さて、森の中へと突っ込んだ俺は、木々の間をすり抜けながら森の中を爆進していた。
轟音に驚いて飛び出してくる魔物をちらほら見かけたが、全て無視して森の中を飛び回る。
愚かにも邪魔をしようとする魔物は、M61バルカン砲による掃射攻撃を喰らわせて肉片にしてやった。
ドロップアイテムである魔鉱石が落ちるが、それに構ってる暇は無い。
欲しけりゃくれてやる。拾えるモンなら拾ってみやがれ。
《相棒、聞こえる?》
すると、ラリーから念話が入ってきた。
《どうした?》
《後10分ぐらいでタロンの町に着くんだけど、そっちはどう?》
《未だ着いてない。取り敢えずタロンの町上空に来たら、降りずにそのまま南西にある森に向かってくれ》
《了解》
そうして念話が切れる。
そのまま少し飛び回るものの、何処を飛んでも同じ景色だ。
「クソッ、視界が悪い………やっぱ上空から行くしかねぇか!」
そう悪態をつくと、俺は急上昇して葉っぱの天井を突き破った。
エアインテークに葉っぱが入るかと思ったが、幸運にもそのような事態にはならなかった。
俺はある程度の高度を取ってから水平飛行に移り、森全体を見渡す。
すると、何やら向こうに、洞窟らしき穴と家が見えた。
「あれだな………」
俺は此所で、F-14Dから別の機体に変更する事に決め、航空兵器のリストを開く。
対地戦闘になるだろうから、火力や防御力の高いA-10がベストだとは思うが、あれは、この場においては大きすぎる上に小回りが利かない。
F-117Aはステルス機能を持っているが、それもはっきり言えば意味が無い。
だが、何も攻撃機に拘らなくても良い。何故なら、小回りが利いて、対地戦闘能力も高い航空兵器があるから………
………そう、"攻撃ヘリ"である。
「
そう叫ぶと、F-14Dが光を放って消え、その次の瞬間にはAH-64Dが展開される。
両肩には、頭上を跨ぐような形のパーツが付けられており、そのパーツに、バリバリと大きな音を立てながら回転している大きなメインローターが繋がれている。
そして、右腕には30㎜機関砲、"M230A1"が装着される。
腰に装備されているスタブウィングには、AAMと4AGM、そして、ロケットランチャー発射ポッドが付けられている。
両足の踝には、実機なら1基だけであるテールローターが1基ずつ、計2基付けられている。
2基付いているのは、片足だけに装着されるのはアンバランスだからか?じゃあ零戦の機体後部みたいに、腰に付けたら良いと思うんだがな………
「(まあ、今はそんな事どうでも良いか)」
この場において、テールローターの数が違うなんて、些細な事だ。
そんなものを心配してる暇があるなら、3人の無事を祈らないとな………
俺は、3人が未だ穢されていないのを信じて発進し、超過禁止速度ギリギリのスピードで急行しようとした。
その時、あの声が聞こえてきた。
《お待たせ、相棒》
この牢屋に閉じ込められてから、何れ程経ったのだろう?
牢屋に人が来る気配は感じられないし、ミカゲやラリーが来てくれるような感じもしない。
「………私達に、愛想を尽かしてしまったのでしょうか………?」
突然、そんな縁起でもない事を言い出すファルケンに、私は首を横に振りながら言った。
「そんな事は無いわ。ミカゲもラリーも、必ず来てくれる。だから信じて待つのよ」
そうは言うものの、実は私も不安だ。
自分達が何処に居るのかを言わなかったから、今頃心配して、国中を飛び回っているかもしれない。
こんな事になるなら、盗賊に襲われた時に場所だけでも伝えて、助けを求めるべきだったわ………
「(って、何を弱気になってるのよ私は!此所で諦めたら、何もかも終わりじゃない!)」
私は頭を振りながら、内心で自分に言い聞かせる。
「(タイムリミットは、連中がやって来て私達を犯すか、奴隷商人か何かがやって来て引き渡されるまで………)」
それまでに、ミカゲ達が………
「よお、お嬢さん達」
………どうやら、手遅れだったみたいね。
牢屋にやって来た数人の男が、格子の扉を開ける。
中に入ってきた1人の男が、手に持っていたナイフを私達に向けてこう言った。
「此処からは歩いてもらわなければならねぇからな、一応、足の縄だけは切ってやるよ。ただし、其処で騒いだらどうなるか………分かってるよな?」
「くっ………」
戦闘機としての力を封じられている上に、手を縛られている今の私達では、この男達に襲われでもしたらひとたまりもない。素直に頷くしか無かった。
そして、私達の足を縛っていたロープが、男によって切られる。
「さあ、立って俺等と来な。新しいご主人様がお待ちかねだぜ?」
ふざけるな、ご主人様なんて要らない!
