航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第42話~クルゼレイ皇国に到着!報酬は明日ね~

魔物の群れに襲われていた、クルゼレイ皇国の騎士団を助けた俺達ガルム隊は、騎士団の団長であるフィオラ・ハーナイマンさんの頼みを受けて、負傷者の手当て(殆んどラリーがやった)を終わらせていた。

 

「ふう、大体こんなモンかな」

 

汗なんて全くかいていないのに、額の汗を拭う仕草を見せながら、ラリーはそう言った。

ラリーの回復魔法を受けた騎士達は、皆互いに顔を見合わせて驚いていた。

まあ、無理もない。

彼等からすれば、ポーションや薬草を使うか、回復魔法を使うにしても、一人一人に使っていくものだろうと思っていたら、全員纏めて回復したのだ、そりゃ驚くだろう。

 

「改めて見ても、やはり信じられないな。こんな事が出来る者が居るなんて…………」

 

ラリーの魔法によって回復した騎士達を見ながら、サリーさんが言った。

そしてラリーに近づき、話し掛ける。

 

「こんな大勢を一気に回復させるとは驚いたよ。本当に君は、魔術師でも回復師でもないのか?」

「ええ、そうです」

 

サリーさんに聞かれたラリーは、そう言って頷いた。

「そ、そうか……………」

 

あっさり頷かれ、サリーさんは言葉を失っているように見えた。

 

「それにしても………」

 

2人の様子を見ていると、フィオラさんが話し掛けてきた。

 

「貴殿方が纏っているそれは、魔道具の類いだとお見受けしますが、飛行能力を持つ上に、攻撃も可能な魔道具は見た事がありません。一体、それを何処で手に入れたのですか?」

 

興味津々と言った様子で、俺が纏っているA-10を眺めながら、フィオラさんはそう言った。

「あ~、コレはですね………」

 

俺は返答に困った。

此処で馬鹿正直に『異世界の兵器がちょっと姿を変えたものです』なんて答える訳にはいかない。

 

「まあ、その……………どういう訳か最初から使えるもの、とでも言いましょうかね……………実は自分達でも、コレについてはあまりよく分かっていないんですよね」

「そ、そうなのですか………」

 

フィオラさんはそう言いつつ、何処と無く怪訝そうな表情を浮かべている。

取り敢えず、話題をすり替えた方が良さそうだな。

 

「それはそれとして、あの馬車には誰が乗っているんですか?」

 

俺はそう言って、他の馬車が残骸と化している中で一際異彩を放っている1台の豪華な馬車を指差した。

騎士団の人が必死になって守ろうとするぐらいなのだから、多分、国の姫様か、どっかの重鎮辺りだと思うんだが……………

「あの馬車には、クルゼレイ皇国の第一王女、エミリア・シェーンブルグ殿下が居られます」

「ま、マジですか…………」

 

どうやら、トンでもない大物が乗っていたようだ。

会ってみたい気がしなくもないが、流石にそんな無茶を言う訳にはいかない。

 

「(それにしても、王女が乗ってたのか…………正に、異世界×ミリタリー小説でのテンプレだな)」

 

そう思っていると、フィオラさんが話を続けた。

 

「とある事情から別の場所に向かわれ、今は王都に戻るところだったのです」

「成る程…………んで、此処で魔物の群れに襲われたと」

 

俺がそう言うと、フィオラさんは頷いた。

 

「ねえ、相棒」

 

そうしていると、ラリーが近づいてきた。

 

「どうした?」

「もう負傷者達の回復も終わった訳だし、そろそろ出発しない?別に急いでいる訳じゃないけど、何時までも此処に留まってはいられないだろう?」

 

ラリーの言う事は尤もだった。

何時までも此処に留まったって、意味は無い。

俺等の目的地は、こんな平野ではなく、町なんだからな。

 

「確かにそうだな………んじゃ、出発するか」

 

そう言って、エメル達3人を呼び寄せようとした時だった。

 

「あっ、お待ちください」

 

フィオラさんが待ったを掛けてきた。

 

