航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第123話~たとえ種族が違っても~

「魔神とヒューマン族のハーフなんだよ」

「…………………………」

 

ラリーの正体を聞いた俺は、言葉を失っていた。

 

「(前々から、コイツは普通のヒューマン族じゃないと薄々感づいてはいたが………………まさか、本当だとはな……………)」

 

内心そう呟いた俺は、ふと、ある事を思った。

 

「(そういや、コイツが言う"まじん"ってのは、どっちの意味での"まじん"なんだ?)」

 

俺が知っている"まじん"には、2つの種類がある。

先ず1つ目は、"魔"の"人"と書いての"魔人"。

そして2つ目は、"魔"の"神"と書いた"魔神"だ。

 

この2つの内のどちらなのかが分からなければ、反応しようがない。

 

「相棒…………もしかして君、『"まじん"と言ってもどちらの"まじん"なんだ?』とか思ってる?」

「(………………コイツ、エスパーか何かなのか?)」

 

今思ったんだが、コイツ等って読心術でも持ってんの?

矢鱈と俺が考えてる事読まれるから恐くなってくるんだけど。

 

「……………まあ、そんな感じだな」

 

取り敢えず、俺はそう答えた。

 

「それで?お前が言う"まじん"ってのは、どういう存在なんだ?"魔の人"と書いた"魔人"なのか、それとも"魔"の"神"と書いた"魔神"なのか」

「後者だよ、相棒」

 

ラリーは即答した。

 

「相棒達って、城で座学の授業を受けたんだよね?」

「ああ」

 

ラリーの質問に、俺は頷く。

 

「なら、その時に魔神の話って聞かなかった?」

「聞いたよ。確か、大昔に滅んだって言う、魔王より強い種族……………だったか?」

「そう、それだよ」

 

ラリーはそう言うと、収納腕輪からステータスプレートを取り出した。

 

「ホラ、見て」

 

そう言うラリーからステータスプレートを受け取り、俺はラリーのステータスを改めて確認する。

 

 

 

 

 

名前:ラリー・トヴァルカイン

種族:半人半魔(ハーフ・デーモン)(魔神)

年齢:19歳

性別:男

称号:追いやられし者、片羽の妖精(Solo Wing Pixy)伝説となりし魔術師(レジェンダリー・ウィザード)、人の域を破りし者、自重知らず、狼殺し、人型兵器、人間失格、人の皮を被った化物、魔術の鬼、最後の魔神、無慈悲な狩人、殺戮嵐(ジェノサイド)、一騎当千

天職:航空傭兵

レベル:355

体力:100200

筋力:98100

防御:99100

魔力:1000200

魔耐:1030200

俊敏性:120100

特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、魔力感知、空中戦闘技能、僚機念話、魅了・催淫無効化、錬成『アレスティング・ワイヤー』、錬成『カタパルト』、拡声、アルコール耐性、気配察知、魔法威力増加(マジック・ブースト)制限解除(リミット・ブレイク)、鑑定

 

 

 

 

 

「うわぁ~お……………」

 

ラリーのステータスを見た俺は、思わずそんな声を漏らす。

あの時、俺の死体を王都に持って帰って処分しようとした騎士を叩きのめしたのもあってか、レベルは変わっていなくても、ステータスはそこそこ伸びている。

それにしても、称号にあった"殺戮嵐(ジェノサイド)"ってのが気になって仕方無い。

コレって確か、某アニメの二次創作で、場違いな力持ってる緑髪ポニテのオリ主の二つ名だろ?

俺読んだもん、あの作品。

オーラ纏って髪や目の色が変わる上に元からずば抜けた身体能力持ってるとか、場違いだけどスッゲーカッコよくて羨ましいと思ったね。

おまけに美少女達に囲まれてるから、『リア充爆発しろ!』と何度叫んだか、数えるのも億劫だ。

 

まあ、今では俺もそんな状態になってるし、この世界に転移する前は、足の速さや持久力では、御劔みたいなイケメン+ハイスペック男子を平然と抜いてたけどな。

1年の時の体育祭の徒競走で、彼奴や他の体育会系男子を相手に、大差つけて1位でゴールしたのは今でも鮮明に覚えてる。

 

それにしても、あの騎士達でも普通に相手すれば、ステータスはそこそこ稼げるようだな…………………じゃあ、また連中が来たら、今度は俺が虐めてやろうかな?

ステータスの向上に使えそうだし。

 

「えっと、その…………どう、かな………………?」

 

なんてゲスな事を考えていると、ラリーがおずおず訊ねてきた。

月明かりを反射して宝石のように光る赤い瞳が、真っ直ぐ俺を見つめている。

 

「そうだな………………」

 

そう言いかけて、俺は一旦ラリーから視線を外す。

 

「(まあ俺としては、コイツの種族がどうであろうと関係無いんし、コレはルージュの人達も同じ考えだと思うんだけどなぁ……………)」

 

内心そう呟き、ラリーの方へチラッと視線を向ける。

「………………………」

 

俺を見つめるラリーの瞳には、不安や恐れが混じっていた。

 

「(もしかしてラリーの奴……………自分の種族を知れば、俺が忌避するんじゃないかって思ってんのか?)」

 

だとしたら、ラリーが考えている事は"杞憂"の一言に尽きる。

 

確かにコイツは、100%ヒューマン族じゃない。

血の半分は人外……………それも、"魔人"じゃなくて"魔神"だ。

そりゃ驚かれるだろうし、人によっては恐れを抱くかもしれない。

だが、俺にとっては、そんなもの関係無い。

だってラリーは、俺がこの世界に来てから初めて出来た友達で、初めての僚機で………………俺の、頼れる相棒(2番機)だ。

誰よりもコイツを信頼しているし、正直な話、俺はコイツになら命すら預けられる。

そんな奴を、ただヒューマン族じゃなくて、本来なら滅んでいる筈であり、超強い魔神とのハーフだからって理由で切り捨てられるか?

