・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
…お久しぶりです。
「しかしちょむすけがこんなにモテるとはな・・・」
薄い笑みを浮かべているアーネスを睨みながら皮肉をとばした。
「久しぶりだねぇ。いやぁこないだはよくもやってくれたね。そこの坊やも・・・ん?坊やひょっとして」
少し驚いたような顔をしてそこまで言うと
「何ですかこのけしからん娘さんは!」
ゼスタが場違いなことに喚く中、アーネスは余裕そうな笑みをこぼしていた。
「雪那。」
「はい。」
俺は『雪那』を静かに構えてめぐみん達の前に達、壁になるかのように立ちはだかった。
「こんな公の場に出てくるとは偉く自信があるようだな。」
「ショウタさん、巨乳をこれ見よがしに見せつけてくる娘さんとは一体どんな関係が!?」
「ふっ今回はあの忌々しい紅魔の連中はいない。本来なら貴様らを捻り潰してもいいのだがここでウォルバク様がなついている貴様らを始末するのも」
「ショウタさん答えてください!どうしてこんな、破廉恥な恰好をしているのですかこの人は!しかも、羽織っただけのローブでそれを隠しているのがけしからん!けしからんですな!・・・はっ!もしやショウタさんこの娘さんといかがわしい関係が・・・」
「「あるわけがないだろ!」」
俺とアーネスが口をそろえて言い放った。
「いいか貴様ら、痛い目に遭いたくあなければ・・・」
「あなたに痛い目に遭わされたい場合はどうすればいいのでしょうか?」
「ぜ、ゼスタさん・・・」
ゆんゆんがこれ以上は不味いと思ったんか静止に入るが。
「変わったヤツめ。お望みどおりに・・・!」
アーネスは腕を振り上げ、
「痛い目に遭わせてやるよ!『ファイアーボール』!」
その腕を振り下ろして手先から火球が放たれる。
『ご主人様!』
その声は球をはじけと言ってるんだろうか。だったらそれは無駄な行動だ。
火球は真っすぐ俺の左にいるゼスタに向かって飛んでいき、
「悪魔っ子だったのか・・・」
残念そうなため息とともに、スッと手を前へかざし、
「『リフレクト』!」
「ッ!?」
『リフレクト』魔力で光の壁を作り出して魔法を反射させる呪文。この呪文はプリーストの呪文だ。
跳ね返された火球はアーネスの方向へ、それを避けたアーネスは驚いた顔でゼスタを見る。
アーネスの頭には呪文を売った際にローブがはだけたため角は露出していた。
「へぇ、タダの変なおっさんかと思ってたけど、中々やるもんだねぇ。」
その光景に驚いているのはアーネスだけではなくめぐみん達も同様のようだった。
「ああ・・・悪魔っ子か・・・」
そういえばここの国教エリス教とその先輩にあたるアクシズ教の戒律で『悪魔殺すべし』ってあったっけ。
ゼスタは口元をゆるましているが、その眼は誰が見ても笑っていない。
「ふん、たかがプリースト如きに上位悪魔の私に何ができる?」
「その人はあなたを葬り去ることができます。」
「ッ!?」
いつの間にか背後に回ってセシリーが佇んでいた。
この二人からはさっきのふざけた雰囲気は全く感じられない。それでもアーネスは余裕な態度を崩すことはなく、
「面白いことを言うね!偉大なるウォルバク様に使える、この」
「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」
『セイクリッド・ハイネス』この呪文は呪文の上での最上級のモノを表している。この呪文はアークプリーストのみ使う事が出来、効果は悪魔祓い。つまりアーネスにとっては致命的な呪文だ。
白い炎がアーネスの頭の横を掠めた。掠めた部位からは魔方陣が浮かび上がり、まばゆい光が上空に向かって突き上げて行った。
それを目にしたアーネスは先ほどの余裕は消え、口元をパクパクしている。
「申し遅れましたアーネスさん。」
ゼスタに呼ばれたアーネスはビクリと反応した。
「わたくし、アクシズ教団最高司祭を務めさせてもらっている、アークプリーストのゼスタと申します。」
とたんにアーネスの額から汗がぶわっと吹きで始める。
「アクシズ教団内で私以上のレベルのアークプリーストはいないと自負しております。」
その言葉はアーネスをさらに追い詰め後ずさりをする。
「同じく。アクシズ教団の美人プリースト、セシリーと申します。」
後ろにいたセシリーが声を発したことでアーネスは後ろのセシリーの存在を思い出したのかまたビクリと震える。
