航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第28話~嫌われてるな、俺………~

さてさて、タロンの町に夜な夜な現れると言う化け物を探していたら、モルガンの後継機にあたるADF-01(ファルケン)と、その攻撃機タイプであるADA-01B(アドラー)に出会うと言う、何とも予想外な展開になってしまった俺達ガルムの3人は、着陸体勢に入る2人を見ていた。

 

一旦俺達から距離を置き、反転して此方へ向かってくると共に降下する。

すると、『ザッ!』と言う音が2回、小さく聞こえた。

 

どうやら、2人が着陸したようだ。

そのまま、足の裏から出ているのであろうタイヤを転がし、呆然とする俺達の元に、ゆっくりと近寄ってきた。

 

そして、2人は俺達の前に並び立つ。

ラリーが膝のライトで照らしているお陰で、俺は2人の姿を改めて見る事が出来た。

 

はっきり言うと、2人共凄い美少女だった。

 

ファルケンの方は、赤(と言うより、濃いピンク)色の長い髪をロングストレートに下ろしており、目は黄色。そして、何故かメイド服を着ている。

もう一度言う、な・ぜ・か、メイド服だ。

そしてスタイルが良い。

アドラーの方は、白髪のショートボブで、緑色の目をした女の子だ。

薄いピンクのブラウスに黒のスカートを穿いている。

「(何つーか……この娘、機体の色と合ってないな………)」

 

アドラーの色はファルケンと同じく赤色なんだから、もしかしたら2人共赤髪なのではないかと思ってたんだが……

やはり、『機体カラー=擬人化した時の髪の色』なんて方程式は成り立たないんだな、勉強になったような気がするが、同時に残念な気もする。

 

「ご期待に添えなかったようで、すみません」

「え?ああ、いや。別にそちらが謝るような事では………って、あれ?」

 

アドラーの女の子に謝られ、反射的に返事を返してしまったのだが、ちょっと待ってほしい。

 

「(俺、喋ったっけ?)」

 

そんな疑問が、俺の脳裏を過る。

取り敢えず、俺が実際に喋ってたのかを確かめる必要があるな。

 

「あのぉ~………もしかして自分、声に出してましたかね?」

 

一先ず、そう問い掛けてみる。

大概のアニメやラノベのキャラは、此処で頷いたりする場面だが、実際はどうなのだろうか………?

 

「いいえ、貴方は声に出してはいません」

 

意外な事に、相手からの答えは"否"だった。

………となると、なんで俺が考えてた事が分かったんだ?

 

「私と、私が纏っているアドラーを交互に見ながら何処と無く残念そうな表情をされていたので、恐らく、私の容姿が、この機体と合っていないと考えているのではないかと思いました」

「アンタの読み取り能力、マジで凄いッスね………」

 

褒めるべきなのか、それとも呆れるべきなのか………何とも言えないような雰囲気で居ると、アドラーの娘は、そんな俺からさっさと目線を反らし、エメルの方に向けた。

気づけば、ファルケンの娘もエメルの方に向いている。

 

「………?な、何よ?」

 

2人の美少女に、真っ正面からまじまじと見つめられているエメルは、顔を若干赤くしながらそう言った。

すると、2人は同時に深々と頭を下げた。

 

「「お初にお目にかかります、お姉様」」

「………は?」

 

2人の突拍子も無い発言に、エメルはキョトンとした表情を浮かべ、間の抜けた声で聞き返す。

 

「え~っと……ごめんなさい、もう一度言ってくれる?私、ちょっと耳おかしくなってるかもしれないわ~………」

 

ひきつった笑みを浮かべながら、エメルはそう言った。

 

「「…………」」

 

そう頼まれた2人は、互いに顔を見合わせた後、再びエメルに向き直り、さっきと同じように頭を下げた。

 

「「お初にお目にかかります、お姉様」」

 

そして、さっきと同じ台詞を繰り返した。

 

「………ね、ねぇミカゲ?コレ、夢か何かなの?私、何時の間に妹なんて出来てたの?」

「お、落ち着けエメル。2人が言う"お姉様"と言うのは、決して同じ母親から生まれたとか、そう言う意味のものではなくてだな………」

 

俺は、オロオロしながら訊ねてくるエメルをどうにか落ち着かせ、説明しようとする。

 

「そもそもだ、エメル。ADF-01(ファルケン)ADA-01B(アドラー)ってのはだな……」

 

俺が、ADFX-01/02(モルガン)ADF-01(ファルケン)、そしてADA-01B(アドラー)の関係について説明しようとした時、ファルケンの娘に右肩をガシッと掴まれた………

 

「貴方が説明する必要はありません」

「うおっ!?」

 

…………かと思ったら、思いっきり後ろに押し飛ばされて尻餅をついた。

つーか、この娘力強すぎだろ!

この色白で細い腕の何処にあんな力があるんだよ!?

そもそも、俺への接し方酷くない!?

