航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第9話~冒険者登録&事件!?~

「冒険者だって?」

「うん、どうかな?今の僕と君の実力なら、十分なれると思うんだけど」

 

 F組を離脱してから2日目の朝を迎えた俺は、朝食後にラリーから、一緒に冒険者にならないかと誘いを受けていた。

 

 冒険者と言えば、異世界ものの小説においては最もポピュラーな職業で、冒険者ギルドと言う組織に所属し、様々な依頼をこなすのが仕事だ。

 複数の冒険者が居る場合は、パーティーを組む事もある。

 冒険者にはランクがあり、そのランク分けは、アルファベットだったり色だったり、その種類は様々だ。

 そしてランクが上がると、より難易度の高い依頼を受ける事が出来たり、場合によっては指名依頼を持ち掛けられたりするし、その分、高額の報酬を得られる。

 その他にも、冒険者になったら中立的立場を得られるため、もし、国同士や種族間での戦争が起きて町の門が閉ざされても、冒険者なら、関係無く町を行き来する事が出来る。

 はたまた、通行料が必要な町に入る時、通行料が免除されたり、安くなったりする。

 

 だが、冒険者になるには登録費用が掛かったり、ランクによっては、一定の期間内に、何かしらの依頼を一定回数こなさなければならなかったりするため、決して楽なものではない。 

 

 

「俺としては別に良いけど、この町にギルドなんてあるのか?」

 

 そう聞くと、ラリーは首を横に振った。

 

「いや、この町には無いよ。だから、別の町に登録しに行くんだ」

 

 そう言うと、ラリーは棚から地図を持ってくると、テーブルの上に広げた。

 

 それから話を続けるラリー曰く、このルビーンから東へ3㎞行った先にルージュと言う町があり、其所で冒険者登録が出来るらしい。

 だが、此処で大きな問題が1つ……………

 

「その町ってさ、通行料とか掛かるの?」

 

 そう。知っての通り、俺は金を持っていない。この町に入ってこれたのは、この町が、入る際に通行料を払わなくても良い町だったからだ。

 もし、ルージュの町が通行料を取る町だったら、俺は冒険者登録はおろか、町に入る事すら出来ない。

 さて、ラリーの答えは……………………

 

「冒険者なら掛からないけど、僕等の場合は1人あたり銀貨2枚必要だね」

「ですよね~」

 

 Oh,Jesus(ああ、何てこった)………………

 

 一文無しな俺にとって、これは厳しい。

 コイツには一宿の恩があるのに、さらに俺の分の通行料を払ってもらうなんて……………そんな事、出来る訳が無い。

 

 取り敢えず俺は、ラリーに自分が一文無しである事を話し、一宿の恩があるため、これ以上変に負担は掛けられないからラリーだけでも行けと言ったのだが、其処で、ラリーがこんな言葉を投げ掛けてきた。

 

「それならミカゲ、君が着けてる収納腕輪に、何か売れそうなものは入ってないの?」

「売れそうなもの?そんなもの入って…………あっ」

 

 制服は売らないつもりだったので、何も無いと答えようとした俺だが、其処で、昨日掃討したゴブリン達から得た魔鉱石を思い出した。

 

「あったよ、売れそうなもの」

 

 俺はそう言うと、収納腕輪から幾つもの魔鉱石を取り出し、テーブルの上に並べた。

 

「………………」

 

 ラリーは、それを見て唖然としている。

 

「み、ミカゲ………君、此処に来る前に何をしていたんだい?」

 

 ギギギ………と、油の切れたロボットのようにぎこちない動きで此方を向き、ラリーは訊ねてきた。

 

「ああ、飛び回ってた時に、偶然ゴブリンとオークの群れを見つけたから掃討してきたんだよ」

「そ、そうなんだ……へぇ~…………」

 

 思いっきり表情をひきつらせて、ラリーは魔鉱石に目を落とす。

 それからボソボソ呟くラリー曰く、これだけ魔鉱石があれば、少なくとも通行料を払える程度の金が手に入るらしい。

 

「それでラリーよ、売れるものがあった訳だが、それをどうするつもりなんだ?」

「あ、ああ。それはね…………」

 

 ラリー曰く、次の通りだ。

 

 一先ずルージュに行って、ラリーのみが先に町に入り、俺は門の前で待機する。

 その間に、ラリーは冒険者ギルドに行き、先に登録を済ませて魔鉱石を売って、そのお金を俺の所に持ってくる。

 そして俺も、そのお金で通行料を払って町に入ると言うやり方だ。

 若干効率が悪いが、ラリーに変な負担をさせないためには、こうするより他は無い。

 

「分かった、そうしよう」

 

 俺がの話に同意すると、ラリーは頷いた。

 

「決まりだね。それじゃあ、ルージュの町に行こうか!」

「おう!」

 

 そうして、俺達は支度を済ませるとルビーンを後にし、ルージュへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、到着~」

 

 ルビーンを出発してから約2時間後、俺達はルージュに到着していた。

 道中では森の近くを通ったため、寄り道がてらに森に入り、襲ってきた魔物を倒して魔鉱石を手に入れていた。

 魔鉱石は手に入るし、俺やラリーもレベルを上げられる。正に一石二鳥。

 

 

