航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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さて、先日は投稿ミスでご迷惑をお掛けしました。

今回のはちゃんとしてますので、どうぞお楽しみください。


第144話~2人のサイファー~

あ、ありのままに今起こっている事を話すぜ!

ラリーの魔法で俺の魂が元の体に戻された事で完全復活を果たし、それを皆で喜んでたら、驚くべき事態が起こった。

何と、俺の魂が抜けた事により、本来なら動かない筈のサイファーの体が動き出し、そのまま俺に近寄って話し掛けてきたのだ!

な、何を言ってるのか分からねぇと思うが、俺自身も何を言っているのかさっぱり分からんかった………………

 

「(…………てか、取り敢えず何かのアニメで見たような状況説明やってる場合じゃないんだよな………………)」

 

なんて内心呟いていると、サイファーが再び話し掛けてきた。

 

「おいおい神影、どうしたんだ?鳩が豆鉄砲食らったような間抜け面しちまってよぉ……………俺の事、覚えてるだろ?」

「い、いや…………勿論覚えてるんだけどさ…………お前、なんで動いてるんだ?俺の魂が抜けたから、本来なら脱け殻みたいに動かないと思うんだが………………」

 

苦笑しながら歩み寄ってくるサイファーに、俺は問い掛ける。

 

「そりゃ、お前の魂が元の体に戻った時に、こうして下界に降りてきたからだよ。そうしねぇと、今度は俺が復活出来なくなっちまうからな」

 

大した事ではないと言わんばかりに平然とした様子で、サイファーはそう答えた。

 

「えっと………………それは、神様とかに頼んで此方に送ってもらった的な感じなのか?」

「いやいや、んな訳ねぇだろ。普通に自分で降りてきたんだよ」

「…………………」

 

最早ツッコミを入れる気力すら起こらなかった。

つまり彼女は、他人を死後の世界から送り返す力と、自分が死後の世界から出てくる力を併せ持っていると言う事になる。

ラリーに続くチートスペックの持ち主が現れちまったな……………

 

「それよか神影、後ろで置いてきぼり喰らってる連中の事ほったらかしにしてるが、良いのか?」

「え?」

 

俺が聞き返すと、サイファーは俺の後ろを指差す。

「…………あっ」

 

彼女が言おうとしている事を察した俺は、まるで油の切れたロボットのような、ぎこちない動きで後ろを向く。

 

『『『『『『『『『『……………………………』』』』』』』』』』

「うわぁ~お……………」

 

俺以外のガルム隊メンバーやアルディアの3人、クルゼレイ皇国の王族2人。そしてエスリアやアリさんと言ったルージュ住人達からの夥しい数の視線が、俺に集中していた。

 

「おお、こりゃスゲェな………………正に視線の嵐だぜ」

俺の横では、サイファーがそんな事を呟いていた。

"円卓の鬼神(Demon Lord of The Round Table)"と呼ばれた彼女も、流石に何百もの視線の嵐には耐えられなかったようだ。

まあ、それにしても………………

 

「(この状況は、マジでキツいぜ……………)」

 

全身に突き刺さるような視線の嵐に加えて、この気まずい沈黙………………その辺の競技大会とは比べ物にならないような緊張感が、この場を支配する。

この異常な緊張感に耐えかねた俺は、我が相棒を頼る事にした。

 

《なあ、ラリー。マジでどうしよう?》

 

僚機念話でラリーに繋げ、俺はそう言う。

 

《いや、急にそんな事言われても……………》

 

ラリーからは、戸惑ったような返事が返される。

 

《この状況を打破する、何か良い案って無いか?一発芸でも何かの宴会でも良いから!》

《だから、いきなりそんな事言われても何も出来ないってば!》

 

ラリーからそんな返事が返される。

ふとラリーの方を向くと、其所には『無茶言うなよ相棒!』と言わんばかりに涙目で此方を見ているラリーの姿があった。

 

《………………すまん、いきなり過ぎたな》

 

俺はそう言って、通信を終えた。

 

さて、取り敢えず、この気まずい状況をどうしたものか………………

 

「はいはいはい!注目!!」

『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』』

 

