1000
防御:1300
魔力:1600
魔耐:1400
俊敏性:1700
特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化
こんな感じだ。てか、『拡声』使えるの俺だけかよ。
ラリーは相変わらず、魔法系に至っては化け物の領域に達している。
まさか、マジで魔力・魔耐が万を超えるとは…………コレでも未だ弱体化してる状態だって言うんだから驚きだ。
もう、コイツが魔人族でも魔王でも驚かない自信がある。
エメルやゾーイに至っては、相変わらずの良いバランスだ。
アドリアは…………やはり怪力だな。筋力がガルム隊の中でも飛び抜けてる。
ユリシアは、ステータス値自体は高いだろうし、バランスも良いのだが、ステータス値がガルム隊の中で一番低いのは、やはり、彼女の幼さ故だろう。
コレが同い年ぐらいだったら、エメルやゾーイぐらいはあったかもしれない。
因みに、それを知った時、結構落ち込んでいたユリシアだったが、ラリーに慰められると直ぐに立ち直り、チョロいと思って内心笑ってたのは、未だ鮮明に覚えている。
ああ、それから言い忘れていたが、ユリシアのTACネームは『リーア』になった。名付け親は勿論、ラリーだ。
ユリシアのコードネームは『Fenrir(フェンリア)』だから、それを少し弄り、女の子らしいTACネームを意識して付けたらしい。
それ最早TACネームじゃなくて愛称じゃないかと思った俺は悪くない筈だ。
…………まあ、俺も人の事は言えないが。
ユリシア本人は、結構喜んでいた。
TACネームが気に入ったのか、それともラリーに付けてもらえたのが嬉しいのか…………まあ、十中八九後者だろうけど。
そんなこんなで、俺達ガルム隊は、レベルもステータス値も、兎に角反則レベルにまで上がってしまった訳だ。
「一気にステータス跳ね上がったな…………」
そう呟き、俺は仰向けに寝転がる。
この世界に転移した頃はクラス内でも最弱だったステータスが此処まで上がるなんて、当時の俺は考えもしなかっただろう。
何せ、その頃は如何にしてクラスの連中に追い付こうかと考えてたからな。
当時の俺にこのステータスを見せたら、どんな反応をするだろう?
過去にタイムスリップして、当時の俺の反応を見てみたいものだ。
「ねえ、相棒」
「ん?」
そんな事を考えていると、ソファーに座っていたラリーが話し掛けてきた。
「どうした?」
起き上がって、ラリーの方を向く。
「僕等がこの国に来てから、結構経ったよね?」
「ああ、そうだな」
大体、1~2ヶ月ぐらい………いや、それ以上か?
「それが、どうかしたのか?」
「うん、それがね?」
「『里帰りをしたい』………だって?」
俺が聞き返すと、ラリーは頷いた。
「うん、どうかな?久し振りに、ルビーンとか、ルージュに行ったりしてさ………ホラ、ルージュの人達とも、長らく会ってないだろう?」
ラリーはそう続ける。
「そうだな………」
ラリーに言われた俺は考えた。確かに、ラリーの言う通りだ。
ルージュの人達とも、長らく会ってない。エスリアさんやオッチャン達が元気にしているか、ちょうど気になってたところだ。
「それに、ルージュの人達にユリシアを紹介したいからね。ガルム隊に新しい仲間が増えたってなれば、きっと喜ぶよ?」
「そうだな…………つーかラリーよ、里帰りとか何とか言ってるが、メインはルージュの皆にユリシアを紹介する事なんじゃねぇのか?」
「あ、バレた?」
俺が訊ねると、ラリーが苦笑混じりにそう言った。
どうやら、当たりのようだ。
「まあ、俺としては別に構わんさ。エメル達だって反対はしないと思う。ただ、1つ問題がある」
俺がそう言うと、ラリーが真剣な表情を浮かべて頷いた。
「ああ、分かってるよ。相棒…………ユリシアの事だよね?」
その問いに、俺は頷いた。
少なくともユリシアは、エリージュ王国に対してあまり良い感情を持ってない。まあ、当然だ。
何せ、村を魔物の群れから救ってハッピーエンドと思ったら、王都に連れていかれて検査され、其処で自分がヒューマン族じゃないと分かるや否や、王都の奴等は手のひら返して化け物扱い。居場所を無くして、あんな山の中で暮らさなければならなくなる。
そして挙げ句の果てには、この前みたいに討伐隊までやって来る始末。
ルージュの人は受け入れてくれるだろうが、そもそもエリージュ王国に行く事自体を渋りそうだ。
さて、どうしたものか…………
「ねえ、相棒」
「ん?」
すると、ラリーが話し掛けてくる。
「その辺り、僕に任せてもらえるかな?」
「…………お前に、か?」
俺が聞き返すと、ラリーは頷いた。
「うん。今のユリシアは、少なくとも僕の事を信頼してくれてる。だから、その辺りの説得もしやすいと思うんだ」
