航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第44話~種族間戦争の詳細~

俺達ガルム隊が、このクルゼレイ城で生活する事になってから、早いもので1週間が過ぎた。

 

あれから俺達は、ルージュに居た頃と同じように、依頼を受けたりしていた。

時折、エメルやゾーイ、アドラーに目を付けたチンピラに絡まれると言うテンプレを体験したり、サキュバス達の娼館を見つけた時に、冗談でラリーに『娼館に行ってみないか』と提案して、ゾーイとアドラーに頬を引っ張られたりした。因みにラリーは、エメルに頬を引っ張られていた。

地道に依頼をこなしている内に、パーティーランクもSSに上がり、レベルも全員100を超えた。

ラリーは、レベルアップと同時に魔法の鍛練もしていたため、魔力が7000を超え、本気でラリーが魔族なんじゃないかと内心疑う時もあった(本人はヒューマン族である事を主張していた)。

その他にも、王都に住んでいる魔族や亜人種、獣人族とも仲良くなり、ルージュに居た頃にオッチャン冒険者達とやっていたように、一緒に騒いだりもした。

城では、女王陛下から姫様の遊び相手をしてやってほしいと頼まれたため、俺が元々住んでいた世界でのお伽噺を聞かせたり、ハリアーや、レベルアップで使えるようになったF-35と言ったV-TOL機での空中散歩をしてやったりしたのだが、コレがまた人気になり、姫様は勿論だが、彼女から話を聞いた侍女や女性騎士さん達からも頼まれた。

その際は、ラリーにも頼んで手伝ってもらった。

 

何だかんだで、俺達はすっかり、クルゼレイ皇国での生活に馴染んでいた。

 

 

 

 

 

「ふむふむ、成る程なぁ~………」

 

そんなある日、俺は姫様の相手をラリーに押し付k………げふんげふん。任せて、1人で図書館に居た。

その理由は、昔のヒューマン族と他の種族との関係を、詳しく調べるためだ。

 

それに関する本を見ると、様々な事が分かった。

先ず、ヒューマン族と他の種族は、元々共存関係にあり、他種族間での交流も盛んで、そのまま結婚すると言う例もあったようだ。

他にも、魔族が暮らしている大陸では、魔鉱石(魔物が落とす魔鉱石とは桁違いの魔力含有量がある)が大量に採れる、俺やF組の面々が居た世界で言う鉱山のような所があり、それを他の種族の元へと輸出したり、他種族の技術を輸入したりと、かなり盛んに貿易を行っていたらしい。

だが、ヒューマン族側のとある国と魔族とでいざこざが起き、それが戦争に発展、今の状態が出来上がったと言う。

 

「(多分だが……いや、間違いなく、この"とある国"ってのは、エリージュ王国の事だろうなぁ…………)」

 

その本をパタンと閉じ、机に頬杖をついた俺は、内心そう呟いた。

魔族との戦争状態、そして人間主義を掲げ、魔族や他の種族は滅ぶべき存在だと教育するような国だ、コレ以外に何処が考えられるだろう?

 

「となれば、魔王討伐ってのはどうなるんだ………?」

 

俺は小さく、此処で生まれた疑問を呟いた。

 

俺等F組がこの世界に召喚されたのは、エリージュ国王に呪いを掛けた魔王を討伐し、王に掛けられた呪いを解くと言うものだ。

 

エリージュ王国の座学の授業で言われた事を考えると、国王に掛けられた呪い云々は嘘っぱちで、俺達は種族間での戦争の道具として召喚された可能性が一気に高まる。

 

クルゼレイ皇国での生活も考えると、エリージュ王国はクルゼレイ皇国を目の敵にしていると予測出来る。

何せ此処は、ヒューマン族と魔族、亜人種、獣人族での共存を実現している国だから、人間主義を掲げ、他種族に対しては排他的な姿勢を取っているエリージュ王国が、この国を良く思わないのは言うまでもない事だろう。

 

其処で考えられるのは、エリージュ王国がクルゼレイ皇国に戦争を仕掛ける事だ。

この国の兵力が何れ程のものかは知らないが、エリージュ王国には勇者が30人以上居る。

連中はチート能力を持っているから、この国が勝てるかどうかは不安だ。

と言うか、負ける可能性の方が高いだろう。

いざとなれば、俺等ガルム隊が出る事になるだろうが、クラスの女子や先生をも敵に回す事になるだろう。

男子は兎も角、出来れば女子や先生を敵に回すのは避けたい。

女子や先生は普通に接してくれたからな。せめて彼女等には、ちゃんとした事実を知ってもらいたい。

まあ、それは男子にも言える事だが…………彼奴等、俺の言う事を聞いてくれるだろうか?

