航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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タイトルが俳句みたいになった。

まあ、コレだと五七五が六七五になるんですけどね…………( ̄∇ ̄;)


第140話~勇気を持ち、1歩踏み出し、向き合おう~

さてさて、請求の内容についてのゴタゴタを無理矢理解決(?)させた俺達ガルム隊とアリさんは、ルージュに戻ってきた。

先にゾーイ達を着陸させ、彼女等が機体を解除するのを待ってから、ヘリを展開している俺とラリー。そして、機体がVTOL機であるリーアが着陸した。

 

2人は、着陸して直ぐに機体を解除したのだが、俺はそうする訳にはいかない。何故なら、お客さんが乗ってるからな。

 

「さて……………アリさん、着きましたよ」

 

纏っていたブラックホークのエンジンを切り、俺はコンテナの中に居るアリさんにそう言った。

すると、スライド式のコンテナのドアが開き、アリさんが降り立つ。

 

「ああ、ミー君。今日もお疲れ様」

 

アリさんから労いの言葉を受けてから、俺はブラックホークを解除する。

 

「それで相棒、これからどうするの?依頼受ける?それとも迷宮を荒らす?」

 

唐突に、ラリーがそう訊ねてきた。

 

「いや、特に考えてなかったな……………まあ、俺としては、自由行動で良いと思ってるが…………」

 

そう言いかけて、俺はガルム隊女性陣に目を向ける。

彼女等も特に異論は無いらしく、頷いた。

 

「それなら、僕は宿に行かせてもらうよ。早く君の体の修理を終えないといけないからね」

「頑張ってくれるのは嬉しいが、無茶だけはしないでくれよ?それで体壊したら本末転倒だからな」

「分かってるって」

 

手をヒラヒラ振りながらそう言って、ラリーは宿へと歩いていった。

 

「不安だなぁ…………」

 

そう呟き、俺はエメルとリーアに視線を向けた。

 

「エメル、リーア。悪いけどラリー見張っといてくれねぇか?放っといたらずっとやりそうなんだよ、彼奴」

「は、はい!了解です!」

「任せといて。ラリーが無茶しそうになったら、直ぐ止めさせるわ」

そう言って、2人はラリーを追って宿へと向かった。

 

「んじゃ、俺等はどうしようかな……………?」

 

俺がそう呟いた時だった。

 

「ミー君、ちょっと良いかな?」

 

不意に、アリさんが話し掛けてきた。

 

「何ですか?」

「ああ、先日の報酬を未だ渡してなかったからね」

 

そう言って、アリさんは懐から金貨1枚を取り出して俺に差し出した。

 

「……………?アリさん、報酬は銀貨5枚って事で話をつけましたよね?」

 

白銀に請求書を渡すため、王都への送迎と護衛を依頼された際に決めた報酬額の2倍支払ってきたアリさんに、俺はそう訊ねた。

 

「ああ、コレは今日の送迎の分も含んでいるんだよ」

「いや、今日のは別に依頼された訳じゃないので要りませんよ」

 

俺は両手をヒラヒラ振りながらそう言った。

てか、こうやってアリさんのお出掛けでブラックホーク使う度にお金貰ってたら、最早タクシーになっちまうよ。

てか、コレ称号に"空飛ぶタクシー"って付いたりしないか心配になってきたんですけど……………

 

「取り敢えず、お金は先日の分で結構ですので」

 

そう言って、俺は一先ず、収納腕輪からお金を入れた袋の1つを取り出して金貨を入れると、銀貨5枚を取り出してアリさんに渡した。

 

「はい、お釣りね」

「遠慮しなくても良いのに、謹み深いなぁ…………」

 

苦笑を浮かべて、アリさんはそう言った。

 

「それに、ギルドで飯奢ってもらう約束もしてますから……………一応聞いておきますが、忘れてませんよね?」

「フフッ……………ああ、勿論忘れてないよ。また今度、ちゃんと奢るからね」

 

