現界突破   作:逆本 兼幸

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正虎はソウリンと共に豊後へ
その途中にある人物が正虎たちを待ち受ける。


豊後編
~晴れた日を選ぶ~


 

さて、朝日が眩しく光り輝く。こういう時間帯は学生の頃の集会を思い出す。

あの後鍛錬が終わり朝食後、俺はソウリン様と共に豊後へ向かうこととなった。

 

ヨシテル様は「思い立ったが吉日です。それに折角ですので豊後を見て回るのもよいのですよ。」

とおっしゃわれたので二日か三日豊後に滞在して観光でもしようかと思っているのだ。

 

「正虎さん、豊後へはこのカラクリで行くのですか?」

 

「ええ、このバイクはまだガソリンがありますからね。」

 

ちなみに槍は背負っている、さすがに片手運転は避けたほうが良いと思ったからだ。

帯刀もしているのでいざという時はバイクを停め戦うことはできる。

 

「では行きましょうか、早く豊後を見てみたいですし。」

 

「私は後ろに乗ればいいのですか?」

 

「はい。道案内はお願いしますよ、ソウリン様。」

 

実はこのバイク説明書が付属していたのだ、そして朝食後すぐに確認したので操作はわかっている。

バイクにまたがり、ソウリン様は後ろに乗る。そのまま流れるような動作で首に手を掛けられ強くつかまれる・・・ぐえぇっ。

 

「ソ・・・ソウリン様・・・できれば・・・肩に・・・。」

 

「ああっ!すみません!つい、うっかり・・・。」

 

首から手を離してもらい代わりに肩につかまってもらう、息を吸えるって素晴らしい。

キーを回してボタンを押しエンジンを掛ける。

 

「それじゃ、行きますよ。」

 

「ええ、楽しみです!」

 

 

 

 

 

 

 

走り出して約2時間、信号も渋滞もないので全ての道が高速道路と同じである。たまに赤色の旗を背負った兵士を見かけたぐらいだ。

しかしどの兵士も最初はこちらを奇妙なモノを見る目で見てきていたが、ソウリン様を見た途端にどこか納得したような顔をしていたのが気になるところだ。

 

「バイクというのは速くて便利な物ですね、これなら今日にでも船着き場に着きますわ。」

 

そうか、この時代じゃ九州と本州の間にまだ橋は掛かってないはずだもんな。その船にこのビッグスクーターが乗れば良いんだけれど。

 

「ところでソウリン様、どこからか視線を感じるんですが・・・。」

 

「確かに先ほどから何者かが後をつけて居るようですね。」

 

マジか!?今60/kmだぞ!?どんだけ足が速いんだ!?

すると突然ソウリン様は立ち上がった。

 

「ソウリン様!?急に立ったら危ないですよ!?」

 

「今はそんなことを言ってる場合ではありません、襲撃者の可能性もあるのですから。」

 

「しかしどうするつもりですか?相手が何であろうとこっちは手出しできないんじゃ・・・。」

 

「大丈夫です、私には弩・佛狼機砲(ドン・フランキーほう)がありますから。」

 

「へ?どん・ふらんきーほう?それは一体・・・?」

 

「それはこれだあぁ!!」

 

ジャキンという物々しい音と共に、肩に衝撃が。ミラーで見る限りでは、どうやらソウリン様は体を後ろに向けているようで、安定させるために俺の肩を足置きにしてふんばるつもりらしい。

というかもう一つのミラーには鉄の塊が映っている。多分ドン・フランキー砲だろうが一体どうやって出したのだろうか?

 

「もしかして、それ大砲では・・・?」

 

「その通り!私の大砲でぶっ飛ばしてやる!」

 

「性格変わってません!?」

 

「うるさい!正虎は大人しくバイクを走らせていればいいのだ!」

 

ヤバい、あれが大砲なら相当な反動が来る。備えないと!