「セシリーさん、どうやらこの一件はこの悪魔っ子が元凶のようですね。」
「そのようですね、この悪魔のせいでゼスタ様はあのような目に遭わさたのでしょう。」
あ、このパターンどっかで・・・
「何だ?貴様ら何の話をしている。私はただこの街に来てウォルバク様を探しに来ただけであって・・・」
アーネスの声は完全に上擦っていて、もう泣きそうな顔をしている。
何だろこの理不尽な光景は・・・
ここまで来たら同情のほか言葉が出てこない。
アーネスの否定の言葉はゼスタたちの耳には届かず。
ダっとゼスタが走り出した。それから逃げるためアーネスは体を翻してセシリーの脇をすり抜けた。
「セシリーさん追いかけましょう。悪魔になら何をやってもいい。アクシズ教団の手で悪魔に生まれてきた事を後悔させてあげましょう。」
「了解ですゼスタ様!悪魔は吊るせぇ!」
そんなことを叫びながら涙目のアーネスを追いかけて行った。
『あれ?もしかして私今用無しになりました?』
「まぁ、そういう事だろうな。さてと、教団本部に荷物取りに戻って出発するか・・・」
「結局犯人分かりませんでしたね。あのアーネスもちょむすけだけが狙いだったようなのでこの一件とは無関係なのでしょう。」
そもそもこの事件に犯人なんて・・・
「ところでしょうた。ずっと気になってたんですが、なぜアクセルに行こうと?」
「え?」
「しょうたはここでの基本的知識が圧倒的に足りないですよね?キャベツが飛ぶことも知らないですし。」
いや、普通はキャベツ飛ばないんだけどなぁ・・・
「それなのにしょうたはアクセルという初心者にはピッタリな街を選び出しました。」
「それは里を出てた頃に・・・」
「里を出てた頃に知った。ですか?そうですね、それなら普通の人なら通せるでしょう。でも私はあなたの性格を少なからず普通の人より知っています。今回は私が冒険者として初めての旅です。普段のあなたなら行き先は私に決めさせるはずなのです。でも、今回は提案をして来ました。先にも言いましたようにあなたにはここの知識が全くと言っていいほどないのですよ。それならば他に場所があると考えるはずです。答えてください、アクセルにあなたは何を・・・」
「め、めぐみん!それくらいしときなさいよ。その言い方じゃまるでお兄ちゃんを疑ってるみたいよ?」
雲行きが怪しくなって来たと思ったのかゆんゆんが止めに入って来た。
そのことを察したのか、
「そ、そうですね。すみません、最近のしょうたが神妙な面持ちをしてたので少し心配だったのです。」
「そんな俺の顔変だったか?」
自分の顔をさわりすこし頬を引っ張てみる。
少し頬の筋肉が少し強張っていた。気づかないうち力んでいたみたいだ。
「きっとあれだな。これから爆弾魔みたいなやつと一緒にパーティー組むからかな。」
「だ、誰が爆弾魔ですか!誰が!」
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「・・・・・・」
「ご主人様?自分の腕なんか眺めてどうしたんですか?」
俺達はいったん本部に戻ったのち出発の準備をしていたら、折角だからともう一泊していけとゼスタに言われ、各々部屋に戻ていた。俺は昨日の朝に感じた体の違和感が気になり、少し腕を眺めていた。
「いや、雪那。俺の腕見てどう思う?」
「・・・す、凄く、大きいです・・・」
雪那は顔を俯かせ、赤面させながら、目だけがこちらをうかがっていた。
「うん、ネタは良いとして。前と比べて少し細くなってないか?」
前に比べると二回り小さくなっているようにも見えなくもない。
「筋力ステータスは見てみたんですか?」
「いや、そういえば見てないな。最後に見たのは・・・セイクリッド・スペルブレイクの時か。でもあの時ってスキル欄しか見てなかったからな。」
そう言いながらポケットから冒険者カードを取り出す。触り慣れたカードの質感。取り出したカードには見たことのある数字が並んでいた。その数字を見た瞬間声が出なくなっていた。
「・・・・・」
「珍しいですね、ご主人様がそんな間抜け顔するなんて。何を見たんですか?筋力デバフみたいのが掛かってましたか?・・・っ!?」
雪那は俺の冒険者カードを覗くなり、声ならぬ声が出た。
「「れ、レベルが初期値になってる・・・!?」」
声をそろえた同時に、骨にズシンと響く振動が響き渡る。正体は見なくても分かる。