私達はガルム隊のメンバーで、これからも、ずっとそうなんだから!
奴等に向かって、そう叫びたくなる。でも、叫んだところで何も変わらない。
「いやぁ~、こんな別嬪3人も独り占めなんて、コアンの旦那が羨ましいなぁ」
「この3人、引き渡した後は父親と息子に犯されてヒィヒィ言ってるだろうぜ」
「そりゃ言えてるなぁ、ギャハハハハッ!」
私達を囲んで歩いている男達が、そんな下品な話で盛り上がる。
ファルケンとアドラーは、自分達に訪れる最悪な未来を想像したのか、顔を真っ青にしている。
「(ミカゲ、ラリー……ごめんなさい…………)」
私は内心で、私達を必死になって探してくれているであろう2人に謝った。
そして、洞穴から外に出ると、1台の馬車が停まっており、その傍に2人の男が居た。
男の1人は、金持ちである事をアピールしたいのか、矢鱈と装飾品が付けられた服に身を包んでいる。初老の肥満男性だ。
「(こんなのに抱かれたい女なんて、1人も居やしないわよ)」
その男性を見た私は、内心で口汚く吐き捨てた。
もう1人は、盗賊達の話からして、その男の息子と見て間違いないだろう。
やはり肥満体型で、オークみたいな顔をしている。
私達を舐め回すようにして見ているのが気に入らない。
「コアンの旦那に坊っちゃんよ、お望みの品を持ってきたぜ」
盗賊の1人がそう言う。
「うむ、ご苦労」
「おおっ、凄い!3人共巨乳じゃないか!」
偉そうな態度で言う男性の隣で、その息子が興奮して言った。
「ねえ、パパ!早く3人を連れて帰ろうよ!早くヤりたいんだ!」
「まあゴルドよ、落ち着け。報酬を渡すのが先だ」
ゴルドと呼ばれた息子を宥めた男が、懐から取り出した袋を渡す。
「金貨40枚だ」
『『『『『うひょぉ~~っ!』』』』』
その袋に入っている報酬を聞いて、歓声を上げる男達。
それを睨んでいると、ゴルドが私達に近寄ってきた。
「これから、パパとぼくちんが、君達のご主人様だからね。ちゃあ~んと、ご奉仕してね~?」
「「「…………」」」
何て憎たらしい奴なのかしら。
背は低いし、デブで不細工。表情もだらしなく、鼻の下を伸ばして全く品が無い。ミカゲやラリーの方が何億倍も紳士的だわ。私達の体を見ても、こんな反応はしなかったもの。
こんな最低最悪な、醜い男に抱かれる?ご奉仕?ふざけるな。
ミカゲやラリーにする方が良いわ。
そうしている内に、取引が終わったらしい。
2人が、私達を馬車に連れていこうと手を伸ばした、その時だ。
「~~~ッ!!」
突然、森の中から銃声が響き渡り、オレンジ色の光の粒が飛んできた。
その光の粒は馬に叩き込まれ、馬は悲鳴を上げて倒れ込む。
それでも尚、光の粒は飛んできて、今度は馬車を木っ端微塵にした。
「な、何だ!?何が起こってんだよ!?」
「何処から攻撃してきやがった!?」
「ちょ、どうなってるんだよパパ!?」
「わ、私に聞くな!」
突然の攻撃にパニックを起こす盗賊達。
私達も、何が何だか分からない。でも、相手側は待ってくれないらしい。
突然、私を囲んでいた盗賊達が浮き上がり、家の方へと吹っ飛ばされたのだ。
「い、一体……何が…………?」
アドラーが呟いた時、何処からか声がした。
「やれやれ、こんな粗末なものしか用意しないなんて、流石は盗賊だね。最早、社会のゴミだよ。そんな手で僕等の僚機達に触れないでもらいたいね」
そんな声が聞こえるが、何処を見ても声の主は見えない。
でも、誰なのかは分かる。
私が想いを寄せている、彼が来てくれた。
「ラリー、其所に居るの?」
私は、虚空に向かってそう言った。
