航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第130話~無慈悲な殺戮~

「さあテメェ等!恐れ戦け!絶望を感じて、何も出来ぬまま散っていけぇぇぇぇえええええっ!!!」

 

そんな怒鳴り声を響かせ、爆音と共に突っ込んでくる神影に、盗賊達は戦慄の表情を浮かべる。

 

「な、何なんだよ彼奴………?」

「空飛んでやがるし、何か所々に鉄みたいなの纏ってるし…………」

「あれは、何かの魔道具の一種なのか?それとも、元々こう言う形してる奴なのか……………?」

 

そう言いながら、向かってくる神影に怯む男達。

だが、そんな中で攻撃魔法を放つ者が1人居た。

 

「我が手に現れし赤き流星よ、此処に焔となりて彼の者を焼き払え!"火球(ファイアボール)"」

 

それを放ったのは、ロバートだった。

彼の手から放たれた火球は、神影目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。

 

「フンッ!そんなのに当たるかってんだ!」

 

だが、それをあっさり喰らう神影ではない。

神影は横向きに宙返りして、火球を避けた。

 

「そ、総大将…………?」

 

いきなり火球を放ったロバートに、手下の男達は唖然とする。

そんな彼等に、ロバートからの喝が飛んだ。

 

「何たった1人の女相手に怖じ気づいてんだテメェ等!あんなの、撃ち落としちまえば問題ねぇだろうが!」

 

その言葉を受けた手下の男達は、ハッと我に返った。

 

「そ、そうだ!空飛んでるが、相手はたった1人。此方は未だ何十人も居るんだ!」

「あんな奴、撃ち落としちまえば恐くねぇ!」

「彼奴も生け捕りにして、勇者や支部長の女、6人纏めて仲良く犯しまくってやろうじゃねぇか!」

「良し、やってやるぜ!」

 

すっかり士気を取り戻した男達は、飛び回る御影を追い始める。

 

「俺を犯す?ハッ!やってみろやゴミ共!」

 

そんな彼等を鼻で笑い、神影はアパッチに搭載されている全武装を容赦無く放つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『…………………』』

 

沙那、桜花、奏、そしてシロナの4人は、目の前で繰り広げられている光景が信じられなかった。

 

バリバリと爆音を轟かせながら飛び回る女性が、ロケット弾や空対地ミサイル、そして機関砲を容赦無く叩き込み、盗賊を次々に殺していく。

メインローターの爆音、ロケット弾やミサイルが放たれる音や、着弾した事による爆発音、機関砲の砲声、そして、それらを喰らう盗賊達の叫び声や、女性に攻撃を仕掛ける男達の怒鳴り声が、この夜空に響き渡っている。

 

「か、彼女は………一体……………?」

 

呆然とした様子で、シロナがそう呟く。

 

「うわぁ~、ミー君も容赦無いなぁ。オーバーキルも良いところだよ」

 

そんなシロナの隣では、まるで花火を見ているような調子で、アリステラがそんな感想を溢していた。

 

「あの、支部長さん………」

 

其処へ、奏が恐る恐る声を掛けた。

 

「ん?どうしたの?」

 

殺戮ショーの見物を中断し、アリステラが奏の方を向いた。

 

「あの女性がさっき言った事と言い、支部長さんが、あの女性を"ミー君"と呼んでいた事と言い……………彼女は一体、何者なのですか?」

 

奏が訊ねると、他の3人もアリステラに視線を向ける。

 

「(ん~、やっぱり聞いてきましたか……………まあ、私としては喋っても良いと思うんだけど、ミー君がどう言うのやら………)」

 

内心そう呟き、アリステラは盗賊達を殺している神影に目を向ける。

 

「(まあ、此処で誤魔化しても意味無いだろうし……………言っちゃっても良いよね?)」

 

1人で勝手に話を完結させると、アリステラは4人の方を向いた。

 

「信じられないかもしれないけど……………あれ、ミカゲ君だよ」

『『ッ!?』』

 

アリステラが言うと、4人は目を見開いた。

 

「と言う事は、つまり……………あの女性は、古代君なのですか!?」

「その通り。君達と同じように"勇者"として召喚された、ミカゲ・コダイ君だよ」

 

シロナが訊ねると、アリステラは頷いた。

 

「で、でも神影君は、富永君達に殺されて…………」

「そう。君達勇者を助けたのに、その勇者達に殺された筈のミー君が、何と女になって生き返ったんだよ」

 

