航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第128話~囚われた女神達~

時間は少し遡り、沙那、桜花、奏、シロナの4人が水浴びを楽しんでいる頃、神影とアリステラは、未だ呑気に森の中を進んでいた。

 

「それにしても、思いの外遠いんですね。例の洞窟」

 

退屈さを紛らそうとしているのか、神影は右腕のM230A1を左手で擦りながらそう言った。

 

「まあ、私達はさっきまでヘリで来ていたからね。そう感じるのも無理ないよ」

 

アリステラはそう言うと、ある疑問を投げ掛ける。

 

「もしかして、ミー君……………疲れたのかな?」

「いや、別にそう言う訳じゃないんですけど……………こうも時間が掛かると、何か面倒臭くなってしましてね」

「うわっ、ミー君ったらあっさり言っちゃったよ」

 

そう言って、アリステラは苦笑を浮かべた。

 

だが、確かに彼等は、たかが請求書を渡すだけの用事で、かなりの時間を費やしていた。

 

ルージュから王都に飛び、町を軽く散策しながら奏を探すものの見当たらず、王宮で会ったエリージュ王国王女、ユミール・フォン・エルダントに聞いてみると、既に沙那や桜花、シロナと共に水浴びをしに出発している事を伝えられる。

そして、彼女が言っていた森まで飛んできて、そのまま洞窟まで飛ぼうとしたものの、木が多過ぎて飛んでいく事が出来ず、降りて行動する事になる。

それで現在に至るのだから、神影の言う事は分からなくもなかった。

 

「はぁ……………さっさと白銀見つけて請求書叩きつけて、ルージュに帰って飯食って寝たい」

 

装甲に覆われた足で枝を踏み折りながら、神影はそう呟いた。

 

「まあ、君の気持ちも分かるけど……………彼女等に会ったら会ったで、また時間掛かると思うよ?」

 

アリステラがそう言うと、神影は歩みを止めて振り向いた。

 

「………………?どういう意味ですか?」

 

そう聞き返した神影に、アリステラは答える。

 

「彼女等に、君がミカゲ・コダイと言う事が知られてごらん?それからどうなるかは言わずとも分かるだろう?」

「………あ~、成る程。そう言う事ですね」

 

アリステラが言おうとしている事を理解した神影は、相槌を打った。

 

「でも、それなら黙っとけば良いんじゃないですか?ホラ、もし俺の事を聞かれたら、『ガルムの新しいメンバーだ』とか何とか適当に言っとけば良いですし」

「ふむ、まあ君の言う事も一理あるんだけどね………」

 

アリステラがそう言った時だった。

 

「………………ん?」

 

不意に、神影が歩みを止めた。

 

「…………?ミー君、どうかしたのかい?」

 

そんな神影に、アリステラが訊ねる。

 

「アリさん、さっき20個ぐらいの反応の話をしましたよね?」

「ああ」

 

アリステラは頷いた。

 

「その反応がね……………何かを囲むように動き出したんですよ」

「ん?」

 

神影がそう言うと、アリステラは首を傾げる。

だが、そうしている間にも状況は進む。

 

「…………あっ、何か4つの反応が合流した」

 

視界に映し出されるレーダーの反応の動きを、神影は注意深く見守る。

 

「この動き……………まさか、襲われてんのか?」

 

そう予想した神影はアリステラを呼び寄せ、先程のように抱き上げた。

 

「すんません、アリさん。ちょっくら急ぎますよ!」

 

そうして、神影は勢い良く走り出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、沙那達4人を襲った男達は、拘束されて気を失っている彼女等を担いでアジトに向かっていた。

 

「ゲヘヘヘッ……………まさか、新しい住み処が出来た日にこんな上玉が手に入るとは思わなかったな」

「ああ。俺等の運も、未だ捨てたモンじゃねぇって事だな」

「俺、アジトに帰るのが待ち遠しくて仕方ねぇよ。つか、誰も居なかったら今此処でヤってたかもしれねぇ」

「おいおい、1人で摘まみ食いするったぁ良くねぇな」

「その通りだ。こう言うのは大勢で(マワ)し犯すのが面白いんじゃねぇか」

 

