この素晴らしい少年に祝福を!   作:ねこたつむり

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※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
サブタイまで訳が分からんことに・・・


主人公のパティシエ日記。

「はぁ、はぁ、ご、ご主人様。大好きです・・・」

ご主人様は私が擬人化出来ることを知ってから何度も私を求めてきた。

「あ、ちょっと、ま、待ってください。きゃっ!?」

ご主人様が私を押し倒してきた。

「も、もう、ご主人様はいつも強引に・・・」

ご主人様、私もう・・・

「・・・ご、ご主人様?い、いつからそこに?」

私はベットで仰向けになって部屋の入り口に立っているご主人様を見て恐る恐る聞いた。

「お前が架空の俺にキスしてるところからだ。」

 

 

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「「ただいま!」」

「おかえりなさい。」

俺達はアルカンレティアでお土産を買ってすぐ『テレポート』を使って帰ってきた。

「母さん、父さん居る?二人に頼みたいことと言うよりお願いがあるんだけど・・・」

「リビングに居るわ。何かしら、しょうたのお願いって。」

いつも俺が遠慮がちなせいか母さんは嬉しそうだった。

「あ、それと別に母さんだけにお願いがあるんだ。」

「私だけに?ふふふ。」

不敵の笑みを浮かべた。

時々、いや、頻繁に思うのだが俺の周り変人多くないか?

「お父さん、二人が帰ったわよ。」

「おぉ、お帰り、どうだった温泉旅行は?」

二日ぶりに娘息子に会えて嬉しいのか声が弾んでる。

「楽しかった。色々あったけど・・・」

ゆんゆんが答えた。

「そうか、それはよかった。しょうたは?」

「休めた気がしない。」

今回色々ありすぎたんだ。体を休めるどころじゃない・・・

『ご主人様、おはようございます。』

その一つの元凶が今お目覚めのようだ。

「父さん、母さん。取り敢えず座って。」

「どうしたんだ?」

父さんは、言われるがまま座り、母さんは楽しそうに座った。

「えっと、雪那の部屋をくれない?」

「「え!?」」

二人は何言ってるんだこいつみたいな目で見てきた。

「え、えっと、もう一度いいか?」

なんだ?難聴にでもなったのか?

「雪那の部屋をくれない?」

「しょうた、あなたの言ってる意味が分からないんだけど・・・」

「あ、そっか。いきなりそんなこと言われてもわかんないな。雪那、出てきて。」

腰に下げてる『雪那』が光だし腰から離れ雪那になった。

「初めまして、雪那です。」

父さんと母さんは口を開けてポカーンとしてる。

「ご、ご主人様。私何か変でしたか?」

困った顔で雪那が聞いてきた。

「いや、そもそも擬人化が珍しいんだろ。」

「お兄ちゃん、あ、雪那ちゃん出てきてたんだ。おはよう。」

ゆんゆんが自室に荷物を置いて降りてきた。

「ゆんゆんさん、おはようございます。」

ペコリと頭を下げた。

「ちょっと待ってくれ、頭が追い付かない。」お父さんが凄く困惑している。

「それじゃあ、この旅行中に何があったか説明するな。」

俺は旅先で何があったか、隠すとこは隠しつつもしっかり伝わるように話した。

「お、お前も大変だな・・・」

同情の目をして父さんが言った。

クレアの父ちゃんもこんな目をしてたな・・・

「お父さん、別にいいんじゃないかしら?一人増えたぐらい何ともないと思うんだけど。」

母さんは了承をしてくれるらしい。

「そうだな。分かった。その子に部屋をあげよう。しょうたの部屋の向かい側を使うといい」

「ありがとう、父さん。あ、それと、母さん。頼みって言うのは台所を使わせてくれないかな?」

それを聞いた父さんは、

「なんだ、そんな事か、いいよな?母さん。」

「あら、ダメよ。母さんの仕事無くなっちゃうじゃないの。」

予想通りの反応が返ってきた。

「ど、どうしてなんだ?たかが台所を使うだけだろ?」

「お父さん、しょうたのお菓子食べたことある?」

「あぁ、前にゆんゆんと一緒に作ったやつな。あれは絶品だった。」

褒めてくれるのは嬉しいけど、今はやめていただきたい。

「それよ!しょうたのお菓子があまりにも美味しすぎるからよ!どうして?どうして母さんよりも女子力高いの?」

そんなこと言われても困る。

「が、母さん落ち着け。しょうたが作ったと言ってもゆんゆんが手伝ったんだろ?」

「「「え?」」」

「あれ?どうした?」

この人マジで言ってるんだろうか?

「お父さん、私お兄ちゃんに教えてもらったんだけど・・・」

「むしろ、ゆんゆんが初めて作ったお菓子があのクッキーよ。」

「そ、そうなのか?」

こいつ親失格だな・・・

「しょ、しょうた。ゴミを見るような目は止めてくれないか?」

ゴm・・・じゃなかった父さんはオロオロしながら頼んできた。

「まぁ、そう言うことだから、しょうたには悪いけど台所を使わせる訳にはいかないの。」

強情の母だ。別に仕事をとる訳じゃないのに・・・

「か、母さん。あのしょうたが凄く悲しそうな顔をしてるぞ・・・」

「そ、そんな顔したって無駄ですからね。」

あ、行けるわ。

「お、俺は別に母さんの仕事を取るつもりは無いのに・・・た、ただ知り合いにケーキをと思っただけなのに・・・」

「うっ、な、泣かないで。わ、分かったから。台所を使わせてあげるから、泣かないで。」

「ほ、ほんとに?ありがとう、母さん!」

心の中でガッツポーズをとった。

『ご主人様、ゲスいですね。』

雪那が脳内会話をしてきた。

だまらっしゃい。

「でも、使うのは、晩御飯の後だけだから。これから一週間毎日。」

「「え?」」

父さんと母さんが声をあげた。

「お兄ちゃん、貴族の人に誕生日ケーキ頼まれたの。だから十個は作るって言ってたよ。」

「心配要らないだろ。消音と消臭魔法を使えば問題ない。」

魔法って便利。

「そ、そこじゃないわよ。連日ケーキ作るんでしょ?しんどくない?」

「問題ないんじゃない?趣味をぶっとうしでやる訳だし。苦ではない。」

夜通しゲームやるみたいなもんだろ。

「何かあったら遠慮なく言ってね?」

「了解。」

さて、バイトに行きますか!

