「ヒャッホォォォオオオオウッ!最ッ高だぜぇぇぇぇええええっ!!」
何処ぞの茶髪モサモサ頭の女子高生みたいな歓声を上げる、ウェーブが掛かったクリーム色のロングヘアを持つ美人さんをお姫様抱っこした状態で、俺はアパッチを展開してルージュ上空を飛び回っていた。
エースコンバットAHみたいな横向き宙返りを披露すると、再び歓声が上がる。
「やっぱり最高だよミー君!流石は私が見込んだ男だ!」
「お褒めに預かり光栄ッスよ、アリさん!」
バリバリと爆音を撒き散らすメインローターの音に声を掻き消されないよう、俺と女性は大声で言葉を交わした。
……………ん?『そもそも誰をお姫様抱っこしてるんだよ』って?ああ、そういや話してなかったな。
俺がお姫様抱っこしているこの美人さんは、アリステラ・リューズ。
通称"アリさん"で、ルージュ冒険者ギルドの支部長だ。
今まで1度も語らなかったが、この人とは随分前から会っている。
俺等がギルドでドンチャン騒ぎしても問題にならないのは、彼女がそれを黙認してくれているお陰でもある。
"支部長"とか言われるぐらいだから、最初は厳しい人なのかと思っていたが、思いの外サバサバした人で、他の冒険者と同じように騒ぐのが大好きらしい。
それでこの人は、何かパーティーが開かれる度にちゃっかり参加して料理食ってる。
おまけに、そう言う時って仕事放り出してでも来るんだよね、この人は。
別に不満は無いけど、時折職員に首根っこ掴まれて引き摺られていくのを何度も見たものだ。
まあ、何だかんだでこうやって騒がせてもらってる訳だから、此方としては何かお礼した方が良いと思う訳で、1度、エスリアやエミリアにやったように空中散歩に連れていったんだが、コレがまた大好評で、『これからは何れだけギルドでドンチャン騒ぎしても良いから空中散歩に連れていって!』とか言い出したんだよ。
勿論、断る理由は無いので快く受け入れ、何度も空中散歩に連れていってる内に気に入られ、互いに"ミー君"、"アリさん"と呼び合うようになったのだ。
「おお、速い速い!私、こんな速さで空を飛んでるぞ!」
そう言ってキャッキャしているアリさんを見ていると、エスリアとデートした時や、エミリアを空中散歩に連れていった時の事を思い出す。
「(確かエスリアは、空を飛ぶ事が夢だったんだよな…………)」
夢が叶った事に嬉しそうな表情を浮かべるエスリアや、ブラックホークのコンテナから楽しそうに景色を眺めているエミリアの顔が、脳裏に蘇る。
「(またデートした時は、こうやって空中散歩に連れていってやるのも良いかもしれねぇな……………何なら、他の奴等も乗せて遠くにデートしに行くってのも良いな………フュール以外で、何処か良さそうなデートスポット探してさ……………)」
そう思うと、自然と頬がニヤけそうになる。
アリさんはこう言うのには非常に鋭いので、バレるとからかわれて、スッゲー恥ずかしい思いをする。
彼女が気づいていない内に、表情を引き締め直した、その時だった。
《やあ、相棒。お取り込み中のところ悪いけど、ちょっと良いかい?》
突然、ラリーが僚機念話で話し掛けてきた。
《ああ、別に良いけど……………どうした?何かあったのか?》
楽しそうに辺りを見回しているアリさんを見ながら、俺は聞き返した。
《うん。急で悪いんだけど、今直ぐギルドに戻ってきてほしいんだ》
《ギルドに?………あっ、さてはアリさんが仕事サボってるから職員が苛ついて文句言ってんだな?》
《いや、この件に支部長さんは無関係だよ》
意外な事に、俺が予想したものとは違っていた。
それなら、何故に……………?
《実は、君にお客さんが来てるんだよ……………
………………………勇者の1人、カナデ・シロガネって娘がね》
《……………What?(何だと?)》
俺は自分の耳を疑った。
「(白銀が来てるのか?この町に?)」
《おまけに彼女、ギルドに着いた時はボロボロだったんだよ?服も所々破れてたし、声も嗄れて、咳き込んだら吐血するぐらいにね》
「嘘ぉ!?」
「ッ!?」
アリさんを抱いているのも気にせず、俺は声を張り上げてしまう。
《本当だよ。僕が回復魔法掛けたから大丈夫だけど、門番さんに肩支えられながらギルドに入ってきた時は本気で驚いたよ。》
《ま、マジですか……………》
つーか白銀の奴、ボロボロになった上に咳き込んだら血を吐くってドンだけだよ?何をどうやったらそんな事になるんだよ?
