航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第127話~襲われる女神達~

沙那達が水浴びをしに洞窟に入り、それを男達が狙っている頃、森の中を進んでいた神影とアリステラは、休息を摂っていた。

 

「んくっ、んくっ……………プハァ!やっぱり長時間歩いてから飲む水は美味い!それに冷たいから満足感アップだ!」

 

何時の間に用意していたのか、水筒の水を飲んだアリステラは、満足げな笑みを浮かべてそう言った。

 

「そりゃ良かったですね……………つーかアリさん、俺は此処まで歩いてきたのに加えて、ルージュから王都、そしてこの森の入り口までずっと飛んでたんですけど?アンタがコンテナの中でのんびりしてる間ずっと」

「まあまあ、帰ったらキチンと報酬渡すし、ついでにギルドのご飯奢ってあげるから文句言わないの」

 

ジト目を向けて言う神影に、アリステラは空いている手をヒラヒラ振りながらそう言った。

 

「あっ、何なら飲むかい?私の飲みかけだけどね」

「遠慮しときます」

 

からかうような笑みを浮かべて言うアリステラに、神影は即答した。

 

「ふむ………………ミー君は、恋人以外の飲みかけには口を付けないか」

「否定はしません」

「うわぁ~お。即答しちゃいましたよ、この男」

 

あっさり答えた神影に苦笑を浮かべるアリステラだが、不意に、何かを思い出したような表情を浮かべた。

 

「ああ、そう言えば"恋人"で思い出したけど……………結局ゾーイちゃんの事は、何も分からず終い?」

「…………はい」

 

そう言われた神影は、悲しそうな表情を浮かべた。

 

「でも本当に、なんで避けられるのか分からないんですよ。聞いても教えてくれないし、この前なんて、『しつこい!』って怒鳴られましたからね」

「ふむ、そうだねぇ…………」

 

神影とゾーイの関係が微妙なものになっているのは、アリステラも気づいていたし、ゾーイに聞いたりもしていた。

だが、ゾーイから返された返事は、神影と同じように『何でもありません』の一点張り。

その後も話す気配を見せない事から、この問題は自分の手に負えないと悟ったアリステラは、神影が解決してくれる事を信じて大人しく身を引いたのだ。

 

「(でも、ミー君でさえ駄目だったか…………)」

 

内心そう呟き、アリステラは神影の方に視線を向ける。

 

「………………」

 

神影は、悲しそうな表情で夜空を見上げている。

 

「まあ、何だ。そんなに気を落とすなよ、ミー君」

 

アリステラがそう言うと、神影は振り向いた。

 

「ゾーイちゃんも、色々と気持ちの整理が出来ていないだけなんだろう。少し間を空けてから、また話し掛けてみたらどうかな?」

「…………そう、ですね」

 

神影が返事を返すと、アリステラは頷いた。

 

「さて、休憩は終わりだ。そろそろ行こうか」

「はい!」

 

神影も努めて普段通りの調子に戻し、2人は再び歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、洞窟の中に入った沙那達は、奏の灯光(リトルシャイン)による灯りを頼りに、真っ暗闇の中を進んでいた。

彼女等が歩みを進める度に、バシャバシャと水を掻き分ける音が洞窟内に響く。

 

「あ、案外長いのね。この洞窟は………」

 

この洞窟の中に居るのは4人だけだと分かっていながら、念のためにと胸や秘部を手で隠しながら歩いているシロナがそう言った。

沙那や桜花も、シロナと同じように胸や秘部を隠しながら歩いており、洞窟内を照らしているために片手が塞がっている奏は、一先ず空いている手で秘部のみ隠していた。

 

「"長い"と言うより、ただ私達が歩く速度が遅いだけだと思いますが………」

 

シロナの呟きに、桜花がそう返す。

 

「皆、後もう少しよ」

 

其処へ、奏からの言葉が飛ぶ。

彼女等の耳に、流れ落ちる滝の音が飛び込んできた。

目的地まで、残り僅かだ。

 