突然、何処からか手を叩く音と共に聞き覚えのある声が聞こえてくる。

それに驚いた全員が、その音や声の発信源へと目を向けると、其所にはアリさんが居た。

 

「何はともあれ、ミー君が復活した事は変わらないし、新しく人が増えたんだから、何時ものように出迎えてあげようじゃないか」

 

アリさんがそう言った。

 

「ま、まあ………そうだな……」

「ああ、支部長さんの言う通りだ」

「未だ驚きは収まらないけど、ミカゲが完全に復活して、また新しく人が増えたんだものね」

 

アリさんの言葉が功を成したようで、さっきまで混乱していた住人達も、徐々に何時ものペースを取り戻し始めた。

 

「それによく考えたら、こんな事で何時までも沈黙してる場合じゃないわよね!」

「ええ。何せミカゲが完全に復活したんだもの、お祝いしないとね!」

「それもそうだが、新入りさんの歓迎もやらねぇとな!」

 

完全にペースを取り戻すと、住人達は異常なペースで盛り上がりを見せ始めた。

 

「よっしゃ!それじゃあ今夜は、ボウズの完全復活祝いと新入りの歓迎会を、両方一気にやるぞ!」

『『『『『『『『『『オオーーーーッ!!』』』』』』』』』』

 

何度も聞いたオッチャン冒険者の一言で、住人達はすっかりお祭りモードに入った。

 

「つー訳でボウズ!今夜は思いっきり騒ぎまくるぞ!!」

 

すると、住人達に呼び掛けたオッチャンがズカズカ歩いてきてからそう言うと、俺の背中をバシッと叩き、他のオッチャン達と共に、ギルドから持ってきたテーブルを担いで運んでいった。

あまりの急展開で取り残されたエミリアとナターシャさんは、アリさんが対応してくれている。

この前王都を訪れた時、この国の王女に対して物怖じせず話していただけあって、お偉いさんの扱いには慣れているようだ。

 

「ねえ、相棒」

 

その様子を眺めていると、ラリーが話し掛けてきた。

 

「取り敢えず彼女を連れて、一旦宿に戻らない?」

「あ、ああ………そうだな」

 

俺は頷くと、サイファーについてくるよう促し、ラリー達と共に宿へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、王都ではF組女性陣が迷宮に向かおうとしていた。

王宮の敷地内を出入りするための門に近づくと、F組生徒の1人である赤崎涼子は、一旦後ろを向いた。

「良し、どうやら男子は来ていないようね…………」

 

そう呟くと、涼子は前を向いて、F組担任である夢弓シロナに視線を合わせ、頷いた。

シロナも頷き返すと、他の生徒達に出発する事を伝え、先に立って歩き出した。

他の女子生徒達も、それに続いて歩き出した。

そして、王都住人達からの様々な気持ちが含まれた視線を浴びながら、一行は町を出る。

 

「いよいよ、今日からですね………」

 

迷宮に向かう道中、桜花がそう言った。

 

「うん」

 

いつになく真剣な表情を浮かべた沙那が、彼女の言葉に頷く。

 

「(今日から3週間で、神影君達に渡す報酬を何としても揃えないと…………)」

沙那は内心そう呟き、意気込んだ。

 

神影からの信頼を、これ以上失わないために。そして報酬をきっちり払い、親友と共に、長年募らせてきた恋情を打ち明けるためにも、失敗する訳にはいかなかった。

 

「(待っててね、神影君………………ちゃんと、報酬を全て用意して、ルージュに持っていくから……………ッ!)」

 

この場に居ない神影に向けてそう言う沙那の瞳には、固い意志が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、俺が復活したついでと言わんばかりにサイファーまでもが復活した事で起こった微妙な雰囲気も、アリさんのお陰で何とか落ち着き、俺達は宿へと戻っていた。

ラリー達を取り敢えず其々の部屋へ戻すと共にゾーイとアドリアを預かってもらい、俺はサイファーと2人だけで部屋へ入った。

 

「いやぁ~、あの視線の嵐は中々キツかったなぁ。身体中に穴が開くかと思ったぜ」

 

部屋に入ると、サイファーは俺のベッドにどっかり腰掛けてそう言った。

いきなり人のベッドに腰掛けると言うかなり図々しい振る舞いをするサイファーだが、今の俺は、そんな事など気にならなかった。

それ以上に気になる事があったからだ。

 