アジトへの道中、男達は下品な話で盛り上がっていた。

 

「ところで、最初は誰をヤるんだ?」

「勿論、銀髪の奴等だ」

「気が強い奴を壊したいからだな?」

「おっと、バレてたか」

「ソッチ方面の話で、お前の考えてる事はお見通しなんだよ」

「そうそう。何時だってお前、気の強い女しか狙わなかったからな」

「んで、ソイツがヒィヒィ言ってるのを楽しんでたろ?」

「おうよ!この楽しみだけは譲れねぇのさ!」

 

彼等の会話では、最初の獲物を誰にするか、どのようにするのかと議論が交わされていた。

今まで数々の女を食い物にしてきた彼等にとって、女とは性欲処理の道具でしかなかったのだ。

「んで、ディオンよ。アジトに着いたら総大将が居ると思うんだが、どうすんだ?」

 

そんな時、先頭を歩くディオンに1人の男が訊ねた。

 

「ああ、そうだな………………まあ総大将は、宴会が終わったら大抵1人だけヤって直ぐに寝ちまうからな……………別に放っといて良いだろ」

 

ディオンは適当な返事を返した。

 

「おっと、お喋りしてる間に着いたぜ?」

 

何時の間にか深い森を抜け、目の前に聳え立つ巨大な砦を見据えて、ディオンがそう言った。

すると、彼等の帰還に気づいたのか、大きな音と共に門が開けられる。

そして彼等が入ると、また大きな音と共に門が閉められるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良し、此処が例の洞窟だな」

 

その頃、神影とアリステラは沙那達が水浴びしていた滝のある洞窟の前に来ていた。

 

「…………………」

 

神影は早速レーダーを起動し、辺りを見回す。

 

「………やっぱ、誰も居ねぇか……遅すぎたな」

 

神影がそう呟いた時だった。

 

「ちょ、ちょっとミー君!」

 

突然、傍に居たアリステラが声を張り上げて地面を指差した。

 

「アリさん、どうし……………ん?」

 

彼女が指差した方に目を向けた神影は、彼のライトが照らしている足跡を見つけた。

それも、無数に。

 

「こりゃ、スッゲー数だな…………」

 

神影がそう呟いた時、またしてもアリステラが何かを発見した。

 

「ねえ、ミー君。コレを見てくれないか?」

「ん?……………ッ!?こ、コレって…………」

 

アリステラが見せてきたのは、4つの収納腕輪だった。

 

「その辺に転がってたんだ。中身を見たら、服や下着とか、お金とかが入ってた。多分カナデちゃんや、他の勇者達のだと思う」

「いや、それ以外に無いですよ。アリさん」

 

神影がそう言った。

そして2人は、新たに長剣やチェーンメイスを発見した。

 

「…………どうやら、此処で戦闘があったみたいだな」

 

これ等を一先ず自分の収納腕輪に入れながら、神影はそう呟いた。

 

「そうだね……………そして、その辺に転がっていた収納腕輪や武器から察するに、カナデちゃん達は負けて、何処かに連れ去られてしまったって感じかな?」

「恐らく」

 

そう返すと、神影は目を閉じ、再び"気配察知"を使う。

 

「…………………其所か」

 

そう呟くと、神影は目を開けた。

 

「アリさん、連中の居場所が分かりました。南西にある森の出口にデカい砦を築いてます。それに、比較的強めの反応が4つ…………間違いなく勇者ですね」

「何と」

 

アリステラは目を見開いた。

 

「もう砦を築いてたのか…………この辺に盗賊が居ると言う噂すら聞いてなかったのに………」

「多分、砦の方が忙しくて、他の村を襲う余裕が無かったんじゃないですかね?」

 