「み、ミー君。どうしたんだい?急に大声出して…………」
余程五月蝿かったらしく、アリさんが耳を押さえながら訊ねてくる。
「……………すんません、アリさん。空中散歩はコレで終わりです。何か知らんが、俺に客が来たらしいので」
「え、ちょ…………!?」
俺はそう言うと、いきなりの事に戸惑うアリさんを無視して急降下すると、ギルドの前に降り立ち、アリさんを下ろしてアパッチを解除すると、ギルドのドアを蹴り開けた。
「……古代君…………!」
ドアを開けて中に入ると直ぐ、白銀の姿が視界に飛び込んできた。
回復魔法でも掛けてもらったのか、ラリーが言っていたような傷は何処にも無く、服だって、何処も破れていなかった。
「ッ!古代君!」
大声で俺の名を呼び、駆け寄ってきた白銀は、俺の胸倉を掴んで声を張り上げた。
「お願い、古代君!今直ぐ王都に向かって!皆を助けて!!」
「……………はあ?」
久々に会った友人にいきなり掴み掛かられた挙げ句、助けを求められた件について。
つーか、え?何なに?NA☆NI☆GO☆TO!?
「え~っと……………良いかな?」
訳が分からず混乱していると、アリさんが話に入ってきた。
「取り敢えず落ち着きなさい。ミー君も私も、状況を全く把握出来ていないからね」
「…………ええ」
白銀は頷き、俺から離れた。
「取り敢えず、場所を変えよう。2階に私の部屋があるから、話は其処で」
そうして先に立って歩き出したアリさんに、俺達ガルム隊メンバー全員と白銀が続き、アリさんの部屋へと向かうのであった。
場所は変わって、此処は王都前の平野。
其所では、奏が抜けた勇者と騎士団一行VS魔人族と魔物軍団による熾烈な戦いが繰り広げられていた。
先程の一件もあり、王宮の方から増援として、数十人の騎士と魔術師が送り込まれ、場は、魔物を斬り殺したり、ゲルブやセレーネに肉薄する騎士や勇者達が走り回り、後方支援の魔術師組からの魔力弾が飛び交っている。
先程はセレーネがけしかけた女性型の魔物からの陵辱を受けた男性陣だが、その体に鞭を打って戦っている。
ゲルブとセレーネは、先程のように召喚した魔物をけしかけてくるのだが、その魔物の軍団の中にはゴブリンやスライムのようなレベルの低い魔物は殆んど居らず、大半が、ミノタウロスやワーム、ベヒモス等の大型且つ強力な魔物で占められていた。
「オラオラどうした!第1ラウンドの時点で体力切れか!?」
本格参戦を宣言したゲルブが、富永一味を圧倒しながらそう言った。
「クソッ、コイツ調子に乗りやがって!」
忌々しげに言った富永一味の1人、上田祐二が、彼専用のアーティファクトである槍でゲルブの拳を受け止めると、ゲルブを蹴り飛ばして間を広げる。
「死ねや魔人族が!」
そして槍を構えると、一気に突き出す。
「(決まった………!)」
自分の槍が、目の前に居る忌々しい敵を串刺しにする場面を想像し、祐二はニヤリと笑みを浮かべる。
だが、その油断した瞬間が命取りとなる訳で……………
「甘ぇんだよ!」
ゲルブは体を僅かに捻って槍を避けると、その大きな手で掴んだ。
「なっ!?」
勝利を確信していた祐二の表情に、驚愕と動揺の色が浮かぶ。
「確かに、それなりの攻撃力はあるみたいだ…………だがなぁ」
そう言って、ゲルブは槍を引っ張って祐二を引き寄せる。
「その程度で俺を仕留められると思ったら大間違いだ!」
「ぐはぁっ!」
引き寄せられてからの強力な正拳突きを喰らい、祐二は肺の空気を胃液と共に吐き出し、後方へ勢い良く吹っ飛ぶと、王都を囲む壁を突き破って、その向こうに姿を消す。
死んではいないだろうが、復帰は不可能に近いだろう。
「祐二!?…………クソッ、テメェ!」
功が飛び出し、長剣を振るおうとするが、横から禍々しい色の魔力弾が地面を抉りながら飛んできて、功の直ぐ目の前を掠めていく。
「ッ!このクソアマ、邪魔すんじゃねぇよ!」
魔力弾が飛んできた方を向き、相手を罵倒する功。
その先にはセレーネが居り、功に心底見下したような眼差しを向けていた。
「仲間がやられるのを黙って見ている訳が無いじゃない、馬鹿ね」