狼狽しながら言う沙那にそう返し、アリステラは神影へと視線を戻した。

気づけば、何十人も居た盗賊の人数も激減しており、今では、立っているのも20人になっていた。

 

「クソッ……………こうなったら!」

 

何を思ったのか、1人の男がアリステラ達に向けて火球を放つ。

 

「ゲヒャヒャヒャヒャッ!おい、女ぁ!この場にお前以外の女が居るって事、忘れちゃいねぇよなぁ!?」

 

下品な笑い声を上げて、男はそう言った。

 

「……………ッ!」

 

自分達の方に向かってくる火球に気づいたアリステラが、沙那達を庇うように前に出る。

 

「ホラホラ!早くしねぇと、あの女が火達磨にな…………………え?」

 

男の高笑いは、急に止まった。

彼が気づいた頃には、神影は既に、アリステラ達の上に居たのだ。

 

「アパッチの機動力舐めんな、ゴミ野郎」

 

そう言うと、神影はアパッチのエンジンを切ってアリステラ達の前に降り立つと、そのまま火球の直撃を受ける。

それなりに威力があったのか、着弾の衝撃で、アパッチの装甲やローターブレードの破片、片方のスタブウィングが飛び散り、神影は炎に包まれる。

 

「ッ!神影君!」

 

それを見た沙那は悲鳴に近い声で神影の名を呼び、奏や桜花は両手で口許を覆う。

シロナは、火達磨になっているであろう生徒の姿を想像し、目を固く瞑った。

 

「……………………」

 

だが、アリステラだけは、ただ火柱を見つめていた。

そして、ふと口を開く。

 

「ミー君、久々にダメージを受ける感覚はどうだい?」

『『えっ?』』

 

全く焦った様子も無く火柱に向かって問い掛けるアリステラに、4人は思わず顔を上げる。

 

「こんなの、前と比べたら痛くも痒くもないッスよ。真面目にやってんのか疑うレベルだ。まあ、アパッチ壊れましたけどね」

 

そんな声が聞こえると、その火柱は放散し、所々が焦げただけで済んでいる神影が姿を現した。

 

「あ~あ、髪も焦げてるし……………コレ、サイファーにどう言い訳すりゃ良いんだよ?体返す時絶対怒られるじゃねぇか」

 

ポニーテールに纏められている部分を触ったり、剥がれた装甲や、折れたローターブレードを見ながら、神影はそう言った。

 

「こ、古代……君…………?」

 

そんな神影に、シロナがおずおず声を掛けた。

 

「はい、何ですか?先生」

神影はそう言って、右腕に装着されているM230A1をバットのように肩に担いで振り向いた。

 

所々が焦げている上に、飛び散った破片が当たったのか、顔や腕から血が出ているが、本人は元気そうだ。

 

「え、えっと……その………」

 

どう言えば良いのか分からず、言葉を詰まらせるシロナ。

 

「……………」

 

そんなシロナを見ていた神影は、フッと笑みを浮かべた。

 

「まあ、詳しい話は後にしましょう。今は後ろの馬鹿共を始末するのが先だ」

 

そう言って、神影は盗賊達の方へと向き直る。

 

「ハッ!何一丁前にカッコつけてんだよ?おいテメェ等、殺さない程度に痛め付けてやれ!!」

 

ロバートが言うと、残った男達が神影に集中砲火を浴びせる。

 

「あ~あ、こりゃアパッチじゃ防げそうにねぇや……………Spirit!」

 

神影がそう言うと、纏っていたアパッチが光を放って消え、入れ替わるように、巨大な翼を持つアメリカのステルス爆撃機、B-2Aが装着された。

神影はこの図体の大きな機体を利用して、後ろに居るシロナ達の盾になろうとしていたのだ。

 

「古代君!」

 

後ろで奏が叫ぶ中、神影に次々と魔力弾が叩き込まれる。

 

巻き起こる砂埃で神影達の状況が分からなくなろうとも、ロバート含む20人の盗賊達は魔力が尽きるまで魔力弾を撃ち続けた。

 

「…………良し、こんなモンで良いだろ」

 

ロバートがそう言って合図を出すと、手下の男達は集中砲火を止める。

後は、神影達を拘束し直して自分達の好きなように犯しまくろうと、誰もが表情をニヤつかせた。

 

「コレだけの集中砲火を浴びたんだから、ロクに抵抗出来ねぇ筈だ。見つけたら直ぐに拘束しろ。連中が壊れるまで犯しまくって、死んだ仲間の分苦しませてやるぞ!」

『『『『『『『『『『へい!』』』』』』』』』』

 