「えっと………サイファー、ちょっと良いか?」

「ん?」

 

俺がおずおず声を掛けると、サイファーは振り向いた。

 

「アンタ、元の体を回収するために来たんだよな?」

「まあな。魂のままプカプカ浮かんでるのも悪くないが、やっぱり自分の体がある方が落ち着くのさ」

「そっか……………なら、もうそのまま帰るのか?アンタの目的は一応果たした訳だし」

 

そう聞くと、サイファーは微妙な表情を浮かべた。

 

「まあ、確かに目的は果たしたんだけどな………………何つーか、戻ったところで暇なんだよ。俺の愛機は無いし、お前みたいに機体を身に纏う事も出来ねぇ。おまけにピクシーだって居ねぇ………………ただ何も無い空間で彷徨くだけなんて、俺には合わねぇんだよ」

 

そう言って、サイファーは溜め息をついた。

あの世界で何れだけ過ごしていたのかは分からんが、この様子からすると、かなり退屈していたように思える。

 

「………………」

 

そんな彼女を見た俺は、駄目元でこんな提案をしてみた。

 

「それなら、俺等と一緒に来るか?」

「ん?」

 

俺がそう言うと、サイファーは俺を見上げた。

 

「いや、その………………あの世に戻って退屈な生活を続けるのが嫌なら、俺等と一緒に、この世界を飛び回るってのはどうかな…………っと思って、提案してみたんだが………」

「成る程、ソイツは面白そうだな………」

 

サイファーは、何やら食いついたような反応を見せた。

 

「だが神影、お前ってこの世界の人間じゃねぇんだろ?確か、此処とはまた別の世界から召喚されたと思うんだが」

「そうだけど………よく知ってるな」

「天国からずっと見てたのでね」

 

サイファーはそう言った。

 

「それで、どうなんだ?」

「……………ああ、確かにそうだ。俺はこの世界の人間じゃない。何時かは元の世界に帰る事になる」

 

俺は頷いたが、此処で逆接を加える。

 

「だが、それでこの世界からおさらばして終わりってのは嫌でな」

「まあ、こんな暖かく迎えてくれる人達と永遠の別れってのは嫌だろうな」

 

サイファーが俺に同意する。

 

「だからこの前、ラリー………………ああ、俺の魂をアンタの体から移し替えた金髪の男なんだけど、ソイツ、魔法に関しては結構な腕を持っててな。ある話をしたんだよ」

「"話"、ねぇ…………まさか、世界と世界を繋ぐ魔法を作るとか?」

「その通りだ。もし、彼奴がその魔法を作り出す事が出来たら、俺達は元の世界と此処を自由に行き来する事が出来る。俺が元々住んでた世界で暴れたら事件になるから、暴れたくなったら、また此処に来て暴れたら良い」

 

俺の話を、サイファーは黙って聞いていた。

 

「………とまあ、こう言う訳なんだが………………どうだ?」

「……………………」

 

サイファーは暫く黙って俺を見ていたが、やがて視線を落とした。

 

「…………まあ、またあんな退屈な生活に戻るより楽しめそうだな」

 

そう呟くと、再び顔を上げた。

 

「分かった、お前等と一緒に行くよ」

 

そう言って立ち上がると、サイファーは手を差し出してきた。

 

「よろしく頼むぜ、神影」

「おう」

 

そう言って、俺達は握手を交わした。

それから俺は、僚機念話で他のメンバー全員を呼び出し、サイファーがガルム隊に入る事を伝える。

最初は驚いていたラリー達だが、彼女が本物の"円卓の鬼神"である事や、あの世に戻っても退屈するだけである事を伝えると、納得したらしく、彼女の加入を受け入れた。

 

こうして、ヒューマン族(?)と半人半魔(魔神)、人型戦闘機で構成された我がガルム隊に、ゲームの登場人物が加わるのだった。




………………と言う訳で、サイファーのガルム隊入りが決定しました。

どんどんカオス化していくガルム隊。
人外だけで構成されたチームに入るとしたら、やはり彼女も………………?


そして次回はパーティー&サイファーのステータス紹介です。
果たして彼女のステータスは如何程か………………!?

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