「貴殿方は、クルゼレイ皇国に向かわれるのですよね?」

「ええ」

 

フィオラさんの問いに、俺は頷く。

 

「でしたら、1つお願いが………」

 

そう言ってフィオラさんが持ち掛けてきたのは、王都までの護衛依頼だった。

フィオラさん曰く、負傷した騎士達は皆、ラリーの魔法によって回復したが、この辺りは魔物の出現率が比較的高く、また先程のような魔物の群れに遭遇するかもしれない。

さっきは他の馬車を盾代わりにする事で何とか持ちこたえたが、それを失った今では、自分達は丸裸も同然。

また魔物の群れと出会すような事があれば、今度こそ全滅しかねない。

そのため、王都まで付き添い、守ってほしいとの事だ。

 

「成る程ね………」

「はい………勿論、報酬は出来る限り出させていただきます」

「ふむ…………」

そう言われた俺は、ラリーの方を向いた。

俺が言おうとしている事を悟ったのか、ラリーは頷いた。

 

「僕は構わないよ?あんな言い方したけど、別に急ぎの用って訳でもないからね」

 

ラリーの了承を得た俺は、エメル達3人を呼んで事情を説明する。

その結果、3人共頷いた。

 

「満場一致ってヤツか」

 

そう呟いて、俺は不安そうな表情を浮かべているフィオラさんに向き直った。

 

「分かりました、その依頼を受けましょう」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

パアッと表情を明るくして、フィオラさんはそう言った。

 

その後、騎士団が出発の準備を始め、俺達はステータスを開いて何れだけレベルが上がったのかを確認して、時間を潰した。

 

 

 

 

 

 

 

「お、お待たせしました」

 

約10分後、騎士団が出発の準備を終えた。

 

「んじゃ、行きますか」

 

そうして、俺達は王都に向かって出発した。

 

姫様が乗っている馬車を騎士団が囲み、その周りを、俺達ガルム隊の面々が散らばって歩く。

何かあったら直ぐに対応出来るよう、俺はアパッチを展開した状態で歩く。

数分毎にレーダーで辺りを探るが、今のところ反応は無い。

 

「ミカゲ殿」

 

先頭をのんびり歩いていると、フィオラさんが追い付いて話し掛けてきた。

 

「今更な質問なのですが……………貴殿方は、冒険者パーティーを組んでいるのですか?」

「ええ、そうですが………」

 

本当に今更な質問に、俺は頷いた。

 

「一応お尋ねしますが、パーティー名は………?」

「ああ、パーティー名はですね………」

 

そう言って、俺は僚機念話でラリーに話し掛けた。

 

《なあ、ラリー。パーティー名って普通に言っても良いか?》

《別に良いと思うよ?エリージュ王国じゃないから、普通に『へぇ~』程度で済まされると思う》

《あいよ》

 

俺はそう言って、僚機念話を終えた。

 

「………ミカゲ殿?」

 

すると、此方を覗き込むフィオラさんが目に留まった。

 

「ああ、失礼。ちょっと、ボーッとしてましてね」

 

そう言って咳払いを1つしてから、俺はパーティー名を口にした。

 

「"ガルム"です」

「成る程、"ガルム"ですか………って、え?」

 

すると、フィオラさんがキョトンとした表情を浮かべた。

 

「すみませんが、もう一度言っていただけませんか?」

「だから、"ガルム"ですよ。"ガルム"」

「う……嘘………」

 

俺が答えると、フィオラさんが動揺し始めた。

「パーティー結成後たった1ヶ月で、Sランクへの昇格を果たしたと言われている、あの"ガルム"ですか………?」

 

……………あれ?この人なんで知ってんの?

 

「あ、はい。そうですけど………」

 

何かマズい事でもあるのか?

