航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

163 / 168
今思えば、文化祭の最中なのに最新話書いてた件について


第148話~自重しない2人のサイファー!その頃王都では………?~

此処は、エリージュ王国王都とルージュの間に広がる平野。

このだだっ広い平野は、かつて神影とラリーの戦場となり、2人の熾烈な戦いの後には、地面は掘り返され、其処ら中にクレーターが出来ていると言う状態になっていた。

ラリーが独自に作り出した魔法の1つである"万物修復(オール・リパイア)"によって、何事も無かったかのように復元されたこの平野だが、この日、地を揺るがすような轟音を響かせて飛び回っている2人の男女によって、再び戦場になっていた。

その2人とは言うまでもなく、神影とギムレーだ。

 

彼等は、両方の主翼と垂直尾翼、そして水平尾翼の一部が青くペイントされたF-15Cを身に纏い、空中戦(ドッグファイト)を繰り広げていた。

 

 

「Target acquired!(目標を捕捉!)」

 

神影の背後を取っているギムレーが、直ぐ様ミサイルをロックする。

 

「チッ…………」

 

頭の中で鳴り響くロックオンアラートに舌打ちし、神影はシザーズで照準から逃れようとするが、ギムレーは長年共に戦ってきた愛機を、"空中戦闘技能"の特殊能力があるとは言え、初めて展開したとは思えないような技術で振り回し、しつこく追い回してくるために全く逃れられない。

"円卓の鬼神(Demon Lord of The Round Table)"と言う二つ名は、伊達ではないのだ。

 

「(流石は本物と言うべきか………………普通に操縦するのとは全く違うってのに、もう使いこなしてやがる…………)」

 

相変わらず頭の中でロックオンアラートを響かせながら、神影は内心そう呟いた。

 

「Fox2!」

 

そうしていると、ギムレーが主翼下のパイロンに搭載されているサイドワインダーを発射する。

パイロンから切り離され、自由落下したミサイルだが、直ぐロケットブースターから火を噴き、猛然とした勢いで神影を追い始める。

それに伴い、神影の頭の中で鳴り響いていたロックオンアラートがミサイルアラートに切り替わる。

 

「………ッ!遂に撃ちやがったか!」

 

そう言って、直ぐ様左にブレイクして回避を図る神影だが、それだけで避けられる程、ミサイルと言うものは甘くない。

神影がブレイクした方向へと進路を変えて、追い掛けてくる。

 

「オラオラ!ミサイルだけじゃ終わらねぇぞッ!!」

神影の背後を取り続けているギムレーは、彼女の右腕に装着されている航空機関砲──M61A1バルカン砲──を乱射する。

6つの砲身が高速で回転する砲口から、毎分6000発と言うトンでもない頻度で放たれる20㎜弾が、神影の機体を食い破らんとばかりに襲い掛かってくる。

 

「そう簡単に…………当たって堪るかよ!!」

 

神影は、ゲームでよくやるようなハイGターンの要領で宙返りし、20㎜弾を避ける。

 

「うおっ!?」

 

いきなりの宙返りに驚くギムレーだが、それに気づいたとしてと時既に遅し。

速度が乗りすぎているのもあり、ギムレーは、宙返りしている神影の真下を通過し、そのまま神影に背後を取られてしまう。

 

「(さて、反撃開始だ!)」

 

神影はアフターバーナーを全開で噴かし、ギムレーを猛然と追い掛けると共に、あるミサイルを呼び出した。

すると、神影の視界に大きめの円が現れる。

円の中に敵機を捉えている間に高い誘導性能を発揮する、セミアクティブ空対空ミサイルこと、SAAMだ。

 

「Fox1!」

 

そして、神影はすかさずミサイルを発射した。

 

「…………ッ!来やがったか!」

 

それに気づいたギムレーは、直ぐにブレイクして避けようとするが、ミサイルはしつこく追ってくる。

右へ行けば右、左に行けば左と言うように、何れだけ逃げても振り切れない。

 

