航空傭兵の異世界無双物語(更新停止中)   作:弐式水戦

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第8話~意外な再会と、お話~

 ゴブリンとオークの群れを掃討した俺は、異世界の空を縦横無尽に飛び回りながら、通行料を払わず入れる町があるかどうかを聞くため、人影を探していた。

 その際にラリーを見つけられたら………と、淡い期待をしてみるものの、そう上手くはいかないものだ。誰も見つからない。

 レーダーにも地上物の反応は無い。

 

「せめて、王都のギルドで地図見てた時に、もっとよくこの辺りの事を確認しときゃ良かったなぁ…………」

 

 そう呟くと、俺は溜め息をついた。

 金になるものは持っているが、肝心の売る場所に辿り着けなければ意味が無い。

 

「(兎に角、何としても何処かの町に行かねぇとな…………)」

 

 内心でそう呟いていた、その時だった。

 

「………………ん?」

 

 ふと顔を上げると、前方に町らしき景色を見つけた。それ程大きなものではなさそうだが、間違いなく町だ。

 

「~~~~ッ!よっしゃあああッ!!」

 

 歓喜のあまり、俺は飛びながらガッツポーズする。

 そしてスロットルを開いて加速すると、その町目掛けてかっ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………此処だな」

 

 町の上空に来た俺は、町から1㎞程離れた場所に降り立ち、徒歩で改めて、町の入り口へとやって来た。

 やはりと言うか何と言うか、門番らしき兵士が立っている。

 俺が入り口に近づいていくと、その兵士は俺に気づき、視線を向ける。

 

「其所の者、止まれ」

 

 兵士の横を通りすぎようとしたところで、俺は呼び止められた。

 コレがテンプレなら、次の言葉は……………

 

「町に入る前に、ステータスプレートを見せてくれ」

 

 ホラ来た。ステータスの開示要求だ。

 だが、俺はこの要求にホイホイ答える訳にはいかない。偽装のスキルが無い俺にとって、ステータスを見せると言う事は、自分が異世界人であるのをバラすと言う事だからな。

 と言う訳で、俺がやる事は1つ。

 

「実は、この町に来る途中で魔物に襲われて、撃退したんですけど、その際にプレートを落としたんです」

 

 『嘘を言って誤魔化す』、コレに限る。

 

「ほう、それは災難だったな」

 

 その兵士は、あっさりと信じてくれた。

 その後、少し待つように言った後、小部屋らしき所に入っていき、1分も経たない内に、水晶玉らしきものを持って戻ってきた。

 

「じゃあ、コイツに触れてくれ」

 

 その兵士曰く、この水晶玉は鑑定石と言って、その石に触れた者が、過去に罪を犯していないかを調べるもので、何も犯罪歴が無ければ変化しないらしい。

 

 俺は言われた通りに、鑑定石に触れる。

 鑑定石に変化は見られなかった。

 

「良し、それじゃあ通って良いぞ。ようこそ、ルビーンへ」

 

 お?どうやらこの町には通行料無しで入れるようだ。やったね!

 

 俺は兵士に一言礼を言うと、ルンルン気分で門を潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 さて、幸運にも通行料無しで町に入る事が出来たのでルンルン気分だった俺だが、そのテンションは一気に下がってしまった。その理由は、この町にある。

 

 建ち並ぶ家々が、あまりにも古過ぎるのだ。中には壁にヒビが入っているのもある。

 おまけに、町に活気が全く無い。

 王都ではないにせよ、人がそれなりに居ても不思議ではないのに、人の気配をまるで感じないのだ。

 今は真っ昼間だと言うのに、静か過ぎるあまりに薄気味悪さを感じさせる町だった。

 

「(流石に、こんな所に冒険者ギルドとかがあるとは到底思えんな…………)」

 

 もしそうなれば、この町に居ても意味は無い。適当に通行人を捕まえて情報収集して、魔鉱石を売れる所があれば売り払って、さっさと別の町に移動しよう。

 そうして、通行人を探そうと歩き出した、その時だった。

 

「あれ?其所に居るのって、もしかして………ミカゲ、なの……?」

「ん?」

 

 不意に後ろから声を掛けられ、俺は足を止めて振り返る。其所には見慣れた少年が目を丸くして立っていた。

 中性的で整った顔立ちに、首筋辺りからゴムで縛ってある金髪、そして極めつけに、エメラルドのように鮮やかな緑色の瞳………………間違いない、俺がこの世界に来てから初めて出来た友達--ラリー・トヴァルカイン--だった。

 

「よぉ、ラリーじゃねぇか!」

「ッ!ミカゲ!」

 

 俺が声を上げると、ラリーが嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

「嘘みたいだよ、君が此処に居るなんて…………ねぇ、どうして此処に居るの?」

「そりゃ此方の台詞だよ。お前こそ、なんでこの町に居るんだ?」

 

 宰相のせいで『没落魔術師』と呼ばれたとは言え、王都の学校に入れるんだから、少なくとも、こんな町に居るとは思えないのだが……………

 