「これは一体どういう事なんでしょうか?」
「振動のことじゃなくてレベルのことだよな?さっぱりわからない。身に覚えが・・・あ、あるわ。」
一つだけ、この現象が起きる起因がある。それは・・・
「ポーションだな。ひょいざぶろーさんから貰ったスキルアップポーションだな。」
あの人の作った魔道具で副作用がなかったのは少しおかしいと思ったんだ。これではっきりした。あの薬の副作用はレベルの初期化。それをわざとなのかそれとも偶然の副産物なのか。ほんとひょいざぶろーさんすげぇわ。
「あまり落ち込まないんですね。レベル上げ直しが始まるのに。」
「逆に考えるんだよ。またレベリングが出来る。見たところスキルはそのまま残っているし・・・ある意味チートじゃね?」
再度レベリングが出来るならスキルポイントも再度獲得できるはずだ。
「でも、レベルが下がったてことはステータスが下がったわけで。そうなれば絶対的に魔力も下がって・・・」
「あ、そっか。魔法があまり打てなくなるな。体力も落ちてるんだろうし・・・て、なんでお前はそんな目を輝かせてるんだ?」
「え、だってご主人様魔法と兼用ばっかりで、私単体であんまり使ってくれないじゃないですか。」
「お前以外にも剣はあるんだけど?」
「あぅ・・・」
あからさまに落ち込む雪那。
「ほら、もう夜も更けるし、早く寝ようぜ。」
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朝。好意にも馬車代をアクシズ教から貰った上に送り届けてくれるという手厚い見送りをされている。
「あの、ほんとに馬車代良かったのか?」
「ええ、あなた方には大変お世話になったのでこれくらいのお礼をさせてください。」
確かに迷惑はかけられたがそれなりに楽しかったわけで・・・
「しかし、めぐみんさんが爆裂魔法の使い手だったとは思いもよりませんでしたよ。あれだけ広いお風呂なら教会内の全員で入れますよ。」
「混浴にはしませんよゼスタ様。」
「混浴というのはですね互いの絆を深めるものでして・・・」
「混浴にはしませんよゼスタ様。」
ぶれないな・・・てかやっぱり昨日の振動はめぐみんの仕業か。
「んじゃ、俺たちはもう行くな。元気で。」
めぐみん達を馬車に乗せ、俺も遅れて乗ろうとすると、セシリーが名残惜しそうに近づいてき、
「ほんとは私も一緒についていきたいんだけど」
「来なくていいです。」
「・・・ついていきたいけど、本部を離れるわけにはいかないから。」
といってずっしりと重い袋を渡してくる。普通の人ならここで餞別なんだろうけど、この人アクシズ教徒だからなぁ。
「コレイラナイデス。」
「いいのいいの。若い子が遠慮なんかするものじゃないわよ。」
「イヤイイデス。」
袋を押し返し、そのまま馬車の扉をしめた。
「アクセル行きの便出航しまーす!」
俺達はアクセルへと一歩足を伸ばした。
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馬車に乗るのはこれが二回目か。相変わらず眠くなる乗り物だな。
アルカンレティアかえあ二時間ぐらいだろうか。馬車に揺られながらゆんゆんとめぐみんが何やら騒いでるのをしり目に睡魔を迎え入れようとするが。
「お前ら少しは静かにしてくれ。他の人に迷惑かけるだろ。」
馬車の席は向かい合わせで、向かいには五、六歳の子とめぐみん達より二つ上くらいの子の女の子と、彼女らの母親らしき人が微笑みながらめぐみん達を見て座っていた。少女らはお揃いの栗色の髪の毛と茶色い瞳が姉妹だと言うことを物語って居た。馬車内にいる乗客のほとんどの視線が俺達へと集まって居た。
「ふふ、お嬢さんたち。随分と仲良しねぇ。」
「え、あ、いや・・・」
ゆんゆんは恥ずかしくなったのかその場に縮こまってしまった。
そろそろ対人耐性を付けてほしいものだ。饒舌とは言わないが、問題にならない程度に。
「お嬢ちゃんたちこれ食べる?」
と婦人の隣に座っていた女の子が差し出してくれたのは焼き菓子だった。こんがり焼けた表面、これはなかなかの・・・
「すいませ・・・」
「いただきます。」
「おい。」
すぐさま手を出そうとするめぐみんの頭に手刀を落とす。
「あぅ!?」
「もらう前にお礼を言え。すぐさま手を出すな。」
「だ、だからと言って・・・」
頭を押さえながら涙目で訴えかけてくる。
力はそんなに入れてないはずだが、打ち所が悪かったのか?