 

 

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「ありがとうございました!」

最後の客も帰り、皿洗いをしていた。

「いや、しょうた君が戻ってきてくれて助かったよ。しょうた君がどれだけ仕事していたか分かるね。」

「いや、申し訳ありませんでした。まさかこんなに休むことになるなんて思ってなかったですから。」

「ご主人様、テーブル拭きました。」

「ありがとう、雪那。」

俺はこれまでの埋め合わせをする為に雪那にバイトの手伝いをさせてた。

神器をバイトに使うってどうなの?って声が上がっても、俺のものだからどう使おうが文句の言われようがないと反論する。

「いや、まさかあの剣がほんとに生きてるとわね・・・」

そう言えば前にこんな話をしたっけ。

「でも、いいのかい?バイト代一人分で。」

申し訳なさそうに聞いてきた。

「いいんですよ。私はご主人様と一緒に居るだけで幸せなので。」

「流石紅魔族随一のたらし。自分の神器までたらしこむとは。」

「それやめて頂けませんか?」

ほんと不名誉な通り名はやめて欲しい。

「悪い悪い。でも、しょうた君は実際色々な人に好かれてるんだよ。」

まぁ、慈善活動してますしね。

してるうちに仲良くなったりするもんだ。

「じゃあ、店長。俺達上がりますね。」

「お疲れ様。」

「「お疲れ様です。」」

店を出て家に向かった。

「いつも壁に立て掛けられて見てましたけど。やっぱりあそこの仕事、大変ですね。」

「お前が居るから少しは楽になるかと思っていたけど、いつもより客が来たから変わんなかったな・・・」

そう、いつもの倍ぐらい客が来てた。最初はそんなにだったけど気付けば店の前に長蛇の列が。

「理由はお前だろうな・・・」

「え!?何でですか?」

可愛いウェイトレスが接客してくれるとなったら男が群がるのは当然。セミが鳴くのと一緒だ。

「も、もう、ご主人様ったら。可愛いだなんて・・・」

「え、声に出してた?」

「いえ、心を読みました。」

バシッ

「い、痛い!」

「勝手に読むな。」

前に雪那はある程度の期間持ち主と一緒に居たら持ち主の考えが分かると言っていた。この事を詳しく聞くと持ち主の考えを読み取って戦いやすくするための機能らしい。だが、こいつは私欲の為に使うからめんどくさい。しかも、これは一方通行で俺はこいつの考えが読めない。読みたくもない。

「はぁ、欲求を満たすために能力を使う神器がどこに居るんだよ。」

「欲求不満はよくありませんよ。ご主人様の欲求も満たしてあげましょうか?」

今の欲求か・・・

「いいのか?」

「え!?」

「何驚いてるんだよ。お前が言ったんだろ?」

「い、いや、いつものご主人様なら叩くか罵声を浴びせるか照れるはずなんですが・・・」

雪那が赤くなって言う。

「で、どうするんだ?」

「や、やります!やらせてください!」

「じゃあ、メロンパン買ってこい。」

「・・・え?」

こいつは肝心なときに考えを読むこと忘れる。

「え、じゃない。欲求を満たしてくれるんじゃないのかよ。」

「この!何ですか!何で乙女心を踏みにじるんですか!?こっちは凄く期待したのに!」

お前の場合、乙女心じゃなくてただの欲望だ。

「勘違いしたのはお前だろ?俺は自分の欲求を言っただけだ。」

「欲求ってそういう欲求じゃなくて性的欲求のことを言ってたんです!」

「お、お前!?大声でそんなこと言うな。」

外でこんなことを叫ばれたら近所迷惑だし何より変な目で見られるかもしれない。

「そもそも、この里にパン屋さんってありましたっけ?」

ない。喫茶店や定食屋。食料品店とかならあるがパン屋はない。まぁ、自宅で作るか喫茶店で食べるかの二択だろ。

「メロンパンがマジでほしい。」

「王都にもありませんでしたしね。」

俺は前、メロンパンを求めて王都に言ったがパン屋さんにはメロンパンがなく泣き崩れたことがあった。

「はぁ、あのときのご主人様も可愛かったなぁ。」

恍惚してるこの変態が俺の『雪那』だなんて知りたくもなかった。

 

 

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「「ただいま」もどりました。」

「お帰り、お兄ちゃん。雪那ちゃん。」

ゆんゆんが出迎えに来てくれた。

「今日はロールキャベツか・・・」

ロールキャベツ。この世界にはコンソメやらなんやらの調味料はなくトマトを煮込み塩胡椒、鶏ガラ等入れる。しかも、肉を包むときにキャベツが暴れるので非常に手間の掛かる料理だ。

「匂っただけで分かるの?」

普通分かるだろ?

「いや、ご主人様の嗅覚は異常ですよ?普通美味しそうな匂いで止まりますし。」

「そうなのか?他人と比べたことがないから分からん。」

そう言いながら食卓についた。

「さぁ、今日は雪那ちゃんが家に来た記念としてキャベツロールを頑張って作ったわ。」

なるほど、だからそんな手の込んだ料理を。てか、量が多くないか?品数も相当ある。

「あ、ありがとうございます!お母様。」

雪那が目を輝かせて言った。

「お、お母様なんてやだわぁ。普通にお母さんって呼んでほしいわ。」

もうツッコまない。

「はいはい。早く食べようぜ。」

でなければケーキが作れん。

「もう、急かさないの。焦らなくても御飯は無くならないわよ。」

何呑気に言ってるんだこの人は。

「いや時間!ケーキ作る時間が無くなるわ!」

「あ、そうだった。しょうたはケーキを作らないといけないのよね。忘れてたわ。」

あ、この人の目。忘れてなかったな。

多分、雪那のこともあるだうが半分は俺のケーキ作りを邪魔してるのか。

「はぁ、そけっとさんの所行ってくる。」

「ま、待て。私が悪かったわ。変な意地張ってごめんさい。」

このまま帰ってこないと思ったのか、速攻土下座に入る母さん。

しかし、日本の文化ってここまで浸透しているのか・・・

そんなことを思いながら仕方なく、

「しょうがないな、今回は許してあげる。でも、次はない。」

「は、はい。」

母さんが消えかかりそうな声で返事した。

しかし、こんなに作られたらケーキ作るどころではない。

「でも、やっぱり今日はそっけとさんにお世話になってくるよ。」

「そ、そうね。流石に母さんもやり過ぎたと思ったわ・・・」

俺はタッパーにロールキャベツその他を詰めた。

「お兄ちゃん、どうしてそけっとさんなの?」

不審なものを見る目で見てくる。そんな目で見ないでほしい。

「前に慈善活動してるって言ったろ?あれの一つにそけっとさんに料理を教えることが入ってるんだ。それがきっかけでそけっとさんは俺の台所事情を知ってる。そういう意味では一番頼みやすい人だから。」

「ふーん。」

まだその目をするか。後でしばくぞ?

「ご主人様、私も行きましょうか?」

「お前居ると作業進まなくなるだろうし、それに今日はお前のためにこれだけの料理を作ってくれたんだ。しっかり食べろよ。」

「わ、分かりました。」

雪那は頬を軽く染めて言った。

「じゃ、行ってくる。」

まさかこんなにも早く外に出るとは思いもしなかった。

 

 

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コンコンコン

「は、はーい。」

あれ?慌てる声がしたな。お取り込み中だったのか?それだったら子供の俺は帰った方がよさげなんだけど。

そう思った瞬間。何で慌ててたのか分かった。

ガチャ

「どちら様・・・あ、しょ、しょうた君・・・」

俺の姿を確認するやいなや目を逸らされた。

「そけっとさん、何で目を逸らしたんですか?」

理由は分かってる。

「い、いえ、別にやましいことなんて・・・」

「誰もそこまでは言ってないんですけど・・・料理、失敗したんですね。」

焦げた臭いがする。それもカリッカリに。

どうしてそんなことになるか聞いてみたい。

「し、師匠!ほんのちょっと、ホントにほんのちょっとだけ目を離したらあんなことに・・・」

そけっとさんは料理のことに関するときは俺を師匠と呼んでいる。別に呼ばせたわけではない。勝手に呼んできたんだ。

「取り敢えず何を作ろうとしたんです?」

「カエルの照り焼きです。」

前にやったやつか。

「それを焦がすって相当ですよ?」

そけっとさんはどうやら料理が苦手らしい。俺が教える前は毎朝うどん生活。それを聞いたときにはちょっと涙が出た。

「因みに目を離したのってどのくらいですか?」

「確か、焼いてる間に少し他の家事をやってたら止まらなくなって結果ほとんどの家事をやってたら焦がして・・・」

「下手したら火事が起こってたじゃねぇか!?」

家事をやって火事起こすって親父ギャグにもならないぞ・・・

「料理中は絶対に目を離すな!」

「でも師匠。師匠は焼いてる最中に他の作業をしてますよね?」

不思議そうに聞いてきた。

「あれは焼き時間に組み込まれてるから。」

「な、なるほど・・・あ、そういえばしょうた君。どうして私の所に?」

切り替えすごいな。

俺はさっきの出来事を話した。

「そういうことだったのね。いいわ。台所を好きに使ってちょうだい。その代わり・・・」

その代わり?

