航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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今回、神影とファルケン達の和解にリーチ(?)を掛けます。


第36話~笑わねぇよ、理由ねぇもん~

「うへぇ~………」

 

さてさて、盗賊達をアパッチで1人残さず肉片にしてやった俺は、この事件の黒幕とも言えるコアン親子に容赦無いリンチ攻撃を加えるラリーを見て唖然としていた。

まさか、あのラリーがこんな豹変ぶりを見せるとは……ラリーも、学生時代は苦労してたんだな………

 

ガルゼンとか言うオッサンが突っ込んだ瓦礫の山を、俺は呆然と眺めていた。

突っ込んだ衝撃で瓦礫が舞い上がり、やがて落下する。

コレ、どっかで音を聞き付けた兵士とかが来たりしないよな?今の状況的にはマジで勘弁だぞ?説明めんどくさいし。

 

「え~っと………ラリー?」

 

俺は、ラリーにおずおず話し掛ける。

あんな物凄い勢いで怒ってたんだから、多分それが俺にも向けられるんじゃないかと内心ビクビクしながら話し掛けたのだが………

 

「ああ、ゴメンね相棒。見苦しいもの見せて」

 

………案外、普通だった。と言うか、何時ものラリーに戻ってる。

さっきまでキレまくって、コアン親子にリンチ攻撃を喰らわせてたのが嘘みたいだ。

 

「あ、いや。別に良いんだが………あれ、どうすんの?」

 

俺はそう言って、顔面ボコボコになった状態で意識を失っているゴルドと、ガルゼンが突っ込んだ瓦礫の山を指差して言った。

 

「どうするも何も、放っておけば良いよ。こんな奴等、助ける価値も無いからね」

「さ、さいでっか………」

 

非情極まりない言葉に、俺は表情をひきつらせた。

あのラリーがこんな台詞を吐くなんてな………ホント、このコアン親子はラリーに何をしたのやら。

 

「あ、そう言えば」

 

俺はそう呟いて、エメル達の方を向いた………のだが

 

「べふっ!?」

 

振り向いた瞬間、思いっきり吹き出してしまった。

 

「(な、何つー格好してんだよコイツ等!?)」

 

改めて見ると、3人はトンでもない格好をしている。

何と、胸と腰にボロ布を巻き付けただけと言う格好なのだ。

まるで、前に殲滅した黒雲に捕らえられてた女性達のような格好だ。

 

3人は恥ずかしがって体を縮こまらせているのだが、その仕草が何とも破壊力抜群だ。

手も縛られているから尚更だしな。

………って、そんな事言ってる場合じゃねぇんだよな。

 

「な、なあ………一応聞くんだが………服は?」

「分からないわ。気がついたらこんな格好で、あの洞窟の奥にある牢屋に閉じ込められていたのよ」

 

俺の問いには、エメルが答えてくれた。

それから俺は、ラリーに3人の手を縛っている縄を解いておくように頼み、洞穴の中に入ると、左の膝にあったライトで中を照らし、3人の服が無いかを探す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、3人の服は何処を探しても見つからなかった。

洞穴の中には無かったため、盗賊達のアジトらしき家に行って、気絶してるガルゼンを蹴り飛ばし、瓦礫を退かしてあちこち探してみたのだが、やはり無かった。

恐らく、3人は何処かで盗賊に襲われ、気絶させられたのだろうが、その際に衣類を剥ぎ取られ、衣類は其所に捨てられてしまったのだろう。

 

「だとすると、町に行って調達してくるしか無いだろうな………」

 

盗賊達の家が木造だったため、かき集めてからラリーに起こしてもらった火を眺めながら、俺はそう呟いた。

 

因みに、今の3人には、ラリーや俺が持っていた服を着せている。

 

エメルはラリーが着ていた上着を、ファルケンとアドラーには、収納腕輪に入れていた俺の学ランや、カッターシャツを羽織らせている。

 

「そうだろうね。でも、この時間に開いてる店は無いだろうから、今日は此所で、夜を明かす事になりそうだ」

 

家の破片を火にくべながら、ラリーがそう言った。

 

「ところで、盗賊とかコアン親子とかの件はどうする?」

「そうだねぇ………」

 

俺が訊ねると、エメルの隣に座っているラリーはどうでも良さそうに、ボロボロになった状態で縛られているコアン親子の方に顔を向けた。

気絶していた2人は、俺が瓦礫を集めている時に目を覚ましてギャーギャー喚き始めたため、ラリーが"口封じの魔法"を掛けて黙らせている。

「まあ、彼奴等はタロンの長官に引き渡して、何とかしてもらおう」

 

あっ、コイツ面倒だからって後始末を長官に押し付けるつもりだな。

あまりいけ好かない人だが、この時ばかりは素直に心の中で謝るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しすると、エメルは眠ってしまった。

盗賊達の死体は放置しているため、魔物が匂いを嗅ぎ付けてやって来ないかを見るため、ラリーは席を外している。

そのため、この火の周りには、眠っているエメルと俺。そして、ファルケンとアドラーが残されていた。

 

「(さて、どうしたものか………)」

 

気まずそうに座っている2人を見ながら、俺は内心そう呟いた。

2人は俺を嫌ってたし、今はストッパーであるエメルは眠っているし、ラリーも居ない。2人が憎まれ口を叩くには、絶好のシチュエーションだ。

もう逃げ場は無い………なら、言いたいだけ言わせてやる。この1週間、散々言われたんだ、もう慣れちまったからな。

さあ、どっからでも来やがれってんだ!