「ほら、貰うんだったらお礼を言ってから貰えよ。」
「うう、ありがとうございます。」
めぐみんは涙目ながらにもお礼を言って、焼き菓子を受け取る。
「そっちの子もどうぞ。」
「す、すいません。ありがとうございます・・・」
ゆんゆんが赤面しながら焼き菓子を受け取る。
うん、ほほえましい光景を見た。
「はい、貴方にもどうぞ。」
女の子は俺にも焼き菓子を差し出してくれた。
「ああ、ありがとう。これは君が焼いたものなのか?」
「は、はい。お口に合えばいいんですけど・・・」
「心配はいらない。こっちが合わせに行くよ。」
「しょうた?あなたホント懲りてないですね?」
「全くそろそろ学習ってもんを知ってよね。」
「そろそろマジでお前ら何のこと言ってんのかな?」
そう言いながら焼き菓子をかじった。
・・・え、美味しい。
「あなた達アクセルに向かっているということはアクセルの冒険者かしら?」
この目線は、俺に聞いてるのか。そりゃ年長者に見えるかもしれんが・・・
俺はひとかけら焼き菓子を割りめぐみんの膝の上で丸くなっているちょむすけにやりながら、
「いや、こいつらはこの間里を出たばっかで冒険者になろうとアクセルを目指してるんですよ。」
「私たちはともかくしょうたに関しては冒険者経験ありですからね。」
「うん、まぁそうなんだけど・・・これでも見てくれ。」
俺はポケットから冒険者カードを取り出す。
そこにはやはり俺の初期値が乗っている。どうやら現実は変わらないようだ。その数値を見ためぐみん達は昨日雪那と同じような顔をしていた。
「え、あれ?お兄ちゃんレベルって・・・」
「おう、初期値に戻った。原因は多分ひょいざぶろーさんのスキルアップポーションだろうな。」
「やっぱり副作用があったんじゃないですか!」
「大きい声を出さないでくれ・・・少し俺も反省してるんだからさ。」
俺に詰め寄ってくるめぐみんを抑えるように反省の色を表す。
それが分かったのか、ため息をこぼした落ち着く。
「ということはしょうたは今魔法がろくに使えない戦力外ということですか?」
「戦力外は少しひどくないか・・・」
「だ、大丈夫よ。お兄ちゃんけ、剣技があるし・・・そ、それにもし危なくなったら私が守るから!」
ゆんゆんよ。その言葉は俺が言うべきであってお前が言う言葉じゃないし、それに目をそらしながら言われても説得力が・・・
「お嬢さんたちのその瞳は紅魔族かしら。さっきそちらのお嬢さんがお兄ちゃんと慕っていたのだけど、貴方も紅魔族なの?」
「あ、まぁそんなもんです。一応目ももほら。」
と言って目を紅く染める。
ステータスが落ちているので稼働時間が短くなっているが、訓練のおかげかある程度までしか弱体化していないようだ。
その会話を聞いていた、馬車内の乗客達は途端に騒ぎだす。
「紅魔族」?紅魔族が乗り合わせているのか!?」
「しかも三人ともか!?今回の旅は俺たちの出番はなさそうだな。」
「そもそもこんな大所帯の商隊を襲うモンスターなんて滅多にいないさ。」
そんなににフラグを立てないでくれ・・・
あと俺達は普通にお金を払ってるんだからあまり戦闘には参加したくはないんだけどな。
「ご安心を、この私は紅魔族随一の天才アークウィザードですからどんなモンスターでも屠って見せましょう!」
と大口をたたいている大馬鹿がいるが後で後悔しそうなのでフォロー入れとくか・・・
「馬鹿、お前は最後の切り札なんだからそうやすやすと魔法を使ってもらわれたら困る、。出来るだけ温存しとけ。」
「ふっふっふ。確かに我が魔法は大地すらも砕く・・・」
なんかよくわからない事を言っているがこれで戦闘には積極的には参加しないだろう。
「ということは紅魔族は戦闘に参加しないって事か?」
すこし不穏な顔をしながらこっちを見てくる。
そりゃ上級職についてるのに参加しないのは確かに不満はあるだろうな。
「んじゃ、ゆんゆんがメインで戦ってくれるか?俺はそのな、この辺じゃ多分ワンパンやと思うんよ。」
「お兄ちゃんそれ何語?でも、まぁお兄ちゃんが私を頼ってくれるなら頑張る・・・」
照れながらも承諾するゆんゆんを見て乗り合わせている冒険者たちは、
「紅魔族が居れば百人力だぜ。」
となんやかんや盛り上がっているが、まぁ放っといていいか。