アリステラの呟きに、神影がそう返した。

 

「まあ、連中の居場所が分かったら、やる事は1つだな」

 

そう言うと、神影はアリステラを抱き上げて飛び上がり、洞窟の上に立つと、アパッチを展開する。

 

「一応聞くけど……………何する気だい?」

「そんなモン決まってるでしょう、アリさん…………………乗り込んで盗賊を皆殺しにします」

「言うと思ったよ」

 

アリステラは苦笑混じりにそう言った。

 

「まあ、このまま放置するのも目覚めが悪いからね……………付き合うよ、ミー君」

 

そう言うアリステラに、神影はフッと笑みを浮かべると、エンジンを始動させる。

そして出力を上げ、盗賊達が居る砦に向けて飛び立つのであった。

 

「ところでミー君、垂直に離陸出来る戦闘機あったよね?あれは使わないの?」

「……………アリさん、マッハの風圧に耐えれますか?」

「うん、無理」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、此処は盗賊達の砦。

其所にある縦長の牢屋に、4人は閉じ込められていた。

先程は両手を後ろに回して縛られていたが、今では頭上で両手を縛られており、天井から吊るされる形で拘束されていた。

そのため裸体を隠す事すら許されず、彼女等は胸や秘部を晒す事になっていた。

 

「んっ………こ、此処は……………?」

 

其処で、最初に意識を取り戻した奏がゆっくりと目を開けた。

 

「ッ!?こ、この格好…………!」

 

自分の裸体が晒されている事に気づき、頬を赤く染めるものの、両手両足を縛られている以上、何も出来ない。

 

そんな彼女の目の前では、男達が忙しなく動き回ったり、下品な笑みを浮かべて彼女等を見ていた。

そして何より、人数が先程よりも格段に増えている。

 

「………捕まったのね、私達……」

 

奏が呟くと、1人の男が彼女に気づいた。

 

「よお、眠り姫の1人が漸く起きたみたいだな」

「………………ッ!」

 

そう言われた奏は、鋭い目で睨む。

だが、男は何処吹く風とばかりに受け流した。

 

「俺等、"蛇の尾"の砦にようこそ。俺はディオンだ」

「フンッ!『ようこそ』なんてよく言えたものね。それに、アンタの名前なんてどうでも良いわよ」

奏はそう言い放った。

 

「ほう、こんな姿にされても強気だな。そう言う女、嫌いじゃないぜ」

「褒められたって嬉しくないわよ」

 

そう言う奏だが、ディオンは動じなかった。

 

「んっ………んぅ……?」

 

すると、その喧騒が原因か、他の3人も目を覚ました。

 

「おっ、コレで眠り姫全員が目を覚ましたようだな」

「ッ!貴方は!」

 

ディオンを視界に捉えたシロナが、彼に飛び掛かろうとする。

 

「ガハハハハッ!そんな事しても無駄だ。弱体化させるための特殊な首輪をつけてるからな。今のお前等には、現地人の餓鬼程度の力しかねぇのさ。それに、魔法も封じてるからな。つまり、今のお前等は全く抵抗出来ねぇって事さ」

「そ、そんな…………」

 

現実を突きつけられたシロナは、顔を青ざめさせる。

 

「まあ、其所で待ってろや。もう直ぐ楽しい宴会が始まる………………コレが終わる頃には、お前等勇者はただの雌に成り下がってるだろうな!」

 

そう言うと、ディオン達は下品な笑い声を響かせて作業に戻っていった。

 

『『……………………』』

 

間も無く訪れる残酷な未来と、その未来に対して何も抵抗出来ないと言う無力さから、4人は顔を俯ける。

 

「ごめんなさい、皆………」

 

シロナは小さく謝り、涙を溢した。

 

沙那と桜花、そして奏の3人は、それに答える気力すら失っていた。

 

「………誰か……助けて……………」

 

そんな奏の呟きが、牢屋に小さく響いていた。


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