航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第2話~ステータスがクラス最弱なんて、よくあるこった~

 俺達2年F組が魔族との戦争に参加する事が決定した後、やはりと言うか何と言うか、晩餐会が開かれた。

 此処で知ったのだが、俺達が召喚されたのは朝のHRが終わった頃だったのに対し、此方の世界では夜になっているらしい。

 それだけ長い間気絶していたのか、それとも、向こうと此方とでは、時間がずれているのか…………

 

 まぁ、何にせよ、その晩餐会は中々に楽しめた。

 ネット小説で読んだように、異世界の料理は形や色こそ奇妙だったが、いざ口にすると非常に美味かった。そのためか、クラス全員が盛り上がっており、スマホで写真を撮る奴も、ちらほら見掛けた。 

 

 

 晩餐会が終わると、各自に割り当てられた部屋へと案内された。

 どうやら一人一人に世話係が付けられるようで、基本的に、男子にはメイド、女子には執事が付けられるのだが、女子の中にはプライベートなどの問題から、メイドに変えるように言うのも居た。

 

 

「此方が、ミカゲ様の部屋です」

「あ、はい。どうも」

 

 俺の世話係である銀髪ロングでスタイル抜群のメイド(セレーネと言うらしいので、以後セレーネさん)に自室へと案内された俺は、おずおずと部屋に入り…………

 

「……………」

 

……………絶句した。

 

 部屋はトイレや風呂付きで、1人で寝るにはあまりにも大きすぎるベッドが、その存在を主張するかの如く部屋の中央にデーンと置かれてあった。

 他にもクローゼットが置かれてあり、寝間着や服、下着なども入っていた。最早至れり尽くせりだな。

 

「す、スゲー広いッスね。まるで高級ホテルみたいだ……………」

「“こうきゅうほてる”と言うのがどのようなものなのかは分かりませんが、お褒めに預かり、光栄です」

 

 そう言った後、セレーネさんは明日の簡単なスケジュールを説明してくれた。

 先ず、起床時間は7時で、30分から朝食。その後、教官の紹介や能力を見るための魔道具--ステータスプレート--を配付した後、早速訓練や座学が行われるらしい。

 

「それでは、明日7時に起こしに参りますので」

「了解です、態々どうも」

 

 軽く礼を言って、部屋を出ていくセレーネさんを見送り、俺は部屋のドアを閉めると、そのままベッドにダイブした。

 

「しっかし、まあ……………マジでトンでもねぇ事に巻き込まれちまったモンだな、俺等」

 

 仰向けになって呟き、俺は部屋の明かりを消すと、そのまま目を瞑った。

 フカフカのベッドだ、良く眠れるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員、揃っているな?」

『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』

 

 翌朝、朝食と着替えを済ませた俺達は、再び謁見の間へと集められていた。

 昨日、セレーネさんが言っていたように、教官からの挨拶とステータスプレートの配付を行うためだ。

 2列に並んだ俺達の前に、立派な鎧に身を包み、顔の所々に傷を作った強面の男性が立っており、全員居る事を確認すると、満足げに頷いた。

 

「よし、それじゃあ最初に自己紹介から始めるか!」

 

 そう言って、その騎士さんは名乗った。

 

「王都騎士団長のフランクだ。お前達の実践訓練の教官をする。よろしくな!」

 

 そう言って、フランクさんは微笑んだ。顔つきに似合わず、テンション高めの人なのだろうか?

 

「さて、それじゃあ早速訓練を始める………と、言いたいところだが」

 

 勿体振るような言い方をすると、何やらトレイを持った別の騎士が、フランクさんの傍にやって来た。

 

「お前達には先ず、これを配らなければならない」

 

 そう言って、フランクさんはトレイに乗せられているものを1つ手に取り、俺達に見せるように掲げた。

 掲げられているそれは、色は銀色で、スマホ程度の大きさをしている。

 

「フランクさん、それは何ですか?」

 

 天野が質問した。

 