あれからさらに三時間が経過。今は馬を休ませるための昼休憩といったところだ。俺達は芝生に座りながら弁当を食べていた。
「ホントこの世界って平和だよな。魔王軍ってホントにいるのか?いやいるにはいるんだけど・・・」
「まぁここは王都から随分と離れていますからね。」
「でも油断はしちゃダメよ。モンスターに襲われないように警戒を・・・」
「大丈夫だゆんゆん。こんな大勢のとこに特攻してくるモンスターなんかいない・・・」
そこまで言うと地響きが聞こえていく。もう嫌な予感しかしない。
「モンスターが出たぞ!」
そんな冒険者の怒号が聞こえたとさ。
「もう!お兄ちゃんが変なこと言うからぁ!」
「うーん、最近の俺は調子が悪いのかな?」
「調子とかそういう問題じゃなくてっ!?」
「はぁ、もう分かったよ。お詫びとしてゆんゆん、お前に手柄をやろう。頑張って。」
「なんでお兄ちゃんの尻拭いをしないといけないの!?」
ゆんゆんは涙目になって訴えかけてくるが、やる気はあるようだ。
そもそもここにまともな戦闘が出来るやつってゆんゆんぐらいだしな。
「紅魔族の先生方!本来お客さんのあんたちに頼むのは道理じゃないんだが、どうにもモンスターの数が多すぎるんだ!助けてくれないか!?」
「先生!?しょうた、ゆんゆん聞きましたか!?先生方って呼ばれましたよ!?」
「お前喉の琴線に触れたんだそれは・・・それとお前の魔法は周りを巻き込むから駄目だ。それに、今の地響きからするとジャイアント・アースウォームだろうな。地中にもぐる巨大ミミズだ。地中にいる時点でめぐみんの戦力外通告なわけで、ゆんゆん、お前しかいないわ。」
さわやかな笑みで言うと、
「何がお前しかいないよ!ミミズなんていやよ!」
さっきからゆんゆんは涙目しかしないなぁ。いやこれが普通の反応なのか?
「大丈夫だって、作戦ぐらいあるって。いいか・・・」
・・・こうして俺はゆんゆんに作戦を伝えてゆんゆんの初デビュー戦を遠巻きに観戦するのであった。勿論めぐみんも連れて。
平原には今ゆんゆん一人だけが立っている。その姿は誰がどう見ても勇姿に見えているだろう。
まあ、実際には緊張と恐怖で震えているんだろうけど。
護衛の冒険者達には被害が出ないように避難させている。モンスターが潜んでいる平原に少女が一人という場面は誰もが肝を冷やすだろう。現に護衛の人たちも目を白黒させながらゆんゆんを見守っている。
「お、、紅魔族の兄ちゃん。ホントに大丈夫だろうな・・・」
「問題はないはずだ。」
淡々と答えるがそれでもまだ落ち着かないらしい。
地響きが徐々にゆんゆんを中心として近づいていく。近づいていくにつれ、四方八方土の表面が盛り上がっていく。もうゆんゆんの詠唱は終わっている。
「っ!『アース・シェイカー』!!」
ゆんゆんは地属性魔法を唱え、地面を振動させ、隆起させる。地面にもぐっていた大量のジャイアント・ウォームの群れが飛び跳ねるように出てき、地面でうねうねともがいている。
「っう・・・」
その光景に誰もが気味悪さを覚えるが、ゆんゆんはすぐさま魔法詠唱に取り掛かっていたのか、もう詠唱が終わりそうだった。
「あいつ、メンタル強くなったなぁ・・・」
「いや、今のゆんゆんはただ周りが見えてないのでは・・・」
ゆんゆんのワンドから魔方陣が浮かび、
「『インフェルノ』っ!!」
もがいているミミズの群れに業火が襲う。その業火は遠く離れている俺達にも熱風が届くほどのモノだった。爆裂魔法ほどではないが、俺からしたら十分な派手さだ。
「す、すげぇ、あの生命力が高いジャイアント・アースウォームを一網打尽に・・・」
「これが紅魔族の実力か。噂よりすごい・・・」
ゆんゆんはほっとしたかのようにこっちに走ってくる。その表情は安心と嬉しさが混じっている。
「やったわお兄ちゃん!」
「おう・・・」
正直素直に喜んでいるゆんゆんを見ると気恥ずかしくなるもんだ。これでゆんゆんも少しは自分に自信を持ってくれれば後が楽なはずだ。
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「しかしこんな若い子がジャイアント・アーサーウォームを一人で屠るなんてな・・・」
「い、いえ、あれはお兄ちゃんの策があっただけなので・・・」