すると、それに答えるかのように、私達の目の前に、金髪にエメラルドのように鮮やかな緑色の瞳を持つ美少年が現れた。
「ああ、エメル。僕は此処に居るよ」
そう言うと、ラリーは私の頬に手を添えた。
「おいエメル!俺も忘れてねぇよな!?」
そんな声が響いたかと思うと、背中に巨大な何かを背負ったミカゲが駆け寄ってきた。
どうやら、森の中から銃撃を喰らわせたのはミカゲらしい。
「遅くなってすまねぇな。僚機念話が使えなかったから、場所の特定に手間取っちまった………そのお陰で、お前等にこんな思いをさせちまった………本当に、すまねぇ」
そう言うと、ミカゲは頭を下げる。
私は、首を横に振りながら言った。
「良いのよ、ミカゲ………ありがとう、助けに来てくれて」
私がそう言うと、ミカゲは頭を上げた。
「大事な僚機が拐われたんだ、助けに行くのは当然だろ」
そう言って、ミカゲはファルケンとアドラーに目を向けた。
「ファルケンとアドラーも、怪我はねぇか?」
「は、はい……」
「わ、私も……大丈夫、です………」
散々冷たく接したのに、尚も自分達を心配するミカゲに戸惑っているのか、2人はしどろもどろになりながら答えた。
「そうか………」
そう言うと、ミカゲは2人の頭に手を置いた。
「コレはエメルにも言ったんだが………遅くなってすまねぇ。お前等に言われたように、1番機失格かもしれねぇな」
自嘲するようにそう言って、ミカゲは苦笑した。
「だがな………せめて今だけは、1番機面させてくれ」
そう言うと、ミカゲは盗賊達の方へと向き直った。
「さぁて……テメェ等、よくもまあ俺の僚機達に酷ぇ事してくれやがったじゃねぇかよ………もう許さねぇぞ………………テメェ等皆殺し確定じゃゴラァ!!」
ミカゲが怒鳴ると、背中に背負っていた巨大な何かが、ミカゲの頭上に移動し、回転する。
次第に強い風が吹き荒れ、ミカゲが地面から離れた。
「(確か、コレって………攻撃ヘリ……?)」
私は以前、ミカゲが『アパッチ使いたい』とかボヤいていたのを思い出す。
「テメェ等に絶望と残虐な死を与えてやるよ……この曲と共になァ!!」
すると、何処からか大音量の音楽が流れ始めた。
「"ワルキューレの騎行"だ………さあ、テメェ等!恐れ戦け!!絶望を感じて、何も出来ぬまま散っていけぇぇぇえええええッ!!!!」
バリバリと大きな音を立てながら空へ舞い上がったミカゲが、腰の小さな翼からロケット弾を撃ち出す。
逃げ惑う盗賊達だが、殆んどがロケット弾の餌食になって死ぬ。
「さて、僕もちょっとばかり殺らせてもらおうかな?」
そう言うと、さっきまで私の傍に居たラリーが、ロケット弾の爆発の余波で吹っ飛ばされた2人の盗賊を見る。
「アパッチ・ロングボウ!」
そして、ミカゲと同じ攻撃ヘリを纏ったラリーも舞い上がり、右腕の機関砲で2人を撃ち殺した。
それからも、騒ぎを聞き付けた他の男達が家から出てきて、その場の惨劇を見てパニックを起こす。
その間に、ミカゲやラリーから機関砲による掃射攻撃や、ロケット弾、空対地ミサイルを喰らって次々に叫びながら死んでいき、残りはコアン親子になった。
「あわわわ………」
「な、何者なんだコイツ等は!?」
盗賊達の死体に囲まれた親子は、ガタガタ震えている。
そんな2人に、ミカゲとラリーがゆっくり歩み寄った。
「ら、ラリー!?なんで君が!」
ゴルドがラリーを指差して叫ぶ。
「なんでも何も、僕が其所に居るミカゲや、君達が連れていこうとしていた彼女等と一緒に冒険者をやっているからに決まってるじゃないか。そんな事も分からないのか?クソッタレの豚野郎」