いや、出来る訳が無い。

そんな事………………………………する訳が無い。

 

 

「相棒……………?」

 

何も言わない俺に、ラリーが恐る恐る声を掛けてくる。

 

「…………………」

 

名にも言わず、ただステータスプレートとラリーの姿を交互に見ていると、次第にラリーの表情に陰りが見えた。

 

「………やっぱり、気持ち悪いよね…………普通の魔人族なら未だしも、大昔に滅んだとされてる魔神なんて………しかも、こんな姿で……」

 

そう言って、自分自身を卑下し始めるラリー。

流石にこんなの、見てて良い気分にはならない。

こんなので悩むラリーなんて、ラリーじゃない。

 

「(なら、俺がどうするべきかは決まってるよな)」

そうして俺は、ラリーに視線を向けた。

 

「おい、ラリー。卑下するのはその辺にしとけ」

「え………?」

 

そう言うと、ラリーはキョトンとした表情で俺を見る。

 

「何やら勝手に色々決めてるみたいだが……………俺は別に、お前が気持ち悪いなんて微塵も思ってない」

「で、でも。僕は魔神とヒューマン族のハーフd……「関係あるかよ、そんなモン」」

 

ラリーの言葉を遮り、俺はそう言った。

 

「よく聞け、ラリー。お前は俺にとって、初めての友達で、初めての僚機で…………………………最高の相棒だ。この世界で誰よりも、お前を信じてるし、大事に思ってる」

「……………ッ!」

 

そう言うと、ラリーは目を見開いた。

 

「俺とお前の関係は、たかが種族云々の話で壊れる程脆いモンじゃねぇ。そうだろ?」

「………………」

 

ラリーは小さく頷いた。

 

「なら、それで良いじゃねぇか。自分が魔神だから恐がられるんじゃないかと思ってんなら、そんなの止めろ。たとえ種族がどうであろうと、お前がラリー・トヴァルカインである事は変わらねぇんだ。この町の人も、他のガルム隊のメンバーも、そう言ってくれるだろうよ」

「……………………」

 

俺がそう言うと、ラリーの両目に涙が浮かんだ。

 

「……本当に………」

 

そして、ラリーはポツリポツリと口を開いた。

 

「本当に……そう、思う………?」

「ああ、勿論だ」

「……ルージュの皆も、受け入れてくれるかな………………?」

「人型戦闘機であるゾーイ達や、生き返ってUnknownになった俺ですら受け入れられるんだから、今さらだろ。それに、俺がこうやってお前を受け入れてんだから、お前は明日、胸張って自分の正体を打ち明ければ良いんだよ」

「うん、そうするよ…………」

 

ラリーは涙を拭いながらそう言うラリーに俺は頷き、軽く頭を撫でてやる。

 

「うわっぷ………………ちょっと、子供扱いしないでくれるかな?僕の方が年上なんだからね?」

「まあまあ、良いじゃねぇかよ。今は誰が見ても、俺が兄ポジションだと思うからさ」

 

ジト目を向けながら言うラリーに、俺はそう言い返してやった。

 

 

それから暫く撫で回すと、ラリーも落ち着きを取り戻した。

 

「それじゃ、僕は部屋に戻るよ」

「おう」

 

立ち上がったラリーに、俺はそう返す。

すると、ラリーが急に抱きついてきた。

 

「……………ん?」

「………………………ありがとう、相棒」

 

それだけ言うと、ラリーは俺から離れ、ラリーの部屋へと転移した。

 

「…………………………どういたしまして」

 

暫くボーッとした後、俺はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた翌朝、ラリーは町の皆を集め、自分の正体を語った。

初めこそ凄く驚いていたルージュの皆だが、結果は俺が思った通りだった。

 

皆、ラリーを受け入れてくれたのだ。

 

それどころか、この世界でもたった1人の魔神(とのハーフ)と言うのもあって、ラリーは人気者になった。

今、ラリーはルージュの人達に囲まれており、魔術師の女の子達から魔法の伝授を頼まれたり、他の住人達に魔法を使った芸のリクエストをされている。

 

「ラリー様、皆さんに受け入れてもらえて良かったですね」

 

そんなラリーを見ながら、エミリアはそう言った。

 

「ああ。俺はこうなると分かってたけどな」

「フフッ、ホントですか?」

「勿論」

からかうような笑みを浮かべて言うエミリアに、俺はそう返した。

 

「あ、そうだ……………ミカゲ様にお返ししなければならないものが」

「…………………?」

 

するとエミリアは、懐から俺の収納腕輪を取り出した。

 

「それ、俺の収納腕輪じゃねぇか。なんで持ってんだ?」

「そ、それは……………色々と事情がありまして」

「ふ~ん…………」

 

何か怪しいが、別に何かを盗ったり、変なものを入れたりはしてないとの事なので、取り敢えず何も言わずに受け取っておく。

 

「まあ、何はともあれ……………」

 

そう言いかけて、俺はラリーの方に目を向けた。

 

「良かったな、ラリー」

 

ラリーが、住人達に囲まれて上手く対応しきれずに慌てている光景に苦笑を浮かべ、俺はそう言った。

 

 

 

 

「…………………………」

 

後ろから、ゾーイの複雑そうな視線を受けながら。


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