・・・しばらくバイクを走らせながら来るはずの衝撃に備えていると不意にソウリン様が大声で、

 

「正虎!止まれ!」

 

とはっきり言った、突然だったのでビクッとしたがここで逆らったら命が危ない気がするので止まる。

きっちり止まった後に俺はソウリン様に問いかける。

 

「ソウリン様、なにかあったのですか?」

 

「いや、一瞬人影がはっきり見えたのだ。あれはモトナリ殿だ。」

 

モトナリ?毛利元就だっけ?そういえばあの親衛隊の隊長から見せてもらった地図に毛利の文字があったような・・・確か中国地方だったような。

そんなことを考えている間に後ろの茂みから、黒づくめで裾の方に見事な花の柄をあしらった着物に艶のあるボブカットの黒髪、それに左手には刀のような長さの鉤爪をつけている。

ちょこんと頭に乗せた烏帽子(だっけ?)が可愛らしいが、着物を片側を肌蹴させているので目のやり場に困る格好でもある。

 

「久しぶりね、ソウリン。妙なカラクリを走らせてるから何者かと思ったわ。」

 

「お久しぶりです、モトナリ殿。」

 

いつの間にかバイクから降り、これまたいつの間にかドン・フランキー砲をどこかにやったソウリン様が挨拶を返す。

するとモトナリ様が俺に軽く鉤爪を向ける、今にも引き裂かれそうでとても恐ろしい。

 

「ソウリン、この男は何者なの?」

 

「その人は・・・」

 

「ソウリン様、自己紹介くらいは俺にやらせてください。・・・初めまして、正虎と申します。」

 

俺もバイクから降り、ストッパーをしてモトナリ様に向き直り自己紹介をする。それを聞いたモトナリ様は鉤爪を下ろしてくれた。

 

「正虎ね。どうしてソウリンと一緒にいたのかしら?」

 

「それを話すと長くなるのですがよろしいですか?」

 

「構わないわ、話しなさい。」

 

「それでは。ソウリン様と一緒にいた訳ですが・・・」

 

 

 

 

 

俺とソウリン様はできる限り簡潔に話した、そして今は豊後に向かっていることも。

 

「そう、それで豊後に向かっていたわけね。確かに豊後の技術力はかなりのものだしね。」

 

「ええ、ですので先を急いでもいいですか?」

 

「待ちなさい、あなた達を追ったのは他にも理由があるのよ。」

 

目を一層険しくしてモトナリ様はバイクに乗ろうとする俺とソウリン様を止めた。さっきからどことなくモトナリ様からは俺に対する敵意がある気がする。

 

「モトナリ殿、その理由とは一体なんですか?」

 

「話は簡単よ。その男、正虎からは闇の気配を感じるわ。」

 

「へ?俺から闇の気配ですか?」

 

闇の気配・・・多分マジな話なんだろうけどそんな言葉を聞いたのは中学校くらいだ。いわゆる中二病患者から聞く言葉だ。

しかし闇の気配を感じさせるようなことはしてないはずなんだが・・・。

 

「正虎は悪人ではありません!」

 

ソウリン様が大きい声で反論してくれる、わかってくれる人がいるって幸せなんだなぁ。

けどいつまでも幸せに浸っているわけにもいかないので俺は気になったことを質問する。

 

「それに俺は普通の人ですよ?」

 

「いえ、あなたの心からは闇の気配は感じないけど体からは感じるのよ。薄くだけどね。」

 

「か、体からですか?私には何も感じませんが・・・。」

 

「何も感じないのも無理はないわ、とても特殊な力だから。とにかく何故一般人のあなたからそんな気配がするのか聞かせてもらえるかしら?」

 

「えっ~~っと、あ!そういえば前に洗脳されかけたことがあるんですが。」

 

「せ、洗脳・・・?それは本当なの・・・?」

 

「は、はい。間違いないです。」

 

一緒に聞いていたソウリン様は予想外だったのか固まってしまった。モトナリ様の方も想定外だったようで目を大きく見開いて動揺しているのが見ていてわかる。

するとモトナリ様は突然もの凄い勢いで俺の両肩を掴んできた。

 

「答えなさい!誰に洗脳されかけたの!?」

 

