現界突破   作:逆本 兼幸

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ドラマで見る刀って軽いらしいのですが一体なにで出来ているのかちょっとだけ気になりません?
アルミだとくしゃくしゃになりそうですしねぇ・・・。


~迷わず前だけを見ると誓うから~

―刀鍛冶『武威』―

 

「おっ、兄ちゃんたち!出来上がってるぜ!」

 

「おお、ありがたい。」

 

店主は奥からさきほどの刀二本を持ってきてくれた。

 

「切れ味と質はさっきとは比べ物にならねえぜ!確かめてくれや!」

 

店主から刀を受け取る。鞘から少しだけ抜きコタロウと一緒に見てみる。・・・さっきよりもどことなく青みを帯びている。そして重い!さっきより重いぞこれ!2kgぐらいあるんじゃないか!?

 

「うわぁ、正虎さん、これ相当良い刀ですよ。」

 

コタロウは目をキラキラさせながら見ている。そういえばと思い一度鞘に戻して柄頭同士を合わせてみる。するとカチッという音がなって刀二本が合体した。

 

「こ、これはムラサメの双刃刀ような刀になりましたね。」

 

「ムラサメ?それに双刃刀って?」

 

「なんだい兄ちゃん。双刃刀を知らねぇのか。普通の刀の柄頭に刃がある特殊な刀の事を双刃刀ってんだ。」

 

「そしてムラサメというのはボクの友人の武将です。」

 

へぇ自分でも変わった刀だと思ったんだが、もう使い手がいたとは。コタロウの友人ならいい奴かもしれないな。

 

そろそろ分離させる。・・・む、思ったより固い。でもこれなら多少の攻撃で分離させられることもないか。

 

無事分離させ、店主にお礼を言う。

 

「店主。ありがとう。これなら自衛もできる。」

 

「いいってことよ。あ、兄ちゃんよ。実はもう一つ贈り物があるんだよ。」

 

そう言うと店主は店の中にあった結構太い槍を持ってくる。

 

「この槍なんだがさっき兄ちゃんは槍も手に馴染むって言ってたからよ、この槍をもらってくれや。」

 

「え、いいのか?かなり立派な槍だが?」

 

「いいんだって、それにこの槍はなかなか使い手が見つからねえ槍だったんだ。でもその刀を持てるんだったら兄ちゃんはこの槍を使えるぜ。」

 

「む?どういうことだ?まさかこの刀は・・・。」

 

「おう!兄ちゃんたちが来るまでの間に結構重くしといたぜ!」

 

な・・・なるほど、確かにさっきより重くなってるって感じたし。

 

「この槍もその刀と同じぐらいの重さだ、大切に使ってくれや!」

 

「ちょ、ちょっと待て。槍も有難く頂戴したいがどうやって腰に刀を差せばいいんだ?」

 

コタロウと店主はその言葉に苦笑い。現代じゃ刀なんて差さないからわからないんだよぅ。

 

 

 

 

「また来てくれよな!!」

 

店主が店の外まで来て手を振ってくれる。俺とコタロウもそれに応えて手を振って歩き出す。

 

それにしても・・・

 

「完全武装だな」

 

腰の右側左側に一本ずづの刀に手には太めの槍。どこかへ戦にでも行くのかね。

 

「それは仕方がないですよ。そもそも正虎さんの戦法が特殊なんですから。」

 

ずるいぞコタロウ、そう言われたらなにも言い返せないじゃないか。事実そうだし。あ、もう昼か・・・。

 

「もう昼だなぁ、どうだコタロウ。ここらへんで昼にしようじゃないか。」

 

「あ、いいですね。確かにもうお昼時ですしね。」

 

「とするとどこかに食事処はあるのかね?」

 

「そうですね・・・、蕎麦なんてどうですか?」

 

「おっいいね。」

 

俺とコタロウは歩きながら蕎麦屋を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

「あ、正虎さん。あそこ蕎麦処じゃないですか?」

 

「ほ?どれどれ・・・でかでかと蕎麦って書いてあるな。むしろ蕎麦屋じゃなかったら困る程だ。よし、あそこにしよう。」

 

「そうですね。」

 

しかも多分十何人かの人がいるがすぐに席に座れるかもしれない。俺たちはその蕎麦屋へ向かう。

 