そう言って、アリさんはギルドへ入っていった。

 

「なあミカゲ、何時の間にそんな事約束してたんだ?」

 

すると、突然ギャノンさんが話し掛けてきた。

 

「"そんな事"って?」

 

そう聞き返すと、ギャノンさんは分かってる癖にと言わんばかりの表情を浮かべて口を開いた。

 

「支部長さんに飯奢ってもらうって約束に決まってんじゃねぇかよ。オレ初耳だぜ?」

「そりゃそうですよ。言ってないし」

「うわぁ、あっさり言ったね…………」

 

不服そうに言うギャノンさんにそう返すと、グランさんが苦笑を浮かべながらそう言った。

 

「うぅ~…………ミカゲだけズルいぞ、オレも交ぜろ!」

「それはアリさん次第ッスね」

 

駄々っ子みたいに言うギャノンさんに、俺はそう言った。

…………この人、20歳超えてるのに今回の言動はめっちゃ子供っぽいな。

アドリアも苦笑してるし。

 

「はいはい、ギャノン。ミカゲ君を困らせないの」

 

其処で割り込んできたグランさんが、ズルいズルいと駄々をこねるギャノンさんを宥めてくれた。

流石はガルム隊最年長だと言いたいところだが、俺がリーダーである故に、何と無く複雑な気分になる。

 

「それからミカゲ君、女の子に年齢の話持ち出したら駄目だよ?」

「あ、はい」

 

…………………毎回思うんだが、何故俺の知り合いには、こうも心を読める人が多いんだ?

それとも、単に俺が分かりやすいだけなのか?

 

「………………あれ?そういやゾーイは何処行った?」

 

なんて考えていると、ゾーイが居なくなっている事に気づいた。

 

「ゾーイでしたら、宿の方へと向かいました」

 

アドリアがそう言った。

 

「そうか……………前みたいに避けたりしなくなったとは言え、やっぱり未だあの時の事、引き摺ってんのかな……………?」

 

俺に怒鳴り散らした事については、全く気にしてないんだがな………

 

「う~ん………多分、ゾーイちゃんは別の事で悩んでると思うなぁ」

 

不意に、グランさんがそう言った。

 

「なら、彼奴は何に悩んでるんですかね…………?」

「それが分からねぇんだよな。オレ等にも言わねぇし」

 

ギャノンさんもそう言う。

 

相変わらず様子がおかしいゾーイに謎が深まる一方だが、それが今夜になって解決する事など、今此処に居る俺達には知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ギルドの前でじゃれ合っている神影達を置いて先に宿へと戻ってきたゾーイは、自室には戻らず、ある部屋の前に立っていた。

そのドアノブには、『特別貸し出しにより、ガルムの方以外の立ち入りを禁ずる』と書かれたプレートが提げられており、幾つもの部屋が並ぶ廊下で異彩を放っていた。

「……………………」

 

生唾を飲み込み、ドアをノックする。

 

「どうぞ」

 

彼女とアドリアが"お姉様"と呼んでいる少女、エメルからの返事が、ドア越しに返される。

 

「失礼します」

 

そう言って、ゾーイはドアを開けて部屋に入る。

 

「ゾーイ…………?」

 

部屋には、神影の本来の体がベッドの上に寝かされており、それを囲むようにして、ラリーとエメル、そしてリーアの3人が居る。

3人は、普段この部屋には近寄らなかったゾーイが入ってきたのを見て目を丸くしていた。

 

「へぇ、珍しいね。君が此処に来るなんて…………何かあったのかい?」

 

目をぱちくりさせながら、ラリーがそう言った。

 

「……………………」

 

ゾーイは何も言わず、ただラリーを見つめていた。

そして、そのまま見つめ合うこと数分、彼女は口を開いた。

 

「ラリー様、ご相談があるのですが…………」

「"相談"?僕に?」

 