前後に揺さぶられとても気持ち悪い、うぅぐわんぐわんしてきた・・・。

その様子を見て我に返ったソウリン様は割って入ってきてくれた。

 

「モトナリ殿!落ち着いてください!乱暴はダメですよ!」

 

「うぅ苦しかった・・・。」

 

「正虎さん・・・。大丈夫ですか?」

 

「ごめんなさい、でもこの話は聞かないわけにはいかないの。話してくれるかしら?」

 

「ありがとう、ソウリン様。もう大丈夫です。・・・では続きを。」

 

「ええ、お願い。」

 

「俺を洗脳しようとしたのはカシンという者です。」

 

「カシン・・・、どこかで聞いたことがある名前ね。そのカシンとやらはどこにいるの?」

 

「すみません、俺は夢で洗脳されかけたので詳しくはわかりません。」

 

「そう・・・。」

 

その後はしばらくの間沈黙がつづいた。カシンの抑止力になろうとしていることは伏せたほうが良いかもしれないからこれは言わないでおこう。

そうした中沈黙を破ったのはモトナリ様だった。

 

「悪かったわ、武器を向けたり揺さぶったりして。」

 

さっきまで向けられていた敵意が完全に消えた。どうやらモトナリ様は納得してくれたようだ。

 

「お詫びにあなたに困ったことがあれば助けてあげるわ。」

 

「本当ですか?ありがとうございます。」

 

誤解が解けたし、何より味方が増えたことが嬉しくてつい綻んでお礼を言う。モトナリ様は表情を柔らかくしちょっとした笑顔で返してくれた。

一方のソウリン様は俺の足の親指を踏み抜いた。

 

「足の親指がぁっ!!」

 

「ふんっ、はやく豊後へ行きますよっ!」

 

「待て、せめて痛みが引くまで待ってくれ!」

 

「ふふっ仲が良いのね。」

 

「モトナリ様、仲の良い人の足を踏みつけるか一度考えてみてください。」

 

「正虎さん!早く行きますよ!」

 

「わかりました、のその前に。モトナリ様、助けを求めるときはどうすればいいですか?」

 

「それについては心配いらないわ。その時近くにいるもの。」

 

「む、そういうもんですか。ではこれ以上はソウリン様も機嫌が悪くなる一方な気がするので失礼します。」

 

「ええ、また会いましょう。」

 

俺はビッグスクーターの後ろの座席に乗っているソウリン様にお詫びを入れながら、ハンドルを握って座る。

エンジンを掛けモトナリ様に手を振ってから元々向かっていた方角へバイクを走らせる。

 

 

 

 

 

 

「ソウリン様、いくら何でも足を踏むのはいかがなものかと思いますが。」

 

「正虎さん、あなたはもう少し女心というものをわかってください。」

 

「むむ、俺は人の気持ちには敏感だと思っていたのだが・・・。」

 

「そんなわけありません、その認識は改めるべきです。」

 

う~む、全然機嫌を直してくれないぞ・・・。ここは一つカシンと同じ手でも使ってみるか?

 

「そ、そうだ。豊後へ着いたらソウリン様の好物を食べませんか?」

 

「物で釣る気ですか?」

 

「いえ、そういうわけでは。ヨシテル様から頂いた休暇なのですから見て回りたいんです。それにソウリン様の好物ともなればきっと美味しい物でしょうからね?」

 

「・・・わかりました。そういうことなら豊後を案内しましょう!」

 

どうやら機嫌が良くなったようだ。ホッと胸をなでおろす。

 

「さあ、正虎さん。ここまで来たならもうすぐ船着き場ですよ!」

 

「はい、わかりました!」

 

まだまだ船着き場は見えてはこない。が俺はソウリン様を乗せバイクを走らせまだ見ぬ船着き場を目指していく。

なんとなくだが、俺は心のどこかでこれから行く豊後に何かあるのではと予感らしきものを感じていた。

 

 

 

 





ああ~!リセマラでヨシテル様が出ないよぉ~!

でも松永は7回出た、なんでお前が出るんだよっ!しかも☆5全部松永だしっ!

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