さて、この山岳地帯を根城にしている盗賊団、黒雲の連中を葬った俺は、女性達を解放するために暗い洞穴を進んでいた。
脳内に思い浮かべたレーダーで辺りを探ったところ、洞穴の中は一本道だったので、俺は迷う事無く進んでいる。
唯一困る事と言えば灯りなのだが、それも既に解決した。
何と、両膝の部分にライトが付けられている事が分かったのだ。
何故膝にライトが付けられているのかは分からんが、無いより良いのは確かなので、俺はありがたく使わせてもらっている。
少し歩くと、木製の格子が見えてきた。あれが、女性達が閉じ込められている牢屋だ。
当然ながら、向こうも俺のライトを見ている訳で、何やら奥の方で騒いでいるのが聞こえる。
取り敢えず、俺が敵ではない事を知ってもらう必要があるな。
「おーい!奥の牢屋に居る人達、聞こえるか!?」
俺は牢屋に居る女性達に呼び掛ける。
「安心してくれ!俺は敵じゃない、冒険者だ!」
そう叫んで、俺は向こうからの応答を待つ。
「本当に冒険者なの!?」
すると、向こうの方から女性の声が聞こえた。俺も直ぐ返事を返す。
「ああ、そうだ!Fランク冒険者の神影だ!」
「え、Fランクですって!?」
俺が名乗ると、驚き混じりの声が聞こえてきた。
「(あ、そういやFランクって、冒険者の中でも一番下のランクだったな、すっかり忘れてた)」
とは言え、此処で言い直したら変に怪しまれるだけだし……取り敢えず牢屋の方に行って、直接話をした方が良さそうだな。
そう思った俺は、一先ず牢屋の方へと駆けていく。
すると、牢屋に居る女性達が何やら騒ぎ出す。一体何だ?
「おーい、どうした?何かあった……の、か…………?」
牢屋の前に来て、中を膝のライトで照らした俺は目を疑った。
何故なら、閉じ込められている女性達が、胸と腰に薄汚れたボロ布を巻き付けただけと言う、ほぼ裸同然の姿だったからだ。
てか、何人かは完全に裸だ。ボロ布も何も纏っていない、生まれたままの姿になっている。
「え………え~っとぉ…………」
『『『『『…………………』』』』』
格子を挟んで見つめ合う俺達。
洞穴の奥で流れる沈黙。そして、その沈黙を破ったのは…………
「すみませんでした」
………言うまでもなく、俺でした。
そりゃあ、裸同然の姿(一部はマジで裸だった)を見てしまったら、もう……………ね?
「やあ、ミカゲ。随分と時間が掛かった………んだ、ね………?」
あれから、取り敢えず外に行こうと言う話になり、俺は一旦ハリアーを解除して零戦に展開し直すと、刀で格子を壊して女性達を解放し、洞穴の外へと連れ出したのだが、此処で新たな問題が発生した。
炎系の魔法で死体の処理を終えたラリーが俺に気づいて振り向いたのだが、その際には当然、裸同然の姿の女性達を目の当たりにする訳なので……………
「ね、ねぇミカゲ………コレ一体どういう事なのかな?」
「あー、いや………それがな………」
俺がラリーに事情を説明し、それを信じてもらうには30分程掛かった。
「成る程、そう言う事だったのか……………それにしても酷い連中だね、服を剥ぎ取った上にこんな汚いボロ布だけ着せて、その状態で洞穴の中に夜まで放置するなんてさ」
表情をキツいものに変え、胸の前で腕を組んだラリーがそう言う。
「と言う訳でさ、彼女等に服を見繕う事って出来ねぇかな?」
俺がそう訊ねると、ラリーは笑みを浮かべて頷いた。
「それなら大丈夫。親の服を持ってくるから、それを彼女等に着せれば良いよ。コレぐらいの人数なら余裕さ」
「おっ、それは良いな」
こうして話は纏まり、俺が此処に残って彼女等の護衛をしている間に、ラリーはルビーンに戻って、家から服を持ってくる事になった。
「ちょい待てラリー、コレ持ってけ」
俺はそう言うと、右手首に着けていた収納腕輪を外してラリーに投げ渡す。
「それを使えば、20着ぐらい1回で持ってこれる。使え」
「了解。ありがとう、ミカゲ!」
そう言うと、ラリーはルビーンに向けて飛び立っていった。
「さてと………」
そう呟いて、俺は後ろを向く。
すると、20人からの視線が一気に突き刺さる訳で………
「(い、居心地メッチャ悪い…………)」
傍から見ればハーレム天国とも言えるだろうが、実際に立ってみると地獄に居るような気分だ。
クラスに居た時の居心地の悪さとは比べ物にならない。
一先ず彼女等に背を向け、これからどうしたものかと悩んでいると、相手の方から話し掛けてきた。
「えっと…………ミカゲ、だったわよね?」
「ん?」
声を掛けられて振り向くと、紫色の髪に蒼い瞳を持つ美人さんが立っていた。
「あ、ああ。そちらさんは…………」
「私はソブリナ。Cランク冒険者パーティー"アルディア"のリーダーで、天職は戦士。よろしくね」
Cランクか…………それじゃあ、結構な上級冒険者なんだな。
「今回は、本当にありがとう。貴方達のお陰で、誰も彼奴等に傷つけられずに済んだわ」
そう言って、ソブリナさんが笑顔を向けてくる。
「お、おう………」
何つーか、美人さんに笑顔で礼を言われるってのは、面映ゆいモンだなぁ………
そうしていると、何やら2人の女性が歩み寄ってきた。
1人は赤髪赤目のスレンダー美人で、もう1人はかなり小柄だが、その割には胸が大きい。所謂"ロリ巨乳"と言うヤツだ。
「あら、ソブリナ。もう打ち解けたのね」