「(何だこのミサイルは?普通のサイドワインダーにしちゃあ、矢鱈しつこく追ってきやがる。それに、さっきの発射コール…………となれば、彼奴が撃ちやがったのは…………恐らくSAAMだな…………ったく、厄介なヤツ撃ってきやがったモンだぜ!!)」

 

何れだけ逃げても、まるで猟犬のようにしつこく追い回してくる事や神影の発射コールから、ギムレーは直ぐに、そのミサイルの種類を導き出し、舌打ちをする。

 

「(逃げ回るのも邪魔くせぇ……………こうなったら!)」

 

ギムレーはハイGターンで反転すると、そのまま神影と向かい合う形で突進していく。

そうなると、当然ながらミサイルとも向かい合う事になるのだが、彼女はお構いなしだ。

そのままバルカン砲を真っ直ぐ構え、迫り来るミサイルを睨み付ける。

 

「………彼奴、まさか!?」

 

ギムレーが、ミサイルに続く形で自分が向かっているのも構わず突進してくるのをレーダーで捉えた神影は、彼女がやろうとしている事を悟り、ブレイクする。

 

「墜ちやがれ、クソッタレがぁ!!」

 

そう言うと、ギムレーはエルロンロールでドリルのように回転しながら、構えたバルカン砲を乱射する。

20㎜弾が次々と空中に解き放たれ、四方八方に飛んでいく。

何発か、神影が避けた方に向かっていくものあったが、神影はそれらを全て避けていた。

 

そして遂に、それは起こった。

空中に撒き散らされた数発の20㎜弾が、ミサイルに命中したのだ。

ミサイルは爆散し、その爆発音を轟かせた。

 

「………ま、マジかよ。やりやがったぞ彼奴。あのまま突進してたら、ミサイルごと蜂の巣にされてたぜ……………」

 

それを見た神影は、思わずそう溢した。

 

流石に神影でも、飛んでくるミサイルを機銃で破壊する事は出来ない。

そのため、ギムレーがそれをやってのけたと言う事は、正に奇跡だった。

 

「………………」

 

それに言葉を失う神影だが、次の瞬間には、強制的に現実世界に引き戻される。

 

「ボーッとしてる暇はねぇぞ神影ぇッ!!」

「ッ!?」

 

何時の間にか前方に回り込んでいたギムレーが、バルカン砲を構えて向かってきていたのだ。

 

「チッ…………Fox3!」

 

神影は舌打ちすると、同じようにバルカン砲を構えて撃つ。

 

「おっとぉ!」

 

それをギムレーは、バレルロールで避ける。

そして擦れ違った瞬間、ギムレーはハイGターンで向きを180度変えると、勢い良く飛び出して神影を追い始めた。

 

「クソッ、また背後に来やがった……………!」

 

神影は吐き捨てるようにそう言うと、左方向に急旋回する。

 

「逃がさねぇぞ……………さっきのお返しだ!Fox1!!」

 

そう言って、ギムレーは"兵装制限解除"によって使えるようになったSAAMを呼び出し、発射する。

 

「………ッ!」

 

ミサイルアラートが頭の中で鳴り響き、神影は直ぐに回避しようとするのだが、ギムレーの視界に映る円の中に居る限り、ミサイルからは逃れられない。

 

「クソッ……………やっぱSAAMは使う人によっちゃスッゲー面倒なミサイルだな………」

 

そう呟くと、神影は自分達が居る高度を確認する。

 

「高度15000フィートか………………仕方ねぇ。結構キツくなるだろうが、コレをやるしか無さそうだな……………ッ!」

 

そう言うと、神影はバレルロールで背面飛行に移った瞬間、そのままバレルロールしながらの垂直降下……………つまり、スパイラルダイブで降下していった。

 

「神影の野郎、俺みてぇに"対G耐性"持ってねぇのに、無茶なやり方しやがるなぁ……………ッ!」

 

物凄い勢いで降下していく神影を見たギムレーは、彼が円から外れる前に、追うように降下していった。

その下にあるのが、エリージュ王国王都だとは知らず……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神影達が急降下してくる中、此処はエリージュ王国王都。

