航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第30話~お忍びで王都へGO!~

タロンでの依頼を解決し、ファルケンとアドラーがガルム隊に加わってから、早いもので1週間が経過した。

 

あれから俺は、何とか仲良くなろうと2人に歩み寄ってみたのだが、やはりと言うか何と言うか、対応は冷たい。

試しに、アドラーの見た目の事について怒っているのかと聞いてみたのだが、意外な事に、答えは"NO"だった。

なら、一体何故、自分への対応が冷たいのかと聞いてみたのだが、答えてはくれなかった。

 

これから共にあちこち飛び回る仲間になったんだから、俺としては仲良くしておきたいのだが…………何故、こんなにも嫌われているのやら。

 

 

 

 

 

「………難しいよなぁ、あの2人は」

「そうだね……」

 

朝食後、泊まっている宿の一室で、俺とラリーは溜め息をついた。

「ねぇ、相棒。一応聞くけど、アドラーの見た目の事以外で2人の気に障るような事をした覚えは?」

「いや、ねぇな」

 

その質問に、俺は首を横に振る。

不慮の事故でラッキースケベ、なんて展開も起こらなかったし。

話す時だって失礼な事を言わないように気を付けてたし、つーか、避けられてる感じだったし。

 

「歩み寄ろうとしたけど、その態度が気に入らない……ってヤツかな………ホラ、仲良くなろうと意識しすぎるあまりに卑屈になってしまうとか」

「………君が誰かにペコペコしてる姿なんて、想像出来ないね」

 

言われてみれば、確かにその通りだ。俺でさえ想像出来ない。

あまりペコペコしすぎて舐められるのも嫌だから、言う時はガツンと言うタイプだからな、俺。

 

「はぁ……この1週間、あの2人にあしらわれまくって、メンタルが結構ズタボロなんだよなぁ」

 

2、3日前にある依頼を受けて、その際に俺よりエメルが活躍した時なんて、ファルケンがこう言ってたからな………

 

 

──貴方なんかより、お姉様(エメルの事)の方が1番機に向いていますね……………いっそ、1番機を降りられては如何ですか?──

 

 

あの言葉は結構グサリと刺さったよ、ええ、ホントに。

 

「確かに相棒、あれ言われた時からギルドに戻るまでの間、目に光が無かったからね………」

 

当時の事を思い出したのか、ラリーが苦笑混じりにそう言った。

 

「………なあ、ラリー」

「ん?」

 

俺は、ラリーにこんな質問をしてみる。

 

「俺、1番機降りた方が良いと思うか?」

「……………」

 

そう訊ねると、ラリーは暫く黙っていた。

そのまま1分程黙っていたが、遂に口を開いた。

 

「いや、そうは思わないね」

 

ラリーはそう言った。

 

「確かに、あの時はエメルが活躍したかもしれない。でも、全体的な腕の良さなら君が勝ってる。それに君は、周囲の状況をよく見てから判断して、的確な指示を出してくれるからね。後、時々挟む軽口も、僕は面白いから好きだよ?」

「…………………」

 

優しげに微笑んでそう言ってくれるラリーを、俺はジッと見ていた。

 

「………お前が女だったら、即座に告ってフラれてるだろうな」

「あらら、フラれちゃうんだね………でも残念、そもそも告るとかフラれるとか以前に、僕は男だよ」

 

そんな軽口を叩き合い、俺達は笑った。

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ」

 

一頻り笑うと、ラリーが何かを思い付いたらしい。

 

「ねえ、相棒。気分転換も兼ねて、2人で王都に行ってみないかい?」

「王都に?」

 

突拍子も無い提案に、俺は思わず聞き返す。

 

「君、さっき言ってたろ?"2人にあしらわれまくって、メンタルが結構ズタボロだ"って」

「ああ、言ったな」

 

ラリーの質問に、俺は頷く。

 

「でもさ、何故に王都なんだ?」

「う~ん、そう聞かれると返事に困るんだけど……………まあ、あれだよ」

 

そう言うと、ラリーは右手の人差し指をピッと立てた。

 

「最近の疲れを、賑わう王都の華やかさで吹き飛ばしてしまおう~!………みたいな?」

「何だそりゃ」

 

最後で疑問形になるラリーに、俺は苦笑混じりにツッコミを入れた。

 

「まあ実を言えば、王都が今どうなっているかを見たいってのも、あるんだけどね」

「あ~、成る程な」

 

そう言うラリーに、俺は相槌を打った。

ラリーの言う通り、俺としても、今の王都の状態……………特に、F組の連中の様子は見てみたい。

F組を離れる前のように、ずっと王城に籠って訓練してるのか、それとも、他の町に繰り出したりしているのか……………

 

「でもさ、このままの状態で王都に行ったら、俺等の正体バレるんじゃね?どっかで変装セットでも買うのか?」

「チッチッチッ…………」

 

おれが訊ねると、ラリーは指を左右に振った。

 

「相棒、僕を誰だと思っているんだい?全盛期では魔族クラスの魔力を持ち、王立騎士・魔術師士官学校魔術科での首席卒業間違いなしと言われた、あのラリー・トヴァルカインだよ?その辺りは大丈夫、ちゃんと対策法を考えてるんだ」

「ほう……………具体的には?」

「簡単だよ!」

 

俺がそう言うと、ラリーは徐に立ち上がった。

 

「僕と君に、認識阻害の術式を施せば良いのさ。そうすれば、正体はバレないからね。ギルドカードは収納腕輪に入れて、『無くした』とか適当に言って、しらばっくれたら良いのさ」

