航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第24話~初めての空中戦(ドッグファイト)!~

「現在、高度4000フィート。進路、2-2-5。速度、420ノット」

 

さて、ワイバーンの群れ討伐の依頼を受けた俺達"ガルム隊"は、依頼書に書いてあった場所へ向かっていた。

途中で王都上空を通過したのだが、その際にラリーが、高度を下げて、城の直ぐ横を超音速でかっ飛ばして、轟音で城の連中を驚かしてみないかと誘ってきたのだが、断っておいた。

未だ連中の前に行くのは早すぎるからな。

 

そして飛んでいる内に、町は見えなくなり、平原から始まって、段々緑が少なくなり、最終的に山岳地帯の上空に差し掛かった。

 

「そう言えばミカゲ、君って空飛んでる時は何時も数値読んでるけど、それって何か意味あるの?」

 

不意に、俺の右隣を飛んでいるラリーがそんな事を聞いてきた。

 

「いや、特にこれといって意味は無いかな。ただ気分出したいから言ってるだけ」

「そ、そうなんだ………」

 

俺が答えると、ラリーは苦笑混じりにそう言った。

その反対側ーー即ち俺の左隣ーーでは、エメルが自分の纏っている機体の情報を見ている。

さっきモルガンの武装を見せてもらったのだが……………やはりと言うか何と言うか、思いっきりピクシー仕様の武装だった。

 

基本武装である機銃とサイドワインダーは勿論だが、特殊兵装として、戦略レーザー(TLS)多用途炸裂弾頭ミサイル(MPBM)、そして、前方エアインテーク以外のロックオンを無効化するジャミングポッド(ECM)を搭載していた。

因みにECMは内蔵式なので外からは見えないのだが、その他2つは確認出来る。

MPBMは、両主翼下のパイロンに付けられているサイドワインダーの内側に、左右で1発ずつ搭載されている。

機銃は俺やラリーと同様、右腕に搭載されている。

そして最後にTLSなのだが、コレがまた変わっている。

どうなっているかと言うと、アニメとかで見るようなレーザーライフルの形になって、右脚のホルスターらしき部分に収まっているのだ。

と言うか、右腕に機銃付いてるのに右のホルスターにTLSあったら、使う時に取れないのではないかと思ったのだが、エメル曰く、機銃は任意で左腕に付け替える事が出来るらしい。

嘘だと思ってやってみたのだが、マジで出来ました。

こんな事が出来るなんて、全然知らなかったッス…………

 

 

 

「はぁ………俺、この中で航空傭兵の力を持ってる歴一番長いのに知らなかったなんて………めっちゃショックなんだが……………」

「まあまあ、ミカゲ。そんなに肩を落とさなくても良いじゃないか」

「と言うか、"航空傭兵の力持ってる歴"って………何か語呂悪いわね」

「五月蝿ぇやい」

 

ショボくれている俺を慰めてくれるラリーに続いて、苦笑混じりにツッコミを入れてくるエメルに、俺はそう言い返した。

 

「ホラホラ、ミカゲ。何時までもショボくれてはいられないよ?ワイバーンと空中戦(ドッグファイト)するんだろ?元気出しなって!そんなんじゃ撃墜されちゃうよ?」

 

ラリーはそう言うと、俺の右主翼を左主翼で軽く叩いてきた。

恐らく、ラリーなりに励ましてくれているのだろう。

 

「………ありがとよ、ラリー」

 

ラリーに礼を言って、軽く腕を回す。

 

「さて………何時までもショボくれちゃいられねぇ!相手がワイバーンだろうがドラゴンだろうが、全部叩き落としてやるぜ!」

「そうそう、その意気だよミカゲ!」

 

調子を取り戻した俺に、ラリーがそう言う。

 

「さっき見た依頼書からすると、大体この辺りよね」

「ああ、そうだ」

「なら、この辺りを適当に飛び回っていれば、会えるって事かな………」

依頼書の内容を思い出しながら言うエメルにそう返すと、ラリーが呟いた。

 

「まあ、そう言う事になるが…………ただ飛び回ってるだけじゃ見つからんだろうからな、取り敢えずレーダーで探ってみるのが良さそうだ」

 

ラリーの呟きにそう返し、俺は頭の中にレーダーを思い浮かべる。

 

コレで、ワイバーンがレーダーに引っ掛かったら反応が出るから、連中が何処に居るのか、どの方向に向かっているのか直ぐ分かる。

さて、どうしてやりましょうかねぇ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後………

 