先日の魔人族の一件から町の建物が粗方吹き飛び、今では瓦礫の中から使えるものを探して建てた仮住居が並んでいるが、その中でも唯一、王宮が以前の姿を残していた。

そして今、其所へ入るための門の前に、F組女性陣が集まっていた。

昨日の迷宮探索で得たアイテムをルージュに行って売り、それによって得た金を、ロクサーヌから貰った金貨200枚と共に、一先ず第1段階として支払うためだ。

 

「さて、全員居るわね?」

『『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』』

 

F組担任の夢弓シロナが訊ねると、女子生徒達から返事が返された。

 

「今からルージュに行くけど………………その前に、言っておく事があるの」

 

シロナがそう言うと、生徒達に緊張が走った。

『『……………………』』

 

沙那、桜花、奏の3人は、シロナと共にルージュへ行った事があるため、シロナが何を言おうとしているのかは分かっているため、他の生徒達程緊張したような表情はしていなかった。

 

「率直に言うけど………私達勇者は、ルージュの人達から凄く嫌われているのよ。現に私達なんて、町に入る前から門番さんに槍を向けられたし、町に入れば、町の人達に囲まれた上に、危うく攻撃されそうになったわ。ガルムの人……………ラリーさんからは、特にね」

『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』

 

その言葉を受けて、生徒達は目を見開いた。

自分達が勇者である、ただそれだけの事で問答無用で攻撃されそうになるとは、夢にも思っていなかったのだろう。

 

「だから先ず、町に入ったら大人しくするのよ。此方から手を出すのは絶対に駄目。良いわね?」

 

その問いに、生徒達は頷いた。

 

「それじゃあ、行きまsh……「待ってください、皆さん!」………?」

 

突然、シロナの言葉を遮るようにして、少女の声が聞こえてくる。

その声の主の方へと振り向くと、目深にフードを被った人物が、パタパタと走ってきていた。

建物の方から走ってくるため、王宮の関係者である事は間違いないが、やはり格好が格好であるため、非常に怪しい。

そのため、自然と表情に警戒心が表れる。

 

「わ、私です!ユミールです!」

 

自分が警戒されている事を悟った人物は、手を大きく振りながら自分の名を叫んだ。

手を振った拍子にフードが翻り、端正な顔立ちをした、金髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ美少女の顔が姿を現した。

 

「ユミール…………貴女、どうして此処に……………?」

 

駆け寄ってきたユミールに、シロナは目を丸くして訊ねる。

 

ユミールは膝に手をついて呼吸を整えると、シロナを見上げて言った。

 

「先程、シロナさんがお母様と話しているのを聞いたのですが……………皆さん、ルージュに向かわれるのですよね?」

「え、ええ。そうだけど……………」

 

シロナがそう言うと、ユミールはこんな事を言い出した。

 

「それなら、私も連れていってほしいんです!」

『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』

そんな突拍子も無い頼みを受け、F組女性陣は目を見開いた。

 

それから理由を語り始めたユミール曰く、城で保管していた非常食の残りが、彼女等が思っていた以上に少なくなっていると言う。

先日の一件もあり、王都では、無事だった畑を使って野菜や果物を栽培しようとしているのだが、だからと言って、この食料不足を放置出来る訳ではない。

このまま放置しておけば、収穫前に飢えで倒れたり、体調不良を起こす者が出るのは火を見るより明らかであるためだ。

そのため、王族である彼女が自ら出向き、せめて王都住人への食料だけでも提供してもらえるように直談判しようと思い付いたのだ。

王妃が出向く訳ではないが、少なくとも下手に伝令の騎士を向かわせるより未だ良いと言うのが、彼女の考えだった。

 

「でも、少なくともガルムの人達は、私達勇者や騎士団、それに、この国の上層部に良い感情なんて持ってないわ。私達でさえ危ういのに、貴女が行けば…………」

「分かってます。でも、このまま放っておく事なんて出来ません」

 

強い口調でそう言って、ユミールはシロナを見つめる。

その瞳には、何を言われても退かないと言う強い意思が宿っていた。

 

「………………………」

 