「成る程、それは確かに良い考えだな」

「そうだろ?まあ、お金掛かるのが難点だけどね」

 

苦笑混じりにそう言うラリーに、俺も笑みを浮かべた。

そうして俺達は、2人だけで王都に行くと伝えるために、エメル達の部屋へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を移して、此処はミカゲとラリーが泊まっている部屋の隣の一室。

3人部屋である其所では、エメルとファルケン、そしてアドラーと言った、ガルム隊の女性メンバーが泊まっていた。

 

 

「……………さて、それでは始めましょうか」

 

ファルケンとアドラーを並んでベッドに座らせ、彼女等と向かい合うように椅子を置き、其所に腰掛けたエメルは、そう言って話を切り出した。

 

「あの、お姉様?始めると言うのは一体………?」

 

その場の状況を理解しきれていないのか、ファルケンがおずおず言った。

 

「一体も何も、話をするのよ……………ミカゲについての、ね」

「「……………」」

 

"ミカゲ"と言う名前に、不快そうな表情を浮かべる2人。

そんな彼女等の反応を見て、何か思うところがあると、エメルは睨んだ。

 

「ガルム隊に加わってから、貴女達がミカゲとどのような付き合いをしているのか見ていたけど……………明らかに態度が悪すぎるわ」

「「………………」」

 

程好く膨らんだ胸の前で腕を組んでそう言うエメルに、2人は相変わらず沈黙している。

 

「あれだけ態度が悪いんだもの、それ相応の理由がある筈よね?一体、ミカゲの何が気に入らないの?」

 

そう訊ねるエメルだが、反応は変わらない。

 

「はぁ………じゃあ、質問を変えましょう」

 

溜め息をついて、エメルはそう言った。

 

「ミカゲは今まで、何か貴女達の気に障るような事をしたの?性的な目で見られた事はあるの?体に触られたとか、嫌がらせされたとかは?」

「そ、それは………」

 

続けざまに投げ掛けられる質問に、今度はアドラーが言い淀む。

 

「ミカゲの様子を見て思ったけど……………彼、貴女達に歩み寄ろうとしているみたいだったわ。でも貴女達は、それを冷たくあしらっていたわよね?」

「「………………」」

「ミカゲに何か不満があるなら、この場で言ってみなさい。怒らないし、何なら私が、直接伝えてきてあげても良いわ」

 

エメルがそう言うと、ただでさえ重かったこの部屋の空気が、さらに重さを増す。

 

口も動かせなくなるような重苦しい雰囲気が部屋に充満する中、突然、部屋のドアがノックされた。

 

「はい」

 

ドアの方に顔を向けて、エメルが答える。

 

「ああ、エメルか?神影だけど、入っても良いか?」

 

ドア越しにそう言われたエメルは、一瞬2人に顔を向けて、直ぐにドアの方へと戻した。

 

「ええ、良いわよ」

 

そう答えると、ドアが開いて神影とラリーが入ってくる。

神影は、向かい合って座っている3人を見てすまなさそうな表情を浮かべた。

 

「あ、すまん。何か話してたのか?」

「ええ、ちょっとね…………………でも、別に良いわ。それで、何か用?」

 

神影の問いに軽く頷き、直ぐ様話題を摩り替えた。

 

「あ、ああ。実は、俺とラリーで王都に行こうって話になってな」

「王都に?」

 

神影の言葉に、エメルは思わず聞き返す。

 

「どうしてまた?」

「ちょっと気分転換がしたくてな。それに、今の王都がどうなってるのかも見てみたいし」

「でも、行けば貴方のクラスメイト達に見つかってしまうわ。それに、もしクラスメイト達に会わなかったとしても、この前ああやって来たんだから、多分、王都で貴方は尋ね人にされてる筈。行けば直ぐに身元が割れてしまうわ」

 

そう言って、王都に行くのを止めさせようとするエメル。だが、神影は軽く笑った。

 

「心配してくれてありがとな。でも大丈夫だ」

 

そう言って、神影はラリーの肩にポンと手を置いた。

 

「コイツに認識阻害の術を掛けてもらうんだ。そうすれば、他の連中からは別人にしか映らないし、ステータスプレートとかの提示を求められても、適当に『無くした』とか言ってしらばっくれりゃ良いし」

「そ、それは……そうだけど………」

「それにさ、エメルは未だしっくり来てないかもしれねぇけど、一応お前等は姉妹みたいなモンだし…………良い機会だ、3人で町にでも繰り出して、親睦深めたらどうだ?何かあったら、何時でも"僚機念話"で話せるんだから」

 

神影は軽く笑いながらそう言った。

因みに"僚機念話"とは、レベルアップした時に、新たに取得した特殊能力で、その名の通り、"航空傭兵"の天職を持つ者同士──つまり、僚機の間──で話が出来ると言うものだ。

この能力により、彼等は遠く離れていても、話す事が出来るようになったのだ。

 

「まっ、そう言う訳だから、ちょっくら行ってくるぜ。夜には戻ってくるから、お前等もその辺りに戻ってこいよな~」

「えっ…………ちょっ、ちょっと!ミカゲ!?」

 

エメルの制止も聞かず、神影はラリーを連れて部屋を出てしまった。

 

「「「………………」」」

 

あまりにも急すぎる展開に、呆気に取られる3人。

 

暫くそのままの状態で唖然としていると、外からジェット機の轟音が聞こえてきた。

神影とラリーが機体を展開し、王都へ向けて飛び立ったのだ。

 

 

轟音が聞こえなくなった頃、その部屋には、未だに呆然としている3人の少女が残されていた。


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