「晩御飯を作ってください!」

えー、やりますけど、えー。

「そのろくでなしを見ような目やめて。心に刺さるから・・・」

ゴミのように見られるのよりかはましだと思うが・・・

「じゃあ、冷蔵庫見させてもらいますね。」

カチャ

バタン

今の何?野菜しか見えなかったんだけど・・・

「そけっとさん、お肉は?」

「えっと、今日このカエルのお肉が初めて買ったお肉なの・・・」

なんだと・・・!

今まで教えてきたのは何だったんだ?

取り敢えず八宝菜擬きを作った。

片栗粉はこの世界にもあった。

「やっぱ師匠凄いですね。」

こんなの母さんでも出来る。

持ってきたロールキャベツ+その他をテーブルに並べた。

「「いただきます。」」

 

 

晩御飯を食べ、ケーキの準備に入った。

「一体どんなケーキを作るの?」

「最初は無難に生クリームケーキかな。」

そう言いながら計量をやっていく。

「しょうた君ってさ、よく完璧なお嫁さんになれるって言われない?」

椅子の背もたれに手を乗っけてその上に顎を乗せて言った。

「言われますね。ここ最近は女子力が高いだのとかも言われてますね。」

そもそも料理が出来るからって女子力高いのか?

「しょうた君、家に来ない?」

は?

「料理も出来るし面倒見がいい。完璧じゃない。」

「俺はだらだらしても怒らないお嫁さんがほしいので遠慮しときます。」

それにぶっころりーさんが怖い。

「そっかぁ、やっぱり私って魅力ないのかな?」

いや、そんなことないです。凄く綺麗ですし。

「皆からしたら高嶺の花なのかもしれませんね。」

「うーん、ねぇ、もし私が行き遅れたら貰ってくれない?」

何を悩んだと思ったら問題発言をしないでください。

「ありがたい申し出ですけど、行き遅れた場合の先約が居ますので・・・」

これ以上何かと増えたらめんどくさい。

「え!?もう先約が居るの!?嘘、年下の子に抜かされてる・・・」

俺の人生が変なだけです。

出来た生地を作り終わり、型に流し込んだ。

後はオーブンで焼くだけ。

「大丈夫ですよ。そけっとさんにはきっと大切にしてくれる人が現れますよ。」

ちょっと重症ですが・・・

「そうだといいなぁ。自分のことは占えないなんて何にかの嫌がらせみたいね。」

そけっとさんは自分のことを占っても何も出ないらしい。皮肉なもんだ。

オーブンに生地を入れて焼き始めた。

ふぅ、後は待つだけ。

「そういえば、どうしてケーキなんかを?」

「知り合いの人に頼まれたんです。娘の誕生日にって。」

「知り合いの人ってことは外の人?」

「そうですね。」

そう言って目を瞑った。ちょっと眠い。

「そけっとさん、30分後に起こしてください。ちょっと仮眠します。」

流石に今日は疲れた。旅行帰りが一番しんどいと思う。

「分かったわ。」

「ありがとうございます・・・」

仮眠しました。

 

 

「・・・・て、30分経ったわよ。」

「んっ、はぁ。おはようございます。」

軽く寝ただけでも先程の疲れは取れたようだ。

あと少しでスポンジが出来る。出来具合を見てどういう風に飾るか考える。飾るのは前日に屋敷にいって飾ろうと思う。

さらに時間が過ぎスポンジが焼き上がった。

「うわぁ、いい匂いね。」

思ったより分厚く出来て満足した。

後片付けをしっかりとした。

後はこれを冷まさないといけないので、

「『フリーズ』」

極力小さな声で唱えた。

そう、俺は初級魔法を覚えたのだ。初級魔法は火力がないものの使い勝手がよろしい。

便利な魔法だと思う。

ケーキは程よく冷えた。

さて、家に帰ろう。

「では、帰ろうかと思います。」

「もう帰るの?もう少しゆっくりしていけばいいのに。」

名残惜しそうにそけっとさんが言う。

「また料理教えに来ますから。あと、これあげます。」

渡したのはケーキと一緒に密かに作ったカップケーキだ。

「台所のお礼です。それにはチョコチップと愛情がたっぷりつまってるので味わって食べてくださいね?では。」

俺はそけっとさんの家を後にした。

 

 

家に帰ってき、風呂に浸かった。

「ふぅ、取り敢えず土台が完成したな。あと九個ほどあるけど・・・」

このペースじゃ間に合わない。でもまぁ、仮眠とかしてたしいけるか。

湯船に顔を半分沈めると、

「ご主人様!一緒に入りましょ。」

バシャッ

「ゴッフ!?ケホッケホッ。あ"ぁ、い、いきなり入ってくんな!?水飲んだだろ?」

むせながら言った。

「そ、そこなんですね・・・またてっきり『入ってくんな!』って言いながら殴るか罵声を浴びせるか照れるかすると思ったんですが・・・」

こいつ殴られたいのか?

「照れるご主人様は可愛いですからね・・・」

欲望為に自分を犠牲にするか普通?

「仕方ないです。一緒に入るだけにしますか。」

「いや、出ていけよ。」

何こいつ自然の流れで入ろうとしてんの?

「いいじゃないですか、私はあなたの神器です。何をしてもご主人様には責任がありませんよ?」

こいつ今スゴいこと言ったな。

「では、失礼して。」

「いや、入ってくんな!助けて!雪那に犯される!」

「な!?まだしてないです!」

「まだってことはお前!?」

雪那が目を逸らした。

「大丈夫ですよ。痛くしませんから・・・」

「おい、真面目にヤバい!助けてくれ!」

雪那が手をワキワキしながら近付いてきた。

「せ、雪那ちゃん!?な、何してるの!?」

助けがきた・・・?何でゆんゆんバスタオル体に巻いてんの?

「ぬ、抜け駆けは絶対にダメ!」

「ちっ、邪魔が入りましたね・・・」

今こいつ舌打ちしたな・・・

「おい、ゆんゆん。何で体にバスタオル巻いてんの?」

「え、い、一緒にお風呂に入ろうと・・・」

こいつも雪那と同じか・・・

「ふぅ、仕方ないですね。三人で入りましょうか。」

「仕方なくない。出ていけよ。」

「いいですか?ゆんゆんさん。ご主人様は押したらなんとか行けます。ここで負けてはいけませんよ?」

何言ってんだこいつ?

「わ、分かったわ。」

何が?