それを感じ取ると、彼女等は自然と足を速める。

早く水浴びがしたくて仕方無いようだ。

 

そして洞窟を出ると、4人は揃って足を止め、目の前で広がる光景に言葉を失った。

 

月明かりに照らされて流れ落ちる滝の水が洞窟に流れ込み、それから彼女等が来た道を逆戻りするかのように流れていく。

彼女等は裸体を隠す事すら忘れ、暫くの間、その幻想的な光景に目を奪われていた。

 

「綺麗ね……………」

 

ふと、シロナがそんな感想を溢す。

その言葉に沙那と奏は頷き、桜花は、彼女が持つ豊満な胸に両手を添え、その光景に見惚れていた。

 

 

 

「(この光景、神影君と桜花ちゃんの3人で見たかったな…………それで、私と桜花ちゃんで神影君に告白して、そのまま私達の……………は、初めてを…………)」

 

月明かりに照らされて流れ落ちる滝を見ながら、沙那は内心そう呟いた。

神影は既に生き返っているのだが、王都にはその話が伝わっていない。

おまけに、ルージュに神影の遺体を回収しに行った騎士達は、ラリーや神影に蹂躙された上に四肢をもぎ取られ、挙げ句の果てには仲間を惨殺されたと言うショックが原因で記憶障害を起こしており、マトモな情報を話していない。

そのため、国の上層部はルージュで起こった出来事を全く把握しておらず、F組勇者達では、神影は死んだ者として認識されていた。

 

「沙那、何を考えているの?」

 

其処へ、奏が声を掛けてくる。

 

「あ、奏…………」

「もしかして、古代君の事?」

「うん………」

 

沙那は頷き、自分の心情を語った。

 

「ふ~ん、このロマンティックな光景の中で初体験なんて、沙那も中々考えるわね」

「こ、声に出して言わないでよ!恥ずかしい…………」

 

顔を真っ赤にして、沙那はそう言った。

 

「あらあら、天野さんもそんな事を考えるようになったのね」

「ちょっと、先生まで!」

 

すると、先程胸を揉まれた仕返しとばかりに、シロナがからかうような笑みを浮かべて話に入ってきた。

 

「て言うか2人だって、神影君に何か思う事あるんじゃないの?危ないところを助けてもらったんだし!」

「「ッ!?」」

 

図星を突かれた2人は、顔を赤くして体を軽く跳ねさせ、その豊満な胸を揺らした。

そう。奏とシロナは、キメラに食い殺されそうになったところを神影に救われている。

その上に神影は、傷だらけになっても戦い続けていたのだから、その姿を見て何も思わない方がおかしいと言うものだった。

 

「ねえ、桜花ちゃんもそう思うよね!?」

「えっ!?」

 

一足先に滝の水に当たっていた桜花は、急に話を振られた事に驚きつつ振り向く。

振り向いた拍子に、彼女の濡れた黒髪が振り回され、滴が飛ぶ。

その光景は、彼女の容姿や今の姿と相まって、何とも言えない美しさを見せていた。

 

『『……………………』』

 

そんな桜花を見て、3人は思わず言葉を失った。

 

「え?皆さん、どうしたんですか?」

 

ただ無言で見られている事に恥ずかしさを覚えた桜花は、頬を赤く染めて裸体を隠しながらそう言った。

 

「い、いや………その…………」

「今の桜花が、あまりにも色っぽかったから……つい、ね…………」

 

沙那と奏が、気まずそうに返事を返す。

 

「ええ……………正直、さっきの雪倉さんは、女の私でもドキッとしてしまう程色っぽかったわ」

 

シロナもそう言った。

 

「……………………ッ!」

 

桜花の顔の赤らみが増し、より一層強く、自分の体を抱き締める。

だがそれは、彼女の胸を強調するだけで、尚更卑猥に見えていた。

 

「と、取り敢えず、この話は終わりにして、水浴びしましょう?結構時間掛けてしまったから」

 