「ここの蕎麦処は盛況していますね。牛乳はあるのかなぁ?」

 

「ははは、コタロウは本当に牛乳が好きだな。」

 

「それは当然です!正虎さんも好きでしたよね?」

 

「ああ、牛乳は今でも毎朝飲んでるよ。」

 

俺には小学校からの習慣があって朝食に牛乳を飲まないととても違和感を感じてしまうのだ。しかしそのおかげか骨は丈夫だと思う。

 

「まあ、とりあえず食べようじゃないか。なにがあるのかなっと。」

 

「はい、ええと・・・。」

 

――――

――

 

ああ、天ぷら蕎麦美味かったなぁ。あんなにサクサク揚がってるなんて思ってみなかった。蕎麦のつゆにつけるとまた一味違った、さっぱりとした味になるんだよな~。

ちなみにコタロウはマジで牛乳を頼んでいた。

 

「正虎さん、もうそろそろ二条御所の正門に着きますよ。」

 

「おお、そうだったな。」

 

そんなわけで昼飯を食べ、二条御所に戻っている。夕方から始まるヨシテル様との鍛錬に遅れるわけにはいかないしな。

 

「あ、そうだ。コタロウ、刀と槍の手入れの仕方を教えてくれないか?」

 

「いいですよ、まず刀の場合ですが・・・」

 

~説明中~

 

「・・・ということで、いい刀と槍なんですからちゃんと手入れしてあげてくださいね?」

 

「わかった。ありがとなコタロウ。」

 

「いえいえ。またいつでも聞いてもらって大丈夫ですよ。」

 

そう言ってもらえるのは有難いもんだ。これで俺も武士の仲間入りってことか、嬉しいような複雑な気分だ。

と思ってる間に正門に着く、くぐって少し右に歩いたところに馬小屋がありコタロウはそこに自分の馬を待たせているようだ。

 

「今日はありがとな、コタロウ。」

 

「ボクの方こそ、楽しい時間でした。またこうして過ごせるといいですね。」

 

コタロウは馬を外に出しうまく跨った。くっ、かっこいいじゃないか。

 

「それじゃあボクはここで失礼します。」

 

「ああ。また今度こっちへ来たら奢るぞ。」

 

「それはなるべく早く来ないとですね。」

 

心底楽しみといった様子でコタロウは馬を走らせ行ってしまった。やはりいつかは俺も馬に乗れるようになりたいな。そうすれば豊後とか見に行けるしなぁ、誰に教わろうか。

 

 

 

 

「・・・ん?誰だ、あの男?」

 

そんなことを考えていると変な仮面を片側につけた銀髪で長髪の男が二条御所から出てくる。着ている服装はどことなく赤と黒を基本としているような着物を着ている。左側の顔しか見えないが何か苛立ってるような感じだ。

 

「む、何だ貴様。」

 

さすがに凝視してしまったら気づくよな、話しかけられてしまった。

 

「いえ、今まで姿を拝見していなかったので誰かと思い見てました。」

 

「ほう、この松永弾正久秀を知らんとは。貴様は何者だ。」

 

「俺は正虎と申します。」

 

「正虎だと?そうか最近ヨシテルの側近になったという男か。」

 

「はぁ、その通りですが。そもそも何故ダンジョー様は顔に蟹の仮面をつけてるんですか?」

 

さっきから非常に気になっていた、近くで見たら蟹にそっくりな仮面をつけてるんだからやっぱり蟹好きなのかな?そう思ってる間にダンジョー様の顔が不機嫌一色になった、何故だ。

 

「おい貴様。なんだそのとてつもないもみあげが生えているスケベな戦士のような呼び方は。というかこの仮面は蟹ではないわ。」

 

あ、ちゃんとツッコんでくれる。実はいい人なんじゃねぇの?しかも知ってるのか、その戦士。

 

すると松永様は口角を上げこちらを見下ろすように見てくる。

 

「はっ、それにしてもヨシテルの側近になるとは。貴様は見る目がないな。」

 

「どういうことですか?」

 

「あんな無能の下に仕えるというのが愚の骨頂だと言っているのだ。」

 

「む、無能?く、詳しく聞いてもよいですか?」

 

落ち着け、俺。しばき倒すのは話を全部聞いてからだ。

 