怖いんですけど・・・こいつらの目が怖いんですけど。

「「失礼します。」」

「おい、お前ら!」

ザー

三人で入る程は広くない。

「こ、これがご主人様の生肌・・・」

「ちょ、雪那ちゃんずるい!」

もう、嫌。雪那に関しては恍惚を越えてる。ゆんゆんは顔を赤くしてるだけだ。

ヤバい時のゆんゆんが凄くましに見える。

「も、もう、ペタペタ触るな!」

いつも癒しの風呂が一番疲れました。

 

 

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「何だろ。最近酷い目にしか会ってない。」

温泉に続き、昨日も酷かった。

はぁ、今日は学校の方休ませてもらおう。

別に居なくても変わらんし・・・

また布団に潜ろうとしたら違和感を感じた。

なんかいつもより狭い・・・

バサッ

そこには、

「・・・ゆ、ゆんゆん?」

幸せそうな顔で寝てるゆんゆんが居た。

「ん、あ、おはよう、お兄ちゃん。」

目を擦りながら言った。

「おい、自然な感じでおはよう言うな。」

軽くツッコむ。

「やっぱりお兄ちゃんの隣は落ち着く。」

そう言われるのは嫌じゃない・・・て、違う!

「何でお前がここに居んの?」

「え、えっと。寝付けれなかったから来てみた。」

あ、なるほどそう言うことか。

「納得いくわけないだろ?」

「えー、でもホントだし・・・」

別に疑ってる訳じゃない。ただ納得がいかないだけだ。

「分かったから、早く出ていってくれ。もう一眠りする。」

「え!?学校は?」

「休む。ぷっちん先生によろしく。」

「はーい。」

ゆんゆんが物足りなさそうに部屋を出ていった。

「はぁ、後30分寝よ。」

 

 

「・・・・おい、雪那。出ていけ。」

目を覚ましたら目の前に雪那の顔があった。

「いいじゃないですか、ゆんゆんさんと一緒に寝たんでしょ?」

「いや、あれはお前のように邪な気持ちがないだろ?」

「邪な気持ちがあった方が楽しいですけどね・・・」

こいつと居たら危険な感じがする。

「バイト行くわ。」

「私要りませんか?」

「昨日客が思ったより来たからな。今日は休め。」

あれは雪那に軽く手伝ってもらう予定だったがあんなに大変になるとは・・・

あんまり雪那にも迷惑かけたくないんだよな。

「ご主人様、私のことは気にしないでくださいね?」

こいつまた・・・

ま、いっか。

「ちゃんと休めよ。じゃ、行ってくる。」

「気を付けて。」

雪那は俺を見送ってくれた。俺の枕離せ。

 

 

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「はぁ、つ、疲れた・・・」

「お疲れ様。いや、今日も多かったね。」

客足のピークを越えてやっと休めていた。

「まさか雪那目当ての客が多かったなんて思いもしませんでしたよ。」

昨日の反響が今日まで続いていた。

この里の男の人たちの回路はどうなってるんだろうか。

紅魔族は綺麗な人が多いのに何で雪那なんか・・・

あれ?もしかして俺やきもち妬いてるのか?

「しょうた君。今日の接客に少しトゲがあったよ?特に雪那ちゃんの話が出たとき。」

「ホントですか?自覚ないな・・・」

そんなにトゲがあったのかな?

ガラガラガラ

「あ、いらっしゃいませ。」

こんな時間に珍しいな。

「あれ?おい居ないぞ?」

「おかしいな、兄ちゃんが言ってたんだけどな。凄く可愛い店員が入ったって聞いたんだけど・・・」

男子二人が入ってきた。パッと見ゆんゆん達と同じくらいか。

「あぁ、一回で良いから見てみたいよな。」

「兄ちゃん、今日店員ってこれだけ?」

こいつらも雪那狙いか。

「そうだな、今日はあいつに来るなって言ってるからな。」

「余計なことすんなよな。クラスで誰が先に声を掛けれるか勝負してるんだから。」

「だからこうして学校を抜けてきたのに・・・」

しょうもない勝負だな・・・

「あの、お客様。人のモノで勝手に勝負しないで頂けます?迷惑です。」

「ひ、人のモノってもしかしてあんたその人の彼氏・・・?」

「んな訳あるか。」

「じゃあ、いいじゃねぇか。彼氏でもない人にそんなこと言われたくない。」

「はぁ、一緒に働いてるからって自分のモノ扱いって・・・こんな人と一緒に働きたくな・・・」

ガラガラガラ

「ご主人様、やっぱり店とご主人様のことが心配で来ちゃいました。」

「雪那、今日は休めって言っただろ・・・」

「でも、昨日の今日で客足が少なくなるとは考えれなかったんで・・・ご主人様が倒れるかもと心配で・・・」

「お前、そんな俺が柔に見えるか?」

「でも、ご主人様。こっちに来てから二ヶ月ちょっと、二回も気絶してますよ。」

そうでした・・・

苦虫を潰したような顔をしていると、

「ご、ご主人様?」

「まさかひ、人のモノってそういうこと・・・?」

その言葉に雪那が反応した。

「私とご主人様は主従の関係にあります。だから私はご主人様のモノで例えどんなことされても全て受け入れれます。いつでもウェルカムです。むしろこっちから襲いたいくらいです。」

「黙れ変態。そんな度胸もないだろ。それにその話は子供の教育に悪いだろ。」

そんなことを言い合ってると、

「ご、ご主人様って・・・」

「お、襲うって・・・」

「「見せつけんな!リ、リア充爆発しろ!」」

おい、どこでそんな言葉覚えた!?

男子二人は走っていった。

「リ、リア充ですって!」

喜ぶな。

「雪那、今日は見ての通り客がもういない。来てくれて悪いけど帰ってくれ。俺はまだ皿洗い残ってるし、このあとの用事もある。」

「わ、分かりました。では失礼します。」

雪那が出ていき俺は洗い物に取り掛かった。

 

 

バイトを上がり買い物をしていた。

卵アレルギー用も作らないといけないよな・・・

といってもこの世界にはホットケーキミックスがない。

「自作か・・・喫茶店で少し教えて貰わないと・・・」

バナナを眺めながら呟いた。

このバナナ使いたくないな・・・

果物の定義を覆す存在だ・・・

そう思いバナナを篭に入れた。

 

 

家に戻り、買った物を冷蔵庫に入れるなりして自室に戻ろうとした。

自室の前に来て違和感を感じた。

扉が少し開いている。

おかしいな、絶対最後まで閉めたのに。

ドサッ

中で物音がした。

そっとドアを開けて見たらそこには、ベットに座ってる雪那の姿があった。

何であいつ俺の部屋に入ってんの?

てか何やってんの?キスの練習ですか?