「お兄ちゃん?あぁ、あんたを一人であんなとこに置いた野郎か。そういえば野郎はどこ行ったんだ?」
その冒険者は少し言葉に怒りを交えていた。まあ、それが一般的な反応なんだろうな。俺でも流石に思うところはある。
そんな俺は今馬車から少し離れたところで寝っ転がっていた。
今回の旅。俺のレベルが初期化したって事は色々警戒しながら進まないとダメだよなあ。そもそも今日のジャイアント・アースウォームだっておかしい話だ。普通あのミミズは何な大群で移動なんかしないし、ゆんゆんを一人だけ狙うのもおかしい。俺だってあの時馬車の方にも来ると思ってたから馬車の方のお守りに回っただけであって・・・
「一人で悩み事かしら?死神さん?」
聞き覚えのある声が足元から聞こえてきた。相手に敵意は感じられないので、寝ながら相手をする。
「アーネスだっけか?何こんな時間に。夜這い?」
「ち、ちがっ!?じゃなくて、少し取り引きをしたくてね・・・」
月光がアーネスに注ぎ、瞳が怪しく光る。
「やだ断る。」
「即答!?いや、悪い話じゃない。私はただウォルバグ様を取り返したいだけだ。」
「だからと言って馬車にモンスターを引き合わせなくていいだろうに・・・」
「・・・いつから気がついていた?」
「モンスターの習性からしておかしいなぁとは思ってたんだけど、あんたが声を掛けてきた辺りで確信を持った。で、取り引きを断った俺にまだなんか用でも?」
顔を起こしアーネスに顔を向ける。視線があい、互いににらめ合う。
「引く気がないなら一つ俺の仮定を聞いてもらってもいいか?」
アーネスは目を閉じてその場に座り込む。その行動を肯定と受け取り、
「ちょむすけ、あー、そっちじゃウォルバグだっけか。あれって本体なのかなって思うんだよな。」
拍子が抜けたかのような表情をするアーネスに俺は続ける。
「俺はさ、ある程度の魔力が分かるんだ。あんたもめぐみんも、ゆんゆんのだって分かる。もちろんちょむすけのも。ちょむすけが邪神って言うならあれは低すぎだと思うんだ。神様のレベルは知らんけど少なくともアークウィザードよりは上なんだろ?つまり邪神様は完全体じゃないということにならないか?」
アーネスはそのまま黙っている。
「俺達に構う前にもう片側を探した方がいいんじゃないか?」
「貴様の言い分は一理ある。しかしそれが貴様達から手を引くと言う理由にはならないはずだ。私を倒せるほどの力が・・・」
「爆裂魔法。」
「!?貴様、今なんて言った?」
目を見開いて声を荒げる。動揺しているように見えた。
「うちのバカが爆裂魔法を使える。どこで知ったのかは知らんけどな。その様子だと爆裂魔法は驚異みたいだな。あんまケンカ売らない方がいいぞ?」
起き上がり、体全体に力を入れる。それの呼応するかのように腰にささっている『雪那』と背中にある『死神』が煌る。刀身から魔力が溢れんばかりの量を感じ取れる。
「私とやり合うかか?」
額に浮かべてるのは脂汗だろうか。ツゥっと額から頰にかけて一筋流れる。
「そちらにやる気があるなら・・・」
二本に手を掛ける。その動作に意図はない。
「っ。分かった。今日のところは引いてや・・・」
「ごっしゅじんさまー!あっちの方でジャイアントバットがわらわらしてたので掃除してきましたー!」
雪那が笑顔で駆け寄ってくる。その笑顔は誰もが見惚れる笑顔だった。そう、返り血さえ無ければ・・・
「・・・お、おつかれ。あ、アーネス?せっかく用意してくれたコウモリなんだけど・・・」
「き、気にしないでくれ・・・」
顔を引きつりながら暗闇へと消えていった。
魔物をここまで引き連れるのには苦労したろうに。
「ところでだ。雪那よ。いつのまにお前は刀身を残したまま擬人化出来るようになったんだ?」
「いやぁ、それは最初から出来ましたよ?ただやる必要がなかったからやらなかっただけです。そもそも私が抜けた方などなんてご主人様に反応するだけの道具ですから。」
なんというカミングアウト。
確かに使わない能力かもしれないけど、そういうことは早くいって欲しかった。
「この能力デメリットの方が多いですからね。無駄に魔力使いますし、その上実力の5割強ほどしかでない・・・ほんと欠陥・・・こほん。ほんと人数が増やせる便利な能力。」
こいつ今自分で欠陥品って言いそうになかったか?