空気を読んだシロナの一言で、一行は水浴びを始めた。

 

「んっ………コレ、中々気持ち良いわね……………」

「うん、そうだね………」

 

上体を僅かに反らして水を浴び、奏は目を細めてそう言った。

沙那も奏の隣に立ち、同じように滝の水を浴び、桜花とシロナは、岩場に腰掛けて足を水に浸していた。

 

それから暫くの間、洞窟の奥にある滝壺には、裸になったスタイル抜群の美女・美少女が、月明かりに照らされて水浴びをすると言う、何とも官能的な光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして水浴びを終えた一行は、洞窟を流れる川を逆戻りしていた。

 

「ん~~っ!気持ち良かったね、水浴び!」

「ええ。今までずっと、王都で瓦礫の撤去作業したり、未だ使えるものを運んだりさせられてきたから、尚更ね」

「次に水浴び出来る日が待ち遠しいです」

 

満足げに伸びをしながら言う沙那に、桜花と奏がそう言った。

 

「それもそうだけど、川から出たら直ぐに体を乾かして服を着るのよ?コレで風邪を引いたら元も子も無いからね」

 

水浴びを終えてはしゃぐ3人に、シロナが微笑ましげに笑みを浮かべながら忠告する。

 

そして、出口まで残り数メートル程度になった、その時だった。

 

「た、大変だぁ~~!」

『『ッ!?』』

 

森の方から、焦燥に満ちた男の声が聞こえる。

 

「な、何なのいきなり!?」

 

急な出来事に、思わず4人は足を止める。

 

「お~い!誰か来て!助けてぇ~~!!」

 

すると、今度は女性の声も聞こえてきた。

 

「もしかしたら、誰か襲われているのかも……………早く行かなきゃ!」

 

そう言って、沙那が一目散に駆け出した。

 

「ちょ、沙那!待ちなさい!服着てないでしょ!?」

「沙那さん!待ってください!」

「待って、天野さん!」

 

3人が制止を呼び掛けるものの時既に遅し、沙那は洞窟の外に飛び出していた。

 

「な、何かあったのですk───ッ!?」

 

叫びながら飛び出した沙那は、岩場の影に隠れていた男の1人に電気ショックを与えられる。

不意打ち同然の攻撃に対応出来ず、沙那は意識を失う。

倒れ込む沙那を受け止めた男は、彼女を引き摺って川から出ようとする。

 

「沙那!?」

 

それを見ていた奏は、その高い俊敏性をフルに使って駆け出した。

桜花とシロナも、その後を追う。

 

洞窟から飛び出した奏は、沙那を川から運び出そうとしている男に向かって怒鳴った。

 

「其所の貴方!待ちなさい!!」

 

その男は動きを止めて奏の方を向くと、下卑た笑みを浮かべた。

 

「よお、勇者のお嬢さん。そんなエロい体振り回しながら出てきてくれるとは、嬉しいねぇ。水浴び直後のサービスってヤツかな?」

「ッ!?」

 

そう言われた奏は、両手で裸体を隠した。

「奏さん!」

 

其処へ、遅れて桜花とシロナが到着した。

そして2人は、沙那を運び出そうとしていた男からの下卑た視線を感じ取り、奏と同じように、裸体を両手で隠した。

 

「うひょぉ~~!こりゃまた大サービスだな。女勇者達が揃いも揃って可愛い上に巨乳とは」

「……………貴方、こんな事をして、タダで済むと思ってるの!?早く天野さんを解放しなさい!」

 

シロナの声が、真っ暗な森一帯に響き渡った。

 

「おいおい、せっかく捕まえた獲物をむざむざ解放する訳ねぇだろ?魚釣りで言うようなキャッチ&リリースじゃねぇんだからさ」

「…………それなら、力ずくでも!」

 

そうしてシロナが、収納腕輪からチェーンメイスを取り出す。

奏も長剣を取り出し、桜花も、何時でも魔法を撃てるように構えた。

 