「それじゃあミカゲ、ちょっと待っててね。直ぐ戻るから」

「あいよ、頼んだぜ」

 

 通行料を払い終えたラリーに、俺は魔鉱石を入れた袋を渡しながら言い、町に入っていくラリーを見送る。

 ラリーが人混みの中に消えると、俺は町を囲む壁に寄り掛かる。

 

 その間にステータスを見ると、レベルが4も上がって、16になっていた。

 航空兵器の欄を見ると、『戦闘機』に『F-14D Super Tomcat』、『攻撃機』には、『AV-8B Harrier Ⅱ plus』が加わっていた。

 F-14Dの特殊兵装の1つである『6目標マルチロックオン空対空ミサイル』こと、『6AAM』は勿論だが、AV-8の『4目標マルチロックオン空対地ミサイル』、通称『4AGM』も非常に強力だ。

 おまけにAV-8は垂直離着陸も出来るから、滑走の必要も無くなるし、ヘリコプターのようにホバリングも出来る。今後、魔物と戦う時に役に立つだろう。

 強力な機体を手に入れた事に思わず頬が緩むが、此処でニヤニヤしたら、間違いなく変な人のレッテルを貼られてしまう。それだけは何としても避けなければならない。

 

 俺は、何とかして無表情に戻ろうと、別の事を考えて時間を潰した。

 

 

 

 

 

 

「ミカゲ、お待たせ!」

 

 それから十数分後、そろそろ戻ってくる頃かと思って門の前に立っていると、冒険者登録と、魔鉱石の売却を終えたラリーが戻ってきた。

 パタパタ走ってきたラリーは、俺の目の前で止まって袋を差し出してきた。 

 

「はい、コレ。君のお金だよ」

「おう、態々ありがとな」

 

 そう言って、俺はラリーから袋を受け取る。

 それなりの額になったらしく、受け取った時点で軽くジャラジャラ音を立てている。

 

「銀貨9枚と、銅貨10枚。これで、通行料も払えるね」

「ああ、ホントにありがとな。助かったぜ」

 

 そう言うと、俺は門番をしている兵士に銀貨2枚を支払い、晴れてルージュに足を踏み入れるのであった。

 

 

 

 

 

 一言で言えば、ルージュはそこそこ賑わっており、野菜や果物の出店が多く出ていた。

 ルビーンからは3㎞程度しか離れてないのに、この差は一体何なのだろうか………………

 

 そうしている内に、俺達は冒険者ギルドに到着した。

 中に入り、冒険者登録をするために受付に向かう。

 

「ルージュ冒険者ギルドへようこそ。本日はどう言ったご用ですか?」

 

 ギルドの受付嬢であるエスリアさんが聞いてくるのだが………一言言おう、超可愛いです。

 茶髪のショートボブで、おっとりした雰囲気を醸し出している。ニパッとした笑顔が太陽のようで……………おっと、こんな事してる場合じゃないんだった。

 思わず見とれていたが、本来の目的を思い出して頭を振る。

 

「えっと、冒険者登録をしたいんですけど…………」

「分かりました。それでは、此方の用紙にお名前等を記入してください。あ、無理でしたら此方で代筆しますが………」

「んじゃ、それでお願いします」

 

 そうして、俺は名前や年齢、天職などを伝えたのだが、『航空傭兵』と言う天職に、エスリアさんは首をコテンと傾げていた。スッゲー可愛かったです。

 

 とまぁ、そんなこんなでギルドカードが発行された。

 この世界では、冒険者はアルファベットでランク付けされているらしく、最下位でFランク、最上位でSSSランクらしい。

 

 その後、冒険者についての簡単な説明を受けた。

 ランクを早く上げるには依頼を多くこなせば良いとか、ギルドが絶対中立を宣言しているため、戦争が起きても加担しなくて良いとか、内容は俺が知っている冒険者と同じだったので省略させていただこう。

 だが、登録費用とかの話は無かったので、登録費用は払わなくて良いのか聞いてみたところ………………登録費用で銀貨5枚支払う事になりました。

 どうやら、登録費用の支払いをすっかり忘れていたらしいです。

 チクショー、要らん期待させやがって!だが、可愛いから許す!可愛いは正義!

 

 そんなこんなで登録を済ませた俺は、ラリーに合流した。 

 

「無事に、登録出来たみたいだね」

「ああ」

 

 話し掛けてきたラリーに、俺は短く返事を返す。

 

「さて、これからどうする?いきなり依頼を受けてみる?」

「そうだな、先ずは無難にゴブリン退治でも………」

 

 そう言って、ゴブリン退治の依頼書が無いかを見ようと、掲示板に向かおうとした時、ギルドのドアが物凄い音と共に開け放たれ、紫色の修道服に身を包んだ銀髪のシスターらしき女性が転がり込んできた。

 

「お願いです、誰か助けてください!」

 

 ギルド内に彼女の悲痛な声が響き、ギルドに居た他の冒険者達が、何だ何だとワラワラ集まってきた。

 

「一体、何があったんだろうな?」

「さぁ、僕には何とも………取り敢えず話を聞いてみよう」

 

 そうして、俺達もシスターさんに近づいていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、俺とラリーは、生まれて初めて人を殺さなければならなくなるのだが、その時の俺達には、そんな事に気づく由も無かった。


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