自身を指差して聞き返すラリーに、ゾーイは頷いた。

 

「はい。出来れば、誰も来ないような場所で」

「……………?まあ、別に良いけど」

 

そう言って立ち上がると、ラリーは再び、神影の体を凍らせて収納腕輪にしまった。

そして、エメルとリーアに留守番を頼んでから、ゾーイと共に部屋を出ると、"誰も来ないような場所で"と言う彼女の要求に答えられるような場所を模索した際、神影と共に冒険者登録をした日に、シルヴィアからの依頼で殲滅した盗賊団"黒雲"が根城としていた山岳地帯を思い出し、其所へ転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、到着」

 

ゾーイからの相談を受ける事にした僕は、シルヴィアさんからの依頼を受けて、相棒と一緒に殲滅した盗賊団"黒雲"が根城にしていた、例の山岳地帯にやって来た。

 

「あの、ラリー様………此処は…………?」

 

キョロキョロ見回しながら、ゾーイが訊ねてくる。

 

「此処はね………………僕と相棒が、初めて人を殺した場所だよ」

 

そう言って、僕は当時の事を話した。

 

シルヴィアさんから、黒雲に捕まった友人のエレインさんや、村の女性達を助けてほしいとの依頼を受けて、黒雲の連中を皆殺しにした事や、連中を始末した後、洞穴の奥の牢屋に、裸だったり、粗末な奴隷服姿で閉じ込められていた女性達を相棒が連れてきて、その何とも言えない光景に言葉を失った事。

そして、捕まっていた女性達の中に、ソブリナ達アルディアの3人が居たと言う事を。

 

「成る程、そのような事が……………」

「そう。んで、僕が家から着替えとかを持ってきたんだけど、その時相棒、女性20人の中に男1人で取り残されて気まずかったんだってさ」

 

当時の事が思い出されて自然と笑みが溢れるが、僕は頭を振って、表情を引き締めた。

そして、ゾーイに向き直って口を開いた。

「それじゃあゾーイ、そろそろ本題に入ろうか」

「………………はい」

 

僕が言うと、ゾーイも真面目な………………いや、何やら辛そうな表情を浮かべて頷いた。

 

「コレは僕の予想だけど………………相棒絡みかい?」

「はい…………」

 

そうしてゾーイは、彼女の悩みをポツリポツリと語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………と言う事なのです」

「そっか…………」

 

話の内容はこうだ。

 

先ずゾーイは、魔人族との戦闘中、男の魔人族の攻撃を受けそうになった彼女を相棒が庇って被弾、墜落した上に、勇者の中の馬鹿数人が泥人形で騒ぎを起こした際、王都住人や勇者の連中に急かされ、重傷を負っているのに出撃していった相棒を回復させてやれなかった事に負い目を感じていたらしい。

 

 

あの時、自分が回りを見て、攻撃を受けそうにならなければ………………

あの時、急き立てる王都住人や勇者の連中の言葉を無視してでも、回復させていれば………………

 

そんな自責の念から、彼女は、『自分には、今まで通りに甘える権利は無い』と勝手に判断して、距離を置こうとしていたのだと言う。

 

「でも、私は…………」

 

そう言いかけて、ゾーイは目に涙を浮かべた。

 

「やはり、私は…………ミカゲ様、と……一緒に、居たいん、です…………ッ!ミカゲ、様の……お傍、で………ずっと………ずっと………ッ!」

 

肩を震わせ、嗚咽を漏らすゾーイ。

 

「…………………」

 

きっと、相棒が勇者に殺されてからずっと………………相棒が復活してからも、彼女は、この自責の念と、『一緒に居たい』と言う葛藤に苦しめられてきたんだろう。

でも、どうして良いのか分からず、それが相棒を遠ざけ、怒鳴り付けて傷つける結果を招いてしまった。

 