「はぁ、はぁ、ご、ご主人様。大好きです・・・」

成る程、架空の俺相手にキスしてたのか・・・こいつの妄想力スゴいな・・・

「あ、ちょっと、ま、待ってください。きゃっ!?」

多分、今の俺の目は他人から見たら光を失ってるだろう。それくらい呆れている。

こいつはもう手の施しようがない。だって架空の俺にキスされて押し倒されてるシーンに憧れてるんだぞ?引くわ。

そう思いながら我が神器を眺めてた。

「も、もう、ご主人様はいつも強引に・・・」

雪那がちょうど扉の方を向いた。

勿論目が合う。

「・・・ご、ご主人様?い、いつからそこに?」

恐る恐るそんなことを聞いてきた。

「お前が架空の俺にキスしてるところからだ。」

それをいったら目を逸らした。

「目ぇ逸らすな。こっちを見ろ。」

雪那は頑なに目を合わせない。

「おい。」

「はい。」

「何でここでそれをした?」

「最初は自分の部屋でやろうとしたんですけど、物足りなくて・・・」

「おう。」

「それでご主人様の匂いが染み付いてる布団の上でやってみようと思いまして・・・」

「おう。」

「部屋に入って布団の上に座ってみたら、さらに欲情しまして・・・」

「おう。」

「この上でしたらアレが布団に染み付いたらきっとご主人様はそれに気付かずその上で寝ると思ったら止まらなくなりましてここでしようと決心しました!」

バシッ

「い、痛い!?今本気でしばきましたね!?」

「うるさい。妄想爆裂娘。」

「こんなに強くしなくてもいいじゃないですか・・・」

涙目で訴えてきた。

「でも、ご主人様。普通、一般男性は自室で可愛い女の子があんなことしてたら襲いますよ?何で襲わなかったんですか?」

襲って欲しかっ・・・こいつそういうやつでした。

「俺が一般男性じゃないからじゃない?」

知らんけど。

「え、ご主人様ってこっちだったんですか?あ、それはないか。私たちにしっかりと欲情してますし。」

「し、してねぇし!?自惚れんな!」

「あ、照れてますね?そういう顔が見たかったんですよ。もう可愛いなぁご主人様は。」

自分の神器に弄ばれて悔しい。

「なぁ、俺ってそんなに好きになれるほどの人間か?」

ふと思った。俺は自分でも自覚してるぐらい性格がネジ曲がってるし、肝心な時にヘタレだ。それに今振り返ってみるとひょいさぶろーさんが言うようにたらしなのかも知れない。

そんな俺のどこがいいんだ・・・?

「そんなのいっぱい・・・あ、いっぱいありますよ。」

前半軽い気持ちで言ってたのか俺の真面目な顔を見てから、いや、考えを読まれたのかもしれない。真面目な声で言ってくれた。

「私の場合ですけど、ご主人様を好きになったのは九割がご主人様自身です。」

「九割?後の一割は?」

「似てたんです。前のご主人様と。」

前の、持ち主と?

「いや、お前を作ってくれって頼んだのは俺だぞ?」

そう、俺が頼まなかったらこいつは存在しなかったはずだ。

「そうです。でも、私にも前世というのがあります。私は昔紅魔族のある魔導師に杖として作られました。その人が前のご主人様です。」

そうか、こいつは昔から紅魔族を知っていたのか。だから出てくるタイミングがどのこうのって言ってたのか。

「今の私の能力はほとんど前と同じなんです。その人に合わせた能力を取得する。そう言った能力なんです。」

こいつを作ったやつ天才かよ・・・

「その結果。前のご主人様は英雄となりました。そりゃそうですよね。神器級の魔道具を作れる人なんですから。」

しかし、どうしてそんなこいつがここに居るんだ?元の杖に宿ったまんまじゃなかったのか?

「やがてご主人様は暗殺されました。理由はある貴族が私を欲しがってたからです。結局私は前のご主人様に思いを伝えれず終い。凄く後悔しました。」

こいつが気持ちを伝えれなかった?何かの冗談か?

「その後は、一時期はその貴族の人の元に献上させられましたが、ある盗賊、いや、ある女神様が私を救い出して私の魂を杖から取りだし杖を封印しました。その後は次役に立つまで天界に居ました。」

ある女神ってまさか!?

「あ、違いますよ?あの人ではありません。あの人はたまたまあなたが天界に来たときに私と話してて、あなたがあんな要望を言うから、もう一度あの世界に行かないかと提案され、あなたの顔を見た私は行くことを決心して、その旨を伝えたら、私を神器『雪那』として作り変えてくれた人なだけです。」

そんなことが・・・

「そんなに俺は前の持ち主と似てるのか?」

「はい、特に目が凄く。」

世界には自分と同じ顔が三人いるって言うから似てる奴ぐらいゴロゴロ居るか・・・

「それが俺を好きになった一割か。」

「そうですね。その一割がなかったらあなたには付いていってなかったです。」

その一割がなかったら残りの九割もなかったってことか。

「そうか、でもお前は何で前の持ち主に気持ちを伝えれなかったんだ?俺にはあんなに言ってくるのに。」

もしかしたら本気度の違いかもな。俺のことが好きでも前の人程ではないって言うことかもな。いつも好き好き言われて毛嫌いしてるけど、こう考えてしまったら何か悔しいな。

「あなたが私を変えてくれたんです。ご主人様。」

「え?」

俺がこいつを変えた?

「私は最初あの一割で動いていました。つまり前のご主人様とご主人様を重ねて見てました。でも、ご主人様と過ごしていて前のご主人様とは確実に違うところが幾つかありました。」

そりゃ、一人一人個性がありますからね。

「一つは優しさです。前のご主人様も優しいのは優しかったです。でも、何かが違いました。ご主人様はなんか優しさが滲み出てる感じがしました。」

俺から煮汁とったら優しさが出るのかね・・・?

「二つ目は社交性です。前のご主人様は無口というか気難しい人でした。とても内気で人とはあまりしゃべってなかったです。友人も少なく、周りからは近づき難い雰囲気を出していました。」

なんか昔の俺みたい・・・

「そして三つ目。これが私を変えてくれた大きな要因です。三つ目は私を道具として見なかったことです。ご主人様は幾度となく私にも話し掛けてくれました。まだ共鳴も出来ないのに。前のご主人様とは話しはしましたが生きているモノとしては決して見てくれませんでした。それが私の気持ちを伝えれなかった大きな理由です。物として見てる奴に好意を持たれても気持ち悪いですからね。気持ちを抑えることしか出来ませんでした。でも、ご主人様は私をまるで生きているかの様に扱い、大切にしてくれました。それで私はご主人様に気持ちを抑えることもなく伝えることが出来てるんです。」

そうか、こいつにはそんな過去が・・・

ちょっと待てよ。つまりあれか、結局この変態を作ったのは俺なのか・・・

「ごめんな、辛いこと思い出させてしまって。」

「そう思うなら抱き締めてくださいよ。ほら。」

雪那が両手を広げて言った。

こいつほんとぶれないよな。

俺は雪那を抱き締めて布団に倒れこんだ。

「え!?ご、ご主人様?」

雪那が驚いた声をあげた。

「ん?どうした?」

「え、いや、いつものご主人様なら無視すると思って・・・」

「俺はそこまでネジ曲がってない。」

「も、もう、ご主人様はセコいです。」

俺と雪那はしばらくそのままでいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

クレア誕生日パーティー一日前

なんとパーティーの招待券が家族とあるえ、めぐみんの分まで来てた。

あいつらは分かるけど何でうちの親が呼ばれてんの?