地面に打ち付けた部分を擦っている俺を他所に、2人はエメルに色々と説明していた。

 

何つーか、結構面倒な奴等に出会っちまったなぁ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2人の説明が終わると、俺は2人を呼び、一先ず明日、タロンの町の長官の所にまで一緒に来てくれるように頼んだ。

 

「………何故、そのような事を?」

 

警戒してると言うか、ただ『面倒な事させんじゃねぇ』オーラを出してると言うか、兎に角俺を睨み、アドラーの娘が訊ねてきた。

因みに、この2人は1週間前からタロンの町の上空を飛び回っていた事を認めている。

 

「…………まあ、つまりな?お前等2人がタロン上空をゴオゴオ言わせて飛びまくったせいで、町の人達が、化け物が出たんじゃないかって酷く怯えちまってるんだよ。んで、俺達がタロンの町に来たのは、その化け物を討伐するためなんだよ」

「「……………ッ!」」

 

"討伐する"と言う単語に2人がピクリと反応し、俺を鋭い目で睨み付けてきた。

 

「成る程、そう言う事ですか………………それなら貴方は、私達を討伐するつもりだと言う認識で良いですね?どうやら、余程の自殺願望者であるようで…………」

「一応言っておきますが、お姉様を3番機としているからってイイ気にならないでください。その気になれば貴方如き、何時でも殺せるんですからね?」

 

そう言うと、ファルケンの娘は本来から右腕に搭載される機関砲を左腕に付け替え、空いた右手でレーザーライフルの形をしたTLSを持ち、左腕の機関砲共々此方に向けてきた。

アドラーの娘は、右腕の機関砲を此方に向け、さらに両主翼下のハードポイントにマシンガンポッド(MGP)を装着している。

 

……………って、この2人本気で俺をぶっ殺すつもりだ!

 

「ちょっ、待て待て待て、落ち着け!先ずは話を最後まで聞け!」

 

そう言うと、2人は一先ず武器を下ろしてくれた。

それに安堵の溜め息をつき、俺は言葉を続けた。

 

「そりゃ、確かに討伐するとは言ったよ。でも、それはあくまでも、化け物の正体が魔物だった場合であって、2人のような場合は、また別の話だ」

「「………………」」

 

俺の話を、2人は黙って聞いている。

ラリーやエメルは、少し離れた場所で心配そうに見守っていた。

 

「という訳で、先ずは長官の所に行って、どうしてこの町の上空を飛びまくってたのかを説明して、夜な夜な飛び回って恐がらせた事について、ちゃんと謝らなければならん。2人のせいで、町の人達は1週間も安心した眠りを得られてないんだ。それは分かってくれるよな?」

 

そう言うと、2人は渋々頷いた。自分に非があると認めたら、こんな感じで素直になるようだ。

 

 

それから、俺達は城の部屋に戻り、残り少ない夜を明かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………………」」

 

そして翌朝、俺達は早速、長官の部屋を訪れていた。

其所には家令のデューイも居て、アドラーとファルケンを見て絶句していた。

 

「ほ、本当にその2人が、この1週間、夜な夜な町の上空を飛び回っていた、あの"化け物"だと言うのか………!?」

「はい。2人共反省していますし、もう町の人達には迷惑を掛けないと言っています」

 

俺がそう言うと、2人はペコリと頭を下げた。

 

「そ、そうか……………しかし、信じられんな。あの不気味極まりない轟音を撒き散らしていた化け物の正体が…………まさか、こんな、たった2人の少女だったとは……………」

 

長官は、ショックのあまり気絶しそうになっていた。

何やら胸を押さえて咳き込んでいる辺り、心臓が弱いのだろう。

コレは、早く話を終わらせた方が良さそうだな。

 

「それで長官、報酬の話ですが…………」

「ゴホッゴホッ…………ほ、報酬?」

「ええ。今回の依頼を受ける報酬として、金銭の代わりに、この2人の処分を全て、俺達ガルムに一任すると言う約束です。お忘れではありませんよね?」

「「なっ!?」」

 

俺の言葉に、2人は目を見開いて驚く。

無理もないわな。何せ自分達の知らない間に、こんな取引が交わされてたんだから。

 

「あ、貴方!何を勝手な…………んぅっ!?」

「シッ!ちょっと黙ってろ。後でちゃんと説明するから!」

 

今にも掴み掛かってきそうなファルケンの口を、手で塞いで黙らせる。

此処で下手に騒がれたら面倒だからな。

 

そして俺は、長官の方へと向き直った。

 

「それで長官。昨日、報酬の件で話した時、確かに言いましたよね?"2人の処分を全て俺達ガルムに一任し、町の人達には一切口出しさせない事。そして、長官達からも口出ししない"と…………ね?」

「あ、ああ………確かに、そう言った…………」

 

咳が治まったらしく、何とか呼吸を整えながら、長官はそう答えた。

 

「では、依頼も無事に達成しましたので、自分達はこれで失礼します」

「あ、ああ…………」

 

そうして、俺達は踵を返して長官の部屋を後にすると、そのまま城を出た。

その後、直ぐに町の人達に囲まれて、次々にお礼を言われた。

たじたじになりながらも返事を返していき、それと同時に、ファルケンとアドラーの事も、彼等にちゃんと話しておいた。

町の人達は、信じられないとばかりに目を見開いて驚いていたが、2人が謝ると、笑みを浮かべて許してくれた。

それから俺達は、町の人達と別れてタロンの町を後にした。

 

さて、此処からが峠とも言うべき場面だ。さっき約束した通り、ちゃんと2人に説明してやらないとな。

あの長官達と交わした取引の、本当の意味を………


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