「ええ、中々可愛い冒険者さんよ」
「黒髪に、金色の目………結構、タイプ……」
どうやら2人は、ソブリナさんの仲間らしい。
つーか、男としてのプライドが傷つくから『可愛い』って評し方は止めてほしいんだがなぁ。
それと、何やら小柄な女の子からの視線が恐いんだが………
そう思っていると、2人が俺の元に歩み寄ってきた。
「私はエリス、アルディアのメンバーで、天職は剣士よ。助けてくれてありがとう、冒険者さん」
「ニコル………天職は回復師………助けてくれて……ありがとう…………」
「お、おう…………どういたしまして」
エリスさんやニコルさんからも立て続けに礼を言われ、俺は若干歯切れが悪くなりながらも返事を返す。
そんな俺を見て警戒心が解けたのか、他の女性達もワラワラ寄ってくると、礼を言ってきた。
17人の美人・美少女から立て続けに礼を言われ、たじたじになった俺を誰が責められようか。
まぁ、礼を言われて悪い気はしないのだが、流石に美人・美少女20人に対して男が俺1人ってのは……………気まずくて軽く死ねる。
心の底から、ラリーが早く帰ってくる事を祈っていると、何処からかジェット機の轟音が聞こえてきた。ラリーだ。
脳内に思い浮かべたレーダーに機影が映る。
彼奴F-15使ってやがるな………俺は未だ使えないってのに……………
「ッ!な、何なの!?この音は!」
ソブリナさんがそう言うと、女性陣の中でどよめきが広がる。
「大丈夫ですよ、俺等の味方ですから。さっき服を取りに行かせた奴が戻ってきたんですよ」
俺はそう言って、軽くパニック状態に陥っている女性陣を落ち着かせる。
てか、アンタ等ラリーが飛び立つ時は全然パニクってなかったのに、此処でパニクるのかよ…………
苦笑を浮かべながら女性陣を落ち着かせていると、着陸したラリーが近づいてきた。
「ただいま、ミカゲ。頼まれてたもの、持ってきたよ」
「おう、ご苦労さん」
俺がそう言うと、ラリーは俺が貸した収納腕輪から次々に服を出していった。
目の前に積み上げられた服に、女性陣は呆然としている。
「あー、取り敢えず適当に着といてください。流石に、そんな姿で何時までもいられたら此方としても気まずいので」
何時までも固まっている女性陣に、ラリーがそう言う。
すると、今の自分達の姿を改めて認識した女性陣が、顔を真っ赤に染めて縮こまる。
てか、今まで自分等の姿忘れてたのかよ…………
それから、女性陣が着替えるとの事なので、俺とラリーは岩場の影に場所を移した。
「はい、ミカゲ。借りてた収納腕輪」
「おう」
ラリーから収納腕輪を受け取り、右手首に着け直す。
「にしても悪かったな、使い走りみたいな事させて」
そう言うと、ラリーは首を横に振った。
「気にしなくて良いよ。寧ろ、此方の方が良かったぐらいさ。流石にあの中で男1人と言うのは気まずいからね」
どうやら、コイツとはとことん考えが合うようだ。
「因みに、俺はお前が帰ってくるまでの間、そんな気分をずっと味わっていたんだがな」
「お疲れ様………」
ラリーが苦笑を浮かべた。
そんなラリーを横目に、俺は自分のステータスを確認する。
名前:古代 神影
種族:ヒューマン族
年齢:17歳
性別:男
称号:異世界人
天職:航空傭兵
レベル:41
体力:200
筋力:175
防御:180
魔力:100
魔耐:130
俊敏性:240
ふむ、余程盗賊団員一人一人のレベルが高かったのか、レベルもかなり上がって、ステータス値も増えたが………相変わらず魔法系のステータス値が低いな。
それじゃあ次に航空兵器を見ておこう。
『戦闘機』
F-16C Fighting Falcon
Mig-21-93
Typhoon
F-14D Super Tomcat
F-15C Eagle
Su-33 Flanker-D
『攻撃機』
F-2A
F-117A Nighthawk
A-10A Thunderbolt Ⅱ
『多用途戦闘機』
F-4E Phantom Ⅱ
F/A-18F Super Hornet
Rafale M
F-15E Strike Eagle
『攻撃ヘリ』
AH-64D Apache Longbow
「…………」
キターーーーーーッ!!
遂に来ましたよ皆さん!待ちに待った攻撃ヘリとF-15シリーズとスホーイシリーズが!
よっしゃ!これで勝つる!
このままの勢いでSu-34や35、37は勿論、Pak-fa等々、俺が好きな機体を全部ゲットしてやるぜ!
俺は今ッ!最ッッ高にッ!ハイってヤツだァァァアアアアッ!!
「くっ………くくくっ」
「え?ミカゲ、何笑ってるの?」
横に居るラリーが戸惑っているが、そんなの知ったこっちゃない。
そのまま感情に任せて叫ぼうとした時…………
「お、お待たせ…………」
着替えを終えたソブリナさんがやって来た。少しサイズが大きめの服を着ている。
「もう着替えは終わったの?」
「ええ。ごめんなさいね、待たせて」
「ううん、気にしなくて良いよ。それじゃあミカゲ、僕等もそろそろ行こう………って、あれ?ミカゲ、なんで落ち込んでるの?」
「………何もねぇよ」
別に気にしてないもん。せっかくのムードをぶち壊しにされて軽く落ち込んでる訳じゃ無いもん。
俺はキョトンとした表情で首を傾げている2人を無視して、峡谷の広間へと向かうのであった。