「じゃ、しょうた。気を付けてね。」

母さんが見送ってくれてる。

俺はケーキの土台を十分作り、後はクレアの屋敷で仕上げることにしていた。

今出来ているものと言えばチーズケーキ類のものだろう。

こいつらは母さんに無理を言って今日の昼間に作り終わらせた。

「分かった。行ってくる。『テレポート』」

 

 

「ふぅ、一週間前はもうここには当分来ないと思っていたが、まさかこんなに早く来ることになるとは・・・」

クレアの屋敷に着いた俺はそんなことを口に漏らした。

「すいません。」

俺は屋敷の門番の人に話し掛けた。

「なんだ貴様は?ここはお前のような冒険者が来るとこではないぞ。」

警戒しているのか言い方が強い。

『何ですかこの人?ご主人様に対してこの態度。切り崩してやる。』

雪那さん。恐ろしいこと言わないでください。

「えっと、これ見せたら入れて貰えますかね?」

首元から例のネックレスを出した。

「そ、それをなぜ貴様が!?」

それを見た門番が声をあげてるともう一人の門番が近付いてきた。

「あ、もしかしてあなた様はしょうた殿ですか?」

どうやらこの人は俺のことを多少知っているようだ。

「しょ、しょうた殿ってあの?」

あのって何?あのの部分を詳しく聞きたいんですが・・・

「ご主人が言ってたから間違いない。特徴は黒目でシンフォニア家の家紋を持つ男だそうだ。」

「確かに他に一致する人物は居ないだろうし・・・ごほん、失礼しました。あなた様がしょうた殿ですね。どうぞ中へ。」

門を開き中に入れてくれた。

屋敷の中に入ったら、

「あ、やっと来たか。待ってたぞ。」

クレアが出迎えてくれた。

「ずっと玄関に居たのか?」

「な、たまたまだ。」

目を泳がせながらクレアは言った。

「でもさっき、やっと来たって!?」

叩かれた。

「つ~、いきなり叩くなよ・・・」

「お、お前が余計なことを言うからだ。それより早く荷物を置いてこい。前、お前が使っていた部屋だ。まだケーキの準備があるのだろ?」

「あぁ、ありがとう。」

俺は部屋に荷物を置いて厨房に向かった。

そこでは屋敷の料理人たちが忙しなく明日のための準備をしていた。

「あなたがしょうた殿ですか?」

料理の一人が近付いてきた尋ねた。

「はい、そうです。この度は奥様からケーキのことを頼まれまして、こちらを使わせてもらっても構わないでしょうか?」

「伺っております。どうぞこちらへ。」

案内されどこに何があるのかを丁寧に教えてくれた。

「あなたの料理の腕前は聞いております。明日のケーキ、楽しみしてます。」

そう言って料理に戻っていった。

「さて、やるか。」

チーズケーキの種類はなのであと作らなければならないのは7つ卵アレルギー用三つノーマル四つ

卵アレルギーとノーマル共通の味が生クリーム、チョコ生クリーム、チョコケーキの三つ。

ノーマルの余り一つは変化球のイチゴタルト。これはもう俺の好みです。

ということで今日することは、生クリーム作りとチョコの湯煎、それにタルト作り。

たったそれだけなので特に問題なくケーキが出来た。

クリームが余ったので今日のおやつとしてシュークリームを作った。あとこの間雪那と約束したプリンも。

作ったシュークリームは屋敷の人たちに配った。

あれ?これ嫁いできた嫁がやることじゃね?

 

 

部屋に戻り雪那を出した。

「どうしました?性処理ですか?」

ニヤニヤしながらそんなことを言って来る。

「そんな馬鹿なことでお前を呼び出さん。そんなことじゃなくてこれ。」

俺は作ったプリンを雪那に渡した。

「へ?覚えてくれたんですか?てっきり忘れられたものかと・・・」

そこまで脳は腐ってない。

「忘れるわけないだろ。約束したことは絶対守る。」

「ご主人様はやっぱりセコいです。」

「なんとでもいえ。」

ベットに転がりながら言った。

「ではいただきますね。」

目に涙を浮かべプリンを頬張った。

「う、お、おいじいです。凄く凄くおいじいです。」

泣きながらそんなことを言う。

「おいおい、泣くほどか?」

呆れた顔をする。

「ご主人様には分からないです。私はこんなご主人様に仕えれてほんとに幸せです。」

「そうかい。」

雪那の幸せそうな顔を見て微笑んだ。

 

 

翌日、朝から凄い人が居た。

「何これ・・・」

「ご、ご主人様。人が蟻みたいです。」

これ百人で収まらなくね?ケーキまだ要るくね?

そんなことを思っていたら、

「ごめんなさいね、ショウタさん。思った以上に人数が多くて・・・」

クレアのお母さんが謝ってきた。

多分、思った以上に招待する人が居たんだろう。

「いや、大丈夫です。あと二、三個作れば問題ないですから。」

雪那に手伝わせよ・・・

「本当にごめんなさいね。」

そう言って立ち去っていった。

はぁ、めんどくさいな・・・

「ご主人様、ファイトです!」

「お前も手伝うんだぞ?」

「え!?」

「はいはい、驚いてないでさっさと来る。」

雪那を引きずり厨房へ向かった。

 

 

ケーキが無事完成しパーティーが始まろうとしていた。

「あ、お兄ちゃん!」

呼ばれた方を見るとそこには紅魔組が居た。

「これが貴族のパーティーか・・・」

父さんが会場を見渡して言った。

「しょうたの作ったケーキは何処ですか?」

めぐみんの頭の中には食べ物のことしかないのか?

「まだ出てこない。ある程度時間がたった後に出てくるからそれまで待っとけ。」

「まさかしょうた君の腕が貴族のパーティーにお呼ばれすることになるなんてね・・・驚いたよ。」

それは俺も同じ。まさか趣味程度の物がここまで来ることになるとは思っても見なかった。

その時照明が落ち、壇上にスポットライトの光だけが残った。

そこにクレアのお父さんが出てき、

「皆様、この度は我が娘の誕生パーティーにお集まりいただき、誠にありがとうございました。今日はここが我が家だと思ってごゆっくりお過ごしください。」

拍手にが起こり照明が点いた。

さて、どうしよ。生憎今はお腹が減ってないし、クレアに会いに行こうにも行列が出来てるし・・・

「うーん。」

「ショウタ君、ちょっといいかね?」

「え、あ、はい。大丈夫です。」

俺はクレアのお父さんに連れられ、個室に入った。

「そこに座ってくれ。」

「えっと、大丈夫なんですか?お父さんが居なくて。」

「問題ないだろう。で、君を呼んだのは娘のことについて話したいからだ。」

え、何?早く結婚してくれとか?そんなの今は無理だ。

「その、娘に言い寄る輩を追い払ってほしいんだ。」

えー、この間この性格のせいで云々言ってたのはどこ行った・・・?

「き、君の気持ちは分かるよ。この間は娘に相手が見つからないなんて言ってたからね。しかし、全く輩が近付いて来ないわけではないんだ。娘は気が強くて上手くあしらうことが出来ないんだ。」

「そういうことでしたか。分かりました。」

「ありがとう。君には世話になりっぱなしだな。」

「いえいえ、俺はいつもこれに世話になってるんで・・・」

ネックレスを指しながら行った。

「そうか、役に立ってるのなら何よりだ。」

「では、俺はこれで。」

立ち上がり、ドアの方へ歩いた。

「あぁ、娘を頼むよ。」

「はい。」

俺はその部屋を後にした。

 

 

「クーレア。」

「ん?なんだお前か・・・」

クレアはホッとしたように言った。というかまたドレス着てるんですね。似合ってるからいいけど。

「大丈夫か?顔色悪いぞ?」

大人数に話し掛けられたせいか疲れてるよう見えた。

「シンフォニア卿、どうか私にもう一度チャンスを。」

貴族らしき人がクレアに言い寄って来た。

「また貴様か、何度もいw・・・」

「はいはい、残念。クレアさんは俺と交際しているのでお引き取りを。」

クレアの言葉を遮って言った。

「お、お前、何を!?」

「あなたは!?前の魔王軍との戦いで大いにご活躍された。ショウタ殿!?」

そこまで有名になってるの?