「貴様は知らぬだろうがこの幕府の権威は地に落ちているのだ。各地の武将に舐められ、当のヨシテルは理想論ばかり。理想を語るだけでろくに政を決められず、まるで現実を見ようとしない。」

 

・・・昨日までヨシテル様の政治は見たことがなかった。しかし京の都を回った時は驚いたもんだ、何故なら皆笑顔だった。こんなことができるのは有能な者だけだと思うのだが・・・。

 

「だから私は決めたのだ。ヨシテルにかわり私が天下を治める。武力で天下を制圧するのだ。」

 

「武力で天下を?」

 

「そうだ。邪魔する者は討ち捨てる。そうした末に真の平和が訪れるのだ。」

 

なるほど。松永様は力で、ヨシテル様は話し合いで天下統一を目指す。まさしく真逆の方法だ、これはお互いが衝突するのも無理ないな。

 

しかしいくら歴史に疎い俺でも天下統一を寸前まで果たしたのは織田信長だということは知っている。そしてその織田信長の手段は大体が力による天下統一だったはず。この世界でもそれは変わらないのか・・・?

 

いや、そもそもこの世界はまず前提がおかしい。今まで会った武将はこの松永様を除いて全員女性だ。やはり今日の朝に思っていたがこの世界は、俺の元いた世界とは違う歴史をたどるかもしれない。

 

「・・・そうとは限らないのでは?」

 

「なんだと?」

 

「確かに理想だけでは口先だけだと思われます、しかし武力だけならただの虐殺です。それではいつか反乱が起きるかもしれませんよ。」

 

「反乱が起こるならまた制圧するまでのこと。」

 

「反乱が起き、制圧しまた反乱が起きる。そんな繰り返しでは平和には程遠いです。」

 

「ならばヨシテルのような甘すぎる政をしろというのか!?」

 

「俺はヨシテル様の方針を聞いたことがありませんが、松永様からの話から話し合いで天下泰平を目指していると推測しました。対立するならばその答えはいずれ出るはずです。」

 

「いずれだと?」

 

「はい。どちらも譲らないのであれば決着がついたその時こそわかるというもの。少なくとも今の時点ならその答えは誰にもわからないでしょうね。」

 

「ならばヨシテルのやり方は甘すぎると私が証明してやる。」

 

左目に強い意志を宿し松永様はそう断言する。正直俺に政治はわからん、わからんが松永様もまたこの国を思っていることはわかる。そうじゃなきゃ『真の平和』を望まないはず。

 

「正虎とやら、貴様は他の家臣とは違うな。『答えは誰にもわからない』、他の家臣ならヨシテルが正しいと言ったはずだからな。

どうだ、私と天下統一を果たしてみる気はないか?」

 

「お断りします、俺にはまだ返せねばならない恩義がありますので。」

 

「わからん男だ。何故そこまでヨシテルの下につきたがる?」

 

「救われた恩は返すのが当然というもの。その恩を仇で返すのは俺の『義』が許しません。」

 

「ふん、とんでもない堅物だな貴様は。」

 

「ダンジョー様も中々の頑固者だと思いますが。」

 

「その名で呼ぶなと言っただろう!」

 

きっちりツッコむあたり割と几帳面なのかも、しかしからかうのはやめない、面白いからだ。

 

「まあよい、貴様は堅物だがヨシテルよりはましだ。その気になったら私の下へ来るがいい。」

 

松永様は正門へ向かっていく、それにしてもカシン様と松永様からスカウトされるとは俺もまだまだ捨てたもんじゃねえな。どっちも悪役っぽいけど。

 

さて、もう日が沈んでしまっている。ヨシテル様との鍛錬は完全に遅刻だな。

どう言ったものか、考えながら鍛錬場へ向かうとしよう。

 

 

 

 

こうして俺は鍛錬場に着くも、やはりヨシテル様の説教を受ける羽目になってしまった。鍛錬場の床は木でできているので正座するとかなりの痛さになる。

 

恐らく三時間以上の説教を受けたと思う。くそぅこの結果も松永様のせいだ、絶対にまたダンジョーと呼んでやる。

 

 





このネタは個人的に絶対やりたかったネタです。勇者ヨシくん大好きです。
3部にわたるヒット作ですが4部はあるのかどうか。とても楽しみです。(番宣感)

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