 

 

「あ、あの………」

 

内心で身構えていると、ファルケンが話し掛けてきた。

 

「おう、どうした?」

 

そう言いながら振り向くと、ファルケンとアドラーが並んで正座している。

かなり神妙な表情を浮かべていた。

 

「………?何だ、何時もの憎まれ口はどうした?」

「「……………」」

 

試しに、挑発気味にそんな事を言ってみるが、やはり、反応は無い。

どうやら、彼女等の目的は憎まれ口を叩く事ではないらしい。

 

だが、2人は相変わらず何も言わないため、此方としてもやりにくい。

こう言う時にフォローしてくれるエメルは既に寝てるし、ラリーも周辺の探索をしてるから居ない。

 

「(やりにくいなぁ……また一段と…………)」

 

内心でそう呟く。

何時もならズケズケとものを言う2人だが、今日は矢鱈としおらしい。

普段から取っ付きにくい2人だったが、今回のも、また面倒だな。

さて、どうするべきか………

 

「その、えっと……」

 

そうしていると、ファルケンが口を開くが、何を言えば良いのか分からないらしく、俺に視線を向けては直ぐに逸らす。

「はぁ……」

 

俺は溜め息をつき、2人に視線を向けた。

 

「お前等の服、明日ソッコーで買いに行くからな」

「「えっ………?」」

 

俺がそう言うと、2人は目を丸くした。

 

「いや、だから服だよ、服。まさかとは思うが、そんな格好で出歩きたいってのか?」

「「…………ッ!?」」

 

そう言ってやると、2人は顔を真っ赤に染め上げる。

 

「な、何を言うのですか!エッチ!変態!!」

「へいへい、どうとでも言いやがれ」

 

顔を真っ赤にして叫ぶアドラーに、俺はそう言い返してやった。

 

そうだ、それで良い。何時までもしおらしくされてたら居心地悪いからな。

 

「………フッ」

「………何が、可笑しいのですか?」

 

軽く笑っていると、ファルケンがジト目を向けてくる。

 

「いやいや、急に元気になったなと思ってさ」

 

そう言うと、2人はハッとした表情を浮かべる。

 

「まあ、そうしてりゃ良いと思うぜ?何時までもあんな葬式みたいな雰囲気出されたら、俺としては居心地悪くて堪らねぇからな」

「「……………」」

 

俯いて沈黙する2人を余所に、俺は瓦礫を幾つか拾って火に放り込む。

ラリーの奴、そろそろ帰ってきてくれねぇかなぁ………

 

「………私達を、笑わないのですか……?」

「はあ?」

 

不意に、ファルケンが口を開いた。

 

「なんでそうなるのさ?別に笑わねぇよ、理由ねぇし」

「ですが、私達は!」

 

直ぐ傍でエメルが寝ているのに、ファルケンは声を張り上げる。

 

「くだらない理由で貴方を見下し、蔑んだ!貴方が何れだけ歩み寄ろうとしても、突き放した!それでこんな無様を晒しているのですよ!?」

「だから何さ?」

 

俺がそう言ってやると、捲し立てるファルケンの勢いが弱まった。

 

「何故お前等に気に入られなかったのかは知らねぇが、歩み寄ろうとしたのは俺の意思だ。別に気にするモンでもなかったんだぜ?」

「で、ですが私達は………貴方に対して、あんな暴言を………」

 

ファルケンに続く形でアドラーが言った、"暴言"と言うのは、俺に『1番機を降りろ』と言った事だろう。

 

「気にしてねぇよ、あんなモン。俺がお前等と出会う前に受けてた仕打ちと比べりゃ、可愛いモンだ」

「……私達と、出会う前………?」

「そうだ。それ程昔って訳でもないがな」

 

俺は頷いて、2人に俺が今まで、F組の男子からされてきた事を全て話した。

異世界から"勇者として"召喚されたものの、称号が勇者ではなかった上にステータスも最弱で、それ故国では荷物扱いされ、男子達から"稽古"と言う名のリンチに遭った事も………

 

「それと比べりゃ、あんなの大したモンじゃねぇからさ」

「「………ッ」」

 

そう言うと、2人が目を見開いて俺を見た。

 

「さあ、火の番は俺がやっとくから、お前等はさっさと寝ろ」

 

そう言うと、尚も何か言おうとする2人を無視して、俺はパチパチと火の粉を散らす火を、ただひたすら見ていた。

すると、2人は諦めたのか静かになり、そのまま眠ってしまった。

 

そして俺は、周辺の探索を終えて戻ってきたラリーに明日の予定を伝え、後は適当に駄弁って夜を過ごした。


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