「魔人族風情が!」
突然、セレーネの不意を突くかのように現れたブルームが長剣を振るおうとするが、右手に巨大な斧を持ったミノタウロスが防いだ。
「クソッ………肉料理の材料風情が、この俺の邪魔をするな!」
そう言うと、ブルームは長剣に魔力を纏わせて勢い良く振り上げ、ミノタウロスの右腕を斬り飛ばす。
「ブルルォォオオオオオッ!!」
ミノタウロスは、斬られた部分から血を撒き散らしながら、雄叫びにも聞こえる悲鳴を上げて後退る。
「くたばれ!」
だが、それを見逃すブルームではなく、ミノタウロスに肉薄して首を跳ねた。
首が宙を舞い、首からは血が噴水のように噴き出す。
邪魔者を打ち倒したブルームは、今度こそセレーネを斬り殺そうと辺りを見回すが、彼女は既に場所を変えていた。
「臆病者めが……………!」
小さく吐き捨てると、自分にワラワラと群がってくる魔物を、まるで八つ当たりするかのように攻撃し始めるのであった。
さて、ブルームに攻撃を仕掛けたミノタウロスを囮にしたセレーネは、後方支援を担当している魔術師組と戦っていた。
「"ファイアボール"!」
「"聖雨"!」
「"風撃"!」
セレーネは、次から次へと飛んでくる魔力弾を紙一重で避けながら肉薄し、先ずはシロナを
「さて、コレを貴女は耐えられるかしらねぇ!?」
シロナ目掛けて勢い良く飛び出したセレーネは、脚に魔力を纏わせて回転する。
桜花にやったように、遠心力+魔力で威力が増大した回し蹴りを喰らわせるつもりなのだ。
「…………ッ!」
それを察したシロナは、咄嗟に彼女が持つチェーンメイスの鎖部分を盾にして、セレーネの蹴りを受け止めと、勢いを相殺されて地面に降り立ったセレーネに、次の行動に移る隙も与えず回し蹴りを叩き込んだ。
「かはっ……………!?」
それをモロに受けたセレーネは後方に吹っ飛ばされ、其処から再び、魔術師組からの一斉攻撃が始まる。
「(へぇ、さっきは呆気なく行動不能になってたけど、案外やるじゃない)」
自らが放った"淫靡の霧"で発情させられていた時とは違った様子を見せる勇者達に、セレーネは魔力弾を避け、時には防御魔法で防ぎながら、内心そう呟いた。
「ギュヤァァァアアアアアッ!!」
すると、上空を飛び回っていたワイバーンが急降下し、魔術師組に襲い掛かる。
「……………ッ!」
それに気づいたシロナは、チェーンメイスを構えて飛び上がり、ワイバーンの翼部分目掛けて思いきり振るった。
「ギュェエッ!?」
シロナのチェーンメイスの先端にはアダマンタイト製の錘が付いており、その部分を叩きつけられたワイバーンは、翼をへし折られて落ちた。
「コレで終わりよ……………はあっ!」
シロナが振るったチェーンメイスの錘が頭部を粉砕し、ワイバーンは動かなくなった。
「はあ……はあ……………」
動かなくなったワイバーンを見下ろしながら、シロナは荒い息を吐いた。
「やはり、こんなのを何度も振り回すのは骨が折れるわね…………腕が持っていかれそうだわ」
そう呟き、シロナは戦場を見回す。
誰も彼もが入り乱れて戦い、クレーターが幾つも出来ており、魔物の死体が転がっている。
巨大な体格を持つベヒモスやミノタウロスには、正義、航と言った、接近戦ではトップクラスの実力を持つ生徒や、富永一味の5人。そして、騎士団長のフランク率いる数人の騎士が戦っている。
他の生徒達も、ワームやサイクロプス等のような大型の魔物に攻撃を仕掛けていた。
「(皆頑張っているけど、もう長くは……………ッ!?)」
長時間の戦闘で全員が疲れているだろうと考えたシロナだが、其処で思考は中止させられる。
何故なら、先程蹴り飛ばしたセレーネが何時の間にか復帰し、沙那や桜花達支援組に攻撃を仕掛けていたからだ。
「ッ!させないわ!」
シロナはチェーンメイスを引き戻して構えると、再びセレーネ目掛けて肉薄していった。
「(白銀さん………早く、古代君達を……………!)」
奏が、一刻も早く
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