 

「そ、そうでしたか………貴殿方が…………」

 

そう言って、フィオラさんは歩きながら、何やらブツブツ呟き始めてしまった。

何れだけ呼び掛けても全く答えなかったが、転ばず普通に歩いていたため、そのまま放置する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やっと着いた………」

 

各町を経由しながら王都へ歩くこと2日間。俺達は遂に、クルゼレイ皇国の王都に辿り着いた。

門の近くに立っている兵士にフィオラさんが話を通し、俺達は王都へと足を踏み入れた。

 

 

「おおっ………」

 

王都に入った俺は、感嘆の溜め息を漏らす。

 

町は、エリージュ王国の王都を上回る程の活気を見せている上に、長く尖った耳を持つエルフや、背が低いドワーフと言った亜人種や、上半身は美女、下半身は蛇のラミアや、際どい衣装を身に纏ったサキュバスと言った魔族が、白昼堂々と町を歩いている。

宰相が言ってたのとは全くもって違っていた。

 

「エリージュ王国め、言ってるのと現実が全く食い違ってるじゃねぇかよ……………何が『魔族や亜人種は滅ぶべき存在』だっつーの。皆、普通にヒューマン族と変わらない生活してるじゃねぇか」

 

城へ向かっている間、魔族や他の亜人種が気さくに話し掛けてきてくれると言う光景に、俺はエリージュ王国の座学で聞いた、亜人種や魔族に関する情報と現実のが食い違っている事に悪態をついていた。

 

「エリージュ王国……………と言うか宰相は人間主義だからね。君以外の勇者達にも、『亜人や魔族は敵だ!』とか言ってると思うよ?」

 

俺の呟きに、ラリーがそのようにコメントした。

 

男子は兎も角、女子…………特に天野や雪倉や白銀、そして先生には、変な道を進んでほしくないな。

世話になっただけあって、敵対する事になればやりにくくなる。

そうして暫く歩いていると、俺達は城に到着した。

 

「此処で、護衛任務は終わりですね?」

「ええ。此処まで本当にありがとうございました」

 

そう言って、フィオラさんは深々と頭を下げた。

 

「いえいえ、別に構いませんよ」

 

俺はそう言って、手をヒラヒラ振った。

 

 

それから少し話したのだが、報酬を渡すのは明日と言う事になり、俺達は王都の宿に泊まる事にした。

フィオラさんに宿の場所を教えてもらい、その宿に着くと1泊分の宿泊費を払い、食事を摂った後、部屋に入って直ぐに眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうでしたか、ガルムの方々が………」

「ええ。彼等が来てくれなかったら、私達は間違いなく、あの場で全滅していました」

 

神影達が宿で休んでいる頃、女王の部屋では、ナターシャがフィオラからの報告を受けていた。

娘や他の騎士達の生存を知らされたナターシャは安堵の溜め息をついたり、ラリーが多数の負傷者達を1度に回復させた事を聞いて驚いたりと、ナターシャの反応は、フィオラの話によってコロコロ変わった。

 

 

そして、話題は神影達ガルム隊についてのものに変わる。

実を言えば、ナターシャからすればコレが本題のようなものなのだ。

 

「それで、フィオラから見た彼等はどうでしたか?」

「我々を容易く葬れるような力を持っていますが、決して自惚れず、人柄的にも好ましい方々です」

「そう………」

 

ナターシャは小さくそう言った。

 

「ところで陛下、あれからエリージュ王国の様子は……………?」

「…………………」

 

フィオラの問いに、ナターシャは俯いた。その反応からフィオラは、あまり良い状況ではないと言うのを悟る。

そもそも、神影達F組がこの世界に召喚された理由である戦争が起こったのは、エリージュ王国側に原因があるのだが、それはまた何時か、語る時が来るだろう。

 

「出来る事なら、彼等を此方側に引き込みたいのですが……………あまり下手な手段を使おうものなら…………」

「ええ………」

 

ナターシャの言葉は続かずとも、何が起こるかは分かりきっていた。

 

「兎に角明日、彼等を謁見の間へとお連れしなさい。彼等とは1度、詳しく話をしたいのです」

「了解しました」

 

そうして、フィオラは王室を後にした。

 

 

 

ナターシャのみとなった部屋には、彼女の溜め息が小さく木霊していた。




ところで、航空機関砲発射のコールって、Fox3なのでしょうか?それとも『Guns Guns』なのでしょうか?

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