えへへと笑ってる雪那を見ていると何も言えなくなるなホント。
いつのまにか腰の『雪那』が消えていた。
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小刻みの馬車の揺れが眠気を誘う。
車内では相変わらずゆんゆんが英雄扱いだった。それにどう反応していいか分からないのか、俺の方を向いて助けを求めてる。
獅子も子を谷底に落とすって言ってるし、放っておこう。
そのまま流れるように瞼を閉じて・・・
「お兄ちゃんは戦えないの?」
向かい側の席に座っている幼女が問いかけてくる。
純真で聞いてきているのだろうが、母親は失礼だと思い口を塞いでいた。
「こら、そんなこと聞くものじゃないでしょ?ごめんなさいね、失礼なこと聞いちゃって・・・」
「いえいえ、気にしないでください。そうだなぁ、お兄ちゃんが戦わないのは二つ理由があるんだ。まず、あのお姉ちゃんに自信を持たせてあげたい。」
俺はちやほやされているゆんゆんの方を指をさした。
「そのお姉ちゃんは?」
女の子は横で寝ているめぐみんを指差す。
「このお姉ちゃんは自信に溢れてるから必要なし。そもそもこのお姉ちゃんは最終手段だしな。」
気持ちよさそうに眠るめぐみんに髪が目にかかっているのでそれを払うように髪に触れる。
「そ、それで、あと一つは?」
と、もう一人興味津々で姉の方が聞いてくる。
「興味ある?て言っても大したことじゃないけど。ほら、俺レベル1だからさ。戦うにも足手まといになるんだよ。」
冒険者カードを少女に渡し確認させた。少女は項目欄に目を通しているが、いまいちピンと来てないらしい。
「簡単言ったらあのお姉ちゃんと、このお姉ちゃんよりも弱いってこと。」
情けない笑みを浮かべる。
しかし、レベル1になろうがこいつらだけは無事でいさせる気持ちは変わっていない。
「ゴブリンの群れだ!!」
一人の冒険者が叫ぶと、それを聞いた冒険者達はすぐさま戦闘準備をして外に出て行く。
ゴブリンくらいならなんとかなるか?
俺は『雪那』を手に取り、馬車の外へ。そこで目にしたのは、数十、いや、100以上のゴブリンだった。
「なんだよこの数・・・」
「・・・ゴブリンってのは10体位で群れるのが普通だろ・・・」
さすがの俺も光景には開いた口が塞がらない。まばらにいるため魔法攻撃でも一網打尽には出来ない。となると・・・
「ゆんゆん、ごめんな。」
「別に謝ることじゃないじゃない。それに、お兄ちゃんはゴブリンを1箇所にまとめてくれるんでしょ?」
「ちょっくら行ってくる。『バーストモード』・・・」
文字通り目の色を変えた俺はゴブリンの群に突っ込んでいく。
皆さんお久しぶりです。
えっと、忘れてたわけじゃないですよ?少し時間が取れなかっただけです。
はい、ということで今回は…なんの話してたっけ。とりあえずアクセルに向かってるということは分かったんですけど…
あ!そうそうショウタのレベルが初期値に戻ったことぐらいですかね!
多分それがメインのお話だった気もしなくもなきにしもあらずです。
ということで大変遅くなりましたが読んで下さりありがとうございます!次回もまた呼んでくれると嬉しいです!