…………いや、考えるだけ無駄か。

 

「はぁ~………」

 

深く溜め息をついた俺は、本を棚に戻して図書館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道行く人達に声を掛けられながら、俺は城へと戻ってきた。

 

「あっ!やっと帰ってきた!」

 

城内に来ると、ラリーの声が聞こえた。

 

「もう、何処行ってたんだよ?君が居ないから姫様達の相手を僕1人でやる羽目になって、大変だったんだからね?」

 

腰に両手を当てて、プンスカと怒るラリー。

 

その背後には、姫様や侍女さん、女性騎士達が居る。

 

「よっ、モテるねぇ色男。ヒューヒュー!」

「ねえ、相棒。それ喧嘩売ってる?売ってるんだよね?良いだろう、買ってあげるよ。幾らだい?言い値で買うし、何なら破滅の煉獄(ルイン・フレア)もおまけで喰らわせてあげるよ?」

 

面白いのでからかってやったら、ラリーが眉間に青筋浮かべて禍々しい魔力のオーラを纏い始めました。

ヤバい、メッチャ恐い。コレが笑顔だから尚更恐い。

 

「ちょ、悪かったよ。だからその魔力のオーラしまってくれ」

 

俺がそう頼むと、ラリーはオーラを引っ込めた。

 

「全く、彼女等の相手を僕1人に押し付けるなんて、酷いよ相棒」

 

オーラを引っ込めたラリーは、溜め息混じりにそう言った。

 

「だから悪かったってば。ちょっと1人で調べものをしたかったんだよ」

「……調べもの?」

 

俺が言うと、ラリーが聞き返してきた。

 

「ああ、調べものだ」

「……もしかして、ヒューマン族と他種族の関係についてかい?」

「………そうだ」

 

コイツ、相変わらず鋭いな。もしや、使い魔的なのを放って俺を監視してるんじゃないだろうな?

 

「そっか……それで、何か面白い情報は得られたの?」

「あ~、面白いかどうかは分かんねぇけど、取り敢えず、F組がこの世界に召喚された理由は、魔王討伐云々ではなく、別の所にあるんじゃないかと言う可能性が高くなったよ。てか、そっちしか有り得なくなってきた」

「ほほう?」

 

俺の言葉に、ラリーが反応した。

 

「それは興味深いね、是非とも詳しく……」

 

ラリーがそう言いかけた時だった。

 

「あっ、ミカゲ様!」

「「あっ………」」

 

ラリーとの話に夢中で忘れていた、姫様の声が近くで響く。

俺の姿を視界に捉えた姫様が、パタパタと駆け寄ってきたのだ。

 

その拍子に、ユッサユッサと大きく揺れるものが2つ………えっ、何がって?それは言わせないでもらいたい。一応、紳士のつもりですから。

 

「お帰りなさい、ミカゲ様!今までどちらに行っていたのですか?ずっとお待ちしておりましたのに………」

 

いや、アンタさっきまでラリーと遊んでたよね?

 

内心ツッコミを入れつつ、俺はラリーの方を向く。

ラリーはニヤニヤと笑みを浮かべて、此方を見ていた。

 

「いやぁ~、どうやら彼女は君にご執心のようでねぇ………彼女、ずっと君の話をしてるんだよ?やったね相棒!お姫様に好かれてるよ!このままお姫様にアプローチされて、結婚しちゃいますフラグが立ったよ!」

「ラリー、フラグなんて言葉何処で習ってきた?後、それ喧嘩売ってんだよな?そうなんだよな?よっしゃ良い度胸だ。その喧嘩買うぞ、幾らだ?」

「まあまあ。君も同じ事したんだから、コレでお相子って事で」

俺が凄むと、ラリーが笑いながらそう言った。

まあ間違ってはいないため、俺もそのようにする。

 