「そんなの、僕の田舎がこの町だからに決まってるじゃないか」

 

………………え、マジで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、上がりなよ」

「お、おう……お邪魔します」

 

 さて、あれから何だかんだあって、俺はラリーの家にお邪魔する事になった。

 家への道中で聞いたのだが、ラリーは現在独り暮らしで、両親はラリーが王立騎士・魔術師士官学校に入学すると共に、相次いで亡くなったらしい。

 

 家に上がると、そのままリビングらしき空間に通され、椅子を勧められたので、ゆっくり腰掛ける。

 ラリーも、俺と向かい合う形で椅子に腰掛けた。

 

「いやぁ、それにしても驚いたよ。何処に住んでるのか教えてなかったのに、君の方から来てくれるなんて…………凄い偶然だね」

「ああ、そうだな………ちょうど俺も、そう思ってたところだよ」

 

 そう言って、椅子の背凭れに凭れ掛かる。

 

「それで、離脱の方は上手くいったの?」

 

 不意に、ラリーがそんな事を聞いてくる。

 俺は、その質問に頷いた。

 

「ああ、俺のクラスの男子と宰相しか居ない時を狙ったからな。彼奴等全員、俺が出ていくのをスッゲー喜んでやがったよ」

「……どうやら、君のクラスの男子や宰相は、君の事が余程気に入らなかったんだね」

 

 そう言うと、ラリーはテーブルに頬杖をついて言った。

 

「まぁ、取り敢えずゆっくりしていきなよ。幸い、君と僕は体型が似ている、僕の服も十分着れる筈だから、泊まっていく事だって出来るしね」

「そうか…………悪いな、何から何まで」

 

 俺がそう言うと、ラリーは首を横に振った。

 

「気にしなくて良いよ。宰相やクラスメイトから酷い目に遭わされた者同士の誼ってヤツさ」

「そりゃ、あんまり嬉しくない誼だな」

「違いない」

 

 そう軽口を叩き合って、俺達は笑い、落ち着いてからは、俺が王宮から出ていく時の話をした。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、1つ聞きたい事があるんだけど」

「おう、何だ?」

 

 一通り話し終えた訳だが、ラリーが話を切り出してきた。

 

「ミカゲ…………君は王都から此処まで、どうやって来たんだい?君の話を聞いた感じだと、君は昼前に王都を出てきたみたいだけど、それでさっき着くと言うのは、どう考えても早過ぎる。僕なんて、旅館で君を見送ってから直ぐ宿を出て、5時間休まず歩いて漸く着いたんだから」

「…………」

 

 Oh……まさか、此処でその質問をされるとは思わなかったぜ。

 

 それにしても、王都からルビーンまでそんなに離れてたのか。零戦でかっ飛ばしてきたから、遠いなんて殆んど感じなかったぜ。

 さて、どう答えたものか…………

 

「…………」

 

 ラリーに目を向けると、ラリーは無言のまま俺を見つめ、俺が話すのを待っている。

 どうやら、ちゃんと言わなきゃ駄目っぽいな。

 

「……知りたいか?」

 

 そう訊ねると、ラリーはコクりと頷いた。

 

「分かった、話しても良い。だけど、その前に守ってほしい条件がある。それが守れないなら、この話は無しだ」

「分かったよ…………それで、その条件とは何だい?」

 

 そう聞いてくるラリーに、俺は条件を伝えた。

 

 内容は簡単、『今、俺から聞いた話を誰にも言わない事』だ。

 『王都から此処まで、俺が居た世界で使われている兵器の力を使ってかっ飛んできた』なんて事が知られたら、大騒ぎになるのは火を見るより明らかだ。

 それが王都にまで知れ渡ったら、恐らく戦力として連れ戻されるか、危険因子として殺されるかの何れかだ。そんな目には遭いたくない。

 まぁ、そうは言っても何時かはバレる事だが、流石に今バレるのは避けたい。せめて、連中に対抗出来る程度の強さは身に付けなければならない。

 

 俺が、守ってほしい条件と理由を伝えると、ラリーは頷いた。

 

「んじゃ、話そうか」

 

 そうして俺は、ラリーに事の一切を話すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、言う訳なのさ」

「……………」

 

 話を終えた俺だが、ラリーは唖然とした表情で俺を見ている。まぁ、無理もないわな。

 

 物凄い速さで空を飛べる上に、詠唱無しでの攻撃が可能で、おまけに対象となるものを追い掛ける機能がついていたり、広範囲の敵を攻撃出来たりする武器なんて、この世界には存在しないのだから。

 

「す、凄いね………君の世界には、そんな恐ろしい武器が存在するのか………コレが世界中に知られたら、色々な国が、戦力として君を狙うだろうね」

 

 ただ話しただけなのに冷や汗を流しながら、ラリーはそう言った。

 

「ああ。だから、呉々も誰かに喋ったりしないでくれよ?せめて、対抗出来る程度の力をつけておきたいからな」

「うん、分かった。約束するよ」

 

 そんな会話を交わし、俺達は残りの時間を過ごすのだった。


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