ラリーはそう言った。
確かにラリーの言う通り、ユリシアはラリーを信頼している。
ラリーの話なら素直に聞くだろうし、いざとなったら、ラリーが守るだろう。
「(なら、ラリーに任せた方が良さそうだな)」
俺は頷いて、ラリーの方を見た。
「んじゃ、任せても良いか?」
「うん!」
そう言うと、ラリーは目を瞑って黙ってしまった。
恐らく、僚機念話でユリシアを呼び出しているのだろう。
少しすると、部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」
ラリーがそう返すと、ドアが開いて、白髪の小さな女の子がひょっこりと顔を出した。
ユリシアだった。
「え、えっと………その……ラリーさんが、お話があるって言ってたので………」
「あ~、うん。知ってるよ。ホラ、入っておいで」
そう言って手招きすると、ユリシアは恐る恐る入ってきた。
やはり、このおどおどしたような性格は、仲間同士でも変わらないようだ。
部屋に入ってきたユリシアは、ベッドに座っているラリーの膝の上にちょこんと座った。
一瞬吹き出しそうになったが、それを何とか堪えてラリーに目配せする。
ラリーは頷いて、ユリシアに言った。
「リーア、僕達ガルム隊は、ルージュって町で出来た冒険者パーティーだって事は、前にも話したよね?」
ラリーがそう言うと、ユリシアは頷いた。
てか、もう皆の中でユリシアはリーアって呼ばれてるから、今後はリーアって表記させてもらおうかな。
「はい……えっと……エリージュ王国の町、ですよね?」
「そう」
リーアが言うと、ラリーが頷く。
「実は僕達………近い内に、其所に行こうと思っているんだ」
「えっ…………?」
ラリーの言葉に、リーアが固まった。
それもそうだ。何せ俺達は、
以前ルージュの話をしていた時、その町がエリージュ王国にあるって言った時のユリシアの反応は、今でもよく覚えている。
「つ、つまり………エリージュ王国に、行くって……事、ですよね……?」
「うん、そうなるね」
ラリーが言うと、ユリシアは顔を伏せてしまう。
だが、その辺りのフォローを忘れるようなラリーではない。
「ユリシア、君の気持ちは分かるよ。君を迫害した国なんだ、行きたくないのも分かる」
「……………」
「でもね、エリージュ王国の国民全員が、人間主義って訳じゃないんだ」
その言葉に、ユリシアが顔を上げてラリーを見る。
「考えてごらん?もしルージュも人間主義者しか居なかったら、エメルやゾーイ、アドリアも迫害の対象になるから、僕達がルージュの話をしていた時、彼女等は話に入ってこなかった筈だよ」
ラリーはそう言った。
その通りだと分かっているのか、ユリシアは黙って聞いている。
「つまり、ルージュの人達は、種族なんて気にせず接してくれると言う事さ」
話を締め括るように、ラリーが言う。
「……本当に………」
するも、ユリシアがポツリポツリと口を開いた。
「本当に……私が、行っても……大丈夫、でしょうか………?」
不安そうにラリーを見上げながら、ユリシアは言う。
「ああ、勿論だよ」
ラリーはそう言って、ユリシアを優しく抱き締めた。
まるで、赤子を抱き締める親を見ているような気分だ。
「ルージュの人達も、きっと君を受け入れてくれる。たとえ、この前の騎士団のような奴が居ても、僕が守るよ………だから、信じて」
「…………ッ!」
おーおー、ラリーがスッゲー王子様らしい事を言ってる。
容姿と相まって、やはりコイツが言うと雰囲気出るんだよなぁ………
ホラ、ユリシアが顔真っ赤にしてる。マジで堕ちたね、コレ。
ラリーも罪な男だ。
コレをエメルが見たらどんな反応をするのか、見てみたい気もする。
まあ、そんなこんなで、俺達ガルム隊がルージュに行く事が決定し、俺は女王陛下の部屋へと向かい、その事を伝えた。
最初は驚いていた女王陛下だったが、其所がガルム隊を結成した場所だと伝えると、納得したのか、行く事に反対はしなかった。
姫様が行きたがっていたが、流石に一国の姫を連れ出すのは無理だ。
おまけに、エリージュ王国とクルゼレイ皇国の仲は、あまりよろしくない。
ルージュの人達だけなら兎も角、また騎士団とかに見つかりでもしたら面倒だ。
一先ずお土産と、帰ってきたら相手をすると言う事で納得してもらった。
そして翌日、ルージュを出る時のように、イリナさんやロイク、そして、他にも仲良くなった王都の人達に見送られ、俺達ガルム隊は、俺とラリーはF-15Cを、そして4人は其々の機体を展開し、ルージュに向けて飛び立った。
この話を読んだ皆さんの台詞は、『お前等人間じゃねぇ!特に神影とラリー!』、だッ!!