「コレはステータスプレート。昨日、メイドや執事から説明があったとは思うが、コイツでお前達の客観的なステータスを見る事が出来る。先ずは配るから、1人1つ取って、後ろに回してくれ」

 

 フランクさんがそう言うと、トレイを持ってきていた騎士が最前列の2人にステータスプレートを渡す。それから、各自言われた通りに1つずつ取って後ろに回していった。

 

「よし、全員1つずつ持ったな?因みにコレは、身分証にもなるから無くすなよ?別に無くしても捕まったりはしないが、町を移動する時に金が掛かるからな!」

 

 親指と人差し指で金に見立てた輪を作り、フランクさんは笑った。かなり陽気な人のようだ。

 

「さて………ではコイツの使い方だが、お前達には針を1本ずつ配る。それを体の何処かに刺して、その血をプレートに垂らすんだ。後はプレートの方で勝手にやってくれるからな」

 

 そうして、銀色の針が配られ、俺達はフランクさんに言われた通りにした。

 血を垂らすと、プレートが軽く光った。

 

「プレートが軽く光ったら成功だ。各自ステータスを見て、俺まで報告に来てくれ」

 

 フランクさんがそう言うと、クラスの連中は自分のステータスに目を通す。

 

「スッゲー!称号に『勇者』って書いてあるぞ!」

「あ、それ俺もだ!」

「私にもあったわ!」

 

 どうやらステータスには『称号』の欄があるらしく、皆、その欄に表示された『勇者』の文字に大はしゃぎだ。

 その後は、やれ『天職(ジョブ)は剣士だった』とか、『回復師だった』とか、そう言ってワイワイやっている。

 

 さて、それでは俺のステータスを………………

 

 

 名前:古代 神影 

 種族:ヒューマン族

 年齢:17歳

 性別:男

 称号:異世界人

 天職:航空傭兵

 レベル:1

 体力:70

 筋力:65

 防御:65

 魔力:10

 魔耐:10

 俊敏性:80

 特殊能力:言語理解、空中戦闘技能、僚機勧誘

 

 

 

「……What the hell is this?(何だこりゃ?)」

 

 つい英語で言ってしまった事を許してほしい。

 

 つーか何コレ?其々の能力値が全部ビミョーなんですけど?

 魔力系に至っては酷すぎて超ワロタ。

 だって皆さん、10ですよ?10。こんなの考えられる?無理でしょ。

 それに一番高いのが『俊敏』って………まぁ、向こうの世界じゃ足の速さには結構自信あったから間違ってる訳じゃないんだけどさ………せめて俊敏だけでも100にならんの?

 つーか、俺そもそも勇者ですらねぇじゃん。はぁ………

 

 

 

 コレってもしかして…………アレか?

 クラスで異世界に召喚されたけど1人だけステータスが低いとかのアレ。

 

 

 俺は肩を落としながらも、フランクさんにステータスを報告する列に並ぶ。

 並んでいる最中、フランクさんや他の騎士、そして宰相さんの感嘆の声が響いてきた。

 どうやら、称号が『勇者』である事や高いステータスに感心しているらしい。

 

「よし、次は………御劔正義、だな?見せてもらうぞ」

「はい」

 

 今まで気づかなかったが、俺の前に居たのは御劔だったようだ。

 御劔のステータスが開示されるとフランクさん達は目を丸くしていた。

 

「こ、コレは………ッ!」

 

 あの宰相さんでさえ、口をあんぐり開けて驚いている。

 俺は失礼を承知で、少し除き見させてもらった。

 

 

 

 名前:御劔 正義

 種族:ヒューマン族

 年齢:17歳

 性別:男

 称号:勇者

 天職:聖剣士

 レベル:1

 体力:280

 筋力:250

 防御:230

 魔力:250

 魔耐:250

 俊敏性:300

 特殊能力:言語理解、剣術、高速回復、詠唱破棄、全属性適性、全属性耐性、身体強化

 

 

「………………」

 

 What the hell is this?(2回目)

 