シロナは、どうするかを決めあぐねていた。

確かにユミールの言う通り、彼女は王妃ではないが、王女だ。

彼女の発言にも、それなりの力はあるだろう。

だが、それを今のルージュの住人やガルム隊メンバーが聞き入れてくれるとは、到底思えなかった。

シロナは生徒達の方に視線を向け、どうするかを訊ねる。

 

『『『『『『『『『『……………………』』』』』』』』』』

 

生徒達は何も言わず、ただ頷いた。

 

「………分かったわ」

 

シロナはそう言った。

 

「メインの目的は報酬の支払いだけど……………王都の食料不足も酷くなっているから、放っておけないと言うのも、また事実だものね………」

 

そう呟き、シロナはユミールに向き直った。

 

「ユミール、私達と来る?」

「はい!ありがとうございます!」

 

そう言って、ユミールは花が咲いたような笑みを浮かべた。

そして、ルージュへ向かうべく歩き出した、その時だった。

 

「………………ん?」

 

上空から、何やら音が聞こえてきた。

その音は徐々に大きくなり、それを聞いた住人達に緊張が走る。

そして、雲の壁を突き破るように、その音の主が姿を現すと、住人達は目を見開いた。

 

「が、ガルムだ!ガルムの奴が来たぞ!!」

 

轟音を其処ら中に響かせながら、物凄い勢いで垂直降下してくる小さな影から、それがガルムのメンバーだと悟った住人が声を張り上げる。

 

「おいおい、何の冗談だよ!なんで来たんだ!?」

「まさか、また勇者か騎士団が何かやらかしたの!?」

「と、兎に角逃げろ!下手したら殺されるぞ!」

 

そんな事を口々に喚きながら、住人達が王宮の方へと雪崩れ込んできた。

F組女性陣とユミールは1ヶ所に集まり、押し寄せてくる住人達の波に飲み込まれないようにしていた。

 

そうしていると、町の門の方から爆発音が響いてきた。

その爆音で恐怖心を掻き立てられた住人達は、甲高く悲鳴を上げる。

 

そして………………

 

「伏せろ!来るぞぉぉぉおおおおっ!!」

 

住人の1人が叫んだ瞬間、F-15Cを纏った神影が轟音と共に飛んできた。

超音速飛行による衝撃波が、容赦無く彼等を襲う。

そして、その後に続くようにして、ギムレーも通過した。

 

「神影君………!」

 

そんな中で、沙那は神影の姿を捉えていた。

神影が元の体を取り戻したと言う話は聞いていないが、彼女の目には、想い人の本当の姿がしっかりと映っていたのだ。

 

「神影君、元の体に戻ったんだ…………!」

 

シロナや他の生徒達が戸惑っている中、沙那は涙を流し、その場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラ、もっと逃げ回れや神影!当たれば死ぬ程痛ぇぞ!!」

 

沙那が泣き崩れている中、神影とギムレーは王宮の周りを飛び回っていた。

止めどなく飛んでくる20㎜弾を、神影はエルロンロールやナイフエッジで避けていく。

それにより、20㎜弾は王宮の壁や地面に吸い込まれていき、痛々しい弾痕を刻み付け、窓を叩き割るものもあった。

 

それに加えて、アフターバーナーを全開にした2人が間近を通り過ぎていくのもあり、他の窓が次から次へと音を立てて割れていき、中に居た男子生徒やロクサーヌ、騎士団員や他の重鎮達がパニックを起こしていた。

他にも、ギムレーが発射したミサイルが訓練場の壁に命中し、またしても壁の一部が粉々に吹き飛ばされていた。

 

それから2人は進路を変え、未だ門の近くで固まっている住人やF組女性陣の頭上を通過すると、仮住居の窓をも粉々に割り、補強が不十分な屋根や、其処らに散らかっていたゴミや瓦礫などを衝撃波で吹き飛ばしながら、ルージュ方面へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何とか落ち着きを取り戻し、F組女性陣とユミールは、其々の目的を達成するため、ルージュへ向けて出発するのであった。




さて、そろそろ魔人族側の動きも書きたいな………………次回辺りに出来れば良いんだけどなぁ………………

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。