クレアを口説きに来た貴族がその言葉を口にした瞬間、周りがざわつき始めた。

「あれが噂の・・・」

「私、紅魔族って聞いてましたけど・・・」

各々が口にしていた。

「是非とも一度お会いしたかったんですよ。いや、そうでしたか・・・シンフォニア卿をお助けになったあなたなら納得できます。どうかお幸せに。」

そう言ってさっきの貴族は去っていった。

いいやつなんだろうな・・・

「お前と言うやつは!」

おっと、クレアさんがご立腹のようで。

「でもお前、口角上がってんぞ?」

「っ!?」

顔が赤っかったのがさらに赤くなった。

「お前の父ちゃんに頼まれたんだよ。クレアは上手くあしらうこと出来ないからって。」

「そ、それでもさっきのはどうかと・・・」

声がだんだんと小さくなっていく。

「何今さら恥ずかしがってんだよ。アルカンレティアではあんなことをしでかしたのに。」

あれと比べればこんなの何倍もましだ。

「あ、あれはその・・・場の雰囲気のせいで・・・」

は?場の雰囲気でこいつはとんでもないことをするのか?

「あ、やっぱりショウタ様がいらっしゃってたのですね。」

「あ、お久しぶりです。アイリス様。」

突如話し掛けてきたのはこの国の第一王女アイリス様だった。

「その節はありがとうございました。温泉旅行には行かれましたか?」

おっと、さっきの話し聞いてたんじゃないかと思うくらいのタイミングですね。

「行きましたよ。しかも行ったらたまたまクレアg!?んーんー!?んーんーんー!」

「ク、クレア!?どうしたの?」

クレアが俺の口を塞いできた。

「い、いえ別に。こいつが無礼なことを言いそうだったもので。」

「そ、そう?それならいいんだけど。では、ショウタ様。また。」

そう言ってアイリス様は立ち去った。

「あぁ、アイリス様・・・」

こいつはぶれないな・・・

つーか、いい加減離せよ!

「んーんーんー!」

「あ、悪い。」

「ぷは、はぁはぁ。おい、締めすぎ。」

「わ、悪かった。でもお前が余計なことを言いそうになるから・・・」

「余計なこと?たまたま会っただけの話だろ?別にいいと思うけどな・・・」

「お、お前はどうせ会った日の夜のことを言うつもりだったんだろう?」

バレてましたか・・・

「おい、視線を泳がすな。こっちを見ろ。」

嫌です。見たら目で殺されそう。

「でも、温泉のことは俺は悪くないし。言われたくないことをする方が敗けだと思う。」

これで目を見れたら完璧なんだけどな・・・見れない。

「うっ!?」

引き分けだな。

「おっと、誕生日プレゼントとをやらないと。」

あぶない、すっかり忘れるとこだった。

「お前のことだからどうせろくでもない物なんだろう?」

こいつ・・・!

「ひどいな、ろくでもない物なんて。そもそも物じゃないし。」

「え?」

そう俺が用意したのは物じゃない。

「あー、あー。こほんこほん。」

喉の調子を整えた。ここまで来たら何をするか分かったらしい。

凄く顔がヤバイことになってる。

「クレアお姉ちゃん。お誕生日おめでとう!」

全力営業スマイルで言った。

「グフッ!?ありがとうございます!」

いつまで出来るか分からないからこれをプレゼントとにした。

毎日やってたらいつでも出来るだろうけど努力はしたくない。

「いつまではぁはぁ言ってんだよ。発情期か?あ、現在進行形で発情してたんだな。悪い悪い。」

「お、お前・・・」

自分でも自覚してるから強く言えないらしい。

『皆様、御待たせしました。ケーキの方が準備出来ましたのでどうぞお召し上がり下さい。』

アナウンスが流れてドアが開き、ケーキが押されて入ってきた。

なんかこうして自分が作ったものが並べられると恥ずかしいな。

「あ、あれ全部お前が作ったのか?」

「大変だった。思ったより人数が多くて急遽三つ作った。その分雑だと思うが。」

「ど、何処が雑なんだ。まるで店で買ってきたような整ったケーキだ・・・」

店も人が作ってるからね?

「因みにどれがおすすめだ?」

「え、どれって言われても全部食えば?」

「わ、私はこれでも一応乙女なんだぞ?そんなに食べると後々不安が・・・」

「気にせず食べてるやつがあそこに一人。」

雪那を指差した。凄くがっついてる。もうちょっと味わって食べてほしい。

「あ、あれは刀だからカロリーエンプティって言ってたから・・・」

「じゃあ、あれは?」

めぐみんを指した。

あいつもあいつで貪ってやがる。

「・・・」

どうやら呆れてるらしい。

「今日ぐらいはいいだろ。どうせ一個が小さいんだ。一口サイズだぞ?」

そう、人数が多いのでバイキングによく出て来る正方形の形をしている。

「じゃ、じゃあ、全部食べようかな・・・」

何かに負けたらしい。

「クレア、欲望に忠実にあれ。」

そう言ったら何かが吹っ切れたような顔をして、

「そ、そうだな。食べてくる。」

小走りでケーキを取りに行った。

限度は決めろよ・・・

「ふぉふふぃんふぁふぁふぁふぁふぇ・・・」

「何回言わせんだよ。飲み込んでからしゃべれ。」

こいつには学習能力がないのか?

ゴクッ

「ご主人様は食べないんですか?」

「うーん、雪那が手伝ったものだけ食べるわ。せっかく手伝ってくれたし。」

「ご主人様、そういうとこですよ?」

「え、何が?」

「もういいです。それにそういうとこも好きですから。」

「ごめん、なんの話をしてるの?」

「何でしょうね?」

こいつたまに意味わからんこと言うよな。

「ふーん、ま、いっか。ケーキ取りに行こうぜ。」

「はーい。」

ケーキを取りに行った。

「ねぇ、奥様。このケーキはどの店で作って貰ったのかしら?ご紹介してくれません?」

一人の貴婦人がクレアのお母さんに聞いてた。

「店じゃないんですよ。知り合いにお菓子作りが趣味の人が居まして、その人に頼みましたの。」

それを聞いたのかどこからか男の人が出てきて、

「その人のことを詳しくお聞きしてもよろしいですか?」

「いえ、その人はほんとに趣味程度って言ってたので詳しくは・・・」

感謝しますお母さん。

「こんなにいい腕を持ってるのに勿体ないことを。もし店を立ち上げていたなら援助を惜しまないのに・・・」

貴族の人の考えがいまいち分からない。俺から言わせてみたらこのケーキより断然店の方がうまいんだけど・・・

「大繁盛間違いなしですのに・・・ちょっとでいいですので教えていただけません?どんな人かでも・・・」

お金怖い・・・

「それぐらいなら大丈夫かしら?」

一瞬こっちを見た気がする。

多少は問題ないと思う。

「どんな人ね・・・娘のお婿さんの第一候補かしら?」

その場にいた人が一斉に俺を見た。

普通考えれば分かるよな。クレアと仲がいい男って俺しか居ないもんな。

何でそうほぼほぼ答えみたいなことを言うかな・・・

「何で皆さん、俺の方を見るんですか?」

とりあえずとぼけてみた。

「娘さんと仲がいいと聞いたので・・・」

ごもっともです。

「あ、あなたがこのケーキを作ったんですか?」

いいえとは言えない。嘘は極力吐きたくないし、でも、そうですとは言いたくない。どうしたものか。

そう考えてたら、

「しょうた!」

この声はめぐみん!ありがとう、このピンチを助けt・・・

「このタルトスッゴく美味しいです。また作ってください。」

うわぁ、スッゴくいい笑顔。そのタルト俺も好きだよ。でもタイミングを考えてほしかったな・・・

「やはりあなたが!?料理も腕が立つのですね。」

「そ、そんなことは決して・・・」

趣味程度の物を褒めないでほしい。

「ご謙遜なさらずに堂々としてください。こんなに美味しいケーキ初めて食べました。」

店の方が・・・

「それに卵アレルギーの方も食べれるケーキを作るなんて何て気が利く人なんだ。」

当たり前のことだと思いますが・・・

「是非店を開いてください。」

「嫌です。」

「それはどうしてですか?」

次々に質問が飛んでくる。ここは言葉のバッティングセンターですか?