「取り敢えず、相棒が帰ってきた事だし、僕は少し休ませてもらおうかな。それじゃね~」

 

そう言って、ラリーはそそくさと部屋に戻っていった。

それから俺は、図書館帰りで休む間も無く、姫様や騎士達の相手をする事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、疲れた」

 

夕方、部屋に戻った俺は、ソファーにどっかりと腰掛けた。

 

「お疲れ。大変だねぇ、相棒」

「どの口が言うか」

 

隣に座り、ニヤニヤしながら言うラリーに、俺はそう返した。

 

「それで相棒、帰宅直後で悪いけど、図書館で得てきた情報とやらを聞かせてもらえないかな?」

「……ああ、そうだな」

 

そうして俺は、図書館の本に書かれていた内容をラリーに話した。

 

 

 

 

 

 

 

「…………と言う訳なのさ」

「成る程、そんな事が書かれていたんだね………」

 

俺が図書館の本に書かれていた内容を言い終えると、ラリーがそう呟いた。

 

「どう思う?」

「間違いなく、戦争の原因はエリージュ王国だろうね。君が向こうで受けた座学の内容と、学生時代に僕が教えられた、この国からした他種族の見解。そして、人間主義と言う風潮からして、エリージュ王国以外には考えられない」

 

神妙な面持ちで、ラリーはそう言った。

 

「ところで、相棒達はどう言った理由で、此方の世界に召喚されたんだっけ?」

「何か知らんが、魔王を討伐して、国王が魔王に掛けられた呪いを解くってのが目的らしいぜ」

 

ラリーの質問に、俺はそう答える。

 

「今思えば、魔王が呪いを掛けたってのが本当だとして、なんで呪いなんかで済ませたのかねぇ?何なら国ごとブッ潰しちまえば良いだろうに」

「確かにそうだね。僕が魔王なら、間違いなく国ごと消し飛ばしてるよ」

 

俺の呟きに、ラリーがそう返した。

 

「もし、魔王討伐云々が嘘だったら、F組は………」

「『別の目的のために召喚された』………としか考えられないね」

「例えば、戦争のための道具とか?」

「それ以外に何があると思う?」

 

ラリーが、軽く笑いながらそう言った。

 

「そうとなると………せめて、女子や先生には伝えた方が良いかもしれねぇな」

「………?君はクラスメイトに恨みがあるんじゃないのかい?」

「あるにはあるが、それは男子だけだ。女子や先生には無いんだよ」

 

そう言うと、少しの間を置いて、俺は再び口を開いた。

 

「もし、エリージュ王国が近隣国に戦争を吹っ掛けるとしたら、何処にすると思う?」

 

大体の予想はついているが、念のために聞いてみる。

 

「恐らく…………いや、間違いなくクルゼレイ皇国(此処)だね」

 

ラリーはそう答えた。

 

「やっぱ、其々が掲げる主義の違いで?」

「そうだろうね。人間主義を掲げているエリージュ王国からすれば、他種族での共存を掲げているクルゼレイ皇国の存在は、面白くないと思うよ」

 

ラリーは、図書館で俺が思った事と全く同じ事を言った。

 

「因みに、もし戦争が起きた場合、F組の連中が駆り出される可能性は何れぐらいだと思う?」

「ほぼ100%だね。と言うか、逆に駆り出されない可能性を考える方が難しいよ」

 

やっぱり、そうなるよな………

 

そうなる前にエリージュ王国に言って、せめて女子と先生だけにでも伝えるか?

…………いや、今行っても無理か。

ラリーとお忍びでエリージュ王国の王都に行った時でも、天野達が俺を探していたぐらいだ。

未だ一部は俺を探しているかもしれないし、そんな中で俺が姿を表しても、逆に騒ぎになるだけだ。

 

「変に騒ぎを起こさず、男子や宰相に怪しまれずに、女子や先生に事実を伝える方法って、何か無いかな………?」

 

そう言って、俺は頭を抱える。

 

「それは、かなり贅沢な考えだね。こうともなると、考えは中々浮かんでは来ないよ」

「そうだよなぁ~………」

「「はぁ………」」

 

そうして、俺とラリーは揃って溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにその頃、エメル達ガルム隊女性陣は……

 

「「「(今回、出番全く無かったな………)」」」

 

部屋の中で落ち込んでいたとか違うとか………


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