ラリーがいつになく、口汚く相手を罵る。
「それでラリー、コイツ等どうすんだ?ブッ殺すか?」
「ひっ!?」
ミカゲが機関砲を向けると、コアン親子は怯える。
「さあ、どうしようねぇ………」
そう言うと、ラリーはゴルドの顔を蹴り抜いた。
「ぶごっ!?」
顔を蹴られたゴルドは、豚のような悲鳴を上げて後頭部を地面に打ち付けた。
父親も同じように顔を蹴られ、地面に後頭部を打ち付けた。
「コイツ等には、士官学校に居た時から嫌がらせを受けていたからね、その恨みを晴らさせてもらうよ」
そう言うと、ラリーは両手を握り締めた。
何やら光みたいなものが包んでいる事から、魔力を纏っていると容易に想像出来た。
「ま、待ってよラリー。僕達、友達じゃないか。同期だよ?」
すると、ゴルドが往生際悪く命乞いをし始めた。
「友達?全盛期からくだらない嫌がらせをした上に、僕が力を失うと余計に調子に乗って酷い嫌がらせをした君が友達?馬鹿じゃないの?頭に蛆でも涌いてるの?それに、同期相手でも手加減する気は無いね」
冷たく突き放すラリー。でも、ゴルド達は諦めず、説得を続ける。
「ぼ、僕達に良い事をしておくと、君に良い事があるかもしれないんだよ!?ほ、ホラ!"情けは人のためならず"と言う言葉があるじゃないか!」
「そ、そうだ!お、お前が望むなら……お、女を好きなだけ見繕ってやるぞ!」
そう言う親子だが、ラリーが聞く耳を持つ訳が無い。
「さっきから黙って聞いてりゃギャーギャー五月蝿ェんだよ!このゴミ共が!!」
「がはっ!?」
「ぶげっ!」
普段の優しげな口調とはうって変わって、乱暴な口調になったラリーが、2人を殴り付けた。
あの様子だと、力のリミッター完全に外してるわね。手加減無し状態だわ………
「"情けは人のためならず"だァ!?テメェに掛ける情けなんざ
過去に受けた嫌がらせの数々を叫びながら、ゴルドを兎に角殴り続けるラリー。
頬や目、鼻、口、時には頭にも拳が振るわれ、ゴルドは完全に意識を失っていた。
「チッ……もう気絶しやがったか、ゴミが!!」
そう言って、ラリーはゴルドの父に目を向ける。
最早説得は通じないと悟ったのか、ゴルドの父はラリーに怒鳴り散らした。
「ま、待て!私を誰だと思っている!?ガルゼン・コアンだぞ!コアン家の伯爵に拳を向けるのか!片田舎育ちな平民の分際で!」
「Shut the hell up,you fucking basterd(五月蝿ェ!黙ってろクソ野郎)!」
ラリーはガルゼンを上回るような怒号を森一帯に響かせる。
そして、一際強い光を手に纏わせた。
「Fuck off(くたばれ)!」
その一言と共に放たれた拳は、ガルゼンの顔面に真っ直ぐ叩き込まれた。
吹っ飛ばされたガルゼンは、ミカゲのミサイル攻撃で木っ端微塵になり、最早瓦礫の山と化した、盗賊達のアジトらしき家に突っ込んだ。
「「「……………」」」
あまりにも滅茶苦茶な光景に、呆然とする私達。
ただ、そんな静かな空間に………
「この豚親子の場面から、完全にラリーの独壇場になっちまったな……」
そんなミカゲの呟きが、小さく響いていた。
蹂躙してやりました。
と言っても描写が足りなかったかもしれませんが………やはり、こう言う描写って難しいなぁ………
あっ、それからですが、支援を申し出てくださった、シュバルツ01さん、アサルト01さん、ダガー1さん、ありがとうございました。
報酬は弾ませておきますね。遠慮なく受け取ってください。(大量の金貨が入った袋や高級酒の瓶が入った箱など)ドサッ
え?異世界人のラリーが英語を使ってた?
………(目を逸らす)