6人の女が相手でも容赦しないと決めたのか、ロバートの指示を受けた残りのメンバー全員がロープを用意して神影達を拘束しようと動き出す。

 

だが、そんな時だった。

 

「苦しむのはテメェ等だよバーカ」

 

砂埃の中から神影の声がしたかと思えば、耳をつんざくような爆音と共に夥しい数の小さな光の粒が砂埃の中から飛び出してくる。

 

「ぎゃっ!?」

「ぐぶぉっ!」

「ぐああぁぁぁああっ!?」

 

その光の粒の直撃を受けた男達は、身体中を食い破られ、一瞬にして無惨な姿に変わり、地面に倒れ伏す。

 

「クソッ!何処かに隠れろ!」

 

ロバートが指示を出すと、生き残った男達は倒壊した建物の瓦礫の影に隠れる。

 

「隠れても無駄だ!」

 

そんな声が聞こえた次の瞬間には、一際大きく、大地を揺るがすような砲声が響き渡り、監視のための塔の瓦礫を粉微塵に吹き飛ばした。

 

「い、一体……何が起こってんだ…………?」

 

運良く狙われなかったロバートは、塔の瓦礫があった場所を見てそう言った。

 

「おいおい、何呆けてんだ?」

 

其処へ、ズシンズシンと足音が聞こえてくる。

 

その音が聞こえる方へ目を向けると、先程とはまた違った機体を纏っている神影が立っていた。

 

「なっ……何なんだよ、それはぁ!?」

 

神影の姿を視界に捉えたロバートが、思わず指差して叫ぶ。

 

今の神影は、先程纏っていたB-2Aとは違い、その細い背中には、片方の翼に2基ずつ、計4基のターボプロップエンジンを搭載した巨大な主翼を、臀部に垂直尾翼と一体化した水平尾翼を生やし、両腕に、これまた巨大なキャノン砲らしきものを装備している。

おまけに、コレでは未だ足りないと言わんばかりに、背中に1門のガトリング砲を背負っていた。

 

そんな姿から溢れ出る威圧感が、生き残った男達にのし掛かる。

 

「さっきテメェ等に喰らわせたのは、GAU-12の25㎜弾と、120㎜迫撃砲だ……………お味は如何?気に入ったか?」

「ふ、ふざけんな!」

 

そう言って、ロバートは腰に提げていた長剣を投げつける。

 

「そんなモン効くかってんだ……………ホラよ」

 

神影はそう言って、左腕に装着している片方のキャノン砲を即座に構えて撃ち、長剣を木っ端微塵にした。

 

「んなっ!?」

 

自分の武器を粉微塵にされ、ロバートは言葉を失った。

 

「このボフォース40㎜砲弾に、そんな剣が勝てるとでも思ったか?」

 

神影がそう言うと、ロバート含めて生き残った男達は、今さらながら、自分達がトンでもない相手に喧嘩を吹っ掛けてしまった事を自覚し、顔を青ざめさせた。

 

「さて……………そろそろ残りも始末するか」

「ちょちょちょっ!?ちょっと待ってくれ!」

 

そう言って、ロバートは神影の前に飛び出した。

 

「ど、何処の誰かは知らんが、もうアンタには手を出さねぇし、其所の女達もやるよ!だから見逃してくれ!な?な!?」

 

先程までの威勢の良さは何処へやら、ロバートは命乞いを始める。

 

「お前等は、そんな女達を何れだけ虐めてきたんだ?その人数と、仮にも勇者であるコイツ等を捕まえる程なんだ、コレが初めてって訳でもねぇだろ?」

「そ、それは…………」

 

ロバートが言葉を詰まらせる。

 

「散々ヤりまくっといて、いざ追い詰められたら命乞い……………そんな都合の良い事が許される訳ねぇよなぁ?」

 

そう言って、神影は一旦目を瞑り、右腕の120㎜迫撃砲を25㎜ガトリング砲に変え、それと左腕の40㎜機関砲を向けると、目をカッと見開いて怒鳴った。

 

「Die,you fucking basterd!!(死ね!このクソ野郎!!)」

 

その声と共に引き金を引き、夥しい数の25㎜弾と40㎜弾を撒き散らし、逃げ惑う盗賊達を一瞬にして肉片へと変えた。

 

コレにより、盗賊団"蛇の尾"のメンバーは1人残らず死に絶え、この勇者誘拐騒動は幕を下ろした。


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