「本業を冒険者で副業として定食屋でバイトと学校の生活指導をしてるんでそんな余裕ないです。」

生活指導の方は最近やってないけど。

「そ、そうですか。それは残念です。」

でも、冒険者を辞めたときには趣味でやるのも有りかな・・・

質問攻めが終わりそう思った。

 

 

パーティーは長く続き、気が付けば日が暮れて夜になっていた。

どうやらこのパーティーは晩御飯も用意してくれるらしい。

夜風に当たるために外に出てた。

中とは違い外はとても静かだった。

中庭に行き前ここでお世話になったときによく昼寝をしていた所に行った。

ここは日中でも木の下だから木陰になっていていつも涼しい。でも今日は夜のせいか少し肌寒い。

ドサッ

体を地面に投げて転がり夜空を見上げた。

この世界も悪くないかな・・・

そう思ったら、

「やっぱりここに居たか。」

「なんだクレア?俺の安らぎタイムを邪魔しに来たのか?」

クレアは先程のドレスから一転いつもの白スーツに着替えていた。

「いや、お前と一緒にその安らぎタイムとやらを堪能しようと思ってな。」

クレアが俺の横に転がった。

「そういえば今日で何歳になったんだ?」

失礼な質問かもしれないが好奇心でつい聞いてしまった。

「そうだな、17になった。」

二つも上か・・・

「年が離れちゃったな・・・」

「お前は何歳なんだ?」

「俺はピチピチの15歳だ。」

ピチピチというよりまだ未熟かもしれんけどな・・・

「二つも違うのか。しかし、たまにお前が年上のように感じることがある。」

それはまた不思議ですな・・・

「ショウタ。行き遅れなきゃダメなのか?」

クレアは抱き付いて言った。

「優柔不断な俺がしっかり道を決まるまで待っててほしい。」

抱きついてるクレアの手を握り言った。

「今夜、また一緒に寝ていいか?」

「雪那を何とかしないとな・・・」

 

 

パーティー会場に戻ったら料理がすでに出来ていてある程度の人は帰ったらしい。

「ご主人しゃま、おかえりなしゃい。」

「お前、凄く眠そうだな。」

ろれつ回ってないぞ。

「ほら、雪那ちゃん。しっかりして。」

ゆんゆんが雪那に肩を貸している。

「しょうた。私達はそろそろ帰ろうと思うがお前はどうする?」

父さんが聞いてきた。

「ケーキも片付けもあるし明日帰るよ。ついでに雪那も連れて帰って。ここに残っても迷惑かけるかもしれないし。」

「かけましぇんよ!」

「眠いだろ?早く帰って寝ろ。」

「わ、分かりました。」

雪那は仕方なさそうに言った。

「じゃあ、明日。」

「あぁ、「『テレポート』」」

俺と父さんが唱えた。

「さて、遅めの晩御飯を食べようか。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

コンコンコン

「どうぞー」

ベットに転がりながら言った。

「ショウタ君、今日はありがとう。」

入ってきたのはクレアのお父さんだった。

「いえいえ、大したことはしてませんよ。」

俺は今日ご飯を食べてケーキを食べてコーヒーを飲んだだけしかしていない。感謝されるようなことは一切してない。

「いやいや、輩を追い払ってくれたそうじゃないか。」

「でもあの人、いい人そうでしたけどね・・・」

「しかし、娘が気に入った人一緒にしてあげたい。」

何て娘思いなんだ・・・

「そんな人が見つかるといいですね。」

「寝言は寝て言いなさい。」

嫌です。

「まぁいい、君にも君なりの考えがあるのだろう。一番苦労しているのは君なんだから好きなようにしなさい。それではゆっくりと休むといい。」

「はい、おやすみなさい。」

部屋からお父さんが出ていった。

好きにしろって言われてもな・・・

誰かが幸せになったらその分誰かが不幸になるかもしれないのに好きにできない・・・

皆が幸せになる方法はないのかな・・・

コンコンコン

「ショウタ、起きてるか?」

クレアの声だ。

「夜這いにしては早くないか?」

「ば、バカ!よ、夜這いなんか・・・してもいいのか?」

何言ってんのこいつ?

「い、いや、冗談だから。本気にすんな!というかさっさとは入れよ。」

「軽く重い冗談を言うな。」

そういいながら部屋に入ってきた。

「軽いのか重いのかどっちか分からん。紛らわしい言い方するなよ・・・」

頭が混乱してくる。

「それで、私はどうすればいい?」

「いや、お前から誘ってきたんだろ。何しにここに来たんだよ。」

「では、失礼して。」

布団の中に入ってきた。

「二週間前ぶりだな。あのときはまさかほんとにクレアが部屋に来るとは思わなかった。」

帰り道で無礼者!って叫んでたからてっきり来ないこと思っていたのに・・・

「そ、そうなのか?その割には平然としてたが・・・」

「驚きすぎて、声も上がらず表情にも出なかった。」

ああいうことってあるんだなと思いながら目を閉じた。

「三週間前までこんなことになってるなんて思いもしなかっただろう。」

「そうだな、俺も二ヶ月前は女子と布団に入るなんてこと考えたこともなかった。」

日本で女性と布団に入ったことなんて・・・・なかった。いいか、あれはカウントされない。いいな?

また『だーくさいど』に陥らないように言い聞かせた。

「大丈夫か?」

クレアがいつの間にか俺の手を握ってくれてた。

「え、あ、うん。」

「いきなり小刻みに震えだしてどうしたんだ?」

「昔のトラウマだよ。たまにふと浮かんでくる。怖くて仕方がない。」

「お前にもそういう過去があるのだな・・・」

クレアは、ホッとしたかのように言った。

「俺だって人だ。トラウマの一つや二つある。その一つとしてアルカンレティアの・・・」

「ああ!もう分かったから、その話はやめてくれ・・・」

クレアは顔を隠すように布団に潜った。

「はいはい、じゃ、おやすみ。」

「お、おやすみ・・・」

こうしてまた慌ただしい一日が幕を閉じた。




こんにちわ、ねこたつむりです。
今回は雪那の過去だったりクレアの誕生日の二つありました。
まぁ、特に言うこともありませんが・・・
ちなみにあの盗賊・・・女神様はもちのろんであの人です。
後はタブレットの調子が悪く更新が遅れたことですかね。
何回も工場出荷前に戻しても立ち上がったりなかったり。
もう嫌です。
では、今回も読んでくださってありがとうございます。
次回も読んでくださるとありがたいです。
お気に入り登録150突破したぜヒャッハー!
あ、すいません。

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