「あの時、だって…………ミカゲ様は……ただ、私を………………ッ!」

「ああ、分かってるよ。ゾーイ」

 

僕はそう言って、彼女の肩を優しく叩く。

 

そして僕は、こんな事を言ってみる。

 

「それにね、ゾーイ。君に怒鳴られたって話を相棒から聞いた時、彼奴は確かにショックを受けてたよ。でもね、それで君を嫌いになる程、相棒と君の関係は薄っぺらいものだったのかい?相棒は、そんな器の小さいクソ野郎なのかい?」

「………………ッ!そんな事は、ありませんッ!!」

 

顔をガバッ!と上げたゾーイが、強い口調で叫んだ。

 

「私は、ミカゲ様を心の底から愛しています!!それにミカゲ様は、冷たく接して、1度は彼の思いを踏みにじった私やアドリアでも受け入れてくださった、寛大なお方です!!」

「そう、それが聞きたかったんだ」

 

僕は笑みを浮かべた。

 

「君が相棒を愛しているように、相棒も君を愛しているんだ。きっと今だって、相棒は君の事を想ってるよ」

 

そう言って、僕は彼女の両目から溢れる涙を、指でそっと拭った。

 

「良いかい?ゾーイ。今の君は、相棒に自分の気持ちを伝える事から逃げている。だから、こんな微妙な関係がズルズル続いているんだ」

 

僕がそう言うと、ゾーイは顔を伏せる。

 

「相棒は、何時もの君を望んでいるんだ。どうしようもないくらいに甘えてくれた君を………………それに君だって、こんな関係がずっと続くのは嫌だろう?何時ものように、相棒に甘えたい筈だ………………違うかい?」

 

その問いに、ゾーイは首を横に振った。

 

「なら勇気を持って、1歩踏み出して、ちゃんと相棒と向き合って、自分の気持ちをしっかり伝えるんだ。それが、今の君がやるべき事だ」

「私が………やるべき、事…………」

 

そう呟き、ゾーイが顔を上げる。

 

「そう、君がやるべき事だ。ちゃんと向き合えば、相棒はしっかり答えてくれるよ。だって、ホラ」

 

そう言って立ち上がると、僕は魔神としての力を解放する。

手の甲や腕に紋様が浮き上がる。

きっと彼女の目には、頬にも紋様を浮き上がらせ、瞳が赤く変色した僕の顔が映っている筈だ。

 

「相棒は、魔神とヒューマン族のハーフである僕でも受け入れてくれるんだよ?それに相棒の事だから、『お前そんなモンで悩んでたのか?』とか何とか言って、笑って許してくれる筈だからね………………さあ、分かったらさっさと行っておいで」

「…………ッ!はい!ありがとうございます!」

 

咲き乱れる花のような笑みを浮かべてそう言うと、ゾーイはルージュへ向けて飛び去った。

 

「ふぅ……………」

 

ルージュへ向かっていく彼女が撒き散らす轟音を聞きながら、僕はその場に寝転がった。

 

「…………似ていたな、この前の僕と………」

 

自分の正体が、遠い昔に滅んだとされている魔神とヒューマン族のハーフである事に気づいた僕は、最初、相棒に気味悪がられるのではないかと不安だった。

コレが普通の魔人族とヒューマン族とのハーフだったり、魔王か幹部魔人族の血筋だったら未だマシだったと思うが、よりにもよって、魔王のさらに上……………下手をすれば、この世の頂点に君臨するとも言える魔神とのハーフ………………不安で仕方無かった。

でも、相棒はそんな僕でも受け入れてくれた。

だから僕は、相棒を信じてるし、彼の2番機で居られる事を誇りに思っている。

 

「相棒、君なら彼女を………………受け入れてくれるよね?」

 

僕は、今頃ルージュの町を彷徨いているであろう相棒に、そう問い掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2人が和解したとの知らせを聞くのは、今日の深夜の事だ。


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