 いや、ちょっと待ってください。いや、待とうぜ?マジで。

 何?この『チート』と言う単語を具現化したようなステータス値は?有り得ねぇよ。

 体力なんて俺の4倍じゃん。魔力系に至っては………うん、考えるの止めよう。

 

「おっ、どうやらお前さんが最後みたいだな。他の奴等は皆、能力値が100を軽く超えていたからな、お前さんもそうなっている筈だ、期待してるぞ?」

 

 軽くorz状態になっていたところで、声を弾ませたフランクさんに呼ばれる。

 顔を上げると、彼はホクホク顔で立っていた。今までチート持ちの『勇者』ばかり見てきたから、俺もそれらしい称号や能力を持っている筈だと思っているのだろう。

 

「(まぁ、俺のステータスは、そんな期待を思いっきり裏切るものなんだけどな………)」

 

 内心溜め息をつきながら、俺はフランクさん達にステータスを見せる。

 

「さて、お前はどんな能力を持って…………ん?」

 

 ウキウキと俺のステータスを見るフランクさんだったが、そのまま固まった。

 それもそうだ、何せ俺の能力値の全てが100未満だったのだから。

 

「壊れているのだろうか………ちょっと失礼」

 

 横からそんな声がするかと思うと、宰相さんがステータスプレートをヒョイと取って、コツコツ叩いたり、光に翳したりしている。

 

「ふぅむ、コレは何とも微妙……………なっ、何だと!?」

 

 突然、宰相さんが目を見開いて声を張り上げた。クラスの連中が気づき、何事かと押し寄せてくる。

 

「ゆ、勇者の称号が………無い!?」

 

 宰相さんが再び声を上げると、クラスの連中はザワザワし始めた。どうやら、本当に勇者の称号が無いのは俺だけのようだ。

 

「おいおい、1人だけ勇者じゃないとか何の冗談………って、はぁ!?おいマジかよ!」

 

 何時の間にか俺の傍に来ていた富永がステータスプレートを覗き、声を張り上げた。

 

「マジでコイツ勇者じゃねぇし、おまけにステータスなんてクラス最弱だぞ!何れもコレも100すら超えてねぇ!」

「うっわ、マジでカスじゃん。何だコレ?」

「いや、ちょっと待てよ。コイツ魔力も魔耐も10しかねぇぞ!」

「うへぇ、超ウケる!弱い魔法でも直ぐ死ぬんじゃね!?」

 

 富永の取り巻き共がワラワラやって来て、俺のステータスを見てゲラゲラ笑いまくっている。

 

「つーか、大体『航空傭兵』って何だよ?意味わかんねぇよ。なぁ、フランクさん。コレどういう天職なんスか?」

「いや、それが俺自身も知らないんだ。そもそも、こんな天職は今まで見た事が無い。はっきり言えば前代未聞だ。『傭兵』とあるから、一応は戦闘職だと思うんだが………」

 

 ニヤニヤしながら訊ねる富永に、フランクさんは困った顔をしながら答えた。

 

「じゃあさ、特殊能力見せてみろよ。まっ、天職はイミフな上にステータスもカスなお前じゃ、ロクな能力持ってないだろうがな!」

 

 そう言って、富永は俺の特殊能力に目を通す。

 

「何ッだコレ!?言語理解を除いて全部使えねぇじゃん!」

「向こうではキモオタで、此方じゃ雑魚。最早生きてる価値ねぇな、お前」

 

 クラス全員に聞こえる声で言う富永一味。女子や先生は、流石に不快そうな表情をしており、特に天野や雪倉は気の毒そうな表情を浮かべているが、それとは裏腹に、男子はニヤニヤしている。

 余程、俺がクラスで最弱なのが嬉しいようだ。

 

「と、取り敢えず訓練を始めるぞ!ステータスが低い者も居るだろうが心配するな、訓練次第で一気に上がる!ちゃんとついてこいよ!」

 

 そんなフランクさんの声で、その場は一先ず収まった。

 

 そうして俺達は、魔王討伐に向けての訓練を始めるのだが、宰相さんが、何やら思い詰めたような表情でブツブツ言っているのが気になった。


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