「おいおい、そんな事して良いのか?今俺に襲い掛かったら、大切なお仲間も巻き添えを喰らう事になるんだぜ?立場を弁えてからものを言う事をお勧めするよ」

「くっ…………!」

 

気を失っている沙那の胸に短剣を突きつけながら言う男に、シロナは歯軋りし、奏と桜花は、その男を睨み付けた。

その男1人との真っ向勝負なら、非常に高いステータスを持つ彼女等は瞬く間に倒してしまうだろう。

だが、今回は状況が違う。

相手は、自分の仲間を──シロナの場合は、大切な生徒──を人質に取っているのだ。

何れだけ速く肉薄しても、少なくとも相手には、沙那の胸に短剣を突き刺す程度の時間がある。

それに、"今の自分達が裸である"と言う羞恥心も、彼女等をまごつかせていた。

 

「それに、此処に居るのが俺1人だと思ってんなら大間違いだ。未だ未だ仲間が大勢潜んでるんだからなぁ!」

『『ッ!?』』

 

衝撃のカミングアウトに、3人の目が見開かれる。

 

その瞬間、何人もの男達が飛び出してきたのだ。

 

「ゲヒャヒャヒャヒャッ!今では最早、国中から蔑まれてステータス以外の取り柄がねぇ、しかも素っ裸で仲間も人質に取られた勇者達が、20人を相手にしてマトモに戦えるのかねぇ!?しかも、アジトには未だ大勢仲間が居る俺等を相手によぉ!」

 

沙那を人質に取っている男が、下品な笑い声を響かせてそう言った。

 

「まあ、親分の命令で傷はつけない事になってるからな……………おい!やれ!」

 

その男が言うと、ローブに包まれた男が躍り出て詠唱を始める。

シロナは後ろ手に指示を出すと、奏が羞恥心を堪えて長剣を構え、物凄い勢いで駆け出してローブの男に肉薄する。

 

「ッ!?て、テメェ!この女が……………!?」

 

沙那を人質に取っているのを知っていながら動きを見せた奏に怒鳴ろうとする男だが、桜花が放った魔法で怯む。

 

「(良し、先ずはコイツを倒して、後は沙那を……………!?)」

 

その瞬間、奏の頭にある事が浮かんだ。

それは、"人を殺す"と言う事だ。

 

知っての通り、城に残ったF組勇者の面々は、魔物を攻撃対象とした訓練は積んでいても、人殺しの経験は無い。

それが、奏の集中を僅かに乱してしまう。

 

「邪魔だ!」

「ッ!しまっ…………!」

 

ローブの男が忌々しげに怒鳴り、直ぐに回避行動に移ろうとした奏だが、相手の方が一枚上手だったのか、地面から伸びてきた触手のようなものに拘束されてしまう。

 

「くっ………このぉ……!」

 

逃れようともがく奏だが、思いの外強い力に締め付けられて身動きが取れない。

 

「手間取らせやがって……………おい!さっさとやれ!」

 

沙那を人質に取っている男の指示を受け、ローブの男は、今度こそ本命の魔法を発動させる。

洞窟のあるエリアをドーム状の結界が覆い、白い霧が充満する。

 

「な、何なの………この、霧………は……………」

「うっ…………先、せ……」

「ッ!お……桜、花…………」

 

その煙を吸い込んだ3人は、その場に倒れてしまう。

 

「良し、後はアジトに運ぶだけだな…………おい、さっさと次の作業に取り掛かれ!今日は楽しめるぜ!」

 

その男が言うと、他の男達が、倒れた3人を回収しようとワラワラ動き出す。

彼等は、気絶した4人の収納腕輪を外して其処らに投げ捨てると、対象を大幅に弱体化させる特殊な腕輪を付け、さらに両足は勿論、後ろに回した両手を縄で縛って拘束し、下卑た笑みを浮かべながらアジトへと運んでいくのであった。


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