 

「全ッッ然見つからねぇ………」

 

あれからずっと、この山岳地帯を飛び回ってワイバーンの群れを探している俺達だが、ワイバーンの群れは全く見つからない。

おまけに、群れどころかワイバーン1体も見つかっていないのだ。

そんな状況に、俺は盛大に溜め息をついて項垂れる。

 

「まあまあ、そんなに落ち込むなよ」

「そうよ。それに、依頼を受けたのは今日が初めてなんだもの、そう言う事だってあるわ」

 

俺の直ぐ隣にやって来たラリーとエメルが宥めてくれる。

その後も、さらに1時間程飛び回ったが、やはりワイバーンは現れない。

 

「う~ん、こんなに探しても居ないとなると………別の所に移動でもしたのかな」

 

辺りをキョロキョロ見回しながら、ラリーがそんな事を言った。

 

「ワイバーンって、そんな遠くに移動したりするモンだったっけ?」

「どうだろう、その辺りまでは分からないな………」

 

すまなさそうな表情で、ラリーはそう言った。

 

「そうか………」

 

俺はそう言うと、体を少し傾けた。

 

「取り敢えず、ルージュに戻ろうぜ。2人共、腹減ったろ?」

「あ、ああ………そうだね」

「ええ………」

 

俺の提案に、ラリーとエメルが複雑そうな表情で頷いた。

2人は既に空中戦(ドッグファイト)を経験したと言うのに、俺だけ未だに経験出来ていないから、その辺りについて思うところがあるんだろう。

「(さっきは2人に励ましてもらったんだから…………今度は、俺が励ましてやんなきゃな)」

 

内心そう呟き、俺は2人に笑みを向けて言った。

 

「そんな顔すんなって。別に今日出来なかったら何もかも終わりって訳じゃねぇんだし、なんなら明日にでも再チャレンジしてみるさ」

 

そう言うと、2人の顔に僅かながら笑みが戻った。

そうして、一旦ルージュに帰ろうとした、その時だった。

 

「………ん?」

 

ふと思い浮かべたレーダーに、反応が出た。

1つや2つなんてモンじゃない、もっと多くの反応が、真っ正面から近づいてきていた。

 

「(数は………14、飛行中隊程度か………此方の人数と比べると、結構な数だな………)」

 

そう思っていると、相手の正体が段々と分かってくる。

 

比較的長い首に、爪らしきものが付いた、大きな蝙蝠のような翼に、鷹みたいに鋭い爪を持つ飛行生物………

 

「ワイバーンか………」

 

そう小さく呟くと、俺を挟んで呑気に話をしているラリーとエメルを交互に見る。

 

「(呑気に話してる2人には悪いが、ちょっと付き合ってもらわなきゃならねぇな………)」

 

そして、俺は2人に声を掛けた。

 

「ラリー、エメル。お取り込み中悪いが、ちょっと良いか?」

「ん?」

「どうしたの?」

 

2人が此方を向いて聞き返してくる。

 

「ついさっき、レーダーに反応があったんだ。12時方向からワイバーンの群れ、数は14だ」

「えっ?………あ、本当だ」

 

キョトンとした表情で俺を見たラリーだが、その後直ぐにレーダーを思い浮かべ、ワイバーンの群れを確認したらしく、納得したかのように頷いた。

 

「本当だわ………良かったじゃない、ミカゲ。待ちに待った空中戦(ドッグファイト)が出来るわよ?」

 

同じようにレーダーで確認したエメルが、軽く笑みを浮かべながらそう言った。

 

「ああ、そうだな………やるか?」

 

俺がそう言うと、2人は頷いた。

そして、誰からともなくアフターバーナーを噴かして加速し、ワイバーンの群れ目掛けて突進していった。

 

数分も経たない内に、ワイバーンの群れが肉眼でも小さく見えるようになってきた。

 

14体のワイバーンが、特に列を組む事無く飛んでいる。

 

「さて………それじゃあ、挨拶代わりに1発かましてやるか」

 

そう言うと、俺は特殊兵装の1つである4AAMを起動する。

腹部の装甲にミサイルが装填され、"loaded"の文字が視界に入る。

どうやら、4AAMの用意が出来たようだ。

 

「んじゃ、先手は貰うぜ」

「了解」

「何時でも良いわよ、ミカゲ」

 

そう返してくる2人に頷き、俺はさらに加速して2人を抜き去り、どんどん近づいてくるワイバーンの群れを睨むと同時に、14体中4体を同時にロックオンする。

そして、ある程度近づいた時………

 

「ガルム1,Fox3!」

 

そう叫び、4AAMを発射した。

ハードポイントから切り離され、一瞬自由落下した4発のミサイルだったが、やがてロケットブースターに火が入り、各自の獲物目掛けて襲い掛かった。

 

群れで飛んでいたワイバーンも、前方から物凄い勢いで飛んでくるミサイルで若干パニック状態に陥り、体を無理矢理捻って急旋回し、ミサイルから逃れようとした。

そのため、2発は残念ながら避けられてしまったが、残りは命中した。

ミサイルの爆発によって体を木っ端微塵に砕かれたワイバーンは、バラバラになった体のパーツを空中に放り出し、錐揉み回転しながら落ちていった。

 

1体撃墜(Splash 1)!」

俺は、空いている左手で軽くガッツポーズしながらそう言った。

「ギュヤァァアアアッ!!」

 

すると、まるで仲間が撃ち落とされた事に怒ったかの如く、1体のワイバーンが後ろから追い掛けてきた。

俺はハイGターンで反転し、そのワイバーンと向き合う。

そして、4AAMからサイドワインダーに切り替えて瞬時にロックオンする。

 

「喰らいやがれ………Fox2!」

 

右主翼下から発射されたサイドワインダーは、ワイバーンに真っ正面から襲い掛かる。

そのワイバーンは、飛んできたミサイルの正体を理解する事無く、爆発によって、一瞬で肉片へと変わった。

他にも、真っ正面から襲い掛かってくるワイバーンに機銃掃射を喰らわせて、呆気なく撃墜した。

 

そんな様子を見て、勝てる相手ではないと思ったのか、生き残ったワイバーンは俺を置いて逃げ去ろうとするが、そうは問屋が卸さない。

逃げた先には、ラリーとエメルが待ち構えているのだ。

 

「ガルム2!」

「ガルム3!」

 

そして、2人は一瞬顔を合わせ、改めてワイバーンに視線を戻した。

 

「「交戦(エンゲージ)!」」

 

逃げた先で別の敵が襲い掛かってくると言う事態に、生き残ったワイバーン達は、軽くパニック状態に陥っているように見えた。

だが、こう言う場での判断は瞬時にするものだ。

何故なら………

 

「ガルム2、Fox2!」

「ガルム3、Guns Guns Guns!」

 

敵からの攻撃の的になるからな。

 

「ギュアッ!?」

「ギャイ!?」

「ギュヤァァアアアッ!?」

 

ラリーのサイドワインダーや、エメルからの機銃掃射を食らったワイバーン達が、バラバラになって、血や臓物を撒き散らしながら錐揉み回転で落ちていく。

 

「彼奴等に負けちゃいられねぇな!」

 

それを見た俺も気合いを入れ直し、再びワイバーン達に襲い掛かる。

ラリーとエメルは、向かってくる俺を見て、直ぐに戦域から離れ始めた。

これ見よがしに逃げようとするワイバーン達。だが逃げられない。何故なら…………

 

「逃がす訳ねぇだろうがァ!」

 

未だ俺が居るんですからね!

 

直ぐに右腕の機銃をワイバーン達に向け、引き金に掛けた指に力を入れる。

 

「Fox3!」

 

そう叫び、M61A1バルカン砲をぶっ放す。

 

毎分6000発と言う頻度で撃ち出される20㎜弾に、ワイバーン達は為す術無く落ちていった。

しぶとく逃げ回っていた1体には、高機動ミサイルであるQAAMを喰らわせて撃墜した。

 

 

最終的な其々の戦績は、次の通りだ。

 

俺:7体

ラリー:3体

エメル:4体

 

 

うん、完全に俺の方が多いな…………

まあ、恐らくあれだ。俺が空中戦を楽しみにしてたから、2人が気を遣ってくれたのだろう。

 

ーーピコーン!レベルアップしたので新しい航空兵器が解禁されました!ーー

 

 

「(おっ、新しい機体を使えるようになったようだな……帰ったら見てみるか)」

 

そのメッセージを見た俺は、ラリーとエメルに声を掛けて一旦着陸すると、ワイバーンの死体から魔鉱石を回収して収納腕輪に入れると、ルージュの町へと帰投した。

こうして、俺の初めての空中戦(ドッグファイト)は、ラリーやエメルと共